2026.07.24 パンク 特集・お知らせ

「あなたを好きな理由」秋の夜長に思い出すあなた...


 
「あなたを好きな理由」
 
秋の夜長に思い出すあなた…。忘れなきゃいけないのはわかってる…。
それでも秋になるとつい針を落としてしまう、そんな盤をこっそりご紹介。
ディスクユニオン パンク・スタッフによる独断と偏見、偏愛まみれのディスクレビュー。




WEARE!
「のらくら」


思い出すのは大学1年の晩夏、「FUGAZIじゃん!」と私の着ていたTシャツを指して声をかけてきてくれた女子。ひとつ上の先輩で、ナンバーガールのTシャツを着てボブヘアがよく似合っていた女子。好きカモ。先輩とはすぐに意気投合し、その時教えてくれたのがWEARE!だった。
詩人・板垣周平氏の書くセンチメントな歌詞と乾いたギターサウンド。例えるならばbloodthirsty butchersの"9月/september"の空気感をそのまま1枚のアルバムにしたかのような、これからの時期にぴったりのエモーション。秋が差し迫った肌寒い夕暮れの帰り道に寄り添う“おもかげ”。ハァ。好きカモ。
そんな中、10月になった頃。ライブハウスで見覚えのあるナンバーガールのTシャツを着こなすエロい男前に肩を抱かれた先輩に遭遇。彼氏であることは火を見るよりも明らか。先輩はかつてと同じ笑顔で「またFUGAZIじゃん」と言って笑い、男は「例の後輩クン?いい趣味してるね!」と優しく接してくれた。うるせぇなと思った。
あ~そのTシャツ、彼氏さんのだったんスね。WEARE!も彼氏さんの影響っスか。
あの日の帰り道に聴いた"おもかげ"がいつもよりエモーショナルでセンチメンタルでハードブレイクだったのは、どうして?

-西谷(新宿パンクマーケット)





DENNIS MOST&AUDIOLOVE
「LIVE AT THE EL CID,DECEMBER 1976」


あらゆるSTOOGESのカバーを狂ったように探していた頃に出会った、プロトパンク、プロトメタル、ガレージ~ロックンロールの名オブスキュアパンク~KBDバンドによる’76年ライブ。初期PINK FLOYDの"Lucifer Sam"からSTOOGESの"Down On The Street"、さらにLOVEの“Signed D.C.”と度肝を抜くロックの名曲カバーの嵐のあとに控えるオリジナル曲"Three's A Crowd"が秀逸。とりわけLOVE“Signed D.C.”~"Three's A Crowd"の流れは、徒歩で帰ることを余儀なくされた秋の夜長(この場合はもう真夜中)に聴くと、とっても沁みる。「秋の夜長」といえども、数時間したら始発がやってくるし朝日が昇る。そんな自然の摂理とは裏腹に、ひょっとしたらこの長い夜が永遠に続いてしまうんじゃないかという疑念と恐怖を抱かせる寂寥感たっぷりの演奏には、きっとARTHUR LEEも腰を抜かすに違いない。

-須田(ROCK in TOKYO)





S.O.B
「DON'T BE SWINDLE」



高校に入学してバイトを始める前、学校終わりに友達と遊ぶのが定番だった。駅前のマクドナルドやクレープ屋さんに行ったり、フードコートで他愛のない話をして気付けばもう夜…なんてことも多かったが、夏前になると友達付き合いにも変化が出てきたり、話す内容も尽きはじめていた。
それからはいかに早く帰れるかのチャレンジがマイブームとなり、授業が終わると校舎を飛び出す日々。少し早い時間の路線バスに乗れたらラッキー、出遅れて乗れなかったり誰かに先を越されるとなんか負けた気になっていた。
夏休みが明け制服も長袖になった頃、その日も早めに校舎を出てバス停へと直行。駅前のコンビニを通り過ぎようとしたところ、たむろしていたグループに「そのipodちょうだい!」と言われた。そのときipodから流れていたのはS.O.Bだったと記憶している。S.O.Bと共に爆速で帰路についた自分。なんてことない出来事だけど、この季節になるとなんだかふと思い出してはやっぱりS.O.Bを聴くと足が速くなった気がします。


-松原(商品部パンク)





MOGA THE ¥5
「其ノ群青」


15年くらい前にMOGA THE ¥5の解散ライブに行ったのですが。既にこの会社で働いてた私は、シフトの休み希望を1日間違えしまい危うくチケットが紙屑に。なんとかモガのライブは間に合ったのものの、既に物販は売れ切れ。最後な訳ですし思い出の一つでも持って帰りたいと思い、エスカルゴさんに話しかけてみる事に。そしたら、気さくにもピックを頂き今でも大事にチケットと保管しています。そんなモガを何故か秋になると毎年聴きたくなる。あれは5月の出来事だけど。

