2023.04.06
Cyclone、ex HELLENのギタリスト、清水保光が待望のソロ・アルバムをリリースする。
いわゆる“様式美”のイメージが強いギタリストだが、Planet EarthやPlanet Dazzleなどでの活動でもわかる通り、その音楽の指向性は幅広い。今回はPlanet Earthでの盟友、吉越由美(Vo)とタッグを組んでの制作ということで、清水と吉越の両者に話しを聞いた。
>『Wind From The East』(2015年1st)と『Burning Spirit』(2016年2nd)に続くソロ・アルバムになりますが、前作より期間が空いたリリースになりましたね。この間の活動を教えてください。
清水:2016年に『Burning Spirit』をリリースした頃は、声優さんのバックを務めたりしていましたが、『Burning Spirit』がこれ以上ないメンバーで制作できたので、やり尽くした感はあったんです。その後、個人的な事情やコロナ禍もあって、音楽の制作活動からは全く離れていました。
>本作に取り組みはじめたのはいつ頃からでしょうか?
清水:2021年になってようやく個人的な事情も終了して、これからどうしていこうか考えていた矢先に、過去の作品の再発のお話し(『Cyclone / Rising Sun』、『清水 保光 / Wind from the East 2021』、『Planet Dazzle / Survive』)をいただいて、それからとんとん拍子に事が運ぶようになったんです。
2022年9月の小野正利さんを迎えての洋楽カヴァーのライヴが、自分の中での「清水保光 再始動」でした。そのライヴ後に、今後の活動について少し考えてみたのが始まりですかね。
いろいろなことを考え迷った末に、バンド形式ではなくソロで活動していこうという結論に至りました。
>吉越さんが参加されるに至った経緯を教えてください。吉越さんと(SNSを通じての)25年振りの再会と、Planet Earthの膨大なデモ・アーカイヴからの再発見という偶然が重なったことが大きいですか?
清水:そうですね。アーカイヴを探っていたときに、Planet Earthのデモから再発見した曲があったんです。それが「Lonely Eyes」で、イントロからサビくらいまでの断片だったんですけどね。
ちょうど同じタイミングで、吉越から「今度、レコ発ライヴがあるんですがゲスト出演していただけますか?」と連絡があったんです。とても嬉しいお誘いだったんですけど、よそ様のレコ発でPlanet Earthの楽曲を演奏するのもどうかと思いお断りしたんですよ。
でもこんなに偶然が重なることなんてなかなかないので、自分なりに改めて考えて吉越にこちらから連絡したんです。「こんなプランがあるんだけど、ゲスト参加してくれない?」って。自分からすると、もの凄くタイミングが良く繋がった感じなんです。
>このオファーを受けたとき、吉越さんはどのように感じましたか?
吉越:また一緒に活動するなんて思ってもみなかったので、とてもビックリしました(笑)。
清水:様々な誤解もあって、自分も一緒にやるなんて思ってもみなくて(笑)。Planet Earthを一緒にやってたのが1992~1994年頃で、93年に1stアルバムの『BIG BANG』リリース後に割と早いスタンスで2ndアルバムのレコーディングも既に終了していて、3rdアルバムまでの話しは進んでたんです。2nd完成後に吉越が脱退するのですが、結局作品としては2ndはリリースされませんでしたが、当時100曲くらいのアイデアがあって、その中の1曲が「Lonely Eyes」。この曲を埋もらせておくのはもったいないと思ったんです。
吉越:これは私の個人的な話しなんですけど、「カテゴライズされる」というか「型にはめられる」のが苦手でして、Planet Earthはハードロック/ヘヴィメタル路線のバンドだったので、皆んなとのギャップを埋めようと努力したのですが…。
清水:今回はこれまでとは違う要素をもったヴォーカリストと一緒にやりたかったんです。なにしろ前作がNOVさん (AION、Volcano)と下山武徳さん(SARBER TIGER) という、日本のハードロック界を代表するようなヴォーカリストだったので。
吉越:今回のお話しをいただいた際に、「Lonely Eyes」と「Galaxy Paradise」のデモが送られてきたんです。このデモ聴いた時に、今の自分で表現ができると思えたんですよ。Planet Earthでは表現しきれなかった歌詞も含めて。それにPlanet Earthはすぐに脱退してしまったので、今回のソロアルバムへの参加要請がとてもありがたかったですね。
清水:また自分の作るメロディラインは、男性が歌うには少々キーが高いようで、以前、Cyclone時代にAngie.さん(NOVELA/SCHEHERAZAD/NUOVO IMMIGRATO)に指摘を受けたことがあったので、女性ヴォーカルというのが頭にあったこともありますね。
それに今年はPlanet Earthのデビューから30周年という節目でもあり、自分がやり残した曲を形にしたかったというのもあります。
>今回は様式美ハードロック路線ではなく、メロディアスな大人のロックといったような趣のサウンドですね。
清水:まず本作『RE-AWAKE』の制作を決めた時に、様式美路線は全く考えていませんでした。前作でやり切った感があって、今やる必要性を感じなかったから。そこで自分のルーツに立ち返り、日本人の琴線に触れるような日本語の音楽をやりたいと思ったんです。
>それはそれぞれの音楽的なルーツが反映されたと考えられますか?
