【コラム】この夏、「幻の傑作」Blu-rayがついに! 『落下の王国』4Kデジタルリマスター発売決定
本作のことを知ったのは、昨年4Kデジタルリマスター版の公開が決まったときだった。長らく鑑賞の機会が限られていたため「幻の傑作」として注目されており、SNSでの反響も驚くほど大きかった。普段それほど映画を観ない層にまで話題が広がっているのを見て、これは見逃せないと劇場へ足を運んだ。
スクリーンで対面した『落下の王国』は、アートとして美しく、ファンタジーとして楽しく、ドラマとして切実な、まさに非の打ち所のない映像体験だった。はじめこそ世界各国で撮影された壮大でエキゾチックなビジュアルと、ベートーヴェンの「交響曲第7番」の旋律にただ圧倒されるのみだったが、次第に物語の展開に引き込まれ、気づけば主人公たちと共に現実・空想世界での苦難を乗り越えてきたような仲間意識を覚えていた。
物語の軸となるのは、怪我で入院中のスタントマン・ロイが幼い少女アレクサンドリアに聞かせる即興の寓話だ。そこにアレクサンドリアが身近な人々や風景を自由に織り込みながら、物語を補完していくのである。例えば、アレクサンドリアが病院で見かけた物々しく不気味なレントゲン技師は、彼女の想像の中ではそのまま冷酷な敵兵として現れる。物語が進むうちに登場人物の見た目や設定が変わってしまうこともあるが、現実の断片が空想世界へ自然に溶け込んでいくさまは子どもの頃に見た夢のようで、どこか懐かしさを感じる。もし自分が幼少期にこの映画を観ていたら、その後の感性や人格に大きな影響を与えていただろう。
度重なる不幸から自暴自棄となったロイを演じたのは、後に『ホビット』シリーズで孤高のエルフ王、スランドゥイルを演じることになるリー・ペイスだ。監督のピーター・ジャクソンは、本作での演技を見てリーの起用を決めたという。両作のキャラクターは設定も境遇もまるで異なるが、どちらにもリーにしか表せない孤独と翳りが宿っている。
また、本作には、映画という表現そのものへの愛着が滲んでいる。作中で展開される物語の背景にあるのは、無声映画時代に命懸けで撮影に挑んだスタントマンたちの姿だ。CGを使わず実写の迫力にこだわった本作からは、スタントマンという映画制作を支えてきた裏方への敬意が伝わってくる。さらに終盤からエンドロールにかけて、アレクサンドリアの視線を通してその想いはより明確に示されている。観る前と後では、映画のアクションシーンに対する見方も変わるはずだ。
2026年7月15日には、待望のBlu-rayが発売される。劇場では観られなかった未公開シーンが追加されたこの一本は、ぜひ手元に置いておきたい。手に入れたら、今度は作中に散りばめられた「落下」のモチーフを意識しながら、じっくりと観返したいと思う。
2008年の日本公開以降、どこでも配信されず「幻の傑作」としてカルト的な支持を集めてきたファンタジー映画『落下の王国』。本作は、『ザ・セル』で世界を圧倒した映像作家ターセム・シン監督が、26年もの構想期間と4年にわたる撮影を費やして作り上げた渾身の一作だ。この度、劇場公開版では見られなかった未公開シーンを追加。さらなる没入感を追求したバージョンが登場し、7月15日にブルーレイでの発売が決定した。
特筆すべきは、CGを一切使わずに生み出された圧倒的な映像美。世界24カ国、13箇所以上の世界遺産でロケを敢行した光景は、まさに息を呑む仕上がりとなっている。
主演は『ホビット』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のリー・ペイス。そして衣裳デザインは、『ドラキュラ』でアカデミー賞に輝いた日本が誇る才能、故・石岡瑛子が担当している。
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