2,574円(税込)
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■アルゼンチン音楽手帖掲載品■
地平線の向こうへ、いま旅立つ。圧倒的に美しい、音景色の頂点へ。
アンドレス・ベエウサエルト、待望のセカンド・アルバム。
◆交差する旅と映像の記憶 director’s note
初めて訪れた彼のアパートメントには使い古されたオーク色のアップライト・ピアノが静かに、しかし物言いたげに、佇んでいる。微かに上気した心を鎮めながら、目を瞑って未完成のアルバムを聴きはじめた。初めて通して聴くラフミックス。アンドレスもソファに寝転び、目を閉じてしまっている。瞼に次々と広がる情景。希望したすべての音がそこにあった。文句のつけようがない。喜ぶべきことなのだが、ここまで素晴らしいと、コメントにも悩む。3 曲目が過ぎた頃、ふと見上げるとそこには空に風が通り抜けているような4 枚の写真が飾ってあった。なんだ、そうか。一気に緊張感が緩む。そうか。この写真がすべてを語ってくれているじゃないか。きっと彼の好きな写真なのだろう。寝っ転がっている彼に、なんだ、見上げたら音楽とおんなじモノがあったよ、と伝えると、彼は笑って、それは僕の撮った写真だよ、と言った。
連なる映像と音楽というものが、いずれも視聴者を時間旅行へいざなう点において似通った芸術表現媒体であることはいうまでもないが、ここまで明確に呼応するものだろうか。M1「Pasan」(地名)からM4「Sonora」(地名)へ、旅はM2「Salida」=Depature=出発、を繰り返す。M9「Vento Em Madeira」=Wind Through Wood 私たちは、風を読んでは流されながら、M8「Entre a Terra e a Agua」=Between Land and Water 地平線の彼方へと思いを馳せてゆく。
後々気づいたのだが、彼の写真フォルダからCD用にと拝借してきた写真たちは、地平線だらけなのであった。彩りも豊かな、旅の指標のヴァラエティ。遥か彼方に霞む一筋のボーダーライン。その境界線は実在しない。美しい球体はただ、無限への道程を指し示す。
「このアルバムを通して個人個人が自分自身の映画を心に映し出すんだ」日常から離れた、新鮮で刺激的な逃走の旅。あるいは、日常生活のなかでの一場面の旅。イマジナティヴに並べられた旅の映像は、いつも映画的だ。
「僕の音楽作りに大きく影響しているのは、映画、食事、歴史や思想、旅…フィジカルな旅と精神的な旅、そして、親しいミュージシャンと演奏を通して感情を通わせ合ったときの感覚」
私たちは出会いを繰り返す。人と交わり心を通わせては相手の存在やともに過ごした時間の温度の記憶を残し、道を歩いて風景に出会っては映像を記憶していく。それらはあるいは光の記憶である。あるとき、光=記憶たちは交差する。光に照ら
された記憶のひとコマずつが、薄らかに重なり交差を連ねていく。旅が再生される。映画になる。
連なる光を的確に投影させた音楽によって、旅の場面が映し出され、具体的な記憶とふたたび重なりあう…交差するとき。時間を要素とする音楽と、空間を要素とする風景の記憶が、調和…交差するとき。つまり、己の中で、光による心象的な音
景色の統一的把握を成し遂げたとき、私たちはひとつの答えを得たかのような幸福に包まれる。探し求めてきた真実の光に邂逅したような感覚を得るのだ。
本作の計り知れない魅力はそこにある。
地平線の景観美をモチーフに、私たちに内在する光への到達を導き、永遠への時空を意識的、立体的に味わうことを可能にさせてくれる作品なのである。
■Musicians:
Andrés Beeuwsaert - acoustic piano, voice, keyboards, glockenspiel and guitar
Juan Pablo di Leone - picollo ,flute & bass flute
Fernando Silva - cello & bass
Santiago Segret - bandoneon
■Special Guest:
Gabriel Grossi - harmonica (11)
Loli Molina - voice (6)
Pablo Passini - acoustic guitar & voice (11)
Ramiro Nasello - flugelhorn (2,11)
◆ANDRÉS BEEUWSAERT: BIOGRAPHY
1978 年ブエノスアイレスに生まれたアンドレス・ベエウサエルトは、アルゼンチンのモダン・フォルクローレ・シーンではトップの人気を誇るアカ・セカ・トリオのリーダーとして今迄に3 枚のアルバムを制作した。ファーストアルバム『Aca Seca Trio』はスピネッタ、ペドロ・アズナール、エグベルト・ジスモンチらから賞賛を受け、アメリカでも発売。続く『Avenido』『Ventanas』をしてKonex アワードを受賞、続いてClarin アワードにもノミネートされ、3 枚のアルバムからの編集盤がイタリアからも発売される。
一方、2010 年の自身のプロジェクト『Dos Rios』によりジャズシーンからもこれまで以上に注目されはじめた彼は、国内外のジャズフェスティヴァルに出演の機会を得てゆく。2011年にはブラジルのシンガー、タチアーナ・パーハとのデュオ作『Aqui』(ブラジル/ 日本で発売)を完成させ、ここ日本でもミュージック・マガジン誌の寄稿枠をはじめ音楽愛好家の間で2011 年のベストアルバムのひとつに挙げられた。
「今最も信頼できるミュージシャン」といわしめるアンドレス・ベエウサエルトの参加クレジットを、いまアルゼンチンのアルバムCD に探すファンも少なくない。カルロス・アギーレのレーベルに残したセバスチャン・マッキ、クラウディオ・ボルサーニ
とのトリオ作『Luz de Aqua』が深い印象を残すフェルナンド・シルヴァをはじめとするアルゼンチンの要となるミュージシャンを集めたクァルテットを結成した彼の待望の新作は、セレスト原盤で愈々2012 年冬に発売される。
(メーカーインフォより)
ANDRES BEEUWSAERT / アンドレス・ベエウサエルト
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クルーセス ~ 交差する旅と映像の記憶 ~
1,800円(税込)
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