清水:もちろんRAINBOWやMSGなどのハードロック・バンドが僕の骨格ですが、内臓や血管の部分、そこを辿り着くといわゆる「芸能ロック」ですかね。チャーさん、原田真二さん、世良公則さんとか。バンドでいうとSHŌGUNや歌謡曲時代のLAZY。海外のアーティストだとCHICAGOやビリー・ジョエル辺り。ホーンやキーボードが入っているポップ・ロックが好きなんですよ。
吉越:私はニーナ・シモンが好きですね。ファッション・アイコンとしてはシド・ヴィシャスかな。Planet Earthの時に声帯の先生にみてもらう機会があったんですけど、「(声の出し方は)間違っているけど、これでいったほうがいい」 って言われました(笑)。直してしまうと声も個性も変わってしまうので、レッスンも不要みたいな。
清水:吉越の場合、誰かに憧れたり影響を受けて歌うのではなく、自己表現の一つがヴォーカルなんだと思います。だから声の出し方が間違っていたとしても、そのまま進んでいったことが良かったんじゃないかな。でもそれがわかったのは、離れたからなんです。一緒にやってた時は、かなりストレスもありましたね(苦笑)。
>他のメンバーの参加の経緯を教えてください。
清水:歌もののアルバムにしたかったので、ヴォーカルに関しては全て吉越に任せました。彼女以外にゲスト・ヴォーカルを入れてしまうとブレてしまうので、最初から考えていませんでした。ベースの大舘君は、Cycloneで10年以上一緒にプレイしています。アンサンブルがしっかりしていて、僕が長きに渡り信頼しているベーシストなんです。ドラムの石川君はSilexというバンドのメンバーで、元々音楽専門学校での教え子なんです。若手を使いたかったので、参加してもらいました。プログラミングの鶴間君はライヴで共演したことがありつつも、かれこれ10年くらい疎遠だったんです。デモを送ってみたら是非と即決で、しかもPlanet Earth好きだったという(笑)。僕のリクエストを何倍にも素敵にして返してくれるんですよ。キーボードのReanne君は大舘君の紹介で、元々別のプロジェクトとして動いていた「雷音」チームに関わってもらっていたメンバーです。
>構想から実際の作品が完成するまで、かなり早く進行した印象ですね?
清水:小野さんとのライヴが2022年の9月中旬で、吉越と話しをしたのが10月上旬だったんで、かなりスムーズに事が運びましたね。でもそれは、メジャーで経験したことががかなり大きいです。何かが遅れると、連鎖していろいろなものがずれていく。ジャケット制作やプロモーションなど、それぞれのセクションのスタッフと情報共有することの大切さを学んだといいますか、どうしたら物事がうまく進むのか、勉強させてもらいました。
>今回は曲の必然性を考え、2つのチームで楽曲を仕上げるというプロセスを踏んでいますが、どのように振り分けたのでしょうか?
清水:バンドでプレイするのがしっくりくるか否かですかね。それをライヴで一緒に演奏しているメンバーでやれば、意思の疎通が早くて良いものができると思いました。
>制作のプロセスが異なることの問題点はありませんでしたか?
清水:吉越が歌うので、2つのチームで進行しても大丈夫というイメージはあったんです。ただ質感が異なることで「ヴォーカルのレコーディングが大変じゃないだろうか」とか「歌詞が変わってしまわないだろうか」とか心配ではありました。なので取り合えず吉越のヴォーカルを仕上げてから、アルバムの整合性を考えて質感を近付けるという作業をやったんです。
吉越:歌入れはとても早く進行しまして…3日間で6曲かな。クリックは使わずに、ドラムを聴きながら歌いました。もしかしたらズレてるところもあったかもしれないですけど(笑)。
清水:レコ―ディンの現場では良いんですけど、持ち帰ってミックスの時に頭を抱えるという(笑)。
>タイトルや歌詞はどのように進行しましたか?
