空前絶後の出版タブー記録! 決して表に出ることがない日本製コンテンツ裏受容史!
- 通販番号
- 1009127810
- 発売日
- 2025年10月10日
- EAN
- 9784908468902
商品詳細情報
445作品収録
A4判オールカラーの大型サイズで下手くそマンガも見やすい!
海賊版『ドラえもん』と中華圏の海賊版マンガ通史
『漫画周刊』と香港のおたく文化
『漫画大王週刊』と台湾の漫画審査制度
『聖闘士星矢』と中国初の海賊版マンガ雑誌『画書大王』
『テコンV』を主役にした「日韓スーパーロボット大戦」
タイ式『ドラえもん』とタイの海賊版マンガ史
イタリアにおける日本アニメの黄金期と海賊版コミカライズ誌
『ミッキーの活躍』『ミッキーの兵隊』『ミッキーの大奮戦』等の日本製海賊版
台湾製実写版『北斗之拳』香港製実写版『閃傳五騎士』等のコラム
前書きなど
近年、日本のコンテンツ産業に大きな注目が集まっている。2025年6月に経済産業省が発表した「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」によると、日本のコンテンツ産業の海外売上は2023年で約5.8兆円と、半導体産業や鉄鋼産業の輸出額をはじめて上回り、1位の自動車産業に次ぐ勢いにまで成長を遂げている。さらに経済産業省では、2033年までにその売上規模5.8兆円を、現在の自動車産業輸出額と同水準となる20兆円に引き上げるためのアクションプランを立案している。いっぽう、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所が2025年2月に公開したレポートによると、2024年のマンガ市場規模は、前年比1.5%増の7043億円(国内外合計かつ紙と電子書籍の合計)と、7年連続で過去最大売上を更新している。そしてこれらのレポートと関連し、2024年に発足した一般社団法人MANGA総合研究所では、日本のマンガやアニメに端を発するIP(Intellectual Property)の市場分析を試み、その規模を世界全体で3.7兆円(国内:2.23兆円、海外:1.46兆円)と推計、次年度以降も年次調査を行うことで精度を高めていく方針だ。1990年頃に起きたバブル崩壊によって製造業を中心とした経済成長が停滞し、「失われた30年」が進行するなか、日本のコンテンツ産業は定量面で大きな飛躍を遂げてきたが、その「海外展開の概略」を年代ごとにまとめると、おおよそ次の通りとなる。
・1990年代:『AKIRA』『攻殻機動隊』によるマニア層の開拓、『新世紀エヴァンゲリオン』『美少女戦士セーラームーン』による新規ファン層の獲得、『ドラゴンボールZ』北米放送による日本アニメとマンガの認知度拡大、『パワーレンジャー』の北米での大成功と世界的なメディア展開、『ポケモン』ブームが牽引する世界的なメディアミックス
・2000年代:『ナルト』『ワンピース』『BLEACH』などジャンプ系アニメの世界的な大ヒットと原作マンガの売上拡大、『バイオハザード』シリーズ(ゲームおよび映画)の世界的大ヒット、『千と千尋の神隠し』のアカデミー賞(長編アニメ映画賞)受賞
・2010年代:動画配信ビジネスの台頭および『進撃の巨人』のストリーミング配信、ギャレス・エドワーズ版『GODZILLA』の大ヒット(オープニング興行成績歴代1位)、『君の名は。』の世界的ヒット
・2020年代:『鬼滅の刃』をはじめとするジャンプ系コンテンツの世界配信、『ELDEN RING』の世界的大ヒット、『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ-1.0』の米国アカデミー賞ダブル受賞(長編アニメ映画賞、視覚効果賞)
