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現在のブラジル音楽界のインストゥルメンタル・シーンにおいて確固たる存在感を見せるミナス・ジェライスの気鋭音楽家たち。アントニオ・ロウレイロ、ハファエル・マルチニ、フレデリコ・エロイドロ、アレシャンドリ・アンドレス、または彼らの形成するハモやミストゥラーダといった楽団は、昨年のロウレイロの『ソー』リリース以降認知度を一躍高め、ここ日本でもブラジル音楽ファンを超えた関心を集めている。そのシーンの中心の一人として知られるのが、このジョアナ・ケイロスである。
ジョアナ・ケイロスは、クラリネット奏者であり作曲家。実はリオ生まれのリオっ子である。イチベレ・オルケストラの一員として10年以上のキャリアを持ち、エルメート・パスコアルの『ムンド・ヴェルヂ・エスペランサ』への参加が最初の大きなキャリア。グアルーリョス・フェスティヴァルというコンテストの作曲部門に入賞後、2008年にはマウリシオ・カヒーリョがディレクションを務めたフィーナ・エスタンパという実験的なショーロ・グループで録音。2010年から2012年にかけてはアルゼンチンではリリアナ・エレーロやアカ・セカ・トリオ、チリではシモン・ゴンサレス、ウルグアイではアリスマール・ド・エスピリト・サント、ウーゴ・ファトルーソと共演(更には自らのカルテットでも出演)を果たす。またヨーロッパでも演奏活動を行っており、イタリアではピアニスト&ヴォーカリストとともにクラン・アトランティコというグループでも活動、モニカ・サルマーゾとアンソニー・ウィルソンを加え、録音を終えたという。ハファエル・マルチニの新作『モチーヴォ』でも中心として活躍していた彼女は、まさに今のブラジルを代表する実力を持った音楽家なのである。
そんな彼女が2012年に自身のカルテットで録音したのが本作『ウマ・マネイラ・ヂ・ヂゼール』。Joana Queiroz(ジョアナ・ケイロス-バス・クラリネット/作曲/アレンジ)、Bernardo Ramos(ベルナルド・ハモス-ギター/ヴォーカル)、Bruno Aguilar(ブルーノ・アギアール-ベース/ヴォーカル)、そしてAntonio Loureiro(アントニオ・ロウレイロ-ドラム/ヴォーカル)で構成されるこのカルテットは、ロウレイロやハモ、ミストゥラーダと同じく、インストゥルメンタルと歌曲のコンビネーションによる音楽的可能性を追求することが大きな目標となっている。ジャズ・カルテットという編成特有のシンプルな楽器のコンビネーションがダイレクトに伝わってくるのが特徴で、シコ・ピニェイロを中心とするブラジリアン・ジャズ・シーンのサウンドとも近く、耳馴染みサウンド。#3のようなヴォーカル入りトラックや、スキャットをフィーチャアした#7といった感動的な歌モノに耳が行くが、その一方でしっかり聴きこんでいくと、安易な解釈を許さないすこぶる高度な音楽性を有していることにも気が付くこととなる。アントニオ・ロウレイロの『ソー』収録楽曲をカバーした#9もハイライトだ。
規定のフォーマットに捉われることなく、常に先鋭的でありながら、聴くほどに感動をもたらす音楽。現在のブラジル・インストゥルメンタル・シーンのハイ・クオリティぶりを凝縮したような本作は、間違いなくブラジル・シーンに長く語り継がれる1枚となるであろう。
Joana Queiroz - clarone, composicao e arranjo
Bernardo Ramos - guitarra e voz
Bruno Aguilar - baixo acustico e voz
Antonio Loureiro - bateria e voz
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JOANA QUEIROZ / ジョアナ・ケイロス
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