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Aernout Steegstra(vo)、Peter Duinkerken(key)、Harry Poelman(b)、Erik Westerhof(g)らによって80年代初頭に結成、'87年にはヒット・シングル'The International Feel'を送り出すも90年代半ば以降は活動休止状態にあったオランダ産アート・ロック/ニューウェーブ・バンド:I SPYが、32年振りのスタジオ・アルバムとなる'23年作『WHILE THE WAR BEGAN』を引っ提げ華々しく復活!

80/90年代の彼らは所謂プログレ・サウンドとはあまり接点を感じられないニューウェーブ調のポップ・ロックサウンドを披露していましたが、本作では彼らのルーツに立ち返るかの様に、それぞれLP片面分を占める'Unforgotten''Fearless''War''Odyssey'の4つの組曲を収録した大作/プログレ志向のコンセプト・アルバムとなっております。YES/GENESIS/PINK FLOYD/JETHRO TULLなど70年代ブリティッシュ・プログレ勢から影響を語ってはいるものの、単に往年のプログレ・サウンドをアップデートさせたというだけの単純な内容では無く、7年という歳月をかけて緻密に構築されてきただけあって21世紀型らしく一聴しただけでは把握しきれない程の情報量が詰め込まれた折衷的な内容が特徴。チャーチ・オルガンからアープ・シンセまで使い分けた緩急自在のキーボード・ワーク、メタルまでには行き着かない程度のヘヴィなプレイからラティマー風の美しく伸びるサステインまで見事な塩梅を見せるギターなどが組み込まれたプログレド直球なアレンジは勿論の事、突如と挿入される抽象的なパートや昔の彼らの姿を思わせるニューウェーブさながらの軽妙なリズム・パターンも溶け込みつつ、更にオランダのモダン・ジャズ界の重鎮:Eric Vloeimansによる白熱のトランペット、女優としても活躍するInez Timmerの幽玄なボーカル、生の弦/管楽器を迎えたオーケストレーションなどゲスト勢の貢献も相まって、シンフォニック~メロディック・ロックを切り口としながらフォークロア/クラシック/ジャズ/室内楽までも内包した、サウンドトラック作品にも近い世界観の広がりが素晴らしい一作。とはいえ聞き終えた後に印象に残るものは、KAYAK/FLAMBOROUGH HEADなどといったオランダのプログレバンド勢から連綿と継承されてきたオランダ産らしい甘美な旋律であり、昨今の英国産バンドとも一味違う体温を感じさせるハートウォーミングな響きに心奪われる、隠れた逸品です!

【2枚組/3面Digisleeve仕様】