【インタビュー】OLEDICKFOGGY ポップな感じの裏側には...

  • PUNK
  • ニュース

2019.12.19

  • LINE

  • メール


ポップな感じの裏側には…

“ラスティック・ストンプ”そのものの楽器編成でありながら、音楽性は常にその枠を軽々と飛び越え、リリース毎に新しいバンド像を提示し続けるOLEDICKFOGGY。2018年の意欲作『Gerato』から1年9ヵ月ぶりのリリースとなる新作ミニアルバムは、なんとタイトルが『POPs』。幅を広げ続けるバンドにはふさわしいタイトルかも知れないと思いつつ、伊藤雄和(ヴォーカル、マンドリン他)、スージー(ギター)、TAKE(ベース)、四條未来(バンジョー)、大川順堂(ドラム)、yossuxi(アコーディオン、キーボード)の6人に改めて話を聞いた。
Interview:大越よしはる
Photo:Chabo


ワゴンセールにありそうなジャケットでやりたかった

―前作アルバム『Gerato』から1年9ヵ月ぶりのリリース。ミニアルバムは久々、3枚目だったと思うんですけど、今回何故このタイミングでミニアルバムということになったんでしょうか?

伊藤雄和:去年『Gerato』の全国縦断78会場ツアーをやって、それでファイナルは日比谷野音ワンマン。それにより、とても忙しかったので、今年はちょっとユルくやろうって言って。でも1年間ライヴだけやっていると、ちょっと、だらけますね。

―だらけますか。

四條未来:演奏出来る曲をずっとライブでやっていくこと、の作業になっちゃうんで。

―ああ。

四條:新しいものを作るっていうことに、挑戦していくっていう作業が…。

―なるほど。で、新作なんですけど…ズバリ『POPs』。大胆なタイトルだと思うんですけど、このタイトルに込められたモノは?

伊藤
:付けたいと思ってたんですよ、意味なく。…意味なくっていうか、茶化すつもりで、ポップスを。でも、その“POPs”の頭文字があって、Pはこの単語、Oはこう…実はこうなんだよっていう“隠し要素”が出来たらいいな、と思って調べてたんですけど、POPsって、検索すると…。

(スマホ画面を見せる)

―“残留性有機汚染物質”!…『Gerato』もだったけど、攻めたタイトルですね。

伊藤
:ああ、Jアラートね(笑)。

―で、ジャケットのデザインが、わたせせいぞう風で。

伊藤
:うちのデザイナーは、凄い研究したって言ってましたよ。

―コレはメンバーからの注文で?

伊藤
:僕がどうしてもこのテイストでやりたかった。『Gerato』の時もやりたかったんですけど。ワゴンセールにありそうなジャケットで、やりたかった。でもそのポップな感じの裏側には…とかいう感じで。

―ああ、奥にあるコレ…きのこ雲なんですね!



雨の予定ではなかったMV
 
―これまでの作品に較べて、非常に立体的な音作りになっていると感じたんですけど。今回は録音とミックスとマスタリングを全部、いろはスタジオの林田涼太さんが一人で手掛けてますね。そのことと何か関係が?

四條:絶対にあると思います!

大川順堂:多分間違いなくあります。

伊藤:今までのマスタリングの人に頼もうとしたんですけど、連絡取れなくて。亡くなってたっていう…。

―そうなんですか!

大川:9月…10月だっけ?

伊藤:11月に、連絡取れないってなって。

大川:で、林田さんが、自分で(マスタリングも)やりますよって。

四條:もう、林田さんとはずっと一緒にやらせてもらってるんで。こっちの傾向とか好き嫌いとか、それは全部把握してくださってるので。アドバイスとかもいただけるんで。最初から最後まで手掛けていただけるとやっぱり、素晴らしい音になると思います。

大川:奥行き出したがるよね、マスタリングの時とか。

―実際凄く奥行きのある音になってますよね。

四條:そうですよね。

スージー:もうメンバーです(笑)。

―7人目のメンバー的な。…で、1曲目「Grave New World」。「Grave New World」って、DISCHARGE…。

(一同笑)

―コレはやっぱりDISCHARGEが頭にあったんですか?


