■1994年のデビュー以来、そのエモーショナルな歌詞とパワフルなヴォーカルでアメリカの音楽シーンで確固たる存在感を放っているシンガー・ソングライター、ポーラ・コール。セカンド・アルバム『ディス・ファイア』で1997年グラミー賞の最優秀新人賞を受賞、「I Don’t Want To Wait」のヒットをはじめ、『AMEN』など数々の名盤を世に送り出してきた彼女。ロックからポップス、ブルースやジャズ、そしてソウル、ゴスペル、アメリカーナまで、様々な音楽スタイルを取り入れながら、自身の、そして彼女を取り巻く人々の人生を見つめ、歌に綴り続けている。そのポーラが新たなアルバムを届けてくれた。
■彼女にとって通算11作目となるスタジオ・アルバム『AMERICAN QUILT』は、”ポーラ・コール流グレイト・アメリカン・ソングブック“とも呼べそうな作品である。アメリカ史の中で脈々と受け継がれてきたルーツ・ミュージックやスタンダード・ナンバーを通し、その文化を織りなしてきた人々や物語を彼女ならではの視点で掘り起こしているのだ。例えば、18世紀のマウンテン・バラードである「Wayfaring Strangers」は、”厭世的な旅人たちにとっての希望の歌“であり、”苦しみ、心敗れた者たちがヨルダン川の彼方にある世界と愛する者たちと再び会えることを想う“曲であるとポーラは語っている。またアルバムで最も心揺さぶられる曲の一つである「Hidden In Plain Sight」は彼女がパンデミックの最中に作ったオリジナル作品である。スピリチュアルなアカペラ「Steal Away」で静かに始まるこの曲は、リズミックな流れに連なり、聴くものの感情を盛り上げていく感動的な作品だ。この他にも、「Shenandoah」や「Nobody Knows You(When You’re Down And Out)」、「God’s Gonna Cut You Down」など、長きにわたり人々に愛されてきた名曲に新たな音楽的解釈を加えたものも収録されている。