ディスクユニオン ワールドミュージック・バイヤーズチョイス4月号

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2024.03.31

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ディスクユニオン ワールドミュージック・バイヤーズチョイス4月号

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ディスクユニオンスタッフによるワールドミュージック・バイヤーズ・チョイス4月号!  新譜も旧譜も中古も私物もサブスクもチャンプルー(ごちゃまぜ)でお届けいたします! 今、ディスクユニオンのラテン、ブラジル、ワールドのバイヤーが本当におすすめしたい良質な作品を一挙ご紹介!!

↓バックナンバーはこちらから↓
https://diskunion.net/latin/ct/news/archive/9



■吉祥寺店
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-5-1 吉祥寺パルコB1F
https://diskunion.net/shop/ct/kichijyouji




V.A. (IRAMA LATIN) / オムニバス『IRAMA LATIN』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1007301665

インドネシア、マレイシアのラテン音楽を集めた良質コンピレーションです。名門IRAMAレーベルの1950年代希少SP音源から選曲された本作はチャチャチャやマンボといった硬派なラテンをはじめスウィングや歌謡曲まで幅広く楽しめます。東南アジアのラテンはどことなくゆったりとしたグルーヴで大変心地いいです。幅広い音楽ファンにおすすめしたい1枚です。(柴田)



■新宿ラテン・ブラジル館
東京都新宿区新宿3-31-4 山田ビル4F
https://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_latin




SOYUZ / ソユーズ『II』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008796521

東欧ベラルーシのブラジリアンテイストのバンド、SOYUZが2019年にデジタルでリリースしていた2作目がついにフィジカル化しました。タイトルもそのまま、「Verocai」「Nascimento」といった楽曲が収録されているように今作はアルトゥール・ヴェロカイやミナスシーンの作品の影響やオマージュがかなり多く散りばめられております。録音の微妙にくぐもったような質感から楽器の音色、アレンジの様々な部分でかなり影響元の雰囲気が捉えられており、何も情報を知らなかったら「70年代に密かにリリースされていたブラジル作品」と勘違いしてしまいそうなくらい完成度が高いです。(齋藤)





Halo Maud『Celebrate』



Melody's Echo Chamberなどでも活動するフランスのアーティスト、ヘイロー・モードの新作がついにデジタルで配信されました。2018年にリリースしていたデビューアルバム「Je Suis Une Ile」は非常に完成度の高い一枚でしたが、今作もかなり強烈なサイケポップを展開しております。一曲目の表題曲から暴力的なギターサウンドがさく裂。こちらもギターサウンドが目立つ「Terres Infinies」、前作の作風を感じるドリーミーな「My Desire Is Pure」と先行公開されていた楽曲もそれぞれキャッチーで素晴らしいです。以降の楽曲も洗練されたアレンジと幻惑的なサウンドにうっとりしてしまいます。サイケポップ的作風は変わらずに、更にスケールが大きくなったような素晴らしい作品です。(齋藤)



■JazzTOKYO
東京都千代田区神田駿河台2-1-45 ニュー駿河台ビル2F
https://diskunion.net/shop/ct/jazz_tokyo




VINICIUS CANTUARIA / ヴィニシウス・カントゥアリア『PSYCHEDELIC RIO』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008804671

ヴィニシウス久々のリーダー作。どれどれ、と聴き流すといつも通りの音と声で変化に気づかない。おもむろにタイトルを見ると"サイケデリック・リオ"、ジャケの写真にはワイルドを気取ったならず者風3名。今回はフェンダーのエレクトリックを駆使してサイケ風味を狙ったという。変化していないと感じるのは錯覚で、ここしばらく続いたビル・フリゼール他との種々のコラボ作品による刷り込みがあったため気づけなかったのかも知れない。それにしても一聴してそれとわかる個性は健在だ。無国籍な都市の片隅で奏でられる異邦人の音楽。場所はニューヨークでも香港でもパリでも東京でも違和感がない。今回は故郷リオに戻って題材を求めたが共演のふたりはイタリア人。混血度が突出したブラジルではそんなことはどうでもいいのだろう。国籍や人種によるカテゴライズの虚しさに気づかされる1枚だ。(赤尾)





BUSRA KAYIKCI『PLACES』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008806401

