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21年間封印されていた奇跡の名演
トスカニーニは当代の人気指揮者レオポルド・ストコフスキーを浅薄な音楽家として軽蔑していたそうですが、1940年にストコフスキーがNBC交響楽団を指揮し、さらに彼の奴隷である同楽団のメンバーの何人かがエキストラで他の指揮者の演奏会出演のためにトスカニーニのリハーサルを欠席するに至って彼の怒りは爆発し、NBC交響楽団の指揮を降板して何とストコフスキーをその後任指揮者に指名しました。そしてNBCのライバルであるCBSへ移籍寸前となったので、NBCは世界屈指のヴィルチュオーゾ・オーケストラであるフィラデルフィア管弦楽団との特別演奏会とレコーディングを提案し、彼はそれを受け入れました。1941年に行われた演奏会は大好評で、翌年にも再度演奏会が行われて双方併せて8曲が演奏されたが、その最初の曲が今回蘇刻したシューベルト/交響曲第8番"グレート"です。ところがそのテスト盤を聴いたトスカニーニは「録音が不満足だ」と言って激怒しました。その訳はトスカニーニがRCA独自の録音技術を完全に無視した事と、当時戦時下でレコード材質が悪かったためでしたが、彼は「戦争が終われば品質は回復する」との説得を頑として受け入れず、一連の録音は廃棄処分になってRCAの倉庫に埋葬されました。それから20年後、トスカニーニ追悼行事を企画していた放送局がこの埋葬音源に気付き、RCAは先ずシューベルトの"グレート"の修復を行い、1962年にLPレコード化しました。演奏はNBC交響楽団との一連の録音とは異なって威圧的ではなく、驚くほど快活ではじける様な「機嫌の良さ」に別人を思わせる様な趣があります。そしてフィラデルフィア管弦楽団の名手揃いのソロの絶妙な美しさ、弦楽器の明るく豊潤な音色は、トスカニーニ/NBC交響楽団のがさついた音色の乾燥した音楽を瑞々しいものに変える事に成功しました。
<村岡輝雄>
1967年九州大学大学院を卒業。日本ビクター(株)研究所・音響情報研究室長、武蔵工業大学・教授、東京大学先端科学技術研究センター・客員研究員を歴任し、現在は日本女子大学文学部・客員研究員で、併せて東京大学高齢社会総合研究機構の人間情報工学・伊福部研究室で音響信号処理の研究を行なっている。高校時代よりオーディオに取り組み、大学・大学院で電子通信工学を学んで日本ビクター(株)に入社後はプロ研究者に転向。入社後10年以上に亘って録音スタジオやレコード技術部門と連携して音楽録音技術とアナログレコードの研究に取り組み、4チャンネルレコードCD-4の基本設計とレコードカッティング/トレシング歪みの研究で工学博士を取得。ディジタルオーディオ時代以降は大学時代の音声合成認識研究の延長としてディジタル信号処理研究に取り組み、非調和周波数解析GHAの研究と実用化を行なった。大学時代から吹奏楽とオーケストラに参加し、業務で修得した録音技術を駆使して200枚以上のCDを制作して今日に至っている。
【収録内容】
[1] モーツァルト:交響曲第35番ニ長調「ハフナー」(1929年録音)
[2] シューベルト:交響曲第8(9)番ハ長調「グレイト」(1941年録音)
【演奏】
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック [1]
フィラデルフィア管弦楽団 [2]
ARTURO TOSCANINI / アルトゥーロ・トスカニーニ