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すがすがしさと不思議さ、楽しさと色気をたたえた琉球電子サロンミュージック。この二つとない作品『水中庭園』(1993) の発表 30周年を祝した初 LP リリース。ボーナス曲を加えてお届けします!!
沖縄の音楽家、コージュンこと國場幸順(こくば こうじゅん)は、70 年代から数々のバンドと関わって「裏方のコージュン」と呼ばれ、80 年代に六人組という幻のバンド(※)を作ったことで一部に知られる。この『水中庭園』は、琉球王朝交易時代に着想をえた「平和なアジア」をイメージした「BGM」を作ろうと制作着手されたが、予期せぬコンサートバンド結成(のちの六人組)のため制作は中断。その後、バンドが消滅してプロジェクトも白紙に返ったが、彼は機会を待ち 1993 年に本作を完成させた。
『水中庭園』は、沖縄をルーツとしながら広くアジアの音楽にも影響されており、アジア各地の伝統的音階に由来するフレーズを重ね、改変し、典型的な西洋の和音ハーモニーの動きを排除した点に大きな特徴がある。電子楽器とマルチトラックを使い、彼いわく「線を積み重ねる」ようなメロディーの集積の実験は、沖縄からアジア世界へ向け新しいエネルギーの拡散を目指したかのようだ。そのすがすがしさと不思議さ、楽しさと色気のユニークな混合物であるサウンドはアジア由来の音階を束ねた結果に思われる。シンセとドラムマシンを駆使して心地よく特徴的なリズムを刻んでいるが、それはダンスフロアのためではなく、テクノロジーを駆使した「BGM=軽音楽」としての電子サロンミュージックをイメージしている。
國場のいう「平和なアジア」とは、海上交易で繁栄したかつての東アジア~東南アジアの営みを想像したもので、そのネットワークでは物だけでなく音も行き来し、どの音楽(音階)も新しく「ポップな」ものとして迎えられたと彼は思い描く。
※注:六人組は坂本龍一のレーベルメイトとして、ビル・ラズウェルのプロデュースで世界デビューする予定だったが、不運と事故が重なって消滅した。
KOJUN / コージュン