【特集】『Ambrosian Blood』リリース記念、ANCIENT MYTHインタビュー!!

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2021.12.13

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12月15日に最新作『Ambrosian Blood』のリリースを予定するANCIENT MYTHへインタビュー!!
気になる作品の内容や、リリースまでの活動、知られざるバンドの素顔について、前回と同様にヴォーカルのMichalさんとキーボードのHalさんにお答えいただきました。


Q:『Ambrosian Blood』のリリースおめでとうございます!前作『ArcheoNyx』から半年未満と短いスパンでのリリースとなりました。オープンマインドな活動が続いている印象です。
 
Michal:前作リリース時に「オリジナルアルバムとしては9年振り」とよく言われて、(作品を)コンスタントに出さないとなと改めて思わされました。作り続けないと忘れてしまう勘もあって。『ArcheoNyx』はHalがミックスもして、やっぱりアーティストとしてはどんどん経験を積んでいかないとなと。また、リリースした直後から、自分たちのDVDも出してみたいと思っていました。
 
Q:新曲についてお聞きしたいのですが、1曲目の「Ambrosian Blood」はかなりJUDAS PRIESTなどを彷彿させるリフ・ワークですね。作曲/アレンジとしてどのようなことを意識していたのでしょうか?
 
Hal:言われてみたら確かに冒頭のリフなんかはJudasっぽい(笑) メロスピというよりか正統派メタルですね。今回の新曲2曲をどういう風に作ったかというと、一番初めにあった素材は、結果的に2曲目「Forbidden Blaze」になったMichalが作った1分弱ぐらいの本当に短いデモで。それは『ArcheoNyx』の制作時からあったんですが、フル尺ではないイントロとAメロだけだったから見送りにしていたんです。この曲を表題曲として、どのように肉付けしようか考えていた時に、「アンブロシア」をテーマとした「Ambrosian Blood」のタイトルと、ジャケットの構図が先に決まって、表紙の撮影もして。これ見るとわかると思うんですけど、世界観的にはCRADLE OF FILTHなんですよ。
 
Q:わかります(笑)。
 
Hal:それでそのデモの曲は『Ambrosian Blood』というタイトルやジャケットのテイストとはちょっと違うな、と思って。ミニ・アルバムとしてはどっちみちもう1曲新曲を収録するので、それを撮影したジャケットとピッタリな世界観にしようとして急遽作ったのが「Ambrosian Blood」です。Judasっぽくしようとは思ってなかった(笑)。メロスピ、シンフォニック・メタルでダークな妖しい感じを出したつもりでしたが、イントロ~Aメロのリフは確かに正統派メタルですね(笑)。
 
Q:歌詞などは吸血鬼という感じでもないようですが、こちらはどのようなイメージでしょうか?
 
Michal:これはですね、「アンブロシア」がギリシャ神話の中で不老不死をもたらす果実といわれていて。ちなみに『ArcheoNyx』のニュクスもギリシャ神話の女神だから、そこは繋がりを持たせた感じで。
 
Q:なるほど。
 
Michal:描きたかった面でいうと、前作に収録の「Hypno Temptation」が、不老不死の人物とただの人間の物語を描いているんですね。不老不死は色々な時代の王様が求めたりしたものではあるんですが、果たしてその不老不死が本当に人間にとって幸福かどうかは分からないじゃないですか。不老不死ゆえの孤独とか。要は時間軸が違うというところで。それに対する問いかけをしてみたかったというか。
 
Q:それは2000年代から活動するご自身の、シーンに対しての無常観みたいなものと重なっていたりしますか?
 
Michal:私が年老いてなさそうに見てくれているってことですか(笑)?
 
Hal:すっごい自分ポジティヴな読解力(笑)。

 
Q:いえいえ(笑) 、長年活動なさってゆくうちに、若いバンドも出てきたり、今も80年代から活動するバンドが第一線で活動していたりするじゃないですか。そういった面に向けた目線でもあるのかなと。
 
Michal:そこはあまり考えてなかったですね。
 
Hal:フィクション的な感じだよね。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのエルフも、ちょっと人とは違うもんね、死生観とか、時間の感覚とかがさ。そういうのの僕らなりの解釈かな。
 
Michal:そうそう。

 
Q:前作リリース後の創作意欲を受け継いでリリースされたということで、やはり前作の反響は良かったですか?何か印象的なフィードバックがあれば教えてください。
 
Michal:反響は良かったですね。印象的だったのは、ライターさんとかは遠からず近からず厳しく甘くみたいなところがあって。『(適当に褒めておけばいいや)』とは思ってないはずなので。それで「絶対この人からは良い感想がほしいな」と思っていた人から『よく頑張ったね、めっちゃ良いアルバムだね』って言ってもらえたのが嬉しかったですね。
 