-肥沼(ユニオンレコード渋谷)





OLEDICKFOGGY
「"いなくなったのは俺の方だったんだ/アーバンストンプ」


『秋の夜長に思い出すあなた…』というなんともセンチメンタルなレビュータイトルが故、思い馳せるべき相手は今はすっかり立派なパパな昔の友達なのか、大好きだったはずのあの子なのか。
数年前だったらあれよこれよと想い出に色を付けて書き綴っていたであろう、大好物な分野。大好物だったはずなのに、書き綴りたいエピソードも人も、すぐにはもう思い浮かばなくなってしまった。
過去と煙草と夕暮れ時の缶コーヒーでセンチメンタルを創造するのが大好きだった私も、もうすっかり大人。オニーさんからオジさんへと移ろいで行けば行く程に、目の前と少し先の未来しか見えなくなったし、握りきれず掌からこぼれ落としてしまった人たちを想う余裕もあまりない。
いなくなったのは俺の方だったんだ。


-吉澤(川崎店)





Ai PUNK MADONNA
「CAPTAIN 愛」


「エビディ エブィナイ クレイジー黄金DAYS 俺ら仙台 へこたれません」
皆さんは『チャント』をご存知だろうか。チャント=主にスポーツの応援の際、観客が声をそろえて歌う応援歌や掛け声であり、選手個人のチャントも存在する。
さて昔からパンクとフットボールは切っても切れない関係でありまして、筆者もその沼に浸かる1人。同志であればこの季節になると、誰もが『最終節』という魔法の言葉に向かってソワソワし出す時期。その時に我がチームは何位だろうか、昇格するのか、はたまた降格なのか。忘れもしない01年J2第44節首位京都戦、後半89分財前が劇的ボレーで勝ち越し悲願のJ1初昇格を決めたあの時も、負けに負けボロボロでJ2降格した時も、厳しい冬の始まりを感じさせるこんな季節。嫌いじゃないです(辛い思い出の方が多いですが)。
今回紹介するアルバムはAi PUNK MADONNAの24年2ND作、実は今季からベガルタ仙台の新チャント"TAMA GOLD"はアルバム収録曲「おれ達ワークマン 〜CRAZY 労働 DAYS〜」が原曲。"電光石火""仙台カモン""スタンディング・仙台""我ら思う故に我ら在り"など大好きな歴代チャントに並ぶ名曲チャントだと個人的にも思っております。他チームは存じませんがベガルタ仙台のチャント原曲はパンクバンド多めですので、気になった方は是非チェックを。
我がチームは今シーズンも諦めるのはまだ早いが苦しい時期、けど2+2も2×2も答えは4。シンプルに泥臭く、目の前の試合戦ってほしい。今じゃ近隣のアウェイ戦遠征+DAZN観戦ばかりのすっかり関東ベガサポですが、ハートはいつでもユアスタに。と最後に書き残します。
P.S. サッカー好きなパンクス方々はもちろん、他サポさん/ベガサポさんのご来店お待ちしております。


-佐々木(新宿パンクマーケット)





HÜSKER DÜ
「ZEN ARCADE」


秋の匂いがする頃、夕暮れと夜の狭間、冷たくなってきた風が頬をかすめ、グラデーションの空に枯葉が舞う。
そんな瞬間に鳴るBob Mouldのギターは、ノイズの奥で哀愁を滲ませながらも不思議と温かい。
“Something I Learned Today”の焦燥、
行ったことのない場所へ行ってみたいという“Chartered Trips”の疾走、
“Newest Industry”の静かな痛み。
激しさの中にある陰影が季節の終わりと重なる。
“I’ll Never Forget You”のザラつきは、葛藤や切なさを残し、“Pride”のハードコアな勢いが、憤りとともにその寂しさを振り払う。
渋さと激しさの間で燃えるこの音は、まさに家出少年の夢と現実が交錯するような若さの痛みと再生を同時に鳴らしている。
そして秋の風と同じように、冷たくも優しい。


-清水(横浜西口店)





