【連載コラム】The Conscious of R&B - aimi : Vol.3 『Joyce Wrice』

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2021.03.26

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毎月第4金曜更新の連載コラムを担当しています、R&Bシンガーソングライターのaimiです!

https://www.instagram.com/aimimusicofficial/

『The Conscious of R&B』と題して、2021年注目すべきR&Bアーティストを紹介しています。今ホットなR&Bアーティストが何を考え、何を感じ音楽を作っているのか、作品に隠された “意識”に注目して、勝手な私の解釈も交えながらお伝えするコラムです。



この記事で紹介するのは、超待望のデビューアルバム『Overgrown(オーバーグロウン)』をリリースしたばかりの『Joyce Wrice(ジョイス・ライス)』。L.A.を拠点に活動する女性R&Bシンガーソングライターです。


(引用:Joyce Wriceオフィシャルサイトより)

日本人の母親とアメリカ人の父親を持つ一人っ子。カリフォルニア州サンディエゴ出身。2017年には渋谷VISIONにて来日公演も果たし、すでに国内でも注目されている次世代R&Bシンガー。つい先日、3月19日リリースされた初のフルアルバムについて紹介していきたいと思います。


Brandy、Tamia、Mariah Carey、Missy Elliot、Usherなど90年、00年代のR&Bを聴いて育ったJoyce。彼女のボーカル、メロディにはどこか懐かしさがあって、それが日本のリスナーにも馴染みやすいと理由だと思います。

Joyce の活動のスタートはYouTube。17歳の頃からR&Bのカバー動画を友達と作ってはYouTubeにアップロードしていました。それが世界的に有名なプロデューサーの目に留まり、ソロデビューが決まってしまいました(驚)当時はまだ音楽を趣味としか思っていなかったJoyceですが、周りの後押しもあり、L.A.を拠点に活動を本格化。そして、2016年5月に1st EP『Stay Around』をリリース。その後、Devin MorrisonやWestside Gunnなどの作品にもフィーチャリングで参加しています。



Joyceと言えば、同じく日本人の母を持つR&BシンガーのUMIと『That’s On You(Japanese Remix)』を出したことが記憶に新しいかもしれません。Spotifyではすでに100万回以上再生され、Joyceの代表曲となりました。まだ新型コロナでロックダウンしていた期間に、カメラを購入してJoyce本人が自宅でMVを撮影したことで話題に。手作り感たっぷりの映像ですが、雰囲気がすごく良くて、とりあえず可愛い(笑)実はアルバムのリリースは2020年を予定していましたが、新型コロナの影響で一年先延ばしになったそうです。




そうしてデビューEPから5年、念願叶ってリリースされたのが『Overgrown』です。 “成長しすぎた” という意味がありますが、まさに待ちに待った新作になりましたね。

アルバムの最後に収録されている『Overgrown』という楽曲は、ソングライターのMack Keaneと共作されたもので、Joyce が抱えていた葛藤を描いたエモーショナルな内容になっています。ピアノとボーカルのみの削ぎ落とされたサウンドと心に寄り添うメッセージがグッときます。

But don't you lose all that makes you you
(あなたを作るすべてをどうか失わないで)
You will be scared, unprepared sometimes
(時にあなたは怖くなるし、準備ができていないかもしれない)
Say goodbye, I changed my mind
(お別れを言って もう変わったのだと)
All my fears, let them be gone
(全ての恐れは手放して)
All inside of you
(全てはあなたの中で)
It's overgrown
(大きくなりすぎたの)


母親の影響で仏教を信仰しているJoyceですが、その集まりで歌える楽曲が欲しくて、この曲を制作したそう。自分の中で大きく膨らんだ不安や恐怖を抑え込むのではなく手放すことを歌っています。
ここ3年間、Joyceが恋愛やライフで経験してきたことや感情がインスピレーションとなってできあがったアルバムだと本人も語っていますが、全体的にバウンスできるアップビートな作品で、DJミックスを聴いているような流れの良さがあります。

