ディスクユニオン ワールドミュージック・バイヤーズチョイス3月号

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2024.02.29

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ディスクユニオン ワールドミュージック・バイヤーズチョイス3月号

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ディスクユニオンスタッフによるワールドミュージック・バイヤーズ・チョイス3月号!  新譜も旧譜も中古も私物もサブスクもチャンプルー(ごちゃまぜ)でお届けいたします! 今、ディスクユニオンのラテン、ブラジル、ワールドのバイヤーが本当におすすめしたい良質な作品を一挙ご紹介!!

↓バックナンバーはこちらから↓
https://diskunion.net/latin/ct/news/archive/9



■吉祥寺ジャズ館
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-24 小島ビル2F
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JOAO GILBERTO / ジョアン・ジルベルト『海の奇蹟』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/XAT-1245744478

自国の軍事政権を嫌い20年近く海外生活を送っていたジョアンがブラジルへ帰国し、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、マリア・ベターニアと録音したアルバム。曲数は少なくトータルしても30分に満たない作品ですが、彼の美学が最も反映されたアルバムのような気がします。1曲目の「ブラジルの水彩画」はブラジルと言えばこの曲!というほど大変有名な楽曲ですが、やはりジョアン・ヴァージョンが一番清涼感があって好きです。(中村)


■ラテン・ワールドWEB&通販担当
https://diskunion.net/latin/




Manu Gavassi『Acústico MTV Manu Gavassi Canta Fruto Proibido』




ブラジルのポップシーンを代表するアーティスト、Manu Gavassi。彼女は、ブラジルのトップ・ドラァグクイーンの一人であるGloria Grooveと共演するなど、伝統的なMPBのアーティストというよりもブラジルのポップシーンど真ん中のアーティストなのだが、彼女の2021年のシングル「GRACHINHA」では、同世代のミュージシャンであるチン・ベルナルデス、そしてアマーロ・フレイタスを客演に迎えるなど、伝統的なMPBやブラジリアン・ジャズの系譜に数えられるアーティストをフックアップするような動きを見せている。


そんな彼女がブラジルの「伝統」にさらに接近したのが、本作『Acústico MTV Manu Gavassi Canta Fruto Proibido』(2023)。ヒタ・リーの最高傑作とも呼ばれる『Fruto Proibido(禁断の果実)』(1975)を全曲ライブカバー(曲順もオリジナルと変わらず。M10、M11はManu Gavassiの曲。)してしまうという何とも贅沢な内容で、ブラジリアン・ロック史に残る至極の名盤を現代的なクリアなサウンドで蘇えらせている。温故知新とはまさにこのアルバムのことを表しているのではだろうか。



「Ovelha Negra」ではなんとリニケルが客演で参加しており、ギターソロとリニケルのエモーショナルなフェイクが絡み合う後半の展開は感動必至だ。オリジナルと同様にチン・ベルナルデスを客演に迎えている自曲「GRACHINHA」では、ピアノの音色がこの世のものとは思えないほどに美しく響く。最高にロックン・ロール(Roque Enrow)!!なアルバムなのだが、ヘヴィな感覚はあまりなく、むしろ窓を開けながら車に乗り気持ちの良い風を浴びているかのような爽快感に溢れていて、オリジナルに比べると優美かつソフトなサウンドとなっている(その辺りで好みが分かれるかもしれない)。ラストに相応しい多幸感溢れる「Lança Perfume」を聴けば、見ず知らずの人が隣にいても笑みがこぼれてしまう。あ~なんて良いアルバム。。。 (道産子)






김뜻돌 (meaningful stone) / キム·トゥットル 『A Call from my Dream』




今回おすすめしたいのは、Korean Music Awards 2021において、今年の新人に選ばれたアルバム=韓国のSSWキム·トゥットルの『A Call from my Dream』('20作) ジャンルは多岐にわたり「インディー・ポップ」「ドリーム・ポップ」「シティポップ」「サンバ」「ボサノヴァ」「ジャズ」「フォークロック」「グランジ」などを交差する傑作、これはすべてのグッドミュージックラバーにおすすめしたい一枚!柔らかくてフォーキーな印象を持つアルバムではありますが、今後展開されていくロックへの転換もうかがえる内容に。参加アーティストには、今韓国のインディバンドで最も重要なSilica Gelのキム・チュンチュ、キム・ハンジュも。彼らはあらゆるジャンルを組み合わせたり、オルタナティブな試みを続けているバンドですが、そういった音楽性はMeaningful Stoneの音楽指向とも合致しており彼女の世界観を鮮明にすることに一役買っているのではないかなと思います。そのほかにも90年代の流れを汲んだNew Retroで注目を浴びたパク・ムンチ、韓国3ピースバンドParasol(パラソル)のチユネなどなど、豪華な面々がそろっており今非常にアツい韓国インディの動向を追いかけるという観点からも要注目なアルバム。