Hal:昔から聴いてくれているライターさんが『ANCIENT MYTHを聴いて初めて泣きそうになった』ってね。
 
Michal:そうそう『ちょっとウルっときた』って。あとは、歌詞の方も褒められることが多かったです。

 
Q:歌詞ですか。
 
Michal:前は私一人で書いていたので、すごく主観的だし、言葉のパズルが煮詰まってなかったところがあるんですけど。『ArcheoNyx』からはHalとやり取りをするようになってね。
 
Q:客観的な意見をもらって理解しやすくなったと
 
Hal:伝わりやすくなったというかね。
 
Michal:(Halは)鬼の編集長ってことですかね(笑)。

 
 
Q:先日Youtubeで公開された新曲「Ambrosian Blood」についてお聞きしたいのですが、このMVのコンセプトとしてはモロに吸血鬼のイメージなのでしょうか。
 ※「Ambrosian Blood」 (Official Music Video)

 
Michal:このジャケットの世界観とはパラレル的なストーリーなんですよ。このジャケットの左の女の人が血を流しているのはなぜかというと、自分の血を禁断の実・アンブロシアと混ぜて右の人に食べさせることによって、不老不死にさせるシーンであるのと同時に、種族間の血の交わりが起こっていることを示唆しているんです。
 
Hal:ジャケットとMVも、吸血鬼ではなくて「不老不死の存在と人間」の物語で、人間に不老不死の実を食べさせて仲間にさせようとしている点が共通してるね。

 
Q:なるほど、それでパラレル的なストーリーなんですね。ちなみにMVで食べている果物は何でしょうか。
 
Hal:食べている物?アンブロシアっていう不老不死の実です。
 
Michal:あれは実在する果物としては、
 
Hal:業務スーパーで…
 
Michal:こらこら(笑)、 神話とか伝承に出てくるのだとイチジクとかザクロってやっぱりそういうイメージありません?
 
Hal:禁断の果実みたいなね。

 
Q:ありますね。
 
Michal:いつが旬なのかまでは考えずに、実際にアンブロシアって言われてたのこれじゃない?って思い浮かんだのはやっぱりイチジクとザクロだったんですよ。そのどっちかっていうわけではなくて、どっちもというか。
 
Q:イメージでとしてですかね。
 
Michal:そう。これがめちゃくちゃ偶然にも撮影した時期がどっちの果物も旬だったんですよ。この時期にこの果実のことを歌ったのは運命を感じました。
 
Q:Youtubeの方でもさっそく反響があるようですね。
 
Michal:今ってCDを買わない人が増えていると思うんですけど、Youtubeだけで知ってくれてる人は『ArcheoNyx』で私がソプラノ歌唱を取り入れてることに気が付いていないと思うんですよ。同作から公開したMV2曲は、ソプラノ歌唱を使っているわけではないので。この新しいMV(Ambrosian Blood)で私がソプラノで歌っているってことを初めて知る人も多いと思います。昔ANCIENT MYTHを聴いてたよ、って人も変化とか進化とかに気付いてもらえたら嬉しいですね。
 
Q:やっぱりCDで全編を聴いて欲しいってことですよね。やっぱり。Youtubeでの好反応とジレンマではありますが。
 
Michal:そうそうそう。
 
Hal:これを機に色んな歌い方をしてるっていうのを気付いてほしいですね。買ってください。リンクはこちら!ってね(笑)。


Q:新曲2曲は長尺のギター・ソロがうまく組み込まれている印象です。これを考えているのはKoheiさんなのですか?
 
Hal:僕です。
 
Q:そうなんですね。以前Halさんとギター・ソロは長ければ長いほど良いというような話をしていたことを思い出して、少し嬉しい気持ちになりますね。
 
Hal:(笑)、確かに長ければ長いほうが良いって言ったかもしれないけど、それは「64小節開けときました、はいどうぞ弾いてください!」っていうのを求めているんではなくて、ちゃんと音楽の構成として成り立っているもののことを言っていたと思います(笑)。
今回も全部事前に考えていて、速弾きパートに関しては運指の流れの中で『ちょっとここ変えたい』とか『ここはこうした方が派手になる』って提案をKoheiからもらって、「そのアイデアだったらここをさらにこうして」ってやり取りもありながら出来ていった感じかな。

 
Q:展開があってのギター・ソロに感じるので、その通りだと思います。
 
Hal:3曲目の「Astrolabe in Your Heart (re-recording version)」は元々のギター・ソロがあったので、それを意識しつつ好きにやってもらって。僕のキーボード・ソロも原曲を全くなぞるのではなくて、似たような感じだけど自分なりのアレンジを加えました。
 
