2005年4月に心不全のため惜しくも亡くなったベーシスト、ニールス・ペデルセン。その卓越したテクニックでオスカー・ピーターソンやケニー・ドリューを長きに渡って支えたベーシストでしたが、本作はそんな彼がスウェーデンを代表する辣腕ギタリスト、ウルフ・ワケニウスとデンマークのドラマー、ヨナス・ヨハンセンを迎えたトリオでの1999年と2005年(その死のおよそ一月前)のライヴ録音です。本人のアレンジにベースソロでのバッハ・ナンバーにはじまり、短いオリジナルのバラード「MEMORIES」、そして再びベースがテーマをとるスタンダード「SONG IS YOU」へと続きます。全体的にペデルセンがふんだんにフィーチュアされており、ワケニウスはもっぱらそれをサポートする役割。ここでのペデルセンのベースがチャーミングで良いんですよね。ペデルセンと言えばかつてのケニー・ドリューとのデュオのようなバカテク博覧会を想像してしまいますが、ここではもっとシンプル。伸びやかで丸みのある音色で、あくまで自分の歌心に基づいたかのようなシンプルで味のあるプレイを聴かせてくれます。「SONG IS YOU」「MY LITTLE SUEDE SHOES」「OUR LOVE IS HERE TO STAY」みたいな牧歌的な曲で特に顕著ですね。ただし、「FOOTPRINTS」のようなイントロのつくM6「YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC」ではワケニウスが炸裂してます。こういったシンプルなマイナー曲でツボにはまったときのワケニウスは鬼気迫るものを感じますね。それに釣られてか、オーソドックスなラインの多いペデルセンもここではかなりはっちゃけてます。全体的には小粋でチャーミングな中、この一曲がアルバムの良いアクセントになってますね。
NIELS-HENNING ORSTED PEDERSEN(b), ULF WAKENIUS(g), JONAS JOHANSEN(ds)
