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『原点回帰!! ピアノとどっぷり“響鳴”する』
2017年初めに発表したソロピアノアルバム「Dream of You〜SaloneII」に続く、高木里代子のフルアルバムである。高木はメジャーデビュー作「THEDEBUT!」(16年)の前に、東京・成城学園のミニホール「サローネ・フォンタナ」で録音した「Salone」(15年)を発表している。これは「II」同様、ソロライブ盤であった。本作「Resonance」は、同じソロピアノながら観客を入れないスタジオ録音という違いがある。大差ないと思われる向きもあろうが、「DEBUT」とも「Salone」とも一線を画す大きな飛躍を遂げた作品となっている。
高木は、大々的な売り出し作戦に乗ってジャズシーンに登場した。エレクトロとダンスを念頭に置いた、ポップ・ジャズを広めるに当たって、本人も喜んでいたし、どこか動脈硬化的なジャズ状況に活を入れるという一定の成果があったと思う。だが、余りにもプロモーションの印象が強烈だった。18年は「次の段階」への方向を見極めるのに時を費やしたように見える。ただ、それが停滞や無為な時間ではなかったことは、この
「Resonance」で証明できたと言えよう。本人のコメントにもあるように、高木は改めて「ピアノの響きに深く向き合って、名曲の永遠の美しさ」を表現したいという大きな覚悟を表明している。新しいスタイルを追い求めるのもジャズだし、古いスタイルを掘り下げるのもジャズである。が、高木は、ピアノそのもの、楽曲そのものへの直接的なアプローチを選び取ったようだ。ある意味、子供の頃から親しんだ、ピアノ音楽への原点回帰である。これまでライブで披露している名曲が多いが、イタリアの名器「ファツィオリ」に対峙した高木は、すべての曲をさらい直した。ファツィオリの響きは、どうもそれを要求したようである。自分の表現に新たな「何か」を求めていた高木にとって、この深く耽美的な響きを持つ楽器は、別次元に運んでくれる未来のマシンだった。リズムに追い駆けられることもなく、ビートに翻弄されることもなく、コードに束縛されることもなく、ピアノの響きに包まれ、そのためだけに呼吸し手指を動かし集中しているのが聴き取れる。悲しみに傷つきやすい青春の脆さや小さな人間の危うさを響きに変えて対話しているようである。
静謐で透明感あふれ、情景と物語がくっきりと眼前に広がる。高木は新たなステージに至った。【毎日新聞社学芸部・川崎浩】
RIYOKO TAKAGI / 高木里代子
4歳からピアノを始め、慶應大学在学中から演奏活動を開始。変幻自在なインプロヴィゼーションで人気を博す。2014年、ダイナースクラブ動画コンペで、人気投票一位を獲得しブルーノート出演。国際的コンペ「6 string theory」でピアノ部門世界第4位、モントルージャズフェスティバルジャパンコンペセミファイナル進出。2015年「東京JAZZ」出演時のパフォーマンスが話題となり各スポーツ紙等で取り上げられる。2016年エイベックスより「THE DEBUT!」リリースでメジャーデビュー。2017年JAZZ JAPAN AWARDニュースター部門賞受賞。2021年11月、初のピアノトリオアルバム第一弾「Celebrity Standards」2022年1月ピアノトリオアルバム第二弾「Jewelry Box」を発売。どちらのアルバムも、Amazonジャズ・フュージョンチャート1位、タワーレコードJAZZデイリーセールスランキング1位、ディスクユニオンJAZZ TOKYOウィークリーセールス1位をそれぞれ記録するなど話題を呼ぶ。日本全国勢力的にツアーも展開中。テレビ等メディア多数出演。TBS朝の情報番組「THE TIME」「THE TIME,」にレギュラー出演中。