エリス・レジーナ、マリーサ・モンチに魅せられたベテラン・アルゼンチン女性シンガー、マルセラ・ヴィシアーノが放つブラジリアン・アルバム。アルゼンチン独自の音楽に触れながらも、その姿勢はMPBそのもの。かつてアルゼンチン国内で、志を同じくするミュージシャンと「NOSSA BOSSA」というグループを組んでエリス・レジーナのトリビュート・ライブなどで好評を博していたこともある注目株。 オリジナル&ブラジリアン・カバーを、アルゼンチン・タンゴ&フォルクロリズムと崇高なジャズ・アレンジで高めた本作は、そのエリスの歌唱で知られるM5「Ladeira da preguiça」、カルトーラの代名詞的名曲M6「As rosas não falam」(バンドネオンのサウンドが絶品!)、カエターノ傑作M7「Sampa」(ここではヴァイオリンが素晴らしい!)、そして敬愛するジョビンのカバーM9「Retrato em branco e preto」、M10「Corcovado」、M12「Eu não existo sem você」と佳曲揃い。瑞々しいアコースティック・サウンドと相俟って、ラテン女性然とした独特の歌いまわし、そして高音美声が作り出す世界観は、本国ブラジルのファンからも注目されている。広くボサ・ノヴァ~ブラジリアン・ミュージック・リスナーに愛されうる充実の1枚だ。