Places=場所。まずタイトルに惹かれる。建築を学んだというトルコ人ピアニスト、ビュシュラ・カイクチャはデザイナー的視点から音空間=場所を構築したのだろうか。しかしジョン・ケージに影響を受けたという彼女の音に作為性は感じられない。むしろ、誰のものでもなく場所に漂っている音をすくい上げてみた。そんな感覚的な印象だ。彼女が弾くのは愛機、中国パールリバー製アップライトピアノだそうだが音色がとにかく心地よい。欧米製品固執礼賛は時代錯誤だと思い知る。アンビエントな響きが気分をどこか別の場所に連れていってくれる。場所関連で併せ推すのはウルグアイの作家マリオ・レブレーロの小説"場所(El lugar)"。知らない部屋で目覚めた主人公が出口のない迷宮のような場所を彷徨う人生の縮図にも似た悪夢的作品だが、本盤のBGB=Back Ground Bookとしてつまみ読むのも一興だ。(赤尾)





ITIBERE ORQUESTRA FAMILIA / イチベレ・オルケストラ・ファミリア『LIVE A PARIS』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008809381

エルメート・パスコアル・バンドのベーシスト、イチベレ・ズヴァルギのワークショップ・プロジェクトがフランスに上陸。日本のミュージシャンたちと作った『Orquestra Familia Do Japao』で心を掴まれた僕にとっては嬉しい一枚だ。イチベレ・オーケストラのブラジルらしい明るさは、フランスのミュージシャンたちの軽やかさとどこか共通しているようにも思える。今作では冒頭でゲスト参加するアミルトン・ヂ・オランダ、チャノ・ドミンゲスを筆頭に、ソロパートがどれも強いのが印象的。そしてこのプロジェクトはなんといっても楽しそうなのがいい。アンサンブルのよろこびがひしひしと伝わってくる。それがエルメートの理念なのだと思うと、去年の来日を見るべきだったなと後悔するのだった。(逆瀬川)


■吉祥寺ジャズ館
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-24 小島ビル2F
https://diskunion.net/shop/ct/kichijyouji_jazzandclassic




BUSRA KAYIKCI『PLACES』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008806401

イスタンブール出身のピアニスト/建築デザイナー、ビュシュラ・カイクチャの初となるソロ・ピアノ作品です。「音楽を聴いている時は、空間から空間へ、時から時へと旅をしているのだと思います。演奏者は楽器で雰囲気をデザインしリスナーを都市や田園、風景へと連れて行きます。」と建築デザイナーらしい表現で自身の音楽を語っていますが、その言葉の通りM5「Olive Tree」は夏の太陽が眩しいエーゲ海沿岸の街並みや丘の向こうに見えるオリーブの木々を見ることができるでしょう。本作の核となる楽曲、M2「Fernweh」はドイツ語でホームシックと真逆の意味を持つ「これまでに行ったことのない場所や遠い場所へ行くことを欲する状態」を指す言葉なんだそう。聴いているうちに自分だけの特別な場所が見つかるかもしれません。懐かしい場所、戻りたいけど戻れない場所、行ったことがないけどたまらなく恋しい場所、色々なPlacesへ思いを馳せながら聴いて頂きたいです。(中村)



■ROCK in TOKYO
東京都渋谷区宇田川町32-7 HULIC &New UDAGAWA B1F
https://diskunion.net/shop/ct/rockintokyo




MOHAMMAD SYFKHAN『I AM KURDISH (LP)』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008822028

アイルランドのマニアックな音楽を取り扱うNyahh Recordsから新たに素晴らしい1枚が届きました! こちらのシリア出身のクルド人SSWによるソロデビューアルバムは、 サクソフォンとチェロを交えたギリシャの民族楽器ブズーキによる高揚感溢れる演奏に思わず身体が動きます、 元々は80年代からシリア国内で人気を集めていたThe Al-Rabie Bandの中心人物ということもあり、 パーティーや結婚式を始め音楽フェスティバルでも引っ張りだこだったという逸話も納得のサウンドです、 中東の音楽をあまり耳にしないという方でも聴きやすくおすすめです。(鎌田)



■ラテン・ワールドWEB&通販担当




MuchaMuchaM / ムチャムチャム『Mai Pen Rai c/w Bing Long Moon(7")』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008797703

アジアと日本を絶妙にMixしたサイケデリアな作品。これは思わずリズムに乗って踊っちゃいます、これからの季節に必携!憂鬱な雨の季節がやってきますがこれ一枚でそんな気持ちも吹き飛ばせそう。クルアンビンや細野晴臣ファンにも大推薦です!(TT)





TRAFFIC SOUND / BLACK SUGAR / トラフィック・サウンド / ブラック・シュガー『LA CAMITA』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008773167

