70年代よりフォーキー・ブラジリアンの聖地、ミナス・ジェライスのミュージック・シーンを牽引し、ミルトン・ナシメント、トニーニョ・オルタらと共に、「クルビ・ダ・エスキーナ」で活動したボルジェス・ファミリー。世界的なシンガー・ソング・ライターとして知られる兄ロー・ボルジェスの弟にあたり、その実力に勝るとも劣らない天才が、このテロ・ボルジェス。エリス・レジーナの名唱でも知られる「VENTO DE MAIO」の作者でもある。 本格流通が為され日本国内でもブラジル/AORファンを中心にで好評を博した、テロ前作2007年録音「Centelha no Olhar」以来のリリースとなるのが、本作「Bom Sinal」である。兄ローをはじめとするミナス勢特有の豊潤さにプラスして、トータルなストレンジ・ポップ・ミュージシャンとしてのこだわりによる、テロのサウンドが完全開花した素晴らしさ。キーボード奏者テロが、音流とその重なりを突き詰めて完成させたサンプリング&ライブ・バンドの華麗なミクスチャー。元々、サウンド・メイクに対し兄弟全員が執着していたとされるボルジェス・ファミリー。そのスピリットを確かに継承している本作でのヴァリエーション。ラップ、R&B、ソフト・ロック、ネオ・アコ・・・多彩なセンスが垣間見える中に、全曲テロ・オリジナルのファジーなメロディー・ラインが生きている。タイトル曲M4、兄ロー・ボルジェスのリーダ作「SONHO REAL」中でもヒットしたテロの名曲のセルフ・カバー。独特のセンチメンタリズムを認めたブラジリダージが、テロのナチュラルなヴォイス・ワークと共に広がる聴き味で鼓膜を優しく刺激する。極めて近親のミュージシャン達が集って、リラックスして録り下ろしたオリジナル・レコーディング。メイン・ストリーム・ミナスの新たな魅力が存分に詰まった好作だ。オルタナティヴ・ロック・リスナーにもレコメンド。