SWING KIDS
「ANTHOLOGY」


なか卯の米が熱すぎる。炊き立てのそれではなく、親子丼にしても牛すき丼にしても、ましてやカレーをもってしてまでも、上物の温度を凌駕するほど米が熱い。もはや上物が冷めているのではないかという錯覚に陥るほどの温度のアンバランスさは、労働の合間にやっと訪れた休息の時間を一気に不安な気持ちにさせてくる。一体何が目的なのか。恐らく炊き立て感を演出したいのだろうが、なか卯は海鮮系の丼ぶりも定期的にリリースしているので、上物の海鮮が温まってしまうんじゃないかいつも心配だし、なんかわからないが温まってしまうとなんか良くない気がしてタッチパネルで眺めるも一度も選択する事が出来ず、今日も同じメニューをポチる。
JAZZインストから一気になだれ込む"Disease"を真ん中に置いた"DISCOGRAPHY"にもグッときますが、それを頭に持ってきたバージョンはカーディガン羽織って落ち葉をカサカサ踏みながら脳内では全感情を開放し人目も気にせずうぎゃーとのたうち回るには持ってこいの曲順。
一見ハチャメチャなようで、実は計算されたハイクオリティなリフで感情を煽りまくるギター、無駄をそぎ落としてるのに炭火のように燃え続けるバンド名らしくある意味でCHAOTICの方向にSWINGするドラムとベース、そして圧倒的熱量のボーカル。
土台のドラム、ベースが熱すぎてもダメだし、ボーカルやギターだけ沸騰してももちろんダメ。まさに奇跡的バランス。なか卯はSWING KIDSを聴いた方が良い。あえて違和感を出し、ひっかかりを作るような事も世間的にはあるんだろうけど、なか卯に関してはSWING KIDSを聴いた方が良い。感情を揺さぶるという意味では成功しているような気もするが、受取側の感情を開放するところまで遂行する事がプロダクトとしての価値を決定する。それ次第で砂利にでもダイヤにでもなる。そんなことを考えながらカツカレーを食べる2025年秋。なか卯はSWING KIDSを聴いた方が良い。


-金社宅(商品部パンク)





NEKROMANTIX
「CURSE OF THE COFFIN」


秋によく聴くタイトルというテーマのレビューですが、秋といえばサイコビリーですよ。暑くもなく寒すぎることもないこの季節、サイコビリーにめちゃくちゃ適していると思いませんか。ハロウィンに似合うビジュアルももちろんそうなんですけど、レッキンする方も暑いより涼しい方が良いのではないかと思います、暴論をすみません。
そんな折、2024年6月にフランスで開催されたHellfestのステージで演奏する、キム・ネクロマン率いるNekromantixのライブ映像を見ました。相変わらずの存在感と変わらないかっこよさにシビれる。野外ステージ故に、途中から降り始めた雨粒でさえも演出のごとくかっこいい。トレードマークの棺桶型ベースも健在で素敵。余談ですが知人がずいぶん昔に「あれは音が悪いよ」と話していたことがあったけど、そんなの知らねぇさあ行くぞ!!!と心の中でガチ恋口上キャンセル版を唱える私です。
私とNekromantixの出会いは20年以上前、今は亡き新宿クラブドクターでの深夜イベントで美しい御姉様がDJで流していたのを文字通り全身で受け止め衝撃を受けました。サイコビリーを知ってまだ間もないころで、こんなに自分が聴きたいと思う音にピッタリなものがあるのかという新鮮な驚きでした。
こんなに長い時間を経てもなお、サイコビリーが好きでいるとは思わなかったし、巡り巡ってあの時のDJの方やバンドさんとお話できたりすることも奇跡みたいだと本当にありがたく感じます。なんか、昔話みたいになっちゃうけどまぁそれも秋のもたらすセンチメンタリズムということで。
あぁ、Nekromantixまた来日してくれないかなぁ。


-笹野(商品部パンク)





T字路s
「Tの讃歌」

秋に聴きたくなる、というかT字路sを聴くたびに脳裏に真っ赤な夕暮れと侘しい街の景色が浮かぶ。見たことはないはずなのに、かならずその景色が浮かぶ。寂しさと、それでも前向きな強さを併せ持つような、絶望と希望の表裏一体の感覚。戻れないけど、不便だったけど良い時代だったのかもしれない昭和の名曲をカバーした本作、T字路sにしか醸せないこの空気感を例えるなら、秋、なのかなぁと思います。

-笹野(商品部パンク)




THE STANDARDS
「RAMBLING ROSE」


僕がネオモッズを好きな理由、それは等身大の若者たちの純粋な意思表明であるから。つまりほぼパンクと隣人同士みたいなもので、そのサウンドは60年代のR&Bよりもそれらをカバーしたリバプール・サウンド(死語)勢にアップタイトなエッセンスを加えたような、そんな感じ。
国内のモッズバンド、THE STANDARDSはまさに和製THE JAMで、リッケンバッカーにバットマンのステッカーを貼るような小粋っぷり。4曲入りEP『RAMBLING ROSE』収録の「TEENAGE GANGS」は、誰にも負けない本気の硬いサウンドに、研いだばかりのナイフみたいな歌詞で包んだような若者たちへの賛歌。タイトル曲は哀愁漂う屈指の名曲ながら、サブスクはもちろんCDにもその後収録されていないため、今のところはレコードを買う以外に聴ける手段はないのです。探し出して聴きましょう。ジャケットに写る当時20歳の彼らのヴィジュアルのカッコよさと言ったら!
現在、THE STANDARDSはボーカルのGENさんを中心に再結成し、不定期に活動中。見逃さないように!


-出野(ユニオンレコード渋谷)

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