Q:かなり激しいパートですよね。
 
Hal:そうですね。
 
Q:当時のヴァージョンと聴き比べてご自身はどのように感じていますか。やはり昔の曲には当時の魅力がありつつ、今回には今の魅力があると感じていますか。
 
Michal:そうですね。本当にそれはその通りで、技術的には年々向上していくので、技術面だけでいうと、それは今の方がもちろん良いと思うんですけど。その時のバンドの状態でしかできなかったというか、あの曲って当時、ANCIENT MYTHって結構ゆっくりな曲をやっていたバンドなんですけど、それだとお客さんがノリづらいし、当時はメロディック・スピード・メタルが今よりも流行っていた。で、メロディック・スピード・メタルを主軸にしていけたら良いんじゃないかなと思っていた時に、初めてできた曲なんですね。だから、それはそれですごく思い入れはあるし、その時にしか自分の声の色合いも11年の年月があって。やっぱり「あの時だけ出せた輝き」があると思うから、あれはあれでいい。今は今でいい。っていう感じですかね。
 
Q:リレコーディングにあたって、Halさんのアレンジ面ではどのような点を意識していましたか?
 
Hal:元々の曲はキーボードのみでライヴで再現する形だった為かあんまり音が重なっていないと思うんですね。で、それを僕らのライヴでやるにあたってはキーボードと同期音源と両方鳴らせる状態なので、やっているうちに音を足していったんですよ。昔の曲だけ同期なしで音が薄くなっちゃうのはおかしいので。そうするとどんどんアレンジが派手になり、僕だったらこうするなっていうシンフォニック感がどんどん増されていって。なので、今回のレコーディングも、その過去数年間と同様のアレンジを使ったというだけですね。僕の考える最強のシンフォニック・メロスピってのを意識している感じです。キーボードだけだとどうしたって手が足りないから音が薄くなってしまうじゃないですか、それを弦楽器や管楽器がいるアレンジにしたかったんです。
 
Q:Shibukiさんの軽やかでキレのあるドラミングも作風に合っているように感じます。
 
Hal:そうですね、彼はテンポの速い曲が得意でもあるので、この曲でもまだまだ余裕で叩き切ってくれました。ギター・ソロ部分には、元々用意したデモとは変えて、DRAGONFORCEのようなブラストも入れてくれて、より勢いがついたと思います。さっき話した通り、本当に急ぎで作った曲なので、ドラム・レコーディングまで時間がなく大変だったとは思います(笑)。
 
Q:今回は後ろ2曲がクリスマス・ソングのカヴァーとなっているようですね。元々クリスマスがお好きなのですか?
 
Hal:悪魔の設定なのにね(笑)。
 
Michal:(笑)、 Michal(ミカル)というスペルはどうしても「マイケル」と誤読されることが多いのですが、大本は大天使ミカエルからきていて。そのMichaelのeを取ったものなんですけど…。天使の名前って○○エルじゃないですか、ザドキエル、ウリエル、ガブリエル、ザビエル、。その「エル」は神を意味していて、私は元々カトリックの学校に通っていて、聖書も強制的に読まなければいけないわけで。その頃から悪魔って本当に絶対悪なのかなという疑問がすごくあって。そういう下地があった中でたまたまメタルに興味を持ち、アンチクライストだったり反宗教的面があることを知った時にちょっと運命を感じたんですよ。また、ネットもなかった時代なので、海外から天使や悪魔に関する本を取り寄せたり、あんまり買う人いないだろうなって翻訳書とかを読んだりしていて。そうして色々な知識が積まれていく中で、自分は良い悪魔なんじゃないかとも思うようになって(笑)。
 
Q:良い悪魔ですか…。
 
Michal:そうそう。天使の方がやっぱり厳しいんですよ。裁きを下す存在だから。悪魔は優しく人間にすり寄っていくほうだと思うから。『俺たちは悪魔だ』って言ってる人たちは本当は全員良い人だと思う(笑)。っていうのもありつつで、悪魔が聖歌を歌うことは別に悪いことではないと思うし、学校では聖歌隊にも所属して日々聖歌も歌っていたから。
 
Q:技術的にクリスマス・ソングとの相性が良いと。
 
Michal:むしろポップスなどを歌った経験がない中でメタルを始めたので…。それで『Aberration: "Pt"』の制作中(2015年頃)に、「私こういう歌い方もできるんだけど」って録音したのが、本作の5曲目に収録されている「Angels We Have Heard on High」だったり(2015年のものはYouTubeに公開済み)、それ自体が『ArcheoNyx』でのオペラティックな歌唱のきっかけであったりもしますね。
 
Q:なるほど。今回の収録も自然な流れなのですね。
 
Michal:十数年も毎日聖歌を歌い、11月頃から学校中がそわそわしだすような生活だったから根付いちゃってるんですよね。聖歌や讃美歌ありきの自分みたいなところがあるから、好き嫌いよりも自分の中の一部のような感じですね。
 
Hal:あとは『ArcheoNyx』のオペラティックな歌唱がちゃんと評価されたことも大きいよね。ターヤとか、それこそJUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードもクリスマス・アルバムを出しているから、そういうアプローチはどうかなって話はしていたんだけど。それをMichalのソロ活動とするのは、ANCIENT MYTHとしては時期尚早だと思うので、今回のような作品に収録できてよかったなと。時期的にも。
 
Q:ちなみにこのクリスマス・カヴァーで聴けるヴァイオリンは生音ですか?
 
