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シンガー・ソングライター/フォトグラファーとしてサンパウロ・インディ・アートの中核的存在として、素晴しいソロ・アルバムをリリースするMPBのニュー・ヒロイン、ダニ・グルジェル(DANI GURGEL)。日本でもダニへの評価が高まるが、その音楽的背景に大きく帰依するのが実母でピアニストのデボラ・グルジェル(Debora Gurgel)である。



ダニのサポートでも注目されるデボラは、実はサンパウロ・ジャズ界でその実力を知られた名手であり、ライブを中心とした数々のセッションで活躍する傍ら、「TRIALOGO」というピアノ・トリオ名義で2005年にインディペンデント・レーベルで作品も発表している。そんなデボラの初リーダー作がこの1枚だ。プレイヤーとしてのみならず、全曲オリジナル・コンポーズで作曲家としての才覚も発揮した、彼女のキャリアがすべて注ぎ込まれた素晴しい作品に仕上がっている。

オープニングは、トリオによる軽快なジャズ・サンバ。ドラマティックな展開のメロディーを、流麗なタッチで綴る。彼女はこの曲でアミルトン・ゴドイ、セザル・マリアーノ、チック・コリア、ピシンギーニャといった先人にオマージュを捧げているという。続く#2はホーン・アンサンブルをフィーチュア。壮大なフレージングを、デボラのピアノとトランペット・ソロがまろやかにまとめ上げる好曲だ。北東部舞踊バイアォンをピアノ・トリオ・ジャズにアップデートした#3を経て、#4では、娘ダニ・グルジェルの澄んだヴォイス・ワークを挿入したオーガニック・ジャズ。

続くダニとデボラの共作#5は、ソプラノ・サックス・ソロが印象的。再び、ダニのヴォーカルとアコーディオンをフィーチュアした内省的なミディアム・ボサ・ジャズ#6、ホーン・セクション入りののブルージー・チューン#7、60年代のジャズ・ボサを想起させるようなトリオ・ナンバー#8と、フル・セッションのアグレッシヴにグルーヴを従えてダニ・グルジェルが本気でジャズ・ボサ・ノヴァを歌うラスト#9は、圧巻のハイライトだ。

そして、やはり中心を占めているのは、デボラ・グルジェルという稀有のピアニストの存在感。 高尚なジャズ・アレンジ、すべてのトラックで聞かせる繊細かつ力強いピアノ・タッチはリスナーの中へ入り込んでくる。追伸曲として位置づけられた#10で聞かせるピアノ・ソロでの終焉がそれを物語っており、心地良い余韻を残してくれる。サンパウロ・ジャズの底知れぬ素晴らしさを現した、デボラ・グルジェルの才能を大いに感じることの出来る逸品として、ブラジル/ジャズ・ファン双方に堪能して頂きたい。


■ブラジル・インストゥルメンタル・ミュージック・ディスクガイド掲載品■
2013 年の初来日公演が記憶に新しいピアニスト Debora Gurgel のソロ名義作品。ショーロ、バイアォン、マラカトゥ、MPB、サンバ・ジャズを、クラシックやトラディショナルなジャズのフレーズを引用して、ジャズ・フォーマットで表現した傑作で、アレンジ面でもDebora のセンスの良さがいかんなく発揮されている。3 曲で娘のDani Gurgel がヴォーカルで参加。現在のサンパウロのジャズシーンを語る上でも欠かすことのできない一枚だろう。本作から発展したのがDani & Debora Gurgel Quarteto だ。
(ディスクガイド・レビューより)

 


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【Musicians】
Debora Gurgel - piano (all tracks)

Thiago Rabello - drums
Sidiel Vieira - contrabass
(track 1,3,4,5,8)

Cuca Teixeira - drums
Marinho Andreotti - contrabass
(track 2,6,7,9)

Dani Gurgel - vocal & voices (track 4,6,9)
Guilherme Ribeiro - accordeon (track 6)
Daniel D'Alcântara - trumpet & flugelhorn (track 2,7,9)
Vitor Alcantara - soprano & tenor sax (track 2,5,7,9)
Carlos Alberto Alcantara - tenor sax (track 2,7,9)
Maurício "Laws" de Souza - flute & alto sax (track 2,7,9)