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冷戦終結後、東欧諸国の自由化を映し出す民俗的大衆音楽、
それが「東欧演歌」だ!
ターボフォーク(セルビア、スロヴェニア)
チャルガ(ブルガリア)
マネレ(ルーマニア)
新作曲民謡(旧ユーゴスラヴィア)
アラベスク(トルコ)
ラビズ(アルメニア)
リプシ(東ドイツ)……
これら東欧各国で流行している民俗的大衆音楽( それを筆者は「東欧演歌」と名付けた)は、当時東欧各国が体験しつつあった社会主義から自由経済へという現代最大の社会変革をみごとに映し出している。ここでは高価な車ときらびやかな宝石、最新のモードと奔放な性が歌われながら、その一方でそんな新しい生活への戸惑いや疑いも同時に表明される。音楽はオリエントとオクシデントの間で揺れ動く。新たに流入した欧米のポップ・ミュージックが模倣される一方で、ただのイミテーションでは済まずに突如「民俗的」な響きが噴出する。
──伊東信宏/本書「はじめに」より
セルビア、ブルガリア、ルーマニア、旧ユーゴ諸国、
トルコ、東ドイツ、スロヴェニア、アルメニア──
冷戦後に東ヨーロッパ各国で進んだ自由経済への体制転換。
一気に流れこんだ西側のポップ・ミュージックが
土着の音楽と結びついて民俗的大衆音楽が誕生した。
現地の文化状況に精通する気鋭の研究者が集結し、国際ニュースからは伝わってこない大衆の真実を〈うた〉から読み解く!
◎執筆者(掲載順)
伊東信宏(いとう・のぶひろ / 大阪大学中之島芸術センター長、人文学研究科教授)
イヴァ・ネニッチ(Ива Ненић / ベオグラード芸術大学講師)
上畑史(うえはた・ふみ / 人間文化研究機構人間文化研究創発センター研究員)
ステラ・ジブコヴァ(Стела Живкова / ソフィア大学助教授)
新免光比呂(しんめん・みつひろ / 国立民族学博物館教授)
岩谷彩子(いわたに・あやこ / 京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
輪島裕介(わじま・ゆうすけ / 大阪大学大学院人文学研究科教授)
奥彩子(おく・あやこ / 共立女子大学文芸学部教授)
濱崎友絵(はまざき・ともえ / 信州大学人文学部准教授)
高岡智子(たかおか・ともこ / 龍谷大学社会学部准教授)
齋藤桂(さいとう・けい / 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター専任講師)
クララ・フルヴァティン(Klara Hrvatin / リュブリアナ大学助手)
阪井葉子(さかい・ようこ / 元大阪大学大学院文学研究科助教、故人)
木村颯(きむら・そう / 大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士前期課程修了)
プロフィール
伊東信宏(いとう・のぶひろ)
1960年京都市生まれ。大阪大学大学院文学研究科教授、中之島芸術センター長。専門は、東欧の音楽史、民俗音楽研究など。大阪大学文学部、同大学院修了。リスト音楽大学(ハンガリー)研究員、大阪教育大学助教授などを経て現職。著書に『バルトーク』(中公新書、1997)、『中東欧音楽の回路 ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』(岩波書店、2009、サントリー学芸賞)、『東欧音楽綺譚』(音楽之友社、2018)、『東欧音楽夜話』(同、2021)、編著に『ピアノはいつピアノになったか?』(大阪大学出版会、2007)、訳書に『バルトーク音楽論選』(太田峰夫と共訳、ちくま学芸文庫、2019)、『月下の犯罪』(S.バッチャーニ著、講談社選書メチエ、2019)ほかがある。
(メーカーサイトより)
ITO NOBUHIRO / 伊東信宏