Interview with Melissa E. Logan (Chicks on Speed / VooCha )

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2022.03.07

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1997年にドイツのミュンヘンで結成された元祖エレクトロ・クラッシュ・ポップバンド “Chicks on Speed “(チックス・オン・スピード)の創設メンバーとして知られるMelissa E. Logan。エレクトロニックやポップミュージックにコンテンポラリー・アートの融合からなる表現の可能性を追求し、音楽やアートシーンのみならずファッションシーンでも活躍すると同時に、社会問題への関心も高いその活動から世界中にコアなファンを増殖させ続けている。今回は新たなミュージックプロジェクトVooChaを発足したようなので早速探りを入れてみた。

Interview, Text and Translation: Norihiko Kawai
https://norikawai.weebly.com/

● ニュープロジェクトVooChaのデビューアルバムリリースおめでとうございます。まず、このVooCha について教えてください。

Melissa E. Logan(以下M):
ハロー、私たちの活動に興味を持ってくれてありがとう。このニュープロジェクト“VooCha”は、コートジボワールのアビジャンでスタートしたの。私がChampy Kilo、Shaggy Sharoof、Bebi Philipなどのプロデューサーとコラボレーションしていて、Chicks on Speedのエレクトロ・ポップ・スタイルを、この偉大なプロデューサーたちのビートに乗せて演奏しています。現在は、トルコ・イスタンブールのArmageddon Turkとも一緒に仕事をしており、定期的に作品に参加してくれています。VooChaの名前の由来は、ブードゥー教の魔術的な魅力とシャネルのグラマラスな魅力を掛け合わせたプロジェクトなの。


● アルバムのコンセプトはどのように決まりましたか。プレスリリースにEverything Changes, so we are not stuck, nothing changes unless we change it.
(全ては変化するだから私たちは止まらない。私たち自身が変わらない限り何も変わらない)とありますが、どのような事柄からこのインスピレーションを得たのですか。



M:
これは直接的にはアンディ・ウォーホルに触発されたもので、彼の言葉です。私の息子Sidneyがアンディ・ウォーホルの本を読んでいて、私は音楽をレコーディングしていて、毎日が同じように過ぎていくことを感じていたの。すべてが変わるときは変わる、私は何かが起こるのを待ちながら、8ヶ月かけて曲を制作しました。
アンディ:「いつも時間が物事を変えると言うが、実際には自分で変えなければならないんだ」。
偉大なデヴィッド・ボウイとアンディ・ウォーホルの不朽の名曲「Changes」からも影響を受けました。





● アルバム制作期間や制作した場所について教えてください。

M:
何年も前からVooChaのアルバムは制作をスタートしていて、2015年頃からはブレイクビーツのサンプルを切り刻んだり、Ata Kakやパワーを感じられるエレクトロニック・ミュージックを聴いたりしていたわ。直接的なダンスミュージックというよりは、ビートがあり、空気の動きや、ベースが体に響くのを感じるのが好きなの。
制作場所に関しては、ケルンの自分のアパートの部屋の上にもう一つ部屋を借りていた時期もあって、人を呼んでレコーディングをよくしていた。それができなくなってからは、携帯電話に接続するRodeのマイクを持って、レバノンのベイルート、ニューヨーク、オレゴン、カナダ国境近くのワシントン州などを旅しながら制作に没頭していたの、まさにモバイルスタジオって感じだった。私はドイツに拠点を置いているので、現在はベルリンまたはハンブルクに戻っていて、次の作品に備えて準備をしているわ。


● 各トラックでジャンルの違い、楽曲ごとの特徴を意識して制作されましたか?「Bottom Bot」はムーディーで、ディスコフィーリングなトラック、「Wolfsong」はヴォーカルが多用されていますね。

M:
今回のアルバムに関しての音楽的方向性は、各トラックのコラボレーションしているアーティストによって決まったわ。「Wolfsong」は、妹のYohanna Loganと一緒に制作したもので、彼女はこの詩を書いてくれた時はスタイリストとしても働いていたから、その影響もあるかもしれない。近いうちに彼女の音楽も発表されるので期待してほしいわ。また、DJ兼サウンドアーティストとして知られるEric D. Clarkも参加してくれて、彼は「Bottom Bot」という曲のリミックスを担当してくれた。このトラックは ベイルートを拠点に活動しているJana Salahの港を見下ろせる最上階の素晴らしいスタジオでレコーディングしました。


