エルネスト・スナヘール。ビートルズ、チャーリー・ガルシア、スピネッタ、ジスモンチ、ピアソラといったアーティストへ興味を持ち、クラシカルなギターとジャズを学びながら精力的な音楽活動を継続。ペドロ・アスナールとのツアーに同行したことでアルゼンチン国内での地位を確固たるものにした、引く手あまたのギタリストである。本作の母体となるERNEST SNAJER TRIOでもネオ・フォルクローレ・シーンとしては異色ともいえる非常にプログレッシブなジャズ作品を発表。一方でVERONICA CONDOMIらとのトリオで発表した「DE LOS TRES」での繊細な作風や、LILIANA HERREROの「IGUAL A MI CORAZON」でもアレンジャーを務めるなど、シーンにおいてマルチに活躍できる真の実力者であるともいえる。
そしてなんといっても今回の目玉はDVDである。彼らの真骨頂であるトリオによるフォルクローレ・ジャズM1に始まり、ヴェロニカ・コンドミをしっかりと歌伴しながらもフォルクローレ的詩情を演出するM2、2010年8月来日も決まっている音響派とフォルクローレ・シーンを繋ぐ才色兼備な女性パーカッショニスト、マリアナ・バラフとのセッションM3は彼女のヒット作「MARGARITA Y AZUCENA」の冒頭曲を披露。マリアナのパーカッションはもちろん、スナへールのギター・シンセなどを駆使した多彩なギター・プレイも見所。スタジオ・セッションの模様を収めた興味深いM4を挟み、いよいよ佳境へ。リリアナ・エレーロの最新作「IGUAL A MI CORAZON」からの一曲"CHANARCITO"をリリアナ本人がゲスト・ヴォーカルとして歌い上げる地鳴りのようなM5。インタビューを一曲挟み、ACA SECA TRIO随一のメロディ・メイカー、フアン・キンテーロが自身の名曲"PALOMA"を弾き語り、トリオがシンプルなバックを務めるライブ収録のM7あたりで既に鳥肌がたつのではないであろうか?極めつけはカルロス・アギーレが名曲"PASARERO"を自らのピアノとともに歌うM8。映像作品に登場することのあまりないAGUIRREの、しかも一番美しい部分がこれだけきっちり拝めるというのは、ネオ・フォルクローレ・ファンならば感涙必至である。アギーレに負けじと素晴らしいスナヘールの繊細なギター・プレイも必見。とにもかくにもコレは是非とも何回も見ていただきたい名演であると断言できよう。