今作はLucky Daye、H.E.R.、Ty Dolla $ign、Victoria Monétなど今をときめくR&Bアーティストを手がける名プロデューサー D’Mileを中心にチームで制作されました。さすがD’Mile先生と頷くクオリティ。90年代の懐かしさを残しながら、飽きさせないサウンドに仕上げていて、豪華なフィーチャリングを迎えたインタールード、秀逸なアレンジも含め、アルバムとして聴く楽しさ満載です。4曲目の『Losing』の後に続く『You』で『Losing』の一節をサンプリングしていたり、聴く度に面白い発見があります。

ちなみに、Bruno MarsとAnderson .Paakの新ユニット『Silk Sonic』の『Leave The Door Open』もD’Mileのプロデュース作品ですね。

ここからは特にオススメな楽曲について触れていきます。



2曲目に収録されている『Falling In Love feat. Lucky Daye』はLucky DayeのデュエットEP『Table For Two』に収録されている曲。この曲はMary J Blige のためにLuckyが制作したもので、Maryはデモ段階でこの曲を見送っていました。LuckyとJoyceは同じA&Rと仕事をしているため、興味ないかとJoyceに話が来たんだとか。

トラックを聴いた瞬間に“これは自分の作品として出したい”という衝動に駆られて、2番のバースをすぐに作って送ったそう。イントロとアウトロに入っているボーカルは実はプロデューサーD’Mile本人が歌っています。歌も歌えるんかい!バウンシーでクールなトラックですが、歌詞は意外にキュート。

Now baby don't go playin' with my lovin'
(今はベイビー 僕の愛をもてあそばないで)
Don't make me regret fallin' in love, fallin' in love
(君と恋に落ちていることを後悔させないでほしいんだ)
Search far and wide, you'll never find my lovin'
(遠くまで広く探しても、僕の愛を見つけることはできないよ)
Don't make me regret fallin' in love, fallin' in love
(君と恋に落ちていることを後悔させないでほしいんだ)




3曲目に収録されている『On One feat. Freddie Gibbs』は先行シングルとしてリリースされた曲で、12曲目の『So So Sick』に続き、MVでJoyceがダンスを披露。90年代のノスタルジーを感じさせる振り付けとKyle Dionなどの友情出演も含めL.A.感を堪能できる映像に仕上がっています。ざらつきのあるFreddieのラップとカラッとしたJoyceの歌声のコンビネーションがクラシックR&Bを彷彿させますね。



9曲目のMasegoをフィーチャリングに迎えた『Must Be Nice』のトラック、ボーカルアレンジも秀逸・・・!アルバム全体で言えることですが、Joyceのコーラスワークがアレンジの一部になっていて聴き応え抜群です。このトラックでも声が楽器のように使われていて、世界観をエレベートしているなという印象でした。

JoyceとD’Mileが誰にフィーチャリングをお願いするかを考えていたとき、たまたまD’Mileに会いにスタジオにやってきたMasegoに聴かせたところ、気に入ってバースを書いてくれて、フィーチャリングが決まったそう。ちゃんとオファーして、データのやり取りをして、共作するのも良いですが、音楽にインスパイアされてその場で作ってみるっていうオーガニックなやり方も気持ちが良いでしょうね。

歌詞の内容はというと、もう関係が終わっているはずなのに、親密になってしまう相手に “忘れるために距離を置きたい”と伝えるJoyceに対して、“もし時間を置いたら、もう戻れなくなる”とMasegoが引き止めるという恋模様が描かれています。

I need a break to get over you
(あなたを忘れるためにブレイクが必要なの)
I need the space, it's been overdue
(距離が必要だわ、もう期限切れよ)
I need a break
(時間が必要なの)
Nothing but space between us
(私たちの間にスペースがあったら)
Must be nice
(きっといいわ)
Take some of that taste of freedom
(自由を味わえたら)
Must be nice
(きっといいわ)


