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New!インタビューを実施しました : 台湾の注目SSW イーノ・チェン (鄭宜農) に聞く最新作『圓缺 Moon Phases』の制作背景とこだわり【アジア・インタビュー連載企画Vol.5】
台湾のみならずアジアを代表するSSWになりつつある鄭宜農(Enno Cheng)の待望の新作が登場!2023年に第34回金曲賞(ゴールデン・メロディー・アワード)で最優秀台湾語アルバム賞と最優秀台湾語女性歌手賞を獲得した前作『水逆 Mercury Retrograde』の流れを汲んだ、2作目となる台湾語アルバム取り扱い開始。
本作は、「他者とのコミュニケーション」、「台湾語での歌唱」という二つのテーマを核とした『水逆 Mercury Retrograde』の流れを汲み、台湾語での歌唱、そしてこの二年間文字創作・演技・演奏と幅広い世界で活躍してきた経験をもとに人と人との間の様々な感情の側面、他者とのコミュニケーションやその中の言語という更に掘り下げたテーマを中心に制作された。人生における円満、または欠落や哀しみの中で人生に対する態度を見出そうとし、そしてその中で共感を見出すことを目的としている。
制作陣には、前作同様に共同プロデューサーを何俊葦(Chunho)、台湾語のヴォーカル・プロデュースを何欣穗(ciacia)を迎えているほか、台湾語指導には前作同様、新台語歌運動でもおなじみのベテラン朱頭皮こと朱約信が参加。このいった制作人の顔ぶれからも前作からの流れを汲んでいると言えるだろう。音楽的な側面では、ポップ、フォーク、ダンスミュージック、アンビエントなど現代的で多彩なエレクトロニック・サウンドや疾走感のあるリズムアレンジを大胆に取り入れている。タイトル曲「圓缺」のように故事を取り入れた伝統的な歌詞と現代的な音楽の革新的な融合を目指しており、これまでにない音楽の楽しさを届けるほか、台湾語ポップミュージックの新たな可能性を切り開くことに成功している。
アルバムは全10曲を通じて、人がこの世界に生を受けた瞬間から始まる、光と闇、抑圧と渇望、愛と憎しみ、脆さと依存、生と死、そして円満と欠落のあいだを行き来する「圓缺Moon Phases(満ち欠け)」の旅を描く。主題の「満ち欠け」といえば、海王星からはじまり、冥王星、天王星、水星と、長い年月をかけ徐々に近づいてきたアルバムタイトルに注目すると、次は地球にもっとも近い衛星の月が裏テーマになっているのも興味深い。台湾音楽ファンではおなじみの特殊ジャケだが、今作は群を抜いてこだわりを尽くしている。アルバムのテーマから察するに月の満ち欠けや、二律背反の事象を描くかのような裂け目を通して別れる黒と月の色のようなの配色、その間が絶妙に灰色になっている(中身はなんと自身を見つめなおす鏡になっているというこだわり)のも非常に趣がありこれはぜひフィジカルで持っておきたい、そう思わせれらる。

【オススメの楽曲紹介】
前作もコミュニケーションというテーマのもと、多くのアーティストのコラボレーションが際立っていたが、今作ではさらに海を越え、なんと台語POPS史初となる台語×韓国語の楽曲「寬寬仔來到祢的面前(ゆっくりとあなたの御前に達した)」を収録している。フィーチャリングに迎えるのは、現在同レーベルに所属する韓国出身のSSW、イ・ラン(Lang Lee/李瀧)。エッセイやコミック、短編小説集を執筆している点でもイーノ・チェン、日本でいうなれば柴田聡子とも親和性が高くこのコラボレーションには納得させられます。
MVでは椅子取りゲームを人生に例えた世界から始まる。他者と共に生きる術を学びながら、人生の中で無数の出会いと別れを経験し、その中で愛を求める欲望と、傷つきながらも生きる苦しみの間に葛藤し、生命の意味を探し続ける。そして最終的に不完全さの中で他者と自分自身を理解し、欠けたままの存在同士を受け入れ合うことで、和解の可能性を見出していく。そんな人生における学びが歌詞には込められているのではないだろうか。相互理解、共存といったテーマをもとに韓国語と台湾語で対話のように進む歌詞にも感動させられる。
