【連載コラム】The Conscious of R&B - aimi : Vol.4 『Queen Naija』

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2021.04.23

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毎月第4金曜更新の連載コラムを担当しています、R&Bシンガーソングライターのaimiです!

『The Conscious of R&B』と題して、2021年注目すべきR&Bアーティストを紹介しています。今ホットなR&Bアーティストが何を考え、何を感じ音楽を作っているのか、作品に隠された “意識”に注目して、勝手な私の解釈も交えながらお伝えするコラムです。



この記事で紹介するのは、デトロイト出身のシンガーソングライター『Queen Naija(クイーン・ナイジャ)』です。
若干25歳の女性R&Bシンガーで、すでに25億回以上ストリームされているグローバルスター。昨年10月にリリースされたデビューアルバム『misunderstood(ミスアンダーステュッド)』はBillboard R&B アルバムチャートで1位を獲得。つい先日、4月16日にデラックス版『misunderstood… still』をリリースしました。
なぜこんなにも人気があるのか、私自身も彼女のことをよく知らなかったので、調べてみることにしました。

 


(引用:https://www.billboard.com/articles/business/chart-beat/9483011/queen-naija-missunderstood-number-1-rb-albums-chart/ )

Naijaはイエメン・イタリア・アメリカンアフリカンの血を継ぐミックスガール。二児の母であり、アーティストであり、YouTuberでもあります。Naijaがオンラインでバイラルになったきっかけは、同じくシンガーの元夫と開設したYouTubeのカップルチャンネル。元夫はかなりの浮気性だったようで、二人は数年のうちに離婚。Naijaは自身のYouTubeチャンネルで発信を続け、現在の登録者数は489万人(4月19日時点)を越えています。すでに巨大なファンベースをもっていたNaijaが、満を辞してリリースしたデビューアルバムについて紹介していきたいと思います。

 
 
Naijaは幼い頃から教会でゴスペルを歌って育ち、シンガーになることを夢見ていましたが、幼少期から裕福ではなくホームレスだった時期もあり、セキュリティの仕事をしていたそう。19歳の頃にはアメリカのオーディション番組『American Idol』にも出演しています。
その後、妊娠・結婚・離婚などを経験しながら、YouTubeでの発信を続けていました。インデペンデントでありながら1st シングル『Medicine』がBillboard Hot100 で最高45位まで上昇し、メジャーレコード契約を勝ち取ります。昨年はJhené Aikoとのツアーが決まっていましたが、新型コロナの影響でツアーは中止。リリースも先延ばしになっていましたが、昨年10月30日にデビューアルバム『misunderstood』がようやくリリースされたのです。
サウンドや歌唱スタイルはNaija自身が好きなクラシカルな王道R&Bという感じですが、アルバムに込められたメッセージや歌詞には彼女のリアルなストーリーが落とし込まれていて、Naijaだからこそ歌える内容になっています。

ここからは特にアイコニックな楽曲を紹介していきます。



1曲目の『Intro』は、これまでNaijaに向けられてきたネット上の批判やアンチコメントが収録されています。「妊娠してからシーンからすっかり消えた」「結局一発屋でしょ」「声が普通だし、歌も平均点」「そんなに可愛くもない」など聞くに耐えないようなコメントが次々と耳に飛び込んできます。Naijaはそういった批判に対して『私は誤解されている(misunderstood)』というメッセージで答えているのです。



2曲目の『Too Much To Say』ではNaijaの本音を赤裸々に明かしています。

They told me that I’m runnin’ out of time, I ain’t lit no more
(彼らはもう私は手遅れだと言ったの、もうイケてないって)
Say my music gettin’ weak, it don’t hit no more
(私の音楽は弱くなっていて、もう刺さらないって)
Sometimes I don’t wanna have fame, or get rich no more
(時々、有名になりたいとも、お金持ちになりたいとも思わない)
But I got two kids to feed, I can’t sit no more
(でも、二人の子供たちがいて、ずっと座ってる場合じゃないの)
I foot the bill for everything, world on my shoulders
(全て私が支払わなくちゃいけない、全部を背負って)
Wanna break down but I can’t, I gotta hold up
(泣き出したいけどできないの、自分を保たなきゃ)
Wanna free my mind but I’m tryna stay sober
(自分を解放したいけど、シラフでいるようにしてる)
I ain’t really live yet, I’m only getting older
(まだ生きてないみたい、ただ年を重ねているだけ)
I got too much too say
(言いたいことがありすぎるの)

