2026.08.31 ジャズ 特集・お知らせ

ディスクユニオン ジャズスタッフ 8月度レコメンド・ディスク



ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




Avishai Cohen / Eternal Child / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009231730


ジャケットを飾るのは幼少期のアヴィシャイ・コーエン。私たちは、強面イスラエル人ベーシストにもこういう時代があったのか、いや、くちびるは変わらないな、といった感想を抱くが、56歳になった彼自身はその瞳に感じ入ったという。「この子どもの目には、生きることへの情熱に、あそび心、そして世界を知りたくてたまらない気持ちがもう宿っている。」そのことはタイトル“Eternal Child”と重なってくる。本作唯一のカヴァー曲で、作曲者はチック・コリア。彼はアヴィシャイをバンドに誘い、世界に紹介したメンターだ。ピアノ・トリオの本作においてアヴィシャイは、かつてチックが自身を見出したかのごとく、ふたりの若手イスラエル人を迎え入れている。NYで活動する30歳のエヴィアタール・スリヴニク(ds)、そして公開された経歴がほとんど見つからない、22歳のイタイ・シムホヴィッチ(p)。しかしその彼が、とてもいいピアノを聴かせる。タッチはドライかつ繊細で、作為を感じさせないナチュラルな音運び。ポール・コーニッシュやサルタン・スティーヴンソンとも共通する、音数を減らし、感情を奥にしまい、知的で澄んだ抒情を表現する新しいスタイルだ。アグレッシヴなはずのアヴィシャイのベースは若手へ花を持たせるかのように寄りそう。一方でドラムがジェフ・バラードに替わるM5は目の覚める華やかさ。ツイン・ドラムのM9ではやっぱりアヴィシャイがグングンとリード。M10で潮が引いていく。若手をフックアップすると同時に、彼らの世界を新たに発見する。「永遠の子どもであり続けられる芸術家がいる。そういう人は幸運なんだ。」そう語るアヴィシャイにメンターとなる番がきた。瞳は永遠にあの頃のままに。




Joey Alexander / Celestial Keeper / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009242895


ジョーイ・アレキサンダーを「神童」として聴く時代は、とっくに過ぎ去った。12歳でグラミー賞にノミネートされた彼によればタイトル“Celestial Keeper”とは、ミューズや守護天使にも似た「その声が、灯を絶やさず、音楽を奏で続けるよう促してくれる」霊的な存在。故郷であるインドネシア・バリ島へ帰還し、山々の近くで暮らす毎日が、自然の美しさや、命という贈り物について思い出させてくれたのだという。自身のルーツを見つめ、創作の源泉を不断に探求する。そこにいるのは成熟した、23歳のコンポーザー・ピアニストだ。本作はピアノ・トリオを基本に、ゲストとしてヴォーカルと、ジャレール・ショウ(as)が参加する。M1の希望にあふれたピアノ・ソロ、M2の洗練されたビートとクリアなアルト、そして青春の穏やかなみずみずしさを湛えたヴォーカル曲M3…若い“のに”との前置きは不要で、その若さは、すべてがポップで新鮮な、今このときを生きる音楽として結晶している。キラキラひかる大海原へ、ジョーイ青年はすっとすべるように漕ぎ出していく。彼の行く手には広大な世界がひらけている。




Cécile McLorin Salvant / With Every Breath I Take / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009233266


劇場だ。自分の席を見つけよう。早くしないとはじまっちゃう。メトロポール・オーケストラをバックに歌うセシル・マクローリン・サルヴァントの最新作は、多彩なシーンが連続する美しい映画のようでも、演技者セシルによる独り芝居のようでもある。サイ・コールマン作の『砂の器』的叙情を湛えたM1にはじまり、エリントンにソンドハイムにルグランに自作曲と、セシルはそれぞれの詞の主人公になりきって歌い、その生きるべき舞台を管弦楽が補強する。最たる例は《三文オペラ》の“Barbara Song”(M4)。歌うのは純朴なお嬢様。大金持ちにナイス・ガイ、素敵な相手に会えたなら、こう言わなきゃならないわ…“No.” 突如カラフルなサウンドが展開、“顔を上げよ、油断は禁物”、母親の教訓が、彼女に染みついた社会規範が、極上の響きで軽やかに歌われる。原曲に潜むシニシズムがオーケストラによって何倍にも増幅される。終わりに向かって翳る舞台。ラスト・トラックは物憂げな弦楽に続き、ピアノとのデュオで歌われる“Lush Life”。かつて華やいだ街に遊んだ中年男性の歌。生のむなしさを知ったとき、あなたが来た。切ない笑顔はぼくへの深い愛ゆえのことと思った。でも、それは大きな間違いだった…“Life is lonely again ...” 言葉は歌詞ではなく心情の吐露として、本当にその瞬間に溢れてくるようだ。聴き終えたあと、茫然とする。幕が下りても、しばらく席を立つことができない。