プロデューサーのChunhoを迎えテクノのビートに台語の叙情的な歌詞を重ねた実験的な一作「留佇?的血?底/Remains in Our Blood」にも注目したい。本作では、疾走感のあるリズムとシンセサイザーによる実験的な反響音が先行し、後から歌詞が加えられるという手法をとっており、まるで記憶が再構築されるかのように、過去と未来が交錯する暗室のような空間音楽が広がっていく。歌詞はというと、都市の片隅に潜む歴史の痕跡や個人の傷を描いた内容だ。MVを見ると、白色テロ(戒厳令下)で処刑された教師・郭慶と、その娘である郭素貞の実話が描かれている。実際の遺書の文言も用いられているが処刑前に書いた遺書は60年の時を経て遂に娘の手に渡ったものだそうだ。突然のペットとの別れに際して何も伝えれなかった話を描いた「未曾準備好」ともリンクしているようだ。2月28日、和平記念日にリリースされた被害者に捧げる本作は、単なる追悼ではなく、政治的なメタファーと個人の記憶の再構築することを目的としており、記憶を受け継ぎ忘れないことで、和解と共存の可能性を提示していることにも注目したい。(参考:鄭宜農228釋出新曲〈留佇?的血?底〉 致敬白色恐怖受難家屬郭素貞)
続いては、コミュニケーション初段階の障害について描写した前作から進み、会話は行ったものの、すっきりしていない事柄や、曖昧なままな状態、または、ある言葉がどうしても出てこないといったコミュニケーションの後半段階の状態を描いた楽曲「講袂出嘴的彼个字(どうしても出てこないあの言葉)」だ。勇気を振り絞っても簡単には出てこない「我愛?(愛してる)」というたった三文字の言葉、歌詞では特に触れてはいないものの実際の家族間においてもなぜだか分からないがそうであったらしい。こういったコミュニケーションの後半段階における問題は思考を巡らすと日常の中にきっといくつか潜んでいるはずだ。「愛」をテーマにしたのには理由があり、どのようなテーマが台湾語で書かれると特別な意味を持つか、また、現代の議論や政治的な混乱の中で、世代間のギャップの根源とはなにか、という問題について考えた際、華人社会の家庭で避けられない感情表現の障害を描くために、最も簡単な言葉を使うことが表現する意味があると考えたからだそうだ。
最後に、アルバムを締めくくるのは、伝統と現代の革新的な融合を図ったタイトル曲「圓缺」だ。中秋の名月を詠う詩人蘇軾の名作『水調歌頭』を題材にしており、その中の非常に有名な一文を歌詞に取り入れている。人生が完璧でないことを知りながらも、愛し合い、共に生活を築く努力を描いた内容は、精神的なつながりを求める永遠の渇望を表現しており、アルバム全体のコンセプト、そして「寬寬仔來到祢的面前」の核心概念と呼応している。特にMVの最後で描かれる、椅子を取り合うのではなく、新しい椅子を持ってくるという描写は顕著だ。
前述の蘇軾の「人有悲歡離合、月有陰晴圓缺、此事古難全、但願人長久、千里共嬋娟」の引用は、別れと出会い、悲しみと喜びといった表現が再度故事を用いて強調されるほか、アルバムで一貫して触れてきた「愛」というテーマと「月(嬋娟)」を結びつけておりまさに天才的、例えると「月がきれいですね」のような愛情の隠喩的表現である点も絶妙。さらにMVはというと、中央に位置する四コマの絵は、日本人であれば「竹」、さらには、竹取物語で描かれるような「竹」と「月」の関係なども思い浮かぶのではないだろうか。この楽曲でアルバムを締めくくるのには美しいの一言に尽きる。
鄭宜農 Enno Cheng(イーノ・チェン)
シンガーソングライター、俳優、執筆家という多数の顔を持つ彼女。アルバム『海王星 Neptune』『Pluto』『給天王星 Dear Uranus』『水逆 Mercury Retrograde』や、数多くの映画・ドラマ主題歌をリリースしてきたほか、児童書『風中的小米田』、短編小説『幹上?樂部:3D妖獸變形實?』、エッセイ『孤獨培養皿』を執筆している。現在も音楽や文章の創作を続けながら、台湾各地のライブで活躍中。
