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ソウル・ミュージックにおいて「清涼感」という言葉はあまり褒め言葉ではないだろう。ディープなものは勿論、それに当てはまらないものでも濃密な空気が求められるのが「ソウル」の世界の常套である。しかしPJ MORTONのアルバムから受ける印象は間違い無く涼しげなものであり、透明な世界感である。そして限りない優しさに満ちた楽曲から、実直でスピリチュアルな歌唱から感じるのは物足りないどころか他の濃密さを売りにしたアルバムからは受けた事の無い満足感であり、聴いた後の心地良さは他のどんなジャンルのアルバムからでも受けられないような素晴らしいものである。そんな内容がまさに現在本国は勿論、ここ日本でも確実に浸透しているようである。今回は通常版に「MIRROR MIRROR」と「TALKIN' FOREVER」の2曲のボーナス・トラック追加、そしてジャケット写真も麗しいSPECIAL EDITIONの登場である。
ニューオーリーンズ出身の23歳。地元では有名なゴスペル・シンガーを父に持ち、幼少の頃から教会で歌い始めている。8歳でピアノをマスター、14歳で既に作曲とプロデュースを手掛けていた。ゴスペル業界では「MEN OF STANDARD」との共演をはじめ、数々のキャリアを積みその後ERYKAH BADUのツアーへの同行、INDIA ARIEへの曲提供等確実なステップで現在のスタイルを築いてきた。現時点での集大成ともいえる「EMOTIONS」はそのようなバックグラウンドがあっての質の高さであり、スピリチュアルな面影も見せながらブラジリアン・フレイヴァーまでも感じられる多面性、自らの声質を完璧に理解した上でのアコースティック・ギターの多用等、とでも23歳のシンガ−のデビュー・アルバムとは思えないほどの落ち着きでリスナーの心に底知れぬ深みを感じさせてくれる唯一無二のアルバムだと言えるだろう。
たしかに派手さはないかもしれないが、彼のようなシンガーが受け入れられれば現在の商業的な音楽業界も軌道修正が計られるかもしれない。だが今回のようなインディ・シーンではまれなグレードアップしての再発という現象は彼の実直な音楽が徐々にだが受け入れられている証ではないだろうか。今後も益々大きくなっていく事を願うばかりである。
営業部 坂本
PJ MORTON / PJ・モートン