こんなカッコイイ曲にされるとズルズル引きずりそう(笑)中途半端な関係になっちゃうことってあるけど、大体いい結末にならないんだよなと過去の恋愛を思い出しました。


(引用:Joyce Wriceオフィシャルサイトより)

Joyce Wriceの新作について情報がまだまだ少なかったので、勝手な解釈と余計な話も多めでお届けしました。これだけ豪華なフィーチャリングアーティスト、プロデューサー、チームが関わっていることからもJoyceへの高い期待が感じられます。今作のために40曲も制作したそうなので、アルバムには採用にならなかった曲もリリースされるといいですね。

Joyce WriceやUmi、Jhené Aikoなど日本の血を受け継ぐR&Bアーティストが世界的に注目されていることは、個人的にも嬉しいです。H.E.R.が「R&Bは死んでない(R&B is not dead)」とよく言っていますが、本当にその通りだと思います。今のR&Bに興味を持つきっかけになったらと思ってこのコラムも書いているので、拙い文章ではありますが、シェアしてもらえたら嬉しいです。

2021/3/26

< INFO>

私aimiも新しいEPを出しました!



『Changed 4 Good』
発売日:2021年2月24日

< 収録曲 >

1. Fight No More
2. On You
3. The Wave feat. Furui Riho
4. Back In Luv
5. KMHH

■配信音源はこちら

北海道のシンガーソングライター Furui Rihoと歌った『The Wave feat. Furui Riho』も公開中です



さらにEPリリースを記念して、この度ディスクユニオンのレーベル「Kissing Fish Records」から初のフィジカルをリリースすることになりました!

なんと人生初の7インチ アナログ盤。

先日、カッティングに立ち会ってきたんですが、デジタルでは出せない味があるなぁと思いました!シンプルにテンション上がった!



『Fight No More』
発売日:2021年6月2日


<収録曲>
1. Fight No More
2. Fight No More (grooveman Spot Remix)

『Fight No More』のオリジナルバージョンと、JAZZY SPORTの最重要選手でもある「grooveman Spot」さんが手がけてくださったREMIXが収録されます。予約受付中ですので、是非チェックしてもらえたら嬉しいです!


grooveman Spot (Scotoma Music/Jazzy Sport/77 Karat Gold/ENBULL)
1993年からのClub DJキャリアを持ち世界が注目するビートメイカー/プロデューサー。
MC U-Zipplain とのユニット「ENBULL」のDJ & トラックメイカーであり、JazzySportの最重要選手。
ヒップホップは勿論のことソウル、ファンク、ジャズ、ハウス、テクノ、果ては和物シティポップなど
育んできた音楽的経験をターンテーブルから発信し、自身の作品にも落とし込む。
ヒップホップ小僧は雑食型に進化。様々なジャンルをDJに表現する。


■MORE INFO

■オリジナルバージョンの配信音源はこちら



<Profile>




aimi

コンテンポラリー R&B シンガーソングライター。千葉県成田市出身。幼少期にソウルやディスコミュージックを聴き始め、90's, 00's R&B に影響を受ける。
学生時代に留学先のイギリスマンチェスターでライブオーディションに出場し、アジア人として初優勝。歌手の道に進むことを決意する。
長年のライブ活動と自主制作を経て、2020 年『aimi』として新たなプロジェ クトを始動。
2019 年、音楽プロデューサー Shingo.S との出会いをきっかけに、楽曲制作をスタート。
2020 年5 月にリリースしたデビュー EP「Water Me」が iTunes R&B / ソウルチャートで初登場 1 位を獲得。リード曲「Sorry」が J-WAVE の SONAR TRAX に選ばれ、パワープレイされる。
楽曲は 英語と日本語両方で制作しており、国境を越えた音楽活動を目指し、精力的に活動している。
2021年 1 月より block.fm にて DaBook と DJ AKITO (Chilly Source) と R&B プログラム『Vibe-In Radio』のパーソナリティを務める。
また disk union 公式サイトにて R&B 楽曲を紹介する連載コラムも担当。

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