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アルゲリッチ初来日時のプロコフィエフは世界初出
札響を飛躍させたシュヴァルツとの伝説の記録
1970年に初来日を果たしたアルゲリッチの、日本での記念すべき初の協奏曲演奏がこのプロコフィエフの3番でした。当時の熱狂振りと札響との熱い共演は、今では伝説となっています。シュヴァルツ指揮によるモーツァルト2曲の品位ある響きも絶品。オリジナルのアナログマスターより高品位でリマスターを行った、稀少なステレオ音源です。アルゲリッチは1965年のショパン・コンクール優勝後もDGレーベルを中心に複数のレコーディングを行い、ここに収録されているプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を1967年にアバド指揮ベルリン・フィルと録音。そして1970年1月から2月にかけて初めて来日しました。1月15日東京文化会館を皮切りに、東京と横浜でソロ・コンサート開いたあと、1月24日には札幌で協奏曲のソリストとして登場することになりました。アルゲリッチが最初に日本のオケと共演したのは、実は札響だったのです。それまでも世界的なソリストと幾多の共演をしてきた札響でも、当時でもスターであったアルゲリッチとの共演は、この時代を代表するハイライトと言ってよいでしょう。
演奏は、アルゲリッチの才気溢れる強烈なピアノとの対峙から始まり、徐々にぐいぐい引っ張られていく様は聴いていて感動します。最後に一体となった熱気とパワーは、一度聴いたら忘れられない体験と言えるでしょう。やはり凄い演奏です。尚、ブックレット内には、「音楽の友」1972年1月号に掲載された、珍しいアルゲリッチの写真を入れました。恐らく1972年以来となる、貴重な写真です。アルゲリッチとの共演は、 1969年に札響の指揮者に就任し、ちょうどこの1970年より常任指揮者として札響の重要な成長期を牽引したペーター・シュヴァルツでした。カップリングのモーツァルト2曲は、弦楽器出身のシュヴァルツとの驚くべき演奏です。結成から10年に満たない札響をここまで昇華させた力は絶大で、自然なモーツァルトの流れや柔和さは、当時の日本のオケでは出色だったのではないでしょうか。1925年ウィーンの生まれで、ウィーン少年合唱団からウィーン国立アカデミーで作曲とチェロを学んだシュヴァルツは、チェロ奏者としてウィーン・フィルや1952年からは結成されて7年ばかりのバンベルク交響楽団では首席も務めた名手でした。指揮をスワロフスキーとクレメンス・クラウスに学び、指揮者としてのキャリア転身を図った先が札幌交響楽団だったのです。札幌に根ざし、まさに札響と共に一時代を築いたシュヴァルツこそ、現代の札響の音色の基礎を固めたと言っても過言ではありません。
今回の復刻では、札幌交響楽団が保有していたオリジナルのアナログマスターテープより、高品位で2種のデジタル化を行い(DSD5.6MHzと DXD(352.8kHz/32bit))、そのままのスペックでSACD層、CD層用として別々にマスタリングし、製品化を行いました。楽器の個々の音色や当時の会場の空気感までも伝える音質で、ここまで素晴らしい音が残っていたことは驚くべきことです。1970年代の録音では、より各楽器の音色や実在感が増した響きとなっています。SACD化でより顕著に感じることができるでしょう。今回のステレオ音源でも、時代を超えた生々しい響きに驚くことと思います。尚、経年変化や当時の収録方法により、一部にノイズやドロップアウト等の聴き苦しい点がございますことをご承知ください。今回の札幌交響楽団アーカイブ・シリーズ第I期は、全5点を発売いたします。 (資料提供:タワーレコード)
札響アーカイヴ・シリーズ第1期5タイトル
荒谷正雄 第1回定期演奏会 ステレオ録音 TWFS90003 | 近衛秀麿 ベートーヴェン:交響曲 第1番&第7番(近衛版) TWFS90004 | P.シュヴァルツ、 M.アルゲリッチ(PF) モーツァルト35番&38番 プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 TWFS90005 | 朝比奈隆 ブルックナー 交響曲第4番 TWFS90006 | 朝比奈隆 ハイドン:交響曲第2番 ブルックナー: 交響曲第0番 TWFS90007 |
岩城宏之 ベートーヴェン 交響曲第4番&第7番 TWFS90008 | 岩城宏之 R=コルサコフ シェエラザード、ほか TWFS90009 | 渡邉暁雄 シベリウス 交響曲第2番&第5番 TWFS90010 | 朝比奈隆 シューマン 交響曲第3番、ほか TWFS90011 | 山田一雄 チャイコフスキー 交響曲第5番 TWFS90012 |
PETER SCHWARZ / ペーター・シュヴァルツ
オーストリアの指揮者、チェリスト(1925-1998) 1970-1975;札幌交響楽団常任指揮者