DJ WADA 「UNITY」 リリース記念・スペシャル・インタビュー

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2015.04.16

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UNITY DJ WADA INTERVIEW

70年代よりDJとしての活動をスタートし、現在もシーンの一線で活躍し続ける真のベテランDJ Wada。彼が現在、EN-SOF TOKYOにて毎週水曜日に開催されている自身のパーティー「UNITY」の名を冠したミックスが私たちに届けられた。その内容は驚きの80年代ニューウェイブ、ダブ、ディスコ縛り。そして全曲が自身によるエディットを施された徹底ぶりだ。DJミックスを超越し、アルバムにも引けを取らないオリジナリティと完成度を実現した今作の発売に伴い、30年以上の膨大な経験の中から、DJとしての来歴、ミックスのコンセプト、そして「UNITY」を含めたDJ Wadaの現在について話を伺った。インタビュアーには、各種クラブ系Webサイトにて執筆活動を行うRiku Sugimotoを迎えて行われた。



まずは、DJとしての来歴をお教えいただけますでしょうか?
DJを始めたのは、1978年ですね。六本木でDJが一斉に足りなくなってしまった時期があって、その中でたまたま白羽の矢が立ったという感じです。その頃働いていたお店のお客さんに誘われたんです。

DJを始める前はバンドをやっていたんですよね。
そうなんですよ。ロックにどっぷりと浸かっていたから、「ディスコなんてちゃらちゃらしてる」って思ってましたよ(笑)。けど、DJに誘ってくれた方が上手くて、「まずは一回見に来てよ!」という感じで…それで行ってみたら、ローリングストーンズなんかもかかってて、割といいなって思ったんです。あと、その頃ひとつだけディスコで好きな曲があって、それがDonna Summer の I feel love。

始めた頃は、やはり今とは全く違った環境だったのでしょうか。
まだ繋ぎとかもやっていなくて、やってたお店のレコードプレイヤーにはピッチコントローラーもなかったですね。卓のミキサーだったし(笑)。バンドも演奏するので、それも兼ねてって感じだったんですよ。一曲ずつかけるところから脱却したきっかけは、自分が居たお店のオーナーがNYにふらっと行っちゃう人で、現地からカセットを持ち帰ってきて…今思えばStudio54系統のセレブ向けの選曲でしたが、やはり「ミックスしている」ことには衝撃を受けました。もちろんネットもないですから、音から想像して各店舗のDJがつなぎを独自に開拓していましたね。僕の場合、ちょうどお店の新調したタンテがデジタルでピッチが表示されるものだったので、どの数値でどの曲のブレイクがどの曲の頭とピッチが合うかなんかをメモしていましたね。
あと、その頃はDJを見て踊っている人なんて全くいなかったですね、何十、何百人中一人二人ぐらい。決まりきったルーティンもなく、DJが流れを作るのが当たり前でした。もちろん、使う曲の選択肢は今よりずっと狭かったですが。80年代に入ってから、お店側やお客のリクエストに従う文化が出てきましたね。

ちなみにその頃の選曲は?
やはり定番のディスコソングでしたが、その中でも…個人的にはPreludeが好きなレーベルでしたね。Giorgio Moroderもやっぱり大好きで、エレクトリックな要素は確かに昔から好きでした。Salsoulなどの生演奏のディスコの良さは、80年代半ばになってやっとわかったんですよ。

ディスコDJとしてはどれだけの間キャリアを積まれたんですか?
実は、81年に一回辞めて、バンドを再開したんですが…いちど一人で自由にやってからだと、バンドは5人の意見をまとめなきゃいけないし。メジャーデビューの依頼に向けてレコーディングしたのに話が流れたり。ライブハウスのギャラも、それまでのDJの時と同じで、それを5人で分けて…そんなこんながあって、83年に、ニューウェイブの興りもあって今までよりも小規模な箱でDJ復帰したんです。海外志向の強いお店で、来るお客さんも外国人がほとんど。Brian FerryやUltravoxもお忍びで来てたようです。

ディスコからクラブへの移行もその過程という感じだったのでしょうか。
自分の中で明確にあるわけではないですが、そうですね。

ちなみに、ハウス・テクノにシフトしたのはいつ頃ですか?
確か86年ぐらいに、ハウスのレコードが入ってきて、玉椿なんか出かけましたけど不評でしたね(笑)。アシッド以前で、リズムマシンのみって感じのプリミティブなやつ。知人周りではウケてたんですけどね。アシッドハウスはまた別で、かなり人気がありましたよ。意識的にそういった音楽を集中的にかけるようになったのは、多摩美の学生企画でパーティーを始めてからですね。89年に始めて、出たばかりのWarp系、ブリープテクノやアンビエントテクノを好んでプレイしていました。

現在のスタイルにもつながってきますね。デトロイトはチェックしていたのでしょうか?
その頃はまだディスコでのDJも仕事として並行していたんだけど、Kevin SaundersonやMayday(Derrick May)はメジャーレーベルのリミックスもよくやってたので、そっちでかけてましたね。深く掘り下げるようになるのは少し後になってからでした。

そして、93年にはMANIAC LOVEにてレギュラーDJを始めています。
それまでは、多摩美のパーティーもそうだし、新宿のMC-1000ってお店でDumb Typeの池田(亮司)くんともパーティーを始めたりして。舞踏の人とのコラボ?もありましたよ。それから、MC-1000のチームが新しいお店を始めるということになり、流れでレギュラー兼スタッフになったのが、MANIAC LOVEだったんです。

トラック制作も並行して行っていたのでしょうか。
80年代から始めていましたね。その頃から知り合いだった谷くん(Heigo Tani)とかといっしょに、知り合いのお店の記念盤の曲を制作したりして。最初はお互い機材を持ち寄って、録音して満足って感じでしたね。けどその頃は日本でトラックメイクしてる人が少なかった…特に僕らがやってるような音では。なので、有難いことに色んなコンピから声がかかるようになったんです。

そこから、Co-fusion、ATOM、そして海外での活躍に繋がっていったんですね。
Co-fusionもATOMも谷くんとの共作で使う数多くの変名のうちの一つでしかなかったのに、いつの間にかメインになっちゃってましたね。Sublime Recordsからのリリースの影響もありますけど。Sublime自体もともとMANIAC LOVEの僕らのパーティーで、レーベルを始めることになって名前を明け渡しちゃったんですね。
初の海外はCo-fusionで呼ばれたんですが、その翌年からは自分のDJだけで呼ばれるようになって、やはり嬉しかったですね。MANIAC LOVE入ってから最初は他でやっちゃダメだったのに、「Co-fusionは例外」「海外は例外」とかなっちゃった(笑)。

Wadaさんの精密かつ音楽的なEQ操作は、いつ頃から身に付いたものなのでしょうか?
いつと言うよりは、DJを始めた頃からEQは常に意識していましたね。ディスコなので歌の存在感がぶつかり合わないよう、EQの操作はとても重要だったんですよ。あと、キャリアを通じて小箱でのプレイが多かったというのもあるかもしれません。大きいとこならPAさんがいますし、なかなか音の想像がつかない。けど小箱はモニターと外音がそこまで違いが無いし、全然ダメなスピーカーも多くて(笑)、でもベストで鳴らさなきゃという意識があったんです。
また、アンビエントのDJをやってたときは、「Brian EnoのDJ版」みたいなとこを意識してて、3曲同時に鳴らすこともありましたから、そこで音の調整、鳴らし方についてスキルを磨けたというのも大きかったのかと思います。

加えて言うと、エフェクトや声ネタなどの危うげな音使いも特徴的だと思います。今回のミックスもそうですね。
それもやはりアンビエントDJの頃の声だけの曲を別の曲と重ねて…みたいなところからでしょうか。それ以前からもハウスかけつつ別のレコードのボイスを乗せたりはしてたんですけどね。
ちなみに今、片耳が聞こえなくなってからは、エフェクトはほぼ想像でかけているんですよ(笑)。特にパンニングなどステレオイメージに関するエフェクトはなおさらですね。

それは凄すぎますね…経験あってのものなのでしょうか。
確かに、慣れと言うところも大きいかもしれませんね。

そういえば、かつてWadaさんのインタビューでフェイバリットDJはAlex Pattersonだと記載されていましたが。
90年代の話ですけどね。最近は聴けてないですから。気に入った理由はDJとしての視点でDJを行っていないというか、全然繋ぎとかもできてないんですが、The Orbで表現するような彼の作品を選曲で形作っていく様子がとても面白くて。そういう意味では、スキルよりも「そのやり方があったか!」という衝撃が、自分にとってグッとくる部分なのかもしれません。

今回リリースとなるミックス「UNITY」は80年代ニューウェイブ、ダブのエディットで構成されていますね。
今回はAbleton Liveでエディットした曲を、CDJとAllen & Heathのミキサーでミックスを行いました。

使用した楽曲は、やはりリリース当時からかけていた曲だったのでしょうか?
全てがそういうわけではないですね。身内だけで「良いよねこれ!」って言い合ってた盤も多い(笑)。MANIAC LOVEでそういう曲をかけるとやっぱりお客さんが引くんですが、逆に、「これ知らないのかよ!?」って感じで玄人な感じでフロアに出る人が必ず居て(笑)。それを真に受けて他のお客さんが戻るなんて流れがあったんです。だから、出た当時は使ってないけど、たびたびかけていた楽曲たちではあります。

そもそも、なぜこれらの80年代の楽曲に焦点を当てたのでしょうか。
今になって、一回りして面白いなと感じられるようになって、エディットも何曲かは自分のレギュラーパーティー「UNITY」でかけるためにミックスの制作前から作っていたんですよ。所謂ディスコの楽曲よりも、リズムの隙間がありますし、それでいて機械的で整いすぎていない、荒っぽく肉体的なグルーヴもあるのがいいなと。

確かに現在の感覚で聴いても違和感なく受け止められましたが、ち密なトリートメントが行われていますよね。
基本的にEQやBPM、曲尺の編集を行ってますが、何曲かはベースやリズムも足してます。そういった部分で今の感覚には近づいているのかもしれませんね。エディットを駆使したミックスに関して言えば、09年に出したFinal Resolution以外でも手掛けているですよ。WOWOWのラジオ番組を持ってた時があって、最初は普通にDJミックスをやっていたんですが飽きちゃって(笑)、途中から曲を弄りまくったミックスを作っていました。

エディットと言えば、現在のNu-Discoシーンの定着は目を見張るものがありますね。
それもあって違和感がなく聴けるのかも。僕自身、当時の曲がかけやすくなったと感じます。HarveyやDaniele Baldelliといったベテランが現在脚光を浴びて、Todd Terjeといった当時を知らない世代も活躍していますしね。

先ほど、現在EN-SOF TOKYOにて開催しているレギュラーパーティー「UNITY」が話題に上がりましたね。
最初は月一回水曜のレギュラーでやってたんですが、気づけばほかの週の水曜枠も空いて、そこで全部やるようになって…(笑)。毎週やるようになると、週末のDJと同じことは当然やれないし、色々実験的なことも試したりして。エディットもその過程ですね。ほぼ毎回ゲストとして今まで出会ったことが無かった多くのDJといっしょにやれているので、そこで生まれる化学反応もあります。初めましての連続で、どうなるかわからないからこそ面白いんですよ。今回のミックスともまた違ったことをやっているので、ぜひこの機会に来ていただければと思います。

Wadaさんの凄さは、今でも楽しんでDJを続けられているところにもありますね。
楽しんでるうちは出来ますからね!今も、面白い音楽が次々と出ていますから。そこに関して言うと、ハードテクノ全盛期はついていけなかった部分もあって、それからミニマルテクノ・ハウスに居場所を見いだせた。最初にPerlonをMANIAC LOVEでかけたときはみんなドン引きだったけど(笑)。だから、時代と合わなくなったらやめるかもしれません。先述の通りバンドに戻ったり、体調不良で現場を離れたりもしましたから、休まずずっと続けてるというわけではないんです。でも、改めて考えてみるとウケなくなって辞めるということはなかったですね。

最近のテクノ・ハウスのリリースなどの動向はどうでしょうか?再発ラッシュが続いていますが…
僕は良いと思いますよ。昔のモノを活性化するということになりますから。今回のミックスもそうですが、当時はまだいなかった世代の人が、改めて聴くことで違う目線で魅力を見つけることは大事だと思います。それがその曲の本来の目的や意向から逸れていても、勘違いでも構わないんですよ。そこから新たな発見や可能性があるかもしれないですから。
それこそ、さっきのAlex Pattersonの話じゃないですが、衝撃を与えるような表現は逸脱した発想から生まれると思いますよ。

確かに、Wadaさんにも整った中で、突如現れる狂気みたいな場面がありますよね。
アーティスト的な感性にあこがれる一方で、僕自身はDJとしてずっとやってきた中で先述のようなエッセンスを取り入れたいと思って、今も色々と試しているんです。

DJとして長いキャリアを積む中で、所謂ダンスクラシック的な楽曲をプレイする道もあったと思います。現在も新たな楽曲や手法を模索するのは何故なのでしょうか。
それは、僕の根っこがディスコDJだからでしょうね。新しいものを追い求めるのは習慣みたいなものなんですよ。だからこそ今回のミックスも懐古ではなく、今の感覚でも楽しめることを意識しながら選曲を行えたんだと思います。

ありがとうございました!

Interviewer : Riku Sugimoto


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70年代よりDJとして活動している日本クラブミュージックシーンのレジェンド、DJ WADA!そのDJスキルは、あらゆるパーティーやクラブ、そしてDJ、アーティスト達から常に賞賛され、確かな信頼を寄せられてきた。完全に一つの曲かと感じてしまう正確無比なミックスと、よく理解したうえでプレイされる楽曲たちで構成される一晩の流れは、他に類をみないドラマ性とグルーヴが一体となっている。
制作においては、CO-FUSION、ATOM、そして本人名義でも多数のテクノ・トラックを発表してきた。本作は、渋谷EN-SOFで毎週水曜のパーティー「UNITY」でのプレイから企画され、全曲DJ WADA自身によるEDIT音源を使用している。近年、改めてその魅力に取り付かれたという80年代のNEW WAVEやDISCO、DUBをボトムアップし、尺もDJ用にロングエディット。原曲の魅力を新しい視点でリスナーに提示する。

■封入特典:
毎週水曜に渋谷EN-SOFで開催されている「UNITY」の入場チケット
(20:00~22:00、1回限り)






渋谷区道玄坂2-23-13 SHIBUYA DELI TOWER B1
TEL 03-5728-5349

【TIME TABLE】
20:00~23:00 DJ WADA

※DJ WADAのプレイ時間は、毎週水曜日20時~23時となっております。
入場無料チケットの有効時間は、20時~22時となっております。
ぜひ足を運んでみてください。


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