Hal:今回も全曲生音ですよ。
 
Q:本当ですか?
 
Hal:うん。混ぜてるけど。全曲ヴァイオリンとヴィオラとチェロは生で録って、それにこっちのシンセというか打ち込みの音も混ざっています。
 
Q:聴こえ方として分厚い印象を受けますね。
 
Hal:是非生音の温かさと分厚さを感じてください。ディスクユニオンで購入してくれた方は、「Ambrosian Blood」のオーケストラ・ヴァージョン収録のCD-Rが特典で付きます。こちらでも生弦の良さをばっちり感じてもらえるかと思いますよ。
 
Michal:とくと味わうが良い!とくと味わうが良い!
 
Q:いつもありがとうございます!
前作『ArcheoNyx』の2枚組仕様に収録されていたオーケストラ・アレンジみたいな感じになるのでしょうか?
 
Hal:そうですね。さらに今回は歌メロの部分も入れてますよ。
 
Q:それはとても嬉しい特典ですね。付属のDVDについてもお聞きしたいのですが、
ライヴ映像はいつ頃の演奏になるのでしょうか?
 
Hal:これは8月1日ですね。『ArcheoNyx』をリリースしてすぐのライヴを撮影したものです。
 
Q:では今作は、ライヴ作品としても楽しめるし、クリスマス・アルバムとしても楽しめるし、ANCIENT MYTHの最新のサウンドとしても楽しめる。様々なバンドの魅力が堪能できる作品ということですね。
 
Michal:幕ノ内弁当です。幕ノ内弁当。
 
Q:(笑)、魅力の幕ノ内弁当ですね。最後に何かメッセージなど、今年ももう年末になるので、今年聴いたメロパワ、メロスピで印象に残っている作品があれば教えてほしいです。
 
Michal:私はSUNRISEの『Equilibria』ですね。めちゃくちゃ良かった。ウクライナのバンドなんですけど、古き良きSONATA ARCTICAなんですよ。SONATAの良さをずっとやってくれているバンドって感じなの。
 
Q:Halさんはありますか?
 
Hal:AGNESの『Hegemony Shift』がよかったです。韓国人マルチ・プレイヤーのソロ・プロジェクトなのですが、ファビオ・リオーネに似た声質でとてもよかったです。
 
Q:今回はありがとうございました。今後の新曲も期待してます。
 
Hal:まだなんも決まってないですが、まあどんどん作っていくはずなので。来年も頑張ります!
 
Q:来年はさっそく吉祥寺でワンマンがあるみたいなので期待大ですね!Michalさんの「Noir」zineも期待しています!
 
Michal:ありがとうございます!ファンジンのNoirは、2022年1月末発売予定です。これからも国内のメタル・シーンの盛り上げに貢献できたらいいなと思っています!みなさん応援よろしくお願いします!
 
ア-ティスト:ANCIENT MYTH (エンシェント・ミス)
タイトル:Ambrosian Blood (アンブロージアン・ブラッド)
発売日: 2021年12月15日(水)
レ-ベル: Repentless (リペントレス)
フォーマット:CD+DVD
規格番号:RETS-0029
税抜価格¥3,500円 / 税込価格3,850円
 
 
<収録曲>   
1. Ambrosian Blood   
2. Forbidden Blaze   
3. Astrolabe in Your Heart (Re-Recording Version)   
4. O Holy Night   
5. Angels We Have Heard on High   
   
   
・Music Video “Chaos to Infinity”   
・Music Video “River of Oblivion”   
・Music Video “Chaos to Infinity”メイキング映像   
・Music Video “River of Oblivion”メイキング映像   
・ライヴ映像 (2021年8月1日公演より)   
 “Chaos to Infinity”   
 “Crimson Stigmata”   
 “Meteor Hunter”   
 “River of Oblivion”   
 
■「Ambrosian Blood」trailer


ANCIENT MYTH are
Michal – Vocal
Kohei – Guitar
Shibuki – Drums
Hal – Keyboards
 
Guest Musician
Mats (Ba:ex-Elüpia)
 
ANCIENT MYTH official site
 
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