吉越:作詞にかかわるヒントが欲しかったので、結構いろいろと聞いたかもしれないですね。ただ細かいリクエストもなかったし、ヴォーカルのメロディラインもある程度できていたので、作業自体はやりやすかったです。
清水:Planet Earth時代の反省から、吉越に歌詞のイメージとタイトルを先に伝えたんです。
吉越:私の場合、曲を聴いたら映像が浮かぶんですよ。それを言葉にしていくので、その辺りもかなり自由度が高くてやりやすかったんだと思います。
>それでは収録曲について教えてください。1曲目の「Re-Awake」は壮大なイントロダクションといった趣のインストですね。
清水:前作『Wind From The East』の一節のメロディをセルフ・オマージュしているんです。あの曲でインストはもう打ち止めかな?とも思ったんですけど、この「Re-Awake」で再生するというストーリーですね。ただオープニングの曲なので、長々とソロを弾いても意味がない。このアルバムのアナウンス的は位置付けにしたかったんです。
>続く2曲目の「Blue Sky」は重厚なハードロック・チューンで、清水さんらしい楽曲だと思いました。JUDAS PRIESTの「Hellion ~ Electric Eye」のような流れですね。
清水:まさに狙いや位置付けはそんなイメージです。リズム的にもテンポ的にも1曲目になる曲だと思っていました。あとホーン・セクションが入っていることで、このアルバムの方向性を打ち出したかったというのもあります。
>印象深いフレーズがコンパクトにまとまっているようにも思います。
清水:そうですね。昨今のリスナー事情も踏まえて、ギターソロも最小限に抑えるとなど考えました。あと吉越の歌のもつ力が強いので、薄っぺらいソロを弾くと全部持っていかれちゃう。だからメロディを大切に弾かないとイーヴンにならない。
>エンディングのエネルギッシュなシャウトも印象的ですね。
吉越:私自身は自由に歌うのが好きなので、結構アドリブ
が多いんです。なので「使えるところだけ使って」といった感じなので、完成してから「こうなったんだ」って思いますね(笑)。
>3曲目の「トドメ ノ イチゲキ」は、結構ヘヴィなナンバーですね。ヴォーカル・エフェクトもハマっていますが、どのようにアレンジしていったのですか?
清水:この曲は吉越が一番ハマる曲だと思ってました。吉越の個性が存分に発揮されていると思います。ヴォーカル・エフェクトも印象的に仕上がっているのではと思います。
>4曲目の「Galaxy Paradise」では、ブルージーなフレーズが盛り込まれいますね。
清水:この曲は吉越に一番合わせにいった曲です。個人的には好きだけど、昔はこの手の曲は演らなかったんです。自分のギター・スタイルではなかったから。でもたぶん吉越が好きなタイプの曲だろうと思ったので、一番初めに渡したデモに選んだというのもあります。
吉越:ボトルネックのソロにビックリしました。昔はこんな曲演らなかったのにとも思ったりして(笑)。
>ダイナミックなギタープレイと、変幻自在なヴォーカルが素晴らしいと思いました。
吉越:歌詞もすごく早く仕上がりました。個人的にはたぶん一番ノって歌ってたかもしれないです(笑)。
>先行配信となった5曲目の「ただそれだけで」は、ギターとヴォーカルの哀メロが際立つ、極上のメロディアス・ハード・ナンバーですね。
清水:海外のビッグネームのバンドは、哀メロの曲を必ず持っているんですよ。JOURNEYしかりFOREIGNERしかりTOTOしかり。自分たち世代の慣れ親しんだ音楽には、「間」があるんですよ。今回はその「間」を大事にしたいと思っていたんですね。歌詞、メロディ、楽曲、それぞれの「間」を作ってあげる。そうすると、こういった哀メロの曲に辿り着くという。またこういった音楽を継承していきたいというのもありました。吉越も昔は「間」を埋めるギターが嫌いと言ってましたし。
吉越:私、そんなこと言ったっけ?(笑)
清水:当時の雑誌のインタビューで、そう答えてたんです。今だったらそんな吉越に応えることができるんじゃないかと思ってたりします。
>6曲目の「『さよなら』という始まりの愛」は、パワフルなギター・サウンドと大胆なキーボード・アレンジが印象的です。
