2022.01.01 ラテン・ブラジル・ワールドミュージック 特集・お知らせ

ディスクユニオンが選ぶ年間ベスト・アルバム大賞 2021 ARGENTINA / URUGUAY / CHILE部門 <新録>

※全ジャンルまとめはこちら!


ARGENTINA / URUGUAY / CHILE部門 <新録>


<総評>

昨年に引き続き、今年もCOVID-19の影響が大きく、南米のインディペンデントなアーティストのフィジカルリリースがほぼ止まっている。しかしながら、そんな状況下でスタートさせたクリバスのフアン・フェルミン・フェラリスのレーベル、Yuntaの第1弾リリース、ALEXIS TAVELLA『AGUABEMBE』が特に素晴らしかった。まだ公式にはアナウンスされていないが、レーベルの第2弾リリースはフェルミンのピアノトリオ作品とのことで、こちらも大きく期待したい。また昨年はロドリゴ・カラソ、アシィなどコルドバ勢の躍進が目立ったが、今年もCLARA PRESTAがコルドバから素晴らしい作品を届けてくれた。その他にも、NAIR MIRABRAT、MARIANO GALLARDO PAHLENという若いウルグアイの音楽家の作品からは、ローカル/インディペンデントから出発しながらワールドワイドに活躍する可能性を感じさせられた。そういった意味で、実際にワールドワイドな存在へとフックアップされたのが、YouTubeから話題が広がり、ついにはラリー・クラインのプロデュースでDecca/ユニバーサルからデビューしたのがアルゼンチンはサンフアンのデュオ、CANDE Y PAULOだ。アルバムはややオーバー・プロデュース気味にも感じられたが、とはいえアルゼンチンのローカルシーンの無名の音楽家が様々な国で聴かれるためには必要だという判断だったのだろう。 NYで活動するイスラエル出身の気鋭のギタリスト、YOTAM SILBERSTEINがアルゼンチンの現代フォルクローレを代表する存在であるCARLOS AGUIRREとデュオ作をリリースしたこともトピックだった。もともとヨタムがアルゼンチン音楽に傾倒していたことは知っていたが、まさかの組み合わせだった。もちろん内容も素晴らしかったが、これを機会に実はNYでアルゼンチン音楽が一部のジャズ系のミュージシャンの間で聴かれている、という状況からの飛躍を期待してしまう。2022年もいい意味で驚かされるような作品のリリースに期待したい。(営業部 宮本)



▼TOP 10 ※上から 1位→10位


 シンガーソングライター/フォルクローレ & ロック/インディー部門

*** BUYER'S RECOMMEND ***

〇 AINDA (AINDA DUO) 『MILLONES』
2013年デビューのアルゼンチンのユニット、アインダ・デュオ。仲間うちでブラジル~アルゼンチンの音楽をかけるDJイベントを不定期で開催しているのですが、そこでもかなりの頻度で登場します。初期は良質なフォルクローレ、ギジェルモ・クレインが参加していたりなど、ジャジーで美しいサウンドが特徴でしたが、3作目でインディ・ロック路線に激変。今作は2020年に配信でリリースされていたものをCD化したもので、3作目路線を踏襲した内容になっていますが、前作と比べると断然こなれてきた感じがあります。前作はなんとなくアルバム後半あたり、フォルクローレに未練があったようにも感じたのですが、今作は基本インディ・ポップに振り切っており、メロウなアレンジと美しいメロディがたっぷり堪能できます。CDでのリリース、しかもプラケース仕様というのがまたいいのです。レトロな雰囲気も漂うこういう音楽は、プラケCDにマッチしますよね。ちなみに、今作から"DUO"が取れてアインダ、になったそう。デュオ解消……?何かあったのかな、と勘ぐってしまいますが、プラケースの中の二人、めちゃくちゃ仲が良さそうで、全くの杞憂でした。(横浜関内店 山田)

〇 ALEXIS TAVELLA / AGUABEMBE
コロナ禍のアルゼンチンにおいて、もともと経済的に厳しかった音楽家たちはCDを作ることをしなくなってしまった。SONYなどメジャー系のレーベル以外では、ほとんどリリースがないまま1年が過ぎようとしている。しかし、そんな逆境の中でも希望の光はないわけではない。アルゼンチンをこれから背負っていく音楽家、Cribasのフアン・フェルミン・フェラリスが主催するYUNTAがそれだ。レーベルの記念すべきリリース第1弾はフェルミンの盟友、マルチ奏者でシンガーであるアレクシス・タベージャのデビュー作。コンテンポラリー・ジャズ的なイディオムとアフロ・ラテン由来のリズムを取り入れたSSW作品の大傑作だ。レーベルの第2弾はフェルミンのピアノトリオ作品だとアナウンスされているが、ぜひとも今後のリリース作品にも注目していただきたい。(営業部 宮本)