2023年にはアルバム『水逆 Mercury Retrograde』で第34回金曲賞(ゴールデン・メロディー・アワード)で、最優秀台湾語アルバム賞と最優秀台湾語女性歌手賞を受賞したほか、シングル「金?色的 Golden」で第14回金音創作賞(ゴールデンインディーミュージックアワード)の最優秀オルタナティブ・ポップ楽曲賞を受賞した。日本ではアジア音楽の祭典Biknに出演、韓国では今年開催されるAsian pop festivalに出演予定。
Walking Music Co., Ltd.|邊走邊聽有限公司
ウォーキング・ミュージックは、鄭宜農(イーノ・チェン)が設立した音楽ブランド。音楽、写真、文学など多方面で活動しており、この会社を通じて彼女の創作活動をさらに広げています。会社名「邊走邊聽」は、日常的に「歩きながら音楽を聴く」ことからインスピレーションを得て名付けられたそうで、歩くことでアイデアを整理し、創作のインスピレーションを得ることが多いそう。Youtubeチャンネルにも「邊走邊聽」シリーズがありこちらも必見。
同社は本作にも参加している韓国のSSWイ・ランを迎えているほか、今後契約する可能性があるアーティストに関して問われた際、個性的なアーティストが来てほしく、まるで「魔物獵人公司(モンスター・ハンター会社)」になればと形容している。今後さらに広がっていくであろうグローバルな展開。そして必ずやってくるであろう日本での活動に期待してやまない
https://www.behance.net/gallery/166162539/Walking-Music-Co-Ltd
ENNO CHENG / 鄭宜農
鄭宜農 Enno Cheng(イーノ・チェン) シンガーソングライター、俳優、執筆家。 個人アルバム『海王星 Neptune』『Pluto』『給天王星 Dear Uranus』『水逆 Mercury Retrograde』や、数多くの映画・ドラマ主題歌をリリース。 児童書『風中的小米田 Badu’s Homework』、短編小説集『幹上俱樂部:3D妖獸變形實錄 Fucked Up Club』、エッセイ『孤獨培養皿 The Way I Live in Solitude』を執筆し、現在も音楽や文章の創作を続けながら、台湾各地のライブで活躍中。2023年にはアルバム『水逆 Mercury Retrograde』で第34回ゴールデンメロディーアワード(金曲奨)の「最優秀台湾語アルバム賞」と「最優秀台湾語女性歌手賞」を受賞。また、シングル「金黃色的 Golden」で第14回ゴールデンインディーミュージックアワード(金音創作奨)の「最優秀オルタナティブ・ポップ楽曲賞」を受賞した。 2023年には、瘋戲樂工作室(Studio M)制作のブロードウェイの名作ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ Hedwig and the Angry Inch』台湾版に出演し、男性主人公イツァーク(Yitzhak)を演じて大きな注目を集めた。2024年には、大慕可可(KOKO Entertainment)と山喊商行(Ο Echo.Co Studio)の共同制作による舞台劇『妳歌 Your Song』に挑戦。この作品は鄭自身の家族の記憶からインスピレーションを得たもので、主要キャラクター「張以南」を演じた。 その後、2年間にわたる多様な創作や演技経験を経て、2025年には2枚目の台湾語アルバム『圓缺 Moon Phases』をリリース。本作では、大胆にエレクトロニックサウンドや疾走感のあるリズムアレンジを取り入れ、伝統と現代の革新的な融合を目指す。台湾語ポップミュージックの新たな可能性を切り開き、これまでにない音楽の楽しさを届けている。(公式インフォより)
2025.05.29
LATIN/BRAZIL/WORLD
【鄭宜農Enno Cheng特集】最新作『圓缺Moon Phases』、そして『給天王星 Dear Uranus』、『水逆 Mercury Retrograde』を取り扱い!