清水:ホーン・セクションが欲しかったんです。大袈裟にいうと、EARTH & FIREみたいな(笑)。そこにハードロック・テイストを入れるような感じですかね。そこにドンピシャなブラック・ミュージックっぽいフィーリングのヴォーカルを入れるのではなく、吉越の個性を入れたらおもしろいものができるというイメージはありました。
>哀メロのバラードの7曲目「Lonely Eyes」は、艶っぽいヴォーカルが秀逸ですね。Planet Earthのデモ・アーカイヴから再発見された運命的なナンバーと聞きました。
清水:月9やカメリア・ダイアモンドのイメージです(笑)。
吉越:歌詞はほとんど当時のままで、ちょっと書き直したくらいなんですよ。女性的な視点で書いたかもしれませんが、ちょっと覚えてなくて(苦笑)。自然に歌ったらこうなったというのが正直なところですね。
清水:吉越の面白いところは、男性も女性も中世的なところも表現できるんですよ。あとは「ギターソロ前にサックスを入れて欲しい」と鶴間君に伝えたら、抜群に良いものがあがってきたんです。
>8曲目の「Nomad」は広大な大地を想起させるインストですね。素朴なアレンジと緻密に練られた楽器編成が郷愁を誘うような楽曲です。
清水:本編と「雷音」をつなぐ曲なんですけど、「Nomad = 遊牧民」なので、「清水はまた旅にでますよ」というストーリーですね。ここでも鶴間君にいろいろとお願いをしまして(笑)、こういったサウンドになりました。
>ジャケットのイメージとも重なりますね。
清水:ジャケットも同時進行だったんですけど、最後にこの曲ができて、最終的にはジャケットにも反映させることができたんです。もともとは朝(=太陽)と夜(=月)が入れ替わる瞬間、言い換えると自分の中の様式美スタイルとロックスタイルの入れ替わりを表現したかったんです。ただこの2つを現すのが非常に難しくて。「Nomad」が完成した時に、どちらかを地上にしよう…ナスカの地上絵みたいなものも…とかのアイデアが出た感じですね。ジャケット制作担当様にはイメージ通りに仕上げてくれて感謝です。
>9曲目の「雷音(アルバム・ヴァージョン)」は、パワフルでダイナミックなインストですね。
清水;この曲はボーナス・トラックのような位置付けですね。ちょうど別のプロジェクトでプロレスの入場テーマ曲を手掛けていたんですけど、アルバムのリリースが決まったので、できるだけ多くの人に聞いてもらいたいと思って収録することにしました。
>センダイガールズプロレスリング:岩田美香選手の公式テーマ曲として使用されていますが、その経緯を教えてください。
清水:1993年くらいからプロレスのテーマ曲をたくさん手掛けたことがあったんです。自分のメインギターのエンドースとメンテナンスをしてくれるESPの担当氏から、「センダイガールズプロレスリングを観に行きませんか?」とお誘いを受けまして、実際に行ってみんたんです。そこで岩田選手のファイトスタイルを見て「岩田選手の入場テーマ曲を作りたい」と思っちゃったんです。プロレスを観戦した翌日には曲が完成していました(笑)。ただアルバム収録あたり、ベースは大舘君に弾き直してもらいました。
>5/7(日)には新宿Crawdaddy Clubでレコ発があります。どのようなライヴになりそうですか?
吉越:楽しみでしかありません(笑)。
清水:只今絶賛準備中です(笑)。セットリストも決まりました。今回レコーディングしたものを、いかにライヴで聴かせることができるかが課題ですね。長井VAL一郎さんがドラムなんですが、これまた「お久しぶり!」なんで楽しみです。また楽曲だけでなくMCでもいろんな話をしたいので楽しんでもらいたいと思っています。
>最後にメッセージをお願いします。
吉越:皆さんの宇宙と繋がりたいです(笑)。音楽ジャンルの違いや30年間という年月を旅するような、作品とライヴを感謝を込めて皆様にお届けします。
清水:自分自身が今やりたい音楽を詰め込んだので、もしかしたら様式美ファンの方は裏切られたと感じられるかもしれないですけど、幅広い意味でロックと解釈して聴いていただければ嬉しいですね。
【ディスクユニオン・オリジナル特典:CD-R】
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