先月購入してから、幾度となく繰り返し聴いている。曲を作って歌う、ばかりでなく、すべての楽器も自分で演奏し多重録音で制作しているという。その才能も素晴らしいが、不思議なのは何か懐かしい感じがしてならない、ということ。ある日それは昔よく聴いていたアレックス・クーバの声に似ているからだと気がついた。
坂口恭平は「声」と「言葉」を分けて考えてみたらいいんじゃないかな、と言う。日本語で会話すると「言葉」の意味を考えてしまうが、その人の本心は「声」にあるのだと。歌詞の意味がわからなくても外国語の歌を聴くのは、歌う人の声が好きだからだ。声を通じて、歌う人の本当の姿を受け取っているのだろうと思う。(営業部 藤本)

店頭でかけて久々に一音惚れした盤です。1曲目の頭のピアノでもう「ああ、これ最後までのんびり聴きたい。ここから30分くらい誰もレジに来ないでくれ。電話もちょっと勘弁。世論調査だったらある意味すごい引きだけど…支持? しません!」と店員としても国民としてもあるまじき独り言を漏らしそうになったほど、聴き心地のいいアルバムです。とてもワンマン演奏&多重録音とは思えないクオリティ。プロデューサーのバンド名を借りるなら『ひとりクリバス』。才能と髪型からすると『アルゼンチンの藤井風』。デビュー盤にもかかわらずどこかほのぼのとしていて肩の力が抜けているところも先輩や風に似て好感がもてます。窓を開け放った部屋でこのアルバムを鳴らしながらこれを書いている今、夕暮れ時の蝉も文字通りの飛び入り演奏&多重録音中です。(吉祥寺ジャズ館 笹山良林)

〇 CANDE Y PAULO / CANDE Y PAULO
レコード店員としては店内演奏している盤を買っていただくことほど店員冥利に尽きることはないわけですが、このアルバムの打率はおそらく全盛期のイチロー並みです(なんなら4割超えかも)。それもそのはず、一音で耳を掴むスモーキーな歌声。ジャズスタンダードあり、ニール・ヤングあり、同郷の雄スピネッタありの幅広い選曲。ヴォーカルとベースの二刀流も大谷世代(たぶん)には当たり前。バート・バカラックの名曲「WALK ON BY」のスペイン語バージョンは何度聴いても痺れます。今年のジャズヴォーカルアルバム大賞は早くも決まりかもしれません。(吉祥寺ジャズ館 笹山良林)

〇 クララ・プレスタ / パーハラ
アルゼンチンのコルドバはもはやブラジルのミナスと並ぶ音楽の都と言えます。本作のクララ・プレスタやプロデューサーのロドリゴ・カラソ(昨年リリースの『オクトゴノ』も名盤です)も含め、優れたシンガーソングライターが雨後の筍のごとく育っている模様です。ミナス然り、内陸部は海がない代わりに音楽の才能が湧き出てくるのかもしれません。バファリンもそうらしいですが、コルドバ音楽の半分は優しさで出来ています。小気味よく跳ねるピアノ、五連符を刻むギター、ポール&マリー風のコーラスなどなど、どの具材からも優しい味がします。もしも「二日酔いの日に聴いてほしいオールジャンル2021」があるとすれば、ジョン・ケージの「4分33秒」かこのアルバムで決まりでしょう。経験者が書いているので間違いないです。(吉祥寺ジャズ館 笹山良林)

日照時間が日に日に短くなって、同時に冷え込むこの時期には耽美過ぎだったか…? まあそれも美学ということで。アルゼンチン新世代シンガーソングライター&ピアニストのクララ・プレスタのこの作品はアルゼンチンフォークといってもゴリゴリのフォルクローレを披露しているというよりかはコンテンポラリー味が強く、ぐっと落ち着いているフォークといった印象。美し優し。ピアノがやたら綺麗なんでしょうね。南米の大地だ!! パァ!!! ではなく個人的にブルーグレー色の、冬の風景が広がって聴こえます。音が色に聴こえると言いますか。冬がやって来るにつれてうつになりがちってよく言うし、このアルバムで癒されてみても。(JazzTOKYO 関口)

コロナ禍かつ経済状況の悪化により、引続きリリースの少なかったアルゼンチンだが、今年フィジカル・リリースされたものではアレクシス・タベージャとクララ・プレスタの2作品が特に素晴らしかったように思う。アレクシス・タベージャについては「いますぐ聴いてほしい オールジャンル 2021」で選んだので、この場ではクララ・プレスタについて書くことにする。クララ・プレスタはアルゼンチンはコルドバで活動するSSWで、2018年にコントラバス奏者のFede Seimandiとのデュオ名義作品『Casa』でデビュー。今作は2ndでもあり、ソロ名義としての1作目でもある。コルドバのSSWシーンを代表する音楽家、ロドリゴ・カラソが全面参加&プロデュースした本作は、モダン・フォルクローレの範疇にとどまらないサウンドを獲得しており、より具体的に書くならば、フアナ・モリーナによる歴史的名盤『Segundo』(2000年)をも思い起こさせるものになっている。フォークトロニカ的な方向性からインディーロックへと歩みを進めたフアナ・モリーナだが、もしフアナがその後カルロス・アギーレのようなフォルクローレ勢と共作していたら、まさに本作のような音楽が生み出されたのではないだろうか。そんな風にも思わさせられる名作だ。(営業部 宮本)