伊藤:全然なかったですけど(笑)。タイトル付ける時に、そうしようかって。

―歌詞には最初から“Grave New World”って言葉が入ってたワケですよね?

伊藤:入ってます。

―でもその時点ではタイトルとしては意識してなかった?

伊藤:この曲に関しては、「墓」って仮タイトルだったんです。

―歌詞のセンスが非常にユニークだと思ったんですけど。キーワードが“墓”。

伊藤:“君をセメタリー セメラレタリー”とか…。

―それですよね。歌詞カード見ながら聴いてると…“Cemetery”(=共同墓地)!

四條:ダジャレ(笑)。

―“この素晴らしき世界”を“墓場のリズムで”って…正直言って意味がわからなかったんですけど。“煌めくほどに葬られた”とかも。

伊藤:そういうもんです。上手く行ってるものほど腐りやすい。輝いてるものほどいいとされてるけど、ホントは…。

―ああ、なるほど。で、2曲目、「春を待つように」。切ない曲。6曲目の「日々がゆく」もそうなんですけど、“勇気”っていう言葉が出てきます。この歌詞でも「日々がゆく」でも、“勇気”っていう言葉は必ずしもポジティヴとか肯定的なモノではない、みたいな感じを受けるんですけど。

伊藤:そうですね。

―“わかりきった結末に 飛び込む勇気が欲しくて”…むしろネガティヴな状況に飛び込む勇気、みたいな。

伊藤:その通りです。要らないですよね、ネガティヴなところに飛び込む勇気って、普通は。でも、行かなきゃいけない場面もあって。

―あと、前作でも聴かれる、ギターとアコーディオンが並走するユニゾン…。

スージー:あれはマンドリンとユニゾンで弾いてるんですけど…

―あっ、すいません!

スージー:あれいいですよね。

―マンドリンに限らず、最近のOLEDICKFOGGYの特徴的なアレンジだと思うんですよ、弦楽器とアコーディオンのユニゾン。

スージー:アコーディオンだけよりいい。

Yossuxi:キラキラ度が増す感じがする、うん。

―この曲はMVになってるんですけど。寒そうでしたね。

伊藤:寒かったですよ。アレ、雨の予定じゃなかったんですよ。晴れだって言われてたから。

―狙って雨の日に撮ったんじゃなかったんですか。

伊藤:逆に結果、凄いイイ感じに。雨だったからなんですけど。

―そうですよね。特に寒そうに見えるのがyossuxiさんですけど。

yossuxi:(毛皮の)キャップがあるから、見た目もね。寒かったよね。

スージー:ずーっと雨が降ってたよね。

―大変じゃなかったですか?

四條:スケボーが雨だと危険なんですよ。

伊藤:禁止なんじゃないですか?…雨だと多分、滑っちゃいけない。滑る人いないだろうけど。凄い危なかったですよ。でもけっこうみんな、ちゃんと滑ってた。

OLEDICKFOGGY 「春を待つように」

監督 川口潤 2019
Full Version 

 
―スケボーって、ミュージシャンが一番やっちゃいけない趣味ですよね…。

伊藤:昔、順堂、折りましたからね、ライヴ前に。

大川:ライヴの当日に折りましたね…。

伊藤:片手でやってましたね。

―腕だったんですか?

大川:左手首。ライヴは休まなかったけど、仕事は全部休んだ(笑)。

伊藤:でも、あの日のライヴは、なんか、良かった。気持ちが…。

大川:だってやるしかねえんだもん(笑)。

伊藤:凄くいい、攻めたライヴ。

四條:片手の方がいいってことはないからね!(笑)

TAKE:あの時、(ドラムは)スタンディングだっけ?

大川:スタンディングだったんだけど、その日は流石に…(座って叩いた)。

四條:俺が入った頃だから、11~12年前ですかね。

―3曲目「WHY」。もの凄い、変わったイントロですけど…。

スージー:あれは、ギターじゃないんですよ。ピンっていう、タイの民族楽器を、伊藤が弾いてるんです。エレキ三味線、みたいな。

―合ってるのか外れてるのかよくわからないイントロ。

スージー:フレットが、適当に付けてある。

大川:斜めったりしてる。

伊藤:合わないです、チューニングが。

四條:一番多く使う音のフレットを押さえて、そこに合わせてチューニングして。もう絶対にぴったりのチューニングにならないんで。適当に作られた楽器なんで(笑)。

―ピンって初めて聞きましたけど。

四條:昨年のツアー中に使い始めました。

伊藤:ライヴでも弾いてましたね。

―チューニングが合わせられない、そんなモノをライヴで使えるのかと…。

スージー:一応ジャック入るんで、ライヴで使えます。

―ジャックが入るか入らないか以前に、ちゃんと音が出るのかっていうのが(笑)。

大川:うるさい音出てたよね(笑)

―タイではポピュラーなんですか?

