自らが作曲した冒頭のタイトル曲”Mar adentro”から惹きこまれる。ピアノのアルペジオによって立ち上がるシリアスな風景をバックに凛とした歌声を聴かせるマリナ。迷いのない歌声からは彼女の本作への意気込みと揺るがない自信が見て取れる。ピアノ・トリオにアコーディオンを加えた編成で綴る ”Corazon”もマリナの自作曲。#4”Marina”は新世代を代表するSSWセバスティアン・モンクの楽曲。アカ・セカ・トリオのパーカッショニストとしても知られるマリアノ・カンテーロによる空間掌握するような音作りも印象的だ。新世代随一の作曲家=ホルヘ・ファンデルモーレ作の”Lo que usted se merece”は本作のハイライトの一つ。過度な表現は抑制しつつもヴァイオリンとピアノのアンサンブルをバックに、じっくりと歌い上げる姿は、モダンでありながらフォルクローレ特有の豊かな文化性も余すことなく感じさせてくれる。もう一つのハイライトがギターとピアノ、ヴァイオリンが織り成す繊細なアンサンブルの#7”La retirada”。マリナの作編曲家としての並外れた才能を実感できる高度にして説得力に溢れた一曲だ。