R&Bは恋愛を扱うことが多いですが、個人的には『リアル(な感情)』を扱うジャンルだと思っています。Naijaは経験してきたことを日記のように歌詞に落とし込んでいて、R&Bしているなと頷いてしまいました。曲によっては他のソングライターやプロデューサーと共作している曲もありますが、全曲自身が作詞作曲に関わっているそう。嘘がない歌詞ってグッときますよね。

多くの批判を受けたことはもちろん辛いことだったと思いますが、持ち前の明るさと前向きな性格もあり、ファンに支えられていると本人も語っています。



YouTuberとして自分のプライベートをさらけ出してきたNaijaは、音楽の中でもかなり赤裸々です。普段口にはしないけど、実は密かに思っていることを歌ってくれるので、どこかスカッとするようなところがあります。4曲目の『Pack Lite』がまさにそんな一曲。Eryka Baduの『Bag Lady』をサンプリングしている曲です。歌詞は恋人に対してバッドバイブス(嫌な態度)を持ち込まないでと忠告している内容ですが、職場でも、家庭でも、友情関係でも、誰もが感じるようなことですよね。

Give me bad vibes
(バッドバイブスを出してくるよね)
If you don't get your act together, you might have to
(いい加減にしてくれないなら、ささっと)
Pack light
(荷物をまとめて)
And do you
(自分の好きなようにしたら)
Bad vibes
(バッドバイブスをくれるよね)
My patience runnin' low and you ain't got a lot of time
(これ以上我慢できない、そんなに時間は残されてないわ)
So pack light
(だから荷物をまとめて)
And do you
(自分の好きなようにしたら)





Naijaと言えば、クイーン・リレーションシップ(恋愛)と呼んでいいほど、ラブソングが多いアーティストでもあります。2018年にリリースされた1st EP『Queen Naija』の収録曲『Butterflies』はNaijaの代表曲のひとつですが、その続編となる『Butterflies Pt.2』がアルバムに収録されています。



オリジナルでは、恋に落ちたばかりの関係について歌っていましたが、続編では2年付き合っている彼に対する想いに合わせて歌詞がアップデートされています。彼と長くそばにいたい気持ちを歌った “逆プロポーズ”のような内容になっていて、深い愛に変わっているのがわかります。Mike Woods、Boston、Pat McManusがプロデュースした楽曲で、アルバムにフィーチャリングで参加しているKiana Ledéの楽曲もプロデュースしているクリエイター陣が手がけています。

Let's go everywhere together
(どこでも一緒に行こう)
Turn two years into forever
(二年を永遠にしようよ)
We'll make diamonds under pressure
(プレッシャーをダイアモンドに変えて)
And turn the pain into pleasure
(痛みを喜びに変えよう)
I wanna have your last name
(あなたの苗字をもらいたい)
No matter how long it takes
(どれだけ長く時間がかかってもいい)
You always make me feel so safe
(あなたはいつも私を安心させてくれる)
And that’s how I know you're worth the wait
(だから待つ価値があるってわかるの)


一度結婚で失敗したからこそ、今回は慎重にという印象ですね。2年経っても変わらず、蝶々が舞うようにときめくわと幸せそうで何より。人はみんな幸せになるべきですからね!




個人的に一番オススメな曲はデラックス版に収録されている『Set Him Up feat. Ari Lennox』。AriとNaijaの歌声の相性が抜群。これは実話ではないと思いますが、ストーリーのオチが面白い。

1ラインずつ交互に歌っていく楽曲で、二人の電話の会話がそのまま歌詞になっています。最近会ってる彼が最高だっていう話をお互いにしていくうちに、「あれ、同じ男の話してない?」と途中で気づきます。それからその男をどうやってこらしめてやろうかとアイディアを出し合うんです。

Ari: Hey girl, I got an idea
(ねえ、いいアイディアがあるわ)
What if I call and told him, "Meet me somewhere?"
(彼に電話して、どこかで会えるって聞くのはどう?)
Naija: Yeah, I could roll up with you in those tinted backseats
(いいね、一緒に行ってバックシートにいればいいわね)
And tell him, "Get inside" then surprise it's me
(それから “中に入って”と言うの、そこで私よって驚かせる)
Ari: Hmm, wait, I'ma ask him if he ate
(うーん、ちょっと待って、食事はしたかって聞くわ)
Naija: Yeah, that's a little better, take him to his favorite place
(その方がいいわ、それから彼のお気に入りの店に連れていくの)
Ari: Then when his food is ready, I'ma have you bring the plate
(それで彼の注文した食事が出来上がったら、あなたがそれを持ってきて)
Naija: Ooh, girl, I cannot wait to see the look upon his face, yeah
(あー、どんな顔をするか楽しみでしかたない)


