本作、キューバの新興レーベルColibriが企画する、若手キューバ・ジャズの瑞々しい才能を紹介する好シリーズ「JAZZ YOUNG SPIRIT」の新作としてのアルバムで、彼女にとっては初めてのキューバ・エグレム・スタジオ録音。ヨーロッパでの成功を収め、言わば凱旋レコーディングといえよう。編成もピアノ・トリオを基本としつつ、粒立ちの良いキューバン・パーカッション、そしてホーン・セクションも随所にアクセントとして起用したフルバンドのキューバン・ジャズ。今回は、全員キューバ人とのコラボレートということで、祖国にて、より解き放たれたマリアリーのテンション、タッチにも解放感が伴っている。だが、本質的なスタイリッシュ・センスは既にマリアリーの存在感そのもの。パーカッションとピアノのリフのみというイントロM1に、既にその色彩が表出。コーラスをフィーチュアしたミディアム・テンポ・ジャズM2、チャチャチャのリズムを大胆にピアノ・ジャズ・フレイバーでコーティングしたM3、ディープなキューバン・リズムの陰影を繊細なタッチで紡ぐM4、対照的なハイ・テンポのトリッキー・ラテン・ジャズ・チューンM5、唯一のソロ・インプロ曲M6、「9月」というタイトルに因んだ、叙景的メロウ・ジャズM7、そしてキューバといえばソン・・・とばかりに、満を持してのジャジー・ソン・テイクのラストM8・・・。 キューバン・ジャズ・ピアノの可能性を追求し、かつ、ヨーロッパ的センシティヴ・サウンドを常に意識した、マリアリーの新境地がここに確立。大先輩チューチョ・ヴァルデスも認める逸材・・・今後もさらに楽しみだ。
Marialy Pacheco (p) Diana Fuentes (vo.) Damian Cortes (b) Ruy Adrian Lopez-Nussa (ds) Mauricio Gutierrez (perc.) Javier Zalva (fl) ・・・etc