再生ボタンを押した瞬間の、ザーザーと降る雷雨の音が忘れられない。ALCESTともスプリットをリリース経験のある、フランスのブラック・メタルバンドANGMARの12年3rdアルバム。 6曲43分。ブラック・メタル一筋ではいかないバラエティに富んだ楽曲、時折見せるポストブラック/シューゲイザーな音も聴かせる。サウンドを映し出したような重くどんよりとした空、どこかヴァイキング的な雰囲気を感じざるを得ないアートワークも非常に私のお気に入りだ。そして最後の最後であのBATHORYの大曲「Shores In Flames」のカバーを入れてくるあたりも憎めない。
ブラック・メタルの土壌のないニューヨークにおいて、07年に突如出現したBLACK ANVILの3rd。このバンドの何が凄いかって、ニューヨーク・ハードコア・バンドKILL YOUR IDOLSの2人が主要メンバーということ。しかもドラムのラルフはCAUSE FOR ALARMのメンバーだったんだから興奮しないわけないし、ライヴでの実力は一連のブラック・メタル勢の中でも群を抜く存在であるのはいうまでもありません。当然ニューヨーク・ハードコア・シーンの中核にいたバンドのメンバーだけあって、他のハードコア・バンドとの交流も深く、サウンド的にも現在のメタルもハードコアも入り乱れて混沌としたシーンを象徴しているかのようです。
ARTIST:BLACK ANVIL
ARTIST:BLASPHEMY
TITLE:TRIUMVIRATE
TITLE:FALLEN ANGEL OF DOOM....
担当者:渋谷パンク・ヘヴィメタル館 / 松本
担当者:柏店 / 内澤
ニューヨーク・ハードコア(NYHC)バンドから支持され、北欧ブラック・メタルとは違ったスタンスで活動をするニューヨーク出身のブラック・メタル・バンドの2nd。中心メンバーがKILL YOUR IDOLSというNYHCの中でも絶大な人気を誇るバンドのメンバーで、故にライヴでの実力は折り紙付。しかもドラムのラルフはKILL YOUR IDOLS以上にNYHC史に残る名バンド、CAUSE FOR ALARMのメンバーなのだからニューヨーカー達が放っておくわけありません。もちろん真正なブラック・メタル・ファンも頷けるサウンドなので、他シーンから生まれ、ある意味異形ともいえるブラック・メタルを味わってください。
VED BUENS ENDEのメンバーでもあったVicotnikと後にZYKLON-BやTHONSにも参加するAldrahnらによって結成され、SATYRICONやGORGOROTHと並んで90年代中盤に第2世代として台頭してきたノルウェイジャン・ブラック・メタル。後にインダストリアルの要素を取り入れエクスペリメンタルなスタイルへと変遷していくが、DARKTHRONEのFenrizがベースで全面参加し95年にリリースされた本作は、寒々しいメロディを滲ませるリフや退廃的暗黒さを充満させる空気感こそ90’Sノルウェイジャン・ブラック・メタルの要素を的確に捉えた作品である。所謂90’Sの一級代表作ではないので00年代以降のブラック・メタル・ファンで本作をスルしているファンは意外に多いのでは?94年の未発表リハーサル音源収録したボーナス・ディスク付き再発盤。
メリカにはブラック・メタルのシーンはなく、このJUDAS ISCARIOTは90年代初頭からSPAZZ等のパワー・ヴァイオレンスなどのハードコア勢と絡んでライヴを行なっていました。なぜハードコア勢の好まれていたのかというと、悪魔主義や幻想世界、宗教観などがなく、ハードコアに通ずるノイジー且つプリミティヴなサウンドがその要因かと思います。プリミティヴ・ブラックの先駆者としてブラッケンド・ハードコアISKRAやWOLVE IN THE THRONE ROOMといったSOUTHERN LORD系のブラック・メタルに受け継がれていますので、上記バンドに興味ある人は是非この1stアルバムを聴いてみてください。
ARTIST:MAKE A CHANGE... KILL YOURSELF
ARTIST:MARDUK
TITLE:FRI
TITLE:PANZER DIVISION MARDUK
担当者:北浦和店 / 高橋
担当者:渋谷パンク・ヘヴィメタル館 / 松本
デンマークの鬱ブラックメタルバンドのMake a Change... Kill Yourselfの3rdアルバム。 Happy DaysやLife Loverなどの生きる事を皮肉ったバンド名もあるが、この『Make a Change... Kill Yourself』と言う鬱ブラックメタルに直球なバンド名も素晴らしい。 また、首をつっているジャケットが悲観主義な彼らを表していて、鬱蒼としたトレモロリフに狂人のようなVoの絶叫が木霊するこの病的なアルバムの世界観を引き立てている。 鬱ブラックファンだけでなく暗い音楽を好む人にお勧めしたい最高のアルバムだ。
アメリカのメロディック・ブラック・メタル・バンドの’15年2ndフル・アルバム。表現力豊かなツインギターによって紡がれるエピックな中世的世界観を信条とするオリジナリティに溢れたサウンド。アプローチこそ違えど、徹底された中世的世界観はモナコ公国の独りブラック・レジェンドGODKILLERの名作EP「THE REBIRTH OF THE MIDDLE AGES」を彷彿とさせる部分もある。ブラック・メタル特有の邪悪さや劣悪なサウンド・プロダクションとは無縁で、リリース当初Pitchforkにも取り上げられていたこともあり、アトモスフェリック/ポスト・ブラック・メタルを好むリスナーにもお勧め。
スウェーデンのメロディック・ブラック・メタル・バンドの’95年1stフル・アルバム。名作犇めくNo Fashion Recordsのカタログの中でも最良のリリースのひとつ。VINTERLAND等と同様に、ブラック・メタル然とした邪悪さは希薄で、北欧特有の物悲しいメロディで紡がれるひたすらにドラマティックなブラック・メタル叙事詩。6曲目「Cries From a Restless Soul」はスウェディッシュ・ブラック屈指の名曲。Necrolordによるジャケットも秀逸。2ndでは所謂メロディック・デスに、3rdではデスラッシュへとリリース毎にサウンドを変えていく。’13年リマスター 再発盤。
豪州ブラック・メタルの世界にCORPSE MOLESTATIONなるBESTIAL WARLUSTの前身バンドより早く登場し、その世界の発展に貢献したウォー・ベスチャル・ブラック/デス・メタル。91年1stフル・アルバム。本盤はOsmose Productionsからのリマスター再発盤。内実は、当時イーヴルなスラッシュから更に過激化の一途を辿った奴らの迸る焦燥感の到達点かの最高にイカしたブラック/デス・メタルであり、世界的に見てもBLASPHEMYやORDER FROM CHAOSの1stに比肩する名盤。しかしながら、この病的な感性の内に何処か可愛げを見出すことのできる感覚は唯一無二である。
人間の極限の絶望。そんな言葉で表したくなるのがUSのMalefic氏による独りブラック・メタルXASTHURのHydra Headに移籍後の5thフル・アルバム。トレモロを主体に展開していくサウンド、絶叫、嗚咽、聴いているうちに精神が侵され、気が狂いそうになる。こちらをぶっ通しで深夜に独り真っ暗な部屋で聴くことを勧めはしないが、それでも聴いてしまうのがブラック・メタル。ちなみに「Trauma will always linger」が一番のオススメ曲。体験したことのない絶望感を味わって欲しい。