フォルクローレ、ブラジル、そしてジャズ/ソウルのスタンダードまで、純粋に彼女が愛する歌を選んだ9トラック。神格化されるフォルクローレの伝説チャブーカ・グランダを朗々と綴るオープニングから、M2では、ジョアン・ジルベルトのボサ・ノヴァを可憐に演じてみせる。同じくブラジルのシコ・セーザル作の名曲M3は、感じたままにメロディーを捉えた歌い回しの素晴らしさ。ブラジルの素材は、ラストのジャヴァン名曲「FLOR DE LIS」でも披露され、彼女のMPBに対する造詣が発揮されている。
通して聞き終えて得られるナチュラルな開放感。実に不思議だ。確かに声は少女なのに、そのアーティスト性は既に完成されているかの如く、高貴なオーラさえ放つ。そんな彼女の才能を存分に引き出したのは、プロデュースのルカス・エレジア( LUCAS HEREDIA)の為せる業。ロー・ボルジェスのような浮遊感とフアン・キンテーロとスピネッタを足したような演出力で、2011年のソロ・デビュー作がアルゼンチン傑出の才能と絶賛された若きギタリスト、ルカスのサウンド・クリエイト・センスを味わう意味でも、この1枚は価値がある。