この曲のインスピレーションとなったのは2007年リリースのR. Kellyの『Same Girl (with Usher)』。同じ女に引っかかっちゃったことを歌っている曲ですが、MVのオチは双子だったというどんでん返し。復讐まで企まないんですよね。やっぱり、女の方が怖いなぁ(笑)

Queen Naijaがなぜ世界的にこれだけ人気になったのか。YouTubeで確立したファンベースが礎を築いていることは間違いありませんが、彼女の赤裸々で嘘のない、オープンな人間性と豊かな人生経験、それがダイレクトに伝わる楽曲やミュージックビデオが多くの人に支持されている最大の理由かもしれません。広がり方は新しいですが、クラシカルなR&Bマナーを大事にしている点では懐かしさもある、温故知新のセンスで培った人気だとも言えます。

ということで、今月も夜な夜なコラムを書かせていただきました。もしも気に入ったらシェアしてもらえたら嬉しいです!

2021/4/23


< INFO>
私aimiも、新しいEPをリリースしました!
前作に引き続き R&BプロデューサーのShingo.Sと現行R&Bサウンドを意識して作ったEPで、ソングライティングもボーカルもアップデートしました。ほぼ全編英詞で歌っています。



『Changed 4 Good』

  発売日:2021年2月24日
 ▼配信音源はこちら
  https://orcd.co/changed4good
 < 収録曲 >
 1. Fight No More
 2. On You
 3. The Wave feat. Furui Riho
 4. Back In Luv
 5. KMHH


先月、2nd EPから『Fight No More』のRemix EPもリリースしました!



『Fight No More (Remix EP)』

   発売日:2021年4月14日
 ▼配信音源はこちら
 https://orcd.co/fightnomoreremixep
   <収録曲 >
 M1. Fight No More (grooveman Spot Remix)
 M2. Fight No More (Shingo.S Remix)
 M3. Fight No More (DJ AKITO Remix)
 M4. Fight No More (Sam is Ohm Remix)
 M5. Fight No More (ggoyle Remix)
 
※コラムの特別編でリミックス集についてセルフライナーノーツも公開中!



さらにEPリリースを記念して、この度ディスクユニオンのレーベル「Kissing Fish Records」から初のフィジカルをリリースすることになりました!なんと人生初の7インチ アナログ盤。Fight No More』のオリジナルバージョンと、Jazzy Sportの最重要選手でもあるgrooveman SpotさんのREMIXが収録されます。予約受付中ですので、是非チェックしてもらえたら嬉しいです!



『Fight No More』

  発売日:2021年6月2日
  ▼オリジナルバージョンの配信音源はこちら
  
https://orcd.co/bxjvddj
   <収録曲>
   1. Fight No More
   2. Fight No More (grooveman Spot Remix)






<Profile>



aimi

コンテンポラリー R&B シンガーソングライター。千葉県成田市出身。幼少期にソウルやディスコミュージックを聴き始め、90's, 00's R&B に影響を受ける。
学生時代に留学先のイギリスマンチェスターでライブオーディションに出場し、アジア人として初優勝。歌手の道に進むことを決意する。
長年のライブ活動と自主制作を経て、2020 年『aimi』として新たなプロジェ クトを始動。
2019 年、音楽プロデューサー Shingo.S との出会いをきっかけに、楽曲制作をスタート。
2020 年5 月にリリースしたデビュー EP「Water Me」が iTunes R&B / ソウルチャートで初登場 1 位を獲得。リード曲「Sorry」が J-WAVE の SONAR TRAX に選ばれ、パワープレイされる。
楽曲は 英語と日本語両方で制作しており、国境を越えた音楽活動を目指し、精力的に活動している。
2021年 1 月より block.fm にて DaBook と DJ AKITO (Chilly Source) と R&B プログラム『Vibe-In Radio』のパーソナリティを務める。
また disk union 公式サイトにて R&B 楽曲を紹介する連載コラムも担当。

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