● 今回のリリースは自身のレーベルUniCAT gUGからとなりますが、UniCAT gUG
について教えてください。


M:
UniCATというレーベルは、University of Craft Action Thoughtの略です。スマートコントラクトやDAOを活用して、Web3で機能する新しいタイプのレーベルを作りたかったの。また、私はパフォーマンスやワークショップのプロデュースも行っているので、レーベルの活動としてもそのような文化的な活動も行っています。


● コロナ禍でのアルバム制作となりましたが、新たな発見やスタジオセッションの規制など難しさはありましたか。

M:
私はいくつかのスタジオでヴォーカルを録音しましたが、このコロナ禍で移動することが非常に困難でした。社会活動ができずに孤立している状況だからこそ、作曲や新しいテクニックを学ぶのに適していると思いました。私自身は、クリエイティブな仕事に集中することが、このコロナ禍での不安な気持ちに対する最善の治療法であることを再確認したわ。



●あなたの個人的な活動の中にBonn (ドイツ)で展覧会の開催とありますが、どのような事をしているのでしょう。また、その活動は音楽にも影響を与えていますか。

M:
私は、エキシビジョンに向けた作業と音楽の制作を同時に行っています。パフォーマンスでは、心拍を汲み取って連動させるモジュラーシンセを使用し、 そこで作った音をフィルターに通し、不協和音のような揺らぎのある音楽を作り出します。普通に考えれば、このような音を聞きたいとは思わないでしょ? でも、私のエキシビジョンに向けた音楽活動はファインアートの観点から行われており、音楽マーケットに適合するように制作はしていません。むしろ、自身の世界観を構築することに興味を注いでいて、その過程の中で、映像、音、言葉を通して主題を表現し、機械やインスタレーションを構築することが自然の流れと考えています。


● ベルリンのコロナ禍での音楽シーンでは、どのようなことが起こっていますか。

M:
今は、DJや音楽シーンで活躍していた人たちが、予防接種センターで働いていることが多いと聞いています。時々電車の中から屋外スペースで行われているパーティーを見ることはありますね。夏になればまたパーティーが始まると思うわ。


● ニューヨークの出身ということですが、ニューヨークでの活動はされていますか。


M:
私は1年前にニューヨークにもいました。友人のPaul D. MILLER aka DJ SpookyにLaurie Spiegelを紹介してもらい、今は彼女とコラボレーションしています。彼女の作品には深く感銘を受けています。電子音楽の初期の発明者を描いた2021年の映画「Sisters with Transistors」で彼女を見かけることができますよ。https://sisterswithtransistors.com/


● 複数の名義で活躍されていますが、各プロジェクトに共通したコンセプトはあるのですか。それとも全く別の意識で取り組んでいますか。

M:
さまざまなプロジェクトを行う中で、コラボレーション相手が異なることがほとんどなので、もちろんコンセプトは異なります。現在、私はハンブルグで『Infinite Jest』というグループとして活動もしています。グループ名は私の大好きなDavid Wallace Fosterの本のタイトルです。この本からは憂鬱な気分が滲み出ているからです。ソーシャルメディアによって引き起こされたうつ病が第二の流行病となっている現代では、彼の作品『Infinite Jest』が再び脚光を浴びるのではないかと思っています。





●自身の活動の中で、社会貢献を意識している活動があれば教えてください。

M:
内部告発サイト「ウィキリークス」創設者のジュリアン・アサンジをはじめとするジャーナリストが不当に扱われていることにショックを受けています。私は彼を支援するために、他のアーティストと一緒に音楽をリリースしようとしています。ジュリアンをロンドンの刑務所から釈放させようと活動している反体制的な中国人アーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ、Ai Weiwei)の活動に好感を持っており、 彼の活動が成功することを祈っています。ぜひ #RunForOurRightsチェックしてみて!


● 今後の予定を教えてください。

M:
Captain Moustacheとのエレクトロポップ系の作品が、ミュンヘンのレーベルPermant Vacationから2月4日にリリースされました。

4月23日にブリュッセルでジュリアン・アサンジを支援するためのライブをChicks on Speed でやります。Chicks on Speedの最新ビデオもチェックしてみて。





そして、VooChaのアルバムもリリースされています!
https://voocha.bandcamp.com/

また、ケルン現代美術センターのテンポラリー・ギャラリーがプロデュースした私の音楽と映像のコラボレーション作品「Dance Party」が、カリフォルニアのRaleigh Studios Hollywoodで開催されるIndie Short Festで上映されることになりました。https://filmfreeway.com/IndieShortFest




大阪のEXCUBEギャラリースペースで展示もします。
https://www.excube.jp/










RELEASE INFORMATION

2021年12月14日(火)
Artist: VooCha
Titlle: Everything Changes
Label: UniCAT
https://voocha.bandcamp.com/