Vampisoulのキラー7インチシリーズから一枚。A面には、ペルーのバンド、トラフィック・サウンドによる名曲「La Camita」を収録、B面には、レア・グルーヴ系ディスクガイド常連のラテン・ファンク・バンドBlack Sugar(こちらもペルーのバンド)による同曲のメロウなカバーが収録されている。南米ロック好きの方にはブルージーなギターが心地良いA面が、ソフトな音楽が好きな方にはコーラスに包み込まれるB面がオススメ(筆者はどちらかというとB面が好み)。素晴らしい内容なのでもっと広く聴かれて欲しいところです。(道産子)





Various Artists『CACASO 80 ANOS』



ブラジルを代表する詩人、カカーゾ。彼は作詞家としても活動し、いくつもの楽曲にその痕跡を残したが、1987年に43歳という若さで亡くなってしまった。2024年は、1944年生まれである彼の生誕80周年にあたる。そこで企画されたのが、カカーゾが作詞を行った曲を集めたトリビュート・アルバム『Cacaso 80 anos』だ。彼に縁の深いアーティストたちが、彼が作詞を務めた楽曲をレパートリーとして取り上げている。オープニングを飾る「Gente séria」は、ジョイスとカカーゾの共同でつくられた歌詞に曲を付けたもの。ネイ・マトグロッソが歌う「Lambada de Serpente」は、ノヴェーリ(近日中に彼の唯一のソロアルバム『Canções Brasileiras』が世界初リイシューされる予定だ)の作曲によるジャヴァンの名バラード。ジャヴァンのカバーとは異なりピアノの伴奏がついたどこか新鮮なカバーだ。エドゥアルド・グヂンの「Alma」は、1978年にリリースされた彼のインスト曲にカカーゾの詩をつけたもの。いくつかのカバーがあるが、これは嬉しい新録!


そして注目なのは、カカーゾの生前のパートナーであったホーザ・エミリア・ヂアスによる「Árvore Mágica」。カカーゾの死の翌年に発表された彼女のデビュー・アルバム『Ultraleve』に収録されている曲だ(彼女の2018年作『Madrigal』に収録されている曲と同様のものだろう)。靄がかったようなオリジナルとは異なり、楽観的でカラッとしたカバーとなっている。他にも、レイラ・ピニェイロ、アライヂ・コスタ、エドゥ・ロボなど、豪華なゲストが参加。どの楽曲も、カカーゾが作詞で活躍した70年代らしい(?)素朴なアレンジになっており、70年代のMPBを愛するすべての人にオススメ!(道産子)






NATACHA FINK / ナッチャ・フィンク『PIRARUBLUE』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008830098

アマーロ・フレイタスの新作『Y’Y』は、彼が2020年に過ごしたアマゾナス州都マナウスでの経験にインスパイアされているというものですが、そのマナウスのリアルな出身者であるナッチャ・フィンクという正体不明のアーティストが1986年に唯一残した楽曲がこちら(Side-A)。よく聴いてみるとスティーリーダンみが強い音作り。ディガー集団STICKY BUTTONSの嗅覚にキャッチされたことも納得の、今っぽいスピリチュアリズムが漂うコーラスワークとコンセプト。とても面白いです。(天然水)





RAPHAEL GIMENES / ハファエル・ジメネス『DINAMARCA』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008812693

ブラジル生まれで現在は北欧を拠点に活動するブラジル人シンガー・ソングライター、ハファエル・ジメネスの'24新作。ブラジルのオブスキュアなマイナーサイケかと聞き間違うような1stがここ日本でも話題となり、イエスやPFMなどからの影響を覗かせた2ndでは英詞を披露と、着実にその世界観を広げてきたジメネス。最新作となる本作は、彼が住むデンマークをポルトガル語にしたものをタイトルに冠した作品だ。自らが弾くみずみずしいギターと繊細な歌声に、空間的なパーカッション・ワーク、音に厚みをもたらすベースシンセという編成を基本に、ブラジルのミナス・ジェライスで録音されたという金管五重奏や弦楽四重奏を追加。北欧な雄大な自然を思わせる、美しくも厳かなサウンドが終始印象的だ。また初作で見せていたような、どこか物憂げなところも払しょくされたように思う。北欧という第二の故郷で人生を謳歌する喜びを目いっぱい表現したような、力強いサウンドが、ただただ圧倒的だ。セバスティアン・マッキらアルゼンチン精鋭のゲスト参加も嬉しい。(江利川)