Steve Swallow / Winter Songs / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009240843


内省と静けさ・・そしてそこへ通底する妖艶さがある音楽。スワロウ、13年ぶりのリーダー作。長年のコラボレーターであり妻でもあった、カーラ・ブレイへの思いが込められた作品であるのは明らかでしょう。9曲収録。全てスワロウのオリジナルで、「one」から「nine」まで、割り振られたような曲タイトルが付けられている。具体的な曲名から先入観を抱かせず、音楽がすべてであり、どう受け取るかは聴き手にゆだねられているのだと思う。前作『Into The Wood』にも付き合っていたクリス・チーク、スティーヴ・カルデナスが引き続き参加。ギル・ゴールドスタインにマイク・ロドリゲス、そして朋友ともいえるアダム・ナスバウム。滋味のある色合いを出せるミュージシャンが集められている。丁々発止のインプロヴィゼーションというより、各人がじっくりスワロウの気持ちに寄り添い、アイデア、音のモチーフを発展させていくようだ。だからこその人選で、華美なもの余計なものがない。自然な音の美しさと統一感がいい。レクイエムのような曲、戯れるようなワルツ、セピア色のピアノメロディ、切なくもチャーミングな曲など。それらが『Winter Songs』というタイトルに集約されている。冬でいて穏やか、2人の内面を見たような感じがする豊潤な音楽だ。




Miki Yamanaka / Breathe / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009247872


2012年に渡米しNY在住。キモノとサングラスのスタイルで存在感を放つピアニスト、ミキ・ヤマナカ。いや~しかし、実に本場で鍛えられた演奏と思う。独自のしなやかさや余裕もあって、ヤマナカさん・・どんどん深化してますね。前作はトリオでしたが、今作はサックスのニコール・グローヴァーを迎えたカルテット。ニコールもバンドに彩りを加えるだけでなく、アルト、テナー、ソプラノを使い分け、フロントでピアノと並び、存在感を発揮します。例えば、テナーでバンドを牽引する「Indigo」、この満を持して登場するニコールのソロはどうでしょう?ソプラノが際立つ3拍子曲「James Williams」では、作曲者の敬意に美しさと推進力を加えます。あと、寄せては返すリズムが余韻を残す「Breathe」。この3曲を本作のハイライトと思う。1曲を除きすべてがヤマナカさんのオリジナル。シリアスで力強い表現がある一方、モンクを思わせるユーモア、遊び心も顔を出す(というかこれもシリアスですね)。伝統を踏まえて、いまを聴かせる充実作。




関根敏行 / Longing / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009153712


3年ぶりのトリオ作。関根さんと言えば、やはり70年代の幻盤『ストロード・ロード』と『ストップ・オーヴァー』が思い起こされるベテランにして、現役のピアニスト。ここ近年では、日本のみならずアジア・世界的に人気を得ているそうだ。そして本作を一言でいえば、実に頼もしいハードバップピアノが楽しめるアルバム。曲目を見ると、シダー・ウォルトン、タッド・ダメロン、ベニー・ゴルソンの渋い名曲が並ぶ。お気に入りなのか『ストップ・オーヴァー』でも演奏されていた、ボビー・ハッチャーソン「Little B's Poem」の再演もあったりして・・骨太でいて、スロー曲、自作の「Longing」などでは抒情的な歌ごころを発揮しまくる。演奏曲の選定には、吾妻光良とザ・スウィンギン・バッパーズのアルトにして、フリーちんどん。当店常連のレコードマニアでジャズプロデューサー、渡辺康蔵氏の意向が反映されているとのこと。うむ、心と身体をを揺らすグルーヴあり。全ハードバップファンへ!