伊藤:ポピュラーですよ、はい。三味線みたいな。

―この曲で一番印象的なのは“当たり前の 日常はいつか 当たり前に 消えてしまうのさ”っていう歌詞なんですけど。

伊藤:2番の“托鉢の 行列の後を 野犬が 追いかけている”っていうのが、タイの情景なんですけど。それってけっこう日常で、朝見たりするから、その日常にかけて、タイ人にしゃべってもらったんですけど。

―アレ、タイ語なんですか。

伊藤:そうです。ホントに日常会話みたいなことを言ってもらって。そう、当たり前のことが、このままじゃなくなってしまう…。

―今の日本の状況を考えながら聴いてたんですけど。昔当たり前だったことがどんどん当たり前じゃなくなっていくっていう。その点では今の社会を撃つ詞じゃないかと。

伊藤:そんなことはないんですけど…(苦笑)。

―特に社会的な歌詞を書こうと思ったワケではない?

伊藤:思ってないですけど(苦笑)。

―すいません、ちょっと深読みでした。もう少しお付き合いください…。

(一同笑)
 


そしてバンドはまた次の局面に

―4曲目、「レインコート」。メロウな感じから始まって、最後は叫びに転じるっていう、OLEDICKFOGGYの、あるいは伊藤さんの得意なパターンだと思うんですけど。歌詞が“少し旅に出よう”と言いながら“世界中を巡ろう”…コレは実際の旅そのものを歌ってるんじゃなくて、精神世界っていうか。

伊藤:完璧です。

四條:正解です(笑)。

―「未完の肖像」に近いタイプの歌詞だと思うんですけど。

伊藤:そうですね。ああいう、タイプなんですよ(笑)。

(一同笑)

―自分の中の自分との対話とか、精神の中の旅とか。インナートリップっていうか…。

伊藤:インナートリップ。そうですね。着想が昔からそうだっていうか。これは曲に乗せてなかっただけで、書きたかったやつなんですけど。目をつぶって瞼をグッと押すと、チカチカする…あれ、あの宇宙に、旅に出たかったんですよ。その間、レインコートを乾かしてるぐらいな。そういう、一瞬のトリップですね。

―その間に世界を巡ることも出来る、自分の中では。

伊藤:そうですね。危ない歌なんです。危ないっていうのはあれですよ、ドラッグ・ソングとかではなくて。ホントにこのチカチカを、ずっと見てたんですよ。それ、やり過ぎて、目を開けると…あの、網膜剥離になる前兆と呼ばれてる…。

―飛蚊症?

伊藤:ミジンコみたいなやつが…それが出るんですよね。

―現実問題として危ないですね(苦笑)。

伊藤:確かに(笑)。

―5曲目、「不毛な錯覚」。OLEDICKFOGGY流の歌謡曲というか。

伊藤:そうですね。

―コレは、別れの歌なんでしょうか?

伊藤:不毛な錯覚ですから。(相手は)いないかも知れないし。

―最初から。

伊藤:(笑)一応、インポテンツの歌なんですよ。最後の“If your got a spark of manhood”…あんたのち〇ぽが機能するならね、っていう意味なんですよ。それで“試してみるかい マイレディ”…何度でも立ち上がる歌ですね。ネバーギブアップの精神で。

四條:前向きな曲だね(笑)。

―そうか、“錆びつくMy トリガー”っていうのも、そういうことなんですね。

伊藤:気持ちはあるのに、発射出来ないっていうね、そういう…ダブルミーニングというか。

スージー:「雨上がりの夜空に」と一緒だ…。

―…で、この曲ですけど、スージーさんの、キメのある非常にカッコいいギター・ソロが聴けますね。

スージー:あの、デッデ~デレデ~♪って、泣きのギターというか。あれは、狙ってますね。

伊藤:あれしかなかった。

スージー:歌謡曲のソロって、そんなに派手なことしないじゃないですか。

―メロディのある間奏、としてのギター・ソロっていうか。

スージー:そうですね。

―6曲目「日々がゆく」。このミニアルバム、今回スージーさんが書いた曲は、「春を待つように」「レインコート」「日々がゆく」と、いずれもメロウな感じが前面に出ていると思うんですけど、コレは偶然ですか?

