アル・アンダルス協奏曲~パコ・デ・ルシアに捧げる

CANIZARES カニサレス

フラメンコ、クラシック音楽の両シーンで活躍する世界最高のギタリスト、カニサレスが師匠パコ・デ・ルシアに捧げた渾身のギターとオーケストラとの協奏曲

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レーベル
プランクトン
国(Country)
JPN
フォーマット
CD
規格番号
VITO-483
通販番号
XAT-1245773627
発売日
2023年11月01日
EAN
4562132124833
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商品詳細情報

フラメンコ、クラシック音楽の両シーンで活躍する世界最高のギタリスト、カニサレスが師匠パコ・デ・ルシアに捧げた渾身のギターとオーケストラとの協奏曲。初演から7年を経て、ついにレコーディング作品として発表。そして、2021年にコルドバ・ギターフェスティバルの委嘱により、その40周年を記念して作曲した、ふたつのギターのための組曲『モサラベ』も収録。


(ブックレットより)
『アル・アンダルス協奏曲』は、私が初めて作曲したギターとオーケストラのための協奏曲で、私にとって特別な意味を持っています。スペイン国立管弦楽団による委嘱で、2016年にマエストロ・ジュゼップ・ポンスの指揮により世界初演を果たしました。
この作品の作曲までの経緯には、マエストロ・ポンスと深い関わりがあります。かつて、私は彼と一緒に、オランダでの公演ツアーでギターとオーケストラのための協奏曲を演奏していました。公演後に観客からは大きな拍手喝采が沸き起こり、アンコールを求められました。舞台裏でマエストロは私に言いました「是非ブレリアスを演奏するといい」。そのアンコールに熱狂する観客の姿を彼は見逃さず、アンコールを終えた私に、ギターとオーケストラのための「フラメンコ」協奏曲を作曲したらどうかと、助言をくださいました。
早速私は意気揚々と作曲に取り組みましたが、程なく信じられないような、悲しく辛い知らせを受け取りました。私が10年にわたってセカンドギタリストを務め、私の師匠であり親友でもあったパコ・デ・ルシアの突然の死でした。私はこの作品『アル・アンダルス協奏曲~パコ・デ・ルシアに捧げる』というタイトルをつけ、作品を彼に捧げることにしました。彼の記憶は、私の楽譜の中に必然的に現れ、私の中から絞り出される音の全ては、彼のために流した涙でした。この作品を聴かれる方々が、私がこの作品の創作中に感じたのと同じ気持ちを、追体験して頂けることを願っています。
同時に、ふたつのギターのための組曲『モサラベ』をご紹介できることを大変嬉しく思います。この作品は、2021年にコルドバ・ギターフェスティバルの委嘱により、その40周年を記念して作曲した、ギターとオーケストラのための協奏曲のギター編曲です。この作品は、コルドバの美しい風景にインスピレーションを受け、アンダルシア風で、モサラベ風なメロディーとハーモニーを融合させています。由緒ある、世界的にも重要なフェスティバルの祭典に貢献できたことは、私にとって大変光栄で名誉あることと感じています。

2023年4月
フアン・マヌエル・カニサレス


「アル・アンダルス協奏曲」は、現在3曲完成しているカニサレス作曲によるギター協奏曲の嚆矢(ルビ:こうし)となった作品で、2016年にジェゼップ・ポンスの指揮により初演された。スペインが生んだ最高の指揮者の一人であるポンスは、カニサレスとのオランダ・ツアーの折に、フラメンコを題材とした協奏曲を書くことを勧めた助言者であった。カニサレスはすぐに作曲に取りかかるが、程なく師匠でもあり親友でもあったパコ・デ・ルシアの訃報に接し、哀しみの淵におかれながらも、新作となる協奏曲をパコ・デ・ルシアのために捧げることを決意した。その深い想いは、追悼の調べというばかりでなく、パコ・デ・ルシアとカニサレスの厳しくも暖かな交友を想像させるような懐かしさと励ましに溢れた協奏曲になっている。第2楽章の終盤のカデンツァでは、しかしながら、嘆きの感情を表すタランタスというフラメンコの形式によるパコの名曲「湧く泉、ゆたかな流れ」のハーモニーを引用して、心からの哀悼の意も示す。第3楽章では、生と死を乗り越えたて出会うこと、愛情と友情への祝福がうたわれ、パコの名曲「二筋の川」などの一節も顔をのぞかせる。

カニサレスは、2011年サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートでロドリーゴ作曲「アランフェス協奏曲」を演奏して以来、世界中から協奏曲のソリストとして引く手数多となり、ゆえにオーケストラとギターの共演の難しさ、問題点、それを解決した時にのみ現れる他では得難い音楽的な充足について熟知しており、そのような経験もこの協奏曲の作曲に注ぎ込まれている。編曲を担当したジョアン・アルベルト・アマルゴスによる豊穣なオーケストレーションも見事だ。指揮は、カニサレスがNHK交響楽団に登場した折にも辣腕を振るったファンホ・メナである。筆者の経験では、スペインの作曲家も指揮者も、そしてオーケストラも、'ギター協奏曲'という、ある意味では特殊なジャンルについての豊富な経験則を持っているため、この充実したコラボレーションはそれらの賜物であると言っても良いと思う。

紀元4世紀、西ゴート族の進攻に始まるローマ帝国崩壊後のイベリア半島は、その大部分が8世紀以後およそ800年、西ゴート族に打ち勝ったイスラム勢力の支配下に置かれた。イスラムによって支配されたイベリア半島の版図はアル・アンダルスと呼ばれるが、この時期のイスラム勢力とキリスト教勢力の敵対関係は、往年の映画『エル・シド』(注1)に観られるように、宗教の対立というよりは、それぞれの軍事的な支配者、領主間のいざこざ、という側面もあったので、イスラム統治下においてもキリスト教の信仰は比較的自由であったし、王宮に出入りしていたユダヤ商人のコミュニティーなどもあって、文化や生活習慣の饗宴が繰り広げられた。イスラム王朝のもとで、イスラム教に改宗しなかった人々をモサラベと呼ぶのだそうだ。


ここにカニサレスの多重録音によって聴かれる「モサラベ組曲」の原案は、コルドバ・ギターフェスティバルの委嘱によって2021年に初演されたギターとオーケストラのための協奏曲である。協奏曲の2作目、「地中海協奏曲」以後、オーケストレーションも自ら行うようになったカニサレスは、ここではオーケストラをギターに置き換えるという作業ではなく、源泉となったコンセプトをギターデュオのために再創造していると言えるだろう。
1492年、イスラム王朝最後の王ボアブディル(ムハンマド12世)が最後の拠点となったグラナダにあるアルハンブラ宮殿(注2)をカトリック両王(イザベル1世とフェルナンド2世)に明け渡し、イスラムによる支配とカトリックによる国土回復運動は幕引きとなる。「モサラベ組曲」が協奏曲の形で初演された古都コルドバは、イスラムの王朝が去った後に残されたモスク(イスラム寺院)をカトリックの教会に転用したため、今日でもイスラム様式とカトリック様式の融合した建築物や文化を見ることができる。
フラメンコに代表されるスペインの文化そのものが、他の欧州諸国や南米諸国と決定的に異なり、私たち東洋人の郷愁を誘ってやまないのは、そのように特殊な歴史的背景がスペインにあるからではないだろうか。


美しく親しみやすい旋律に彩られながらも、随所に新鮮な驚きを散りばめた作品性の充実のみならず、いつもながらの、あるいはそれ以上の切れ味のある演奏で輝かしい音楽が展開される本アルバムは、今後のカニサレスの作曲家/音楽家/演奏家の融合したさらなる充実した活動を予感させる。毎日、昨日の自分を超えられるようにと願うと話すカニサレスならではの、直向きさと熱意がすべての音に宿り、意志から放れて現実となる音楽の魔法が満ち満ちている。カニサレスが、細部までこだわった音作りによる絶妙なミックス・バランスの良さも本アルバムの大きな聴きどころで、オーケストラの各楽器の音色の純粋さ、アンプリファイされたギターの自然さ、そして前半の協奏曲と後半のギターデュオの色分けと統一感が素晴らしい。

鈴木大介


筆者注
1 チャールトン・ヘストン、ソフィア・ローレン主演の1961年の映画『エル・シド』は、イスラム期のスペインで活躍した伝説の英雄、エル・シドの半生を描いている。
2 このアルバムのジャケットの撮影場所

(サプライヤーインフォより)

ソングリスト

  • 1.アル・アンダルス協奏曲 ~パコ・デ・ルシアに捧げる - 第1楽章 ブレリアの速さで
  • 2.第2楽章 自由なテンポで表情豊かに
  • 3.第3楽章 快活な速さでタンギージョ風に
  • 4.ふたつのギターのための組曲『モサラベ』 - 第1楽章 コルドバ
  • 5.第2楽章 メスキータ大聖堂
  • 6.第3楽章 オレンジの庭