エイシェント・インフィニティ・オーケストラ / イッツ・オールウェイズ・アバウト・リベレーション / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009246437


弦楽器、ホーンの中低音とフルートや民族楽器の雄大なユニゾンによる豊かな響きが、雄大な川のうねりの如く耳を包む。ファラオ・サンダースやアリス・コルトレーンからの系譜を、より豊潤で鮮やかな彩りに満ちたスピリチュアル・ジャズへと昇華したUKリーズ発の大編成ジャズ・アンサンブル。Gondwanaよりリリースを重ね、今作で3作目。M2では、ムビラの小さくころころした音色を起点に、ウッドベースがグルーヴをデザインし、チェロ、オーボエなどホーンが立ち替わりうたを紡ぐ。そして、M6-7は今作のハイライトだと思う。愛、解放、自由、祝祭。その精神性は分断が深まる現代社会に呼応し、さらに批判ではなく、真摯に自分たちのエネルギーを広げていく祈りとして響く。音楽を超えた場所に久しぶりに連れていかれた。




Tyshawn Sorey / Members... Don't! / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009219823


現代NY最高峰ドラマー、タイショーン・ソーリーが、マックス・ローチの'68年作『Members, Don’t Git Weary』を再解釈したライヴ盤という本作。聴き比べてみたけれど、原型はあまりとどめておらず頭から大胆に裏切られるが、現代NYシーンの熱と即興によって昇華された計り知れないパワーが爆発していた。タイショーンによる編曲はもちろん、マーク・シム(ts)、アダム・オファリル(tp)の参加、そして個人的に初耳だったレックス・コーテンのピアノがすごくよかった。タイショーンとアグレッシブに会話するような和声の置き方と余白、即興の推進力は絶妙な緊張感ともに自由を駆ける。当時の公民権運動やブラック・パワー運動の空気の中で生まれた極めて政治的なローチの作品。本作では90分以上にわたり拡張されている。風化することなく過去から現在に広げ、引き繋ぐこと。その精神を現在進行形の生きた音楽として、魂込めて提示する姿を私たちは目撃する必要がある。




Miles Okazaki / Boomtown / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009229411


アメリカ西部の内陸部に位置するワイオミング州には、山岳地帯や草原、荒野が広がる。そんな広大な自然の中に、人間の町がぽつんと現れる。ギタリスト、マイルス・オカザキが現地をドライブ中に思いついたものだというコンセプチュアルな本作。NYの10人の精鋭によるアンサンブルは、前作『Miniature America』(2024)とメンバーを重ねつつ、アンナ・ウェバーとジョン・イラバゴンによるサックス2管、さらにトロンボーン、ベースも2人ずつという鏡のような編成。それぞれ同じ楽器同士の対話は、摩擦や立体感を生み出す。そしてそのあわいに何があるのかを想像させる。また、本作の風景は牧歌的でありながら退廃的でもあり、家のなかに生の気配はない。しかし、不穏ながらも豊かなアンサンブルの躍動によって、見えない〝なにか〟の存在が、まるで生きているかの如く力強く鮮やかに描かれる。それは美しい自然の神秘であり、そこに住まう精霊とも亡霊ともつかないようなものだと思う。生と死、美と醜、ここにいるとその定義は表裏一体で、死んでいると思っていたものは生よりも生き生きとし、汚いと思い込んでいた音はとたんに美しくなる。その危うさに惹きこまれる一方で、境界が揺らぐことに恐ろしさを感じる。




Mat Maneri / Mist / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009224383


タルコフスキーの『ノスタルジア』(1983)は、水の映画だ。薄暗い水浸しの部屋に、天井の穴から水がぽたぽたと落ちる。水そのものが音楽になりうる。上から下へと落ちる水は、霧となりどこを漂うのか。ヴィオラ奏者のマット・マネリ、ピアニストのルシアン・バンを中心としたカルテットの『Mist』は、『Dust』(2019)、『Ash』(2023)に続く三部作の完結編。スケッチするように動きが進んでゆく。透明で静か、揺らぎのあるバンのピアノは、まさにあの水の部屋のシーンを思い出させ、重力を伴って滴り、時間を刻む。一方、マネリのヴィオラは、水滴ではなく霧のように空間に漂う。弦楽器は減衰しない。音と音の間を繋ぎ、時間の境い目までを縫うよう。そして美しい旋律だけでなく、あえて調を外したり、いびつな音を鳴らすところになぜだか信頼が持てるし、その連なりは聞いたことのない言葉のようでもある。暗い水の部屋の穴や窓には白い光が入り、水面はそれを映すことができる。灰には過去しか存在しないし、どこかにある光を知ることもできない。




ソニー・ロリンズ / Live In Japan 1983 (2CD) / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009269668