個別の作品については本文で詳述するが、基本的には、先に「日本のアニメ・特撮」が海外に配給され、それらがヒットすることで、原作である「日本のマンガ」の売上げを牽引するパターンが圧倒的に多い。ところが、上記で述べたような「日本製コンテンツの海外受容史」は、市場規模が最も大きく、かつ発行部数や視聴率などの実績データも豊富な「北米(若しくは欧米)」中心史観になる傾向が強く、90年代以前よりアジアやヨーロッパ、中南米、中東などで親しまれてきた「日本製コンテンツ」は、オミットされがちだ。特に水面下で流通し、データも残らない海賊版マンガについては、先行研究も少なく評価や分析も容易とは言い難いが、本書ではそんな「海賊版マンガ」に焦点を当て、「1960年代から90年代までの期間に海外に流入した日本製コンテンツの人気や影響」に関して考察を試みる。なお本書で述べる「海賊版マンガ」とは「違法に複製・出版されたマンガ」ではなく、それを含め「出版当時、正規ライセンスを取得していることが確認できなかったマンガ」や「キャラクターなどの商標を、模倣もしくは剽窃したマンガ」、いわゆる「無版権マンガ」や「パクリマンガ」に近い意味で使用している点も、はじめに表明しておきたい。
各章の内容について概要を説明すると、台湾や香港における海賊版マンガは、その歴史の古さとバラエティの豊富さが大きな特徴になっている。それら海賊版は、日本で人気のあるコンテンツを共有するプラットフォーム的な役割を果たすとともに、日本マンガに対するリテラシーを育み、正規版権マンガの流通を整える土壌を涵養した。特に台湾は、日本との「文化的近似性」が高かったことなどから、戒厳令の状況下でも、日本製コンテンツが水面下で大量に流入していたが、1987年に戒厳令が解除されると、それらの海賊版は驚異的な勢いで増殖し、台湾のマンガ市場を席捲した。いっぽう中国では、海賊版の普及は90年代以降と比較的遅かったが、台湾や香港の繁体字訳「海賊版」を通じて日本の動漫コンテンツが流入し、海賊版ビデオCDやP2Pによる違法なファイル共有の時代を経て、正規版権マンガへの移行に至るまでのフェーズで形成された、巨大IP市場の発展に寄与した。
韓国では、そのバラエティの豊富さやローカライズ手法、そして海賊版が果たした役割などは台湾と似ているが、90年代後半まで続いた「日本大衆文化の排除政策」が、海賊版の氾濫を促進・助長した(詳細については、拙著『韓国いんちきマンガ読本』を参照いただければ幸いである)。
タイでも『ウルトラマン』『ドラえもん』『一休さん』を中心に、古くから海賊版マンガが普及していたが、台湾や韓国と同様、その種類の豊富さに圧倒される。特に、ひばり書房の「ヒットコミックス」や立風書房の「レモンコミックス」などのホラーマンガの海賊版は、現地オリジナルのエログロ系「バーツコミック」との親和性も高く、タイ海賊版マンガの大きな特徴になっている。
いっぽうイタリアは、フランスと並び70年末から80年代にかけて日本のアニメ・マンガが広く普及していたことが知られているが、海賊版マンガの出版事業に関してもヨーロッパ最大規模を誇る。マカロニ・ウエスタンやマカロニ・ホラーなどで培われたイタリア式メソッド(話題作や人気作のエピゴーネンを低コストで再生産し、マネタイズする手法)で創作された海賊版フメットは、「先に日本製アニメ・特撮がテレビでヒットし、それらのアダプテーションとしてコミカライズが出版される」典型的なモデルケースだ。そして最後は、ブラジル、アラブ圏、アメリカ、日本で出版された海賊版マンガに関して、個人的な趣味嗜好を交えつつ紹介する。
2025年5月に亡くなったアメリカの国際政治学者ジョセフ・ナイは、著書『不滅の大国アメリカ』(1990年)のなかで、「ソフト・パワー」という概念を提唱し、今後の世界情勢を占う上で軍事力や経済力に加え、文化的影響力や価値観がより重要になると述べている。知日派としても著名なナイが、日本のソフト・パワーである「おたくコンテンツ」をどの程度評価していたかは定かではないが、日本のマンガやアニメが世界に浸透し、その影響が可視化されるようになった現在、それらが越境し人気を確立していったプロセスを検証する上で、本書がその一助となれば幸いだ。
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