 ジャズ & タンゴ & インストゥルメンタル部門

*** BUYER'S RECOMMEND ***

〇 DIEGO SCHISSI QUINTETO / TE
アルバムにおける1曲目が野球における先頭打者だとすれば、本作は先頭打者ホームランのアルバムと言えます。1曲目のイントロ。リーダーのディエゴ・スキッシが鍵盤の低音部をゴゴゴンと雷鳴のように叩いてプレイボール。そこに続くベース、ギター、ヴァイオリンと間をかいくぐる雨粒のようなバンドネオン。やがてすべてが溶け合い、気付けば私もアルプススタンド最上段まで運ばれていました。思い浮かべたのは、JBことジェイムズ・ブラウンの伝記映画のワンシーン。JBは集まったバンドメンバーひとりひとりに「お前の楽器は何だ?」と聞き、そのすべてに「ドラムス!」で答えます。ピアノもギターもベースもラッパもコーラスも全員がドラムス、つまり同じ穴のリズム隊という意味で、ファンクの誕生を告げる名場面でした。時代や場所や楽器が違えど、全員が優れたドラムスのディエゴ・スキッシ五重奏団も立派にJB'Sです。本職のドラムスがいない分だけ、また伝統的なタンゴの二拍子に縛られていない分だけ、JB'SよりもJB'Sかもしれません。21世紀のタンゴJB'Sによる赤道の南からの捻りに捻ったアンサーソングの数々を是非ご堪能ください。(吉祥寺ジャズ館 笹山良林)

〇 ヨタム・シルバースタイン & カルロス・アギーレ / エン・エル・ハルディン
これの一曲目は今年最も聴いた曲のうちのひとつ。一生の付き合いになりそうです。(横浜関内店 山田)



 スロウテクノ/トライバル & R&B/HIP HOP部門



 ウルグアイ&チリ部門

*** BUYER'S RECOMMEND ***

〇 ナイール・ミラブラット / フントス・アオラ
アントニオ・ロウレイロがプロデュース。エレクトロニックなジャズと、ウルグアイのアフロ系音楽カンドンベを融合するユニットのデビュー作。ウーゴ・ファトルーソらが推し進めてきたカンドンベ×ジャズの可能性をさらに拡張云々...というのはもちろん、近年先鋭的になりすぎて聴く人を選ぶのでは?と感じていたミナス新世代のサウンドがグッとマイルドになり、ポップにまとまっているのが個人的には好印象でした。歌モノとしても楽しめて、音楽的に大充実かつ新鮮さにも溢れている。個人的には今年のベストのひとつ。(新宿ラテンブラジル館/営業部 江利川)

〇 SOA / CANCIONES GUACHAS
地球の反対側、それも南米の大国ブラジルとアルゼンチンに挟まれた長野県くらいのウルグアイから、まさかコーネリアスのカバー曲(しかも日本語で歌ってます)まで入ったエレクトロポップなアルバムが届くなんて…。地球も狭くなったものですね。音色は確かに90年代のダンスミュージックを彷彿させますが、同じ4拍子でもドラムスとパーカッションの刻み方にウルグア色を感じます(キューバでいうクラーベのようなものでしょうか)。正直、ウルグアイについてよく言われるカンドンベがどういう音楽なのかは不勉強なのですが、この独特の刻み方のことなのかなあ…とコーネリアスの曲で学ぶ倒錯ないし贅沢を味わいたい方、また単にクラブに行けずにダンスミュージックに飢えている方にも、ぜひ手に取ってほしいアルバムです。(吉祥寺ジャズ館 笹山良林)

最近、ワールドミュージックにおいてのニューチャプターが凄いなと注目しているのですが、ウルグアイもフリエタ・ラダを筆頭に近頃メキメキと頭角を示しているイメージが強いです。いわゆる“カントンべ・ポップ”ですが、ウルグアイを代表するギタリストの新プロジェクト、SOAのデビュー。これがナイスなセンス。現代ジャズだとLA系の、ルイス・コール系のサウンドをしてましてインディーR&Bの匂いがプンプン。それだけでも感動ですが7曲目はあのコーネリアスのカヴァーを日本語で歌ったりラストの曲にはフリエタ・ラダもフィーチャーされるなど歓喜の一枚。 (JazzTOKYO 関口)


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