ディスクユニオン ワールドミュージック・バイヤーズチョイス10月号

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2023.09.29

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ディスクユニオン ワールドミュージック・バイヤーズチョイス10月号

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ディスクユニオンスタッフによるワールドミュージック・バイヤーズ・チョイス10月号!  新譜も旧譜も中古も私物もサブスクもチャンプルー(ごちゃまぜ)でお届けいたします! 今、ディスクユニオンのラテン、ブラジル、ワールドのバイヤーが本当におすすめしたい良質な作品を一挙ご紹介!!

↓バックナンバーはこちらから↓
https://diskunion.net/latin/ct/news/archive/9



■ラテン・ワールドWEB担当



BURNA BOY / バーナ・ボーイ『I TOLD THEM』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008714858

"E don cast, last last, na everybody go chop breakfast"というパンチラインを産み出した愛と哀愁の『Love, Damini』から約1年。グラミーも獲って、もう欲しいものなんてないんじゃないのって感じのバーナ・ボーイが2023年はやくもアルバムをリリース。90'sを意識したようなジャケとともに、ウータン・クランのGZA、RZAが客演していたり、先行シングル「Big 7」のMVでは日本語VerのウータンTシャツを着用し、バスタ・ライムスがカメオ出演していたりとUSヒップホップ・カルチャーへの急接近が著しいが、ここでも最新型の"アフロ・フュージョン"を展開。ナイジェリア産アフロサウンズ(アフロビーツとかアフロポップの総称)を世界的な地位まで押し上げたのは間違いなくこの人の功績なのだけど、注目を浴びる立場なだけに言動へのハレーションも苛烈なものらしく、今作はタイトルが示す通り、それらに対する憤怒のようなリリック、というか恨み節とセルフ・ボースティングが満載。客演のJ.コールが"このクソみたいな世界へようこそ"とライムするラスト「Thanks」はとりわけ辛辣に捨て台詞を吐いてる感じが実にクール。その"クソみたいな"USのショウビズ界で生き抜く決意を表明してるのかな。続編があるような噂もあるので期待大。(ハイライフ天国)





ASAKE / アサケ『WORK OF ART』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008714856

2023年9月、にわかに"世界的なアマピアノのアーティストはアシャケ"というデマゴークが流れ、南アとナイジェリアのアーティストとそのファンダムを巻き込んでの議論を呼んだ。そんな、様々な意味で注目度の高いアシャケの2ndフルがこちら。CDとLPでもリリース。もちろんアシャケはアマピアノのアーティストではなく、アフロビーツでもアフロポップでもない。今作のジャンルはまさに"アシャケ"と呼ぶのが最適。というかそれしか形容できそうもない。たしかに今作ではアマピアノの特徴の一つとされる独特のベース音ログ・ドラムを、これでもかってくらい全編を通して多用してるけど、その用法はいわゆるアマピアノのフォーマットではなく言うなれば混沌。とりあえず使いたいだけなのでは?とも思うが、それがとにかく気持ちいいのだからグウの音も出ない。コンセプチュアルなBPMの統一感も秀逸。ソールド・アウトしたキャパ2万のロンドン・O2アリーナでの圧倒的なライヴ・パフォーマンスも話題となっていて、ネクスト・バーナ・ボーイの筆頭に躍り出た。大音量でレコードやCDで聴けるのはなんとも嬉しい限り。(ハイライフ天国)





ASTOR PIAZZOLLA / アストル・ピアソラ『ADIOS NONINO』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008671392

学生時代、演奏家を目指して練習に励む中、基礎を固めようとクラシックの勉強を始め、次第にピアソラの曲にも取り組むようになりました。クラシック音楽に取り組んでいると遥か過去の偉人の音楽という感覚から本人の演奏を聴くという感覚は無く、楽譜を前に黙々と練習を進めていたある時に、「学生はピアソラ本人の演奏を聴こうとしない!」と嘆く音楽大学の教授のインタビューを見つけ、そういえば比較的最近の人なんだから録音くらい残っているかとようやく気が付き聴く事にしました。Adiós Noninoだったと思う、なんてカラフルなのか、自由なのか、そしてパワフルなのか。全く知らない世界に完全にノックアウトされもっと知りたいとアルバムを聴きあさり、その後映像で観ると、その片足にバンドネオンをのせて立奏する姿が最高にかっこ良くて何度も観直しました。ジャズ的なツーファイブやダイナミックなアルペジオ、平行移動するメロディとハーモニー、バイオリンの特殊奏法による効果音や爆発的な不協和音によるダイナミクス、ドラムがいないとは思えないものすごいスピード感のグルーヴなどなど...特徴があり過ぎて挙げきれない、尖りきっているまさに前人未到の音楽。(Ocean)





LOLA COBACH (DOLORES COBACH) / ドロレス・コバチ『CAMINO DORADO』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008698494

エア・チェックならぬマッ〇・チェックをしに毎週マ〇ドナルドへ通っていた時期がある。偶然風に市井に染み渡るグッドミュージックを拾い集めることができるからだ。しかし最近はアーティストのコマーシャル・ラジオが多めで全然音楽がかからず。。が、このローラコバチのclose to youはこないだかかってた気がする!!! 数多のカヴァーがありますがこれかなり好き。 (天然水)





SVEN WUNDER / スヴェン・ワンダー『LATE AGAIN / 夜がまた』

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008674806

ライブラリー、チネジャズ、アナドル・ロック、和ジャズなどなど、レコードコレクターの琴線をくすぐるオブスキュアな音楽からそのエッセンスを抽出し、現代に再現するスウェーデンの匿名バンド4作目。作品ごとにテーマは異なるものの、基本的なバンドのコンセプト自体はぶれることはないので、4作目ともなると、正直やや食傷気味な気持ちがあったのも否めませんでした。しかし改めて自宅で針を落としてみると…やっぱり最高。もちろんコンセプトは変わらないのですが、ひとつひとつの楽器の鳴り、心地よいグルーヴに優美なストリングス、そしてそれを現代にどう響かせるのかといったことまで、細部への執着が並外れているように思えます。もうこれさえあれば良いとすら思えるほどに完成度の高い、彼らにとっての最高傑作といえる内容。是非レコードで鳴らしてみて欲しい一枚です。(江利川)


■JazzTOKYO
東京都千代田区神田駿河台2-1-45 ニュー駿河台ビル2F
https://diskunion.net/shop/ct/jazz_tokyo




ENJI / エンジ『ウラン』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/XAT-1245773832

Enjiの前作『Ursgal』はジャケもさることながら、"信じられないほどいい"と感じた作品だった。きっとこの新作でEnjiを初めて聴く人も、そんな体験になることだろう。バックは前作に引き続いてポール・ブランドル(g)と、モンゴル人ベーシストMunguntovch Tsolmonbayar、そして今作ではブラジルからマリア・ポルトガル(ds)と、ジョアナ・ケイロス(cl)を招いた。室内楽的なクラリネットの響きと、ジャズ的なドラムが相まって、前作より人数が増えながらインティメイトな雰囲気はむしろ増している。だがモンゴルの民謡オルティンドーとジャズの融合、と言われる彼女の歌、その歌声が、広大な大地を吹き抜ける風のように、どこかうら寂しく響くのだ。ミュンヘンのスタジオから、モンゴルの広大な草原へと。コンテンポラリーなアレンジの表題曲など、ジャズ的視点でも楽しめる楽曲もありつつ、他に類を見ないモンゴル語の歌と歌声が、聴く者を雄大な大地へと導く。そしてどこか懐かしさを覚えるのは、同じアジア圏に生まれた者の特権だろうか。(逆瀬川)


■渋谷ジャズ/レアグルーヴ館
東京都渋谷区宇田川町30-7 アンテナ21 5F
https://diskunion.net/shop/ct/shibuya_jazz




OS BARBAPAPAS / オス・バルバパパス『DOOWOODOOWOO』

こういうのが今聞きたかった!ドンピシャな1枚。オス・バルバパパスの2021年作。エキゾチカ、サーフロックにサイケ感も相まってなんとも言えない浮遊感が漂う心地よい作品です。今年はスウィート・イナフズのレコード化からエキゾ熱が上がりっぱなしです!10月下旬入荷予定!いやー、発売日が待ち遠しい限りです!(柴田)


■吉祥寺ジャズ館
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-24 小島ビル2F
https://diskunion.net/shop/ct/kichijyouji_jazzandclassic




ARTHUR NESTROVSKI / アルトゥール・ネストロフスキ『JOBIM VIOLAO』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/BR10896

今年の夏も長かったですね。でも、ようやく秋の気配を感じるようになった気がします。そんな夏の終わりにおすすめのギター作品のご紹介です。舞台への楽曲提供や芸術監督もこなしエッセイまで執筆してしまうギタリスト、アルトゥール・ネストロフスキーがギター1本で紡いだジョビン曲集です。楽曲の素晴らしさを際立たせる繊細で美しいギターの音色を聴いていると、何ともおセンチな気分になってきます。愛娘に捧げた「Luiza」、ジャンルを問わず多くのミュージシャンがカヴァーしている「INSENSATEZ」、個人的に隠れ名曲だと思っている「Caminhos Cruzados」など珠玉の14曲が収録されています。暑さにやられてしまった心身をゆっくりとほぐしてくれる癒しのアルバムです。(中村)


■新宿ラテン・ブラジル館
東京都新宿区新宿3-31-4 山田ビル4F
https://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_latin


LOYCE E OS GNOMOS『O DESPERTAR DOS MÁGICOS』



10月にリイシュー発売予定のサンパウロ発ティーンエイジ・ガレージ・バンドGATOS MALUCOSの別名義であるLOYCE E OS GNOMOSによる68年のカルト的な人気7インチEP。 注目すべきは冒頭のハード・サイケ『ERA UMA NOTA DE 50 CRUZEIROS』暴力的に叩かれるパーカッションと、猛烈なファズギターのディストーションにより生じるフリーキー極まりない音像… 数ある南米産ガレージ・ロックの中でも一際異彩を放っています。 また、鮮やかな赤いアートワークが目を引きますが、実は8インチくらいのオーバーサイズ・ジャケットになっている点も奇抜。 中心人物であるANDERSON ABREUは他にも、73年にFERMATAからリリースされた『CALOUROS CULTURA』というコンピレーションの冒頭にLUIZ CARLOS SILVEIRA(LOYCE)との共同作"MUNDO NOVO"で一曲参加しています。 BOSSA JAZZ TRIOのAMILSON GODOYの手によってアレンジされた『MUNDO NOVO』はこれまでの作風からは一転、洗練されたメロディと華やかなオーケストラ編成が胸に迫るバラード・ナンバー。 瑞々しい世界観を堪能できる個人的に推したい名曲です♪(金田)



GATOS MALUCOS / ガトス・マルコス『SEM VER O LUAR』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008731739



https://beatsinspace.net/playlists/994/


先日ROBSON JORGE & LINCOLN OLIVETTIの未発表曲集『DÉJÀ VU』をリリースしたSELVA DISCOS主催、元SELVAGEMでもあるTREPANADOことAUGUSTO OLIVANIが2019年の90'Sスト系ブラジリアン・コンピ『STREET SOUL BRASIL』のリリースの際に披露した1時間15分弱のDJミックス。収録されている音源は全トラック紛うことなくブラジルの作品ではあるものの、ディープ〜シカゴ・ハウスからヒップ・ハウス、エレクトロ、バイレ・ファンキと、ボサノバやMPBリスナーとしては馴染みの薄いジャンルばかり。バブリーすぎるLATE 80'S〜90'S当時のブラジル現地のクラブ・ミュージックにスポットを当てた、ザ・パリピな趣のノンストップ・メガミックスになっています。『DÉJÀ VU』については本ミックス内のインタビューにおいて既にAUGUSTO OLIVANIが言及しており、実は当初この翌年にリリースされる予定だったのだとか。今回約3年越しに我々も無事にレコードとして手にすることができて嬉しい限りです♪(金田)



ROBSON JORGE & LINCOLN OLIVETTI / ホブソン・ジョルジ&リンコン・オリヴェッチ『DÉJÀ VU』

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008678389






EDU LOBO & MARIA BETHANIA / エドゥ・ロボ&マリア・ベターニア『エドゥ・ロボ&マリア・ベターニア』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/XAT-1245744392

今月は何故かEdu Loboに熱が入った月でした。今作は発売年がCaetano VelosoとGal Costaのデビュー作である『Domingo』と同じで、そのカエターノの妹のMaria Bethaniaとのコラボ作でもあることからファンからは「裏ドミンゴ」という愛称で親しまれているそうです。 内容も同じくボサノヴァではあるものの、今作の方は『Domingo』のような退廃的な空気や後のトロピカリア諸作に漂うような緊張感などは感じられず、また別のクールさや凛々しさのようなものを感じました。ボーカルをとる二人がどちらも低音のボーカルというのもその印象を強めます。 特にマリアがメインボーカルを取る曲は「Sinhere」「Bolanda」などパワフルなボーカルがあまりにもかっこよくて印象的です。他にも1曲目にはElis Reginaによるカバーも有名な「Upa Neguinho」も収録されており、「裏」で留まるにはもったいないくらいの完成度がある名作だと思います。 これから来る秋の季節にぴったりです。(齋藤)





CARLOS WALKER / カルロス・ウォルケル『ア・フラウタ・ヂ・パォン』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/XAT-1245771151

今回話題になったソニーからの「ブラジル音楽の秘宝」シリーズの中で特に嬉しかった作品はなんといってもこれでした。 リリース以降これまで長い間CD化されず、サブスクにおいても現時点では未だ解禁されていないなど、かなり視聴難易度の高い作品だったので発売日と同時にPedro Santosの『Krishnanda』と一緒に購入しました。 ジャケのモノクロで物憂げな表情を浮かべる本人の写真も印象的ですが、その期待以上の内容に驚きました。今にも消え入りそうな繊細でか細い声と、ストリングスによるアレンジがとにかくドリーミーで素晴らしく、白昼夢のような温かさと儚さが詰まった唯一無二の作品でした。 この初CD化を機に、更にブラジル音楽以外のリスナーからの知名度も上がってほしいと思えるほどにサイケフォークとして高い完成度とパワーを持っている一枚だと思います。(齋藤)



■ROCK in TOKYO
東京都渋谷区宇田川町32-7 HULIC &New UDAGAWA B1F
https://diskunion.net/shop/ct/rockintokyo


Ralphie Choo『SUPERNOVA』

スペイン・マドリード出身の新鋭アーティストが2022年にリリースした先行シングル"BULERÍAS DE UN CABALLO MALO"には心から夢中になりましたね、まるでMGMTの"Kids"のようなチープなのにやたらと耳に残る奇妙なイントロが聞こえたかと思えば、全盛期のAriel Pinkを思い浮かべる遊び心溢れる曲展開がクセになり何度も繰り返し聴いていました。満を持してリリースされたこのデビューアルバムは、ジャンルレスと言えば聞こえはいいですがそんなレベルではありません、R&B・HIPHOP・クンビア・フラメンコまでゴチャ混ぜに切り貼りしたような楽曲がアルバム全編通して続きます、予測不可能な曲の展開にギリギリでポップを維持しているバランス感覚に1度聴いてしまえば夢中になること間違いなしです。(鎌田)