スージー:いや、メロウな曲を、作るの好きなんで…。

伊藤:フルアルバムで、3曲じゃなくて6曲とか7曲とか作ったら、出てくると思いますよ。別の曲が。

―歌詞に触れると…コレもOLEDICKFOGGYの楽曲に顕著な、葛藤を歌った歌詞。あるいは諦念と希望というか。非常に意味深長な歌詞だと思うんですけど。例えば“足並みを揃えていたつもりが そうじゃなくて 押し付けた嘘や我儘で 一人になった”…。

伊藤:それは…みんな気持ちは一緒だったはずなのに、そうじゃなかった、俺が押し付けてただけだった、そういうのってあるじゃないですか。それの繰り返しで、なんか、一人で、行ってしまった、みたいな、イメージですよ。

―バンドの一員が、いきなりこういう歌詞を出してくると、聴き手としてはギョッとするというか。

伊藤:ああ、そうか(苦笑)。

―確かに、人間関係全般に、そういう齟齬っていうのはありうる…。

伊藤:そう。

―そんな中でも、なけなしの希望みたいなモノが。“今夜もきっといつもの夜さ 特別な事なんて起きやしない”と繰り返した後に“今夜はきっと いつもと違う夜だから”っていう。

伊藤:そういう風に思うんスよ。「今日はイケるでしょ」って、いつも。でも、何も起きない(笑)。大体の人がそうでしょう。特に何も起きないッスよ。普通の生活してたら。「財布拾った」ぐらいで。

―(笑)最後に…今回のミニアルバムっていうのは、TAKEさんにとって現状では最後の参加作になるんでしょうか?

TAKE:…そうですね。

―無期限活動休止/療養っていうことなんですけど。ジストニア…。

TAKE:ええ、そうです。

―前回のインタヴューの時に、スラップが出来ないとおっしゃってたのがそれ?

TAKE:そうです、腕だけですね。

―脱退、ではないんですよね…?

TAKE:…何も考えてないです。

―(うっ)…よく養生してください!

TAKE:はい!


<好評発売中>                     

OLEDICKFOGGY
New Mini Album 「POPs」
2019/12/18 ON SALE
Diwphalanx Records / PX350 / 2,273 yen+Tax

Tracklist
1. Grave New World(2:59)
2. 春を待つように(4:42)MV曲
3. WHY(2:49)
4. レインコート(4:29)
5. 不毛な錯覚(4:06)
6. 日々がゆく(4:25)

<Live>                              
「OLEDICKFOGGY POPs TOUR 2020」
1月11日(土)静岡 沼津POCO(ワンマン)
1月19日(日)高知 CARAVAN SARY
1月25日(土)埼玉 熊谷HEAVEN'S ROCK VJ-1
1月26日(日)群馬 高崎CLUB FLEEZ(ワンマン)
2月01日(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK(ワンマン)
2月02日(日)宮城 仙台ENN 2ND(ワンマン)
2月08日(土)広島 CONQUEST(ワンマン)
2月09日(日)兵庫 神戸太陽と虎(ワンマン)
2月11日(祝)東京 新代田FEVER
2月15日(土)岡山 津山K2
2月16日(日)大阪 心斎橋CONPASS
2月22日(土)福岡 博多QUEBLICK(ワンマン)
2月23日(日)三重 四日市CLUB CHAOS(ワンマン)
3月01日(日)愛知 名古屋CLUB UP SET(ワンマン)
3月07日(土)大阪 心斎橋BRONZE(ワンマン)
3月21日(土)東京 新宿LOFT(ワンマン / TOUR FINAL)

<Link>                            
OLEDICKFOGGY 【Web / Twitter