トロピカリア名盤特集!!ブラジルの歴史を動かした抵抗のサイケデリアを一挙紹介
トロピカリア名盤特集!!
トロピカリア(Tropicália/トロピカリズモ Tropicalismoと呼ばれる場合もある)は1960年代後半のブラジルにて勃興した芸術/文化運動。カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)やジルベルト・ジル(Gilberto Gil)、ガル・コスタ(Gal Costa)、ムタンチス(Os Mutantes)など当時20代の若きミュージシャンが中心となって巻き起こったこのムーブメントは、当時隆盛を誇っていたボサノヴァとは一線を画す刺激的かつサイケデリックなサウンド/ヴィジュアル・イメージを強調した。
ビートルズ「She Loves You」の印象的なフレーズを拝借した「イェ・イェ・イェ」なるローカルなロックンロールがブラジル国内で流行すると共に、時のヒッピー・ムーブメントによる享楽的なフリー・マインドから影響を受けた。同時にリオ・デ・ジャネイロやサンパウロといった都市部ではなく、北東部(ノルデスチ)のフォホーやバイアォンの豊かなリズムを導入することによって、トロピカリアの音楽的なボキャブラリーは飛躍的に向上した。
カエターノ・ヴェローゾが1968年に発表したソロ作に収録の「Tropicália」がそのままムーブメントを指す語として定着し、ビートルズ『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のブラジル版とも称されるトロピカリアのオールスター的名盤『Tropicalia ou Panis et Circenses』をはじめとした多くのパワフルな作品が産み出されたこの時期。彼らは時の軍事政権への抵抗を示し、テレビ番組や大学内でのイベントとして開催されていた歌謡フェスティバルを通じてメッセージを発し続けた。その影響力には目を見張るものがあり、ついに1968年12月にトロピカリアのスターであったカエターノとジルの両名が拘留。翌年には保釈されるものの、彼らはロンドンへと亡命し、およそ2年余りでこのムーブメントは終息へと向かっていった。
しかしトロピカリアの遺伝子は70年代以降にも実を結んでいる。例えば亡命したスターたちによるロンドンやフランスでの名録音やブラジルで独自発展を遂げたサイケデリック・ロックの再解釈により、彼らは音楽家としての名声を手にした。さらに80年代以降はデヴィッド・バーン(David Byrne)主催のレーベル〈Luaka Bop〉が決定版とも言えるコンピレーション・アルバム『Brazil Classics 1 - Beleza Tropical』(1989)を発表し、トン・ゼ―(Tom Ze)などの重鎮を欧米へと紹介。現在でもバーラ・デセージョ(Bala Desejo)のジュリア・メストリ(Julia Mestre)やフィリペ・カット(Filipe Catto)といったMPBのシンガーがガル・コスタやヒタ・リー(Rita Lee)、マリア・ベターニア(Maria Bethânia)といった女性シンガーの自由な表現を継承するなど、多大なる影響を与えた。
ここではトロピカリアが巻き起こった1967~69年の作品のみならず、70年代以降の関連作も合わせて特集。レコード・リイシューでお求めやすくなっている盤も多数あるので、ぜひ手に取っていただきたい。(ディスクユニオン 天然水II)
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