タイトルにピンときたら年季の入ったジャズ聴き昭和人だ。伝説のLive Under The Sky '83の記録である。ステージの模様はFMで生中継、後日ハイライト、年末特番と何度か放送されTV放映もあった。相当数の私的録音があったはずで、今回のリリースも誰かのエアチェック音源だろう。2021年にCD1枚に短縮してリリースされたEquinox盤は、どの段階かのテープ速度誤差により微妙に早回しだ。自分のカセットやYoutubeの複数音源と比較すると、おそらく今回リリースの2枚組の方が本来の速度に近い。1回限りの特別編成バンドはジャック・デジョネットとアルフォンソ・ジョンソンだけでも贅沢なのに、自身のグループで人気沸騰のパット・メセニーが加わって"Sonny Rollins Special Quartet"と称された。スター奏者たちを余裕の風格で統べるロリンズ。ガトー・バルビエリも愛用した豪快マウスピース、ベルグラーセンで初っ端から10分以上も吹き続けるテナーマッドネスぶりには唖然とするばかり。カリプソチューンでギターシンセサイザーをスケールアウトしながら弾きまくるメセニーに会場が沸く。熱狂のうちに"祭りを止めないで"が1分に及ぶロングトーンで締められて終わり、2分に及ぶ拍手喝采に応えてアンコールは"モリタート"。古い日本映画の宴会シーンのような手拍子と大歓声に包まれてロリンズがモリモリとオヤジ全開にブロウする。真夏の空の下、メセニーの開放的なギターによって最高にトロピカルなモリタートが出現。完成度ではサキコロに敵わないが、こちらは圧倒的に感動的。この年のLive Under The Skyは大当たりとされ、どの出演者も充実した放送音源の後に同時期のレコードを聴くと物足りなく感じるほど。ウェザー・リポート、クルセイダーズもCDリリースされ、残すはチック・コリアのトリオ・ミュージック。ロイ・ヘインズのハイハットでスチャッとキマる"Eiderdown"がサイコーなアレだ。ジャズ聴き初心者だった自分はこれらによってジャズ観を形成されてしまった。その後ジャズなんて鬱陶しいと何度もそっぽを向いてきたが、この時のライブ音源を聴くと初心を取り戻してまた元気になれる。




平倉初音 / The Silent Mask / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009242693


渋谷毅氏が旅立ってしまった。体調が優れないと3月頃からライヴがキャンセル続きになり、快復を待ち望んでいた渋オタとしては無念の極致。もうあのピアノを生で聴けないとは世界も終わりだ。今回のセレクションは素知らぬ顔で全て渋谷毅関連作に差し替えて氏の功績を讃えようとメディアジャックを目論んでいたのだが、この平倉初音の新作を聴いて思い止まった。渋谷毅の音楽に感じるのと同じ、エリントン、モンク、ミンガスと受け継がれてきたジャズのエッセンスを感じたからである。それは甘美な憂鬱に包まれてモンクの響きで終わる2曲目に顕著だが、遥かに新しい世代の彼女は当然その後のより進化したジャズをも習得している。4曲目は明らかに'60年代マイルスを参照しており、6曲目は流行りの現代スタイルに対する挑戦状のようだ。原朋直先輩を盾にNYに殴り込みをかけようというのか? アルトの佐々木梨子はまだ二十歳過ぎにして肝の据わった頼もしい吹きっぷり。精鋭リズム隊を得て下剋上も狙えるゲリラ編隊である。絶望が希望に変わる救世盤。




渋谷毅 & 石渡明廣 / 月の鳥 / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1000446114


粋なタイトル通りステレオタイプではない"和"が感じられる。当の音楽家たちは和ジャズというレッテルには内心辟易と推察するが、こんな風流なジャズならそれもありかと納得してもらえそうな和ぶりである。そしてベース役もこなすギターがギター的なベースと重なるからか、カーラ・ブレイとスティーヴ・スワロウのデュオに似た味わいを感じる。渋谷さんはモンクにしろカーラにしろ正規の音楽教育とは無縁な手探りの独創性に惹かれたのではなかろうか。だからインディーズから頭角を現した石渡さんに何かを見出し自身のオーケストラに誘ったのだろう。石渡明廣はジャズらしからぬ風貌と音色からして唯一無二。空間的で浮遊感あふれる一方で透明感が希薄などこか泥臭いサウンドは、一瞬似ていると錯覚するパット・メセニーとは真逆だ。渋谷毅のようなピアニストはきっともう現れない。ぽつりぽつりと残された録音は渋谷毅が存在した証である。何度繰り返しても飽きない自然体であっさりと通り過ぎる風雅な時間。かけがえのないものは何気ない。




Luca Dell'anna / Shojin / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009254295


イタリアのピアニスト、ルカ・デッランナの新作は前作ひ引き続きステファノ・アメリオが主催する『Artesuono』からの新録音で、新進気鋭の日本人サックス奏者真野崚磨(まの りょうま)が参加したカルテット作品となります。タイトル名と竹林のジャケ写のせいで良くも悪くも「あーはいはい、よくあるオリエンタルな感じね」と流されそうですがいやいやそのまま通りすぎるