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フランス東部ミュルーズを拠点に活動し、徹底した匿名性とナンセンスな虚構を撒き散らしたカルト・プロジェクト、ICH BIN。80年代から暗躍するOGROBことSEBASTIEN BORGOら4名によるDIY精神を核にミニマルなエレクトロニクスとパンクの衝動を衝突させた仏地下シーンの異端です。
もともとは90年代にカセットテープで放たれ、2006年に初アナログ化されるも瞬く間に市場から姿を消した伝説の音源。というのも嘘か誠か、「1988年に、コルシカ島の秘密の石油化学工場の倉庫作業員4人が海岸に座礁した船から韓国製のシンセサイザーを発見したことで秘密裏に結成された」という荒唐無稽な"偽"のバイオグラフィを背負ったことで2006年以来一時はカルト盤化、とはいえ実態もほとんどそうと信じて疑うことのできそうにないチープなリズムマシンと無機質なヴォーカルが交錯する年代不明録音(おそらくは00年代)の重要作です。フレンチ・アンダーグラウンドらしい冷徹かつアイロニカルな世界観を体現しています。
強烈かつチープなEBMのリズムが脈打つ"A.I.N.Z."、かつての共産圏のエレクトロ・エアロビクス音源のようなシンプルな反復が狂気を孕む"BODY BUILDING"、社会的な不安を毒気たっぷりにコラージュした"DANGER"など、本能を刺激するミニマル・パンク全7曲。LSDを服用したCOILのようにワイルドで、KRAFTWERKのように硬直的で、SUICIDEのように削ぎ落とされている、との論評は、たとえ彼らのバイオグラフィが虚構であっても真実を持って迫ります。
録音当時の熱量をそのまま真空パックしたようなささくれ立った音像が胸を掻きむしる傑作。パンクとニュー・ウェイヴの狭間を漂うこの不朽の記録は今こそ聴かれるべき切迫した情景を描き出しています。
ICH BIN