そんなシーンの中心人物として君臨しながら日本では意外に知られていないアーティストの1人に本作の主役ホジェーがいる。これまでに2枚のアルバムを発表。とりわけ2NDアルバムとなった前作はガブリエル・モウラや御大アルリンド・クルスらと競作した"Brasil em Brasa"が大ヒット。FAR OUTからリリースされた新世代サンバ・コンピ「FAR OUT STRICTLY SAMBA」の冒頭に収録された"Swingue do Samba"とともに、実はサンバ好きの間では最も親しまれている新世代作曲家の1人なのである。
そんなホジェーの新作がこちら。直訳すれば「一般的に話せ」となるタイトル通り、彼の持ち味の一つは、サンバをより多くの人が楽しめるよう、実に工夫されたポップなサウンド作りにある。サンバのグルーヴがしっかりと下地を固めながらも華やかなホーン隊が活躍する"MINHA PRINCESA"、黒光りするベースラインのイントロからホジェーらしい開放感溢れるヴォーカルへの展開が素晴らしい"JEITO DE GUEIXA"、レゲエを下地にしたタイト極まりないドラム&ベースに、タンボリンやフルートが加わりサビヘと気持ちよく抜けていく"MAE NATUREZA"・・・。現代っ子らしい多彩なアイデアを取り入れながらも基本は「躍らせる」ことへと焦点を絞ったサウンドがとにかく素晴らしい。そして何より彼の最大の魅力は誰もが歌いたくなるような人懐っこくも美しいメロディにあることを忘れてはならない。語るような静けさに包まれた"AMOR A FAVELA"、伝統回帰なオーセンティック・サンバ"MAPA DA LAPA"といったサンバ楽曲でこそ「美メロ」をじっくりと堪能できるのは偶然ではなく、サンバの伝統こそが美メロでもあるからである。