特にブラジリアンミュージックラバーにおすすめしたいのは「Shower Duty」。この曲は、曲の途中からボサノヴァからサンバに展開する構成となっておりまさに大好物!彼女の綺麗で柔らかくドリーミーな歌声が曲調にぴったりで、これは心地よすぎます!!オリジナル版はDiscogsで4万円近くまで値上がってしまい入手困難ですが、今年の春リプレスされる予定です。DiskUnionでも何枚か販売することを検討していますので最新情報をお待ちください。 (TT)





APICHAT PAKWAN / アピチャット・パクワン『APICHAT PAKWAN / NAM TON TAD DUB』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008773734

アムステルダムで活動するアピチャット・パクワンのレコードを数タイトル、去年末から取り扱っています。タイ・イサーン出身のメンバーを擁するこのグループ、どの作品もレベル高くて最高。東洋の伝統音楽や民謡を西洋音楽の規範で再現するのは至難の業ですが、彼らは和声を柔軟に変化させたりと色々工夫して自然に鳴らしているとのこと。そのせいか、耳の入り口を何にしても脳に直接入り込んでくる気持ちのいいサウンドに仕上がっています! (天然水)



 

ZE IBARRA & DORA MORELENBAUM & JULIA MESTRE / ゼー・イバーハ & ドラ・モレレンバウム & ジュリア・メストリ『LIVE AT GLASSHAUS』

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008811975

レコードなどのフィジカルメディアにかぎらず知られざる音楽を探すことを、ディグる=掘ると表現しますが、我々のような新譜バイヤーにとってのディグは、インターネットやソーシャルメディアのチェックがメインです。配信で公開されてからよく聞いていた、バーラ・デゼージョの面々によるこのライブ盤も、そうして見つけたレコードのひとつ。仕事の合間に当社でリリースしたCDとレコードの反応をみるため、某SNSに「#zeibarra」で検索をかけてみたところ、あれ、レコードらしきものが….。初めは目を疑いましたが、検索してみるとレコードの存在を確認。あとはあの手この手を尽くして、取り扱いへと至った次第です。そういうふとしたブレイクの時間ってやっぱり大切ですね。


音楽の内容についてはもう商品のページに書いたので、ここでは大きく触れませんが、彼らの魅力の源泉はこうしたアコースティックな編成にこそある!という持論があるので、このレコードはまさに待望。その世界観を堪能できるゼー・イバーハの来日公演も、今からほんとうに楽しみです! (江利川)


■JazzTOKYO
東京都千代田区神田駿河台2-1-45 ニュー駿河台ビル2F
https://diskunion.net/shop/ct/jazz_tokyo




TONINHO HORTA & DOROTA MISKIEWICZ / トニーニョ・オルタ & ドロタ・ミシュキェヴィッチ『BONS AMIGOS』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008736479

ミナスのレジェンド、トニーニョ・オルタの新作はポーランドのヴォーカリスト、ドロタ・ミシュキェヴィッチとの共演。楽曲は過去の名曲のリアレンジが中心で、サウンドも浮遊感が漂う当にトニーニョワールドが展開。そこに透明感のあるドロタのボーカルが溶け込んで名曲たちが親しみ易くアップデート。名曲「Manoel, O Audaz」ではミシェル・ピポキーニャ(B)のイントロに導かれ二人の歌声が絶妙に響き合い、「Bons Amigos」ではオリジナルよりシンプルな編成がとても新鮮に聴こえる。師匠アンナ・マリア・ヨペックから受け継がれたドロタのワールドミュージックへの親和性の高さとトニーニョのサウンドが高い次元で融合した聴きどころ満載の1枚です。(古澤)





NEGARIT BAND / ネガリット・バンド『ORIGINS』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008787140

1969年の音源を2005年の映画が紹介した。ジム・ジャームッシュ監督作"ブロークン・フラワー"で随所に流れる謎のいなたいソウルジャズ。日本民謡にも通ずる哀愁漂う旋律と音階が妙に耳に残る。エチオピアの巨匠ムラトゥ・アスタトゥケの元祖エチオジャズである。その流れを継承する現代版エチオジャズがテフェリ・アセファ率いるネガリットバンドによる本作。タイトル通り源流を辿りつつ、メロウなエレピやソリッドなギター、ジャズなホーンで彩り、ドラムスは際立って現代的。エチオジャズの浸透と成熟を告げ、世界各地に潜む蠱惑的な音楽の存在をも暗示する。ジャームッシュといえば知らぬ間に近年作が増えている。すっかりアニオタ化して映画はノーチェック状態。観なければいけない。ゴダールも青山真治も旅立った今、本作を映画狂回帰を促す極私的な黙示と受け取るのは発狂の予兆?(赤尾)





JOANA QUEIROZ & SHIN SASAKUBO / ジョアナ・ケイロス & 笹久保伸『PICTURE / ピクチャー』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008772941

サム・ゲンデルとの共演が話題を呼んだ笹久保伸の『CHICHIBU』。その18分間ものセッションの直後に歌声とクラリネットを聴かせたのがジョアナ・ケイロスである。冒頭のセッションと雰囲気の異なるこの共演が、そのコントラストが美しく大変に素晴らしかった。もしまだ耳にしていないのであれば今からでもぜひ手に取っていただきたい。さて『CHICHIBU』のリイシューと同時に初CD化されたのが、そのジョアナ・ケイロスとの共演作『Picture』だ。笹久保が秩父の風土儀式を目にしたことに端を発し、秩父とミナス、地球の反対側の山と山が繋がるように、ケイロスの優しい音色と歌声もスピリチュアルな色彩をまとう。実に美しい共演、多くの人に聴いてほしい作品であるとともに、笹久保伸という存在が、精神的な深いところで世界中のミュージシャンと共鳴できる、稀有な存在であることを感じさせる作品だと思う。(逆瀬川)





FABIANO DO NASCIMENTO & SAM GENDEL / ファビアーノ・ド・ナシメント & サム・ゲンデル『THE ROOM』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008767685

どう考えてもいい予感しかしない組み合わせ、実は完全なデュオは初らしい。はてさてどんな音世界を生み出すのか…と思っていたら、出てきた作品は意外にもフォルクローレ風。いつもの「ファ~」みたいなエフェクトたっぷりのサックスは?と「アレ」のファン的にはちょっと肩透かしを食らった気分だが、ファビアーノが爪弾くギターと、ゲンデルのソプラノサックスのセッションはしかし、ファビアーノが当代随一のブラジリアン・ギターの名手であることと共に、ゲンデルも単に"鬼才"と片付けることの出来ない、現代最高のサックス奏者のひとりであることを如実に表している。エフェクトを駆使し独創的なサウンドを作り上げてきた二人が挑む、シンプルでごまかしの効かないセッション。知ってたつもりだがいざ聴くとやはり感嘆がもれるこの歌いっぷり。そして演奏が纏うたまらない哀愁。誰にも真似できない現代のフォークロア。素晴らしい。(逆瀬川)


■渋谷ジャズ/レアグルーヴ館

東京都渋谷区宇田川町30-7 アンテナ21 5F
https://diskunion.net/shop/ct/shibuya_jazz




AGUSTIN PEREYRA LUCENA / アグスティン・ペレイラ・ルセナ『PUERTOS DE ALTERNATIVA』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/DF180315-082

1STアルバムが先日FAR OUT RECORDINGSよりリイシューされたアルゼンチンの名ギタリストAGUSTIN PEREYRA LUCENAの1988年の作品。ノルウェー録音の1980年作"LA RANA"から8年のブランクを経て母国アルゼンチンで密かに発表された本アルバムですが、本人の奏でるギターやGUILLERMO REUTERの鍵盤を始め繊細な音像に一層磨きがかかり、"LA RANA"以前の作品と比べるとかなり印象が異なります。2004年発売の国内盤CDを聞いたことのある方も多いと思いますが、オリジナル盤は自主制作盤という事情もあり滅多に市場に出回ることのないマイナー・タイトル。当社でもほんの数回しか入荷がありません。素晴らしい内容の一方でレコードが存在することすら長い間周知されていなかった、知る人ぞ知る一枚です。(金田)


■新宿ラテン・ブラジル館
東京都新宿区新宿3-31-4 山田ビル4F
https://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_latin




FRANCO & OK JAZZ / フランコ & OKジャズ『EN COLERE VOL.2』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/XAT-1245778565

コンゴのポピュラー音楽、スークース(またはリンガラ、ルンバ)を代表するアーティストであるフランコの79年から80年にかけての楽曲をまとめた編集盤です。 やっぱりギターがとてもかっこいいです。ラテン音楽がルーツにあるのがスークースの特徴ですが、今作収録曲は特にラテン色を強く感じました。長尺の演奏ながら演奏陣の自由なプレイやリズムの変化など、ノリがいいだけでなく聴いていて飽きない意外性のある曲展開がとても楽しいです。(齋藤)





FAYE WONG / フェイ・ウォン (王菲)『十万回のなぜ(LP)』
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008755827

先月はフェイ・ウォンの初期作品7タイトルが一気にLPでリリースされました。日本でのデビュー作にもなった今作はとてもポップで聴きやすいのでとても好きです。オリジナル曲も聴きどころですが、中島みゆきからポリスなど自由な選曲のカバーも多く、カバー元を知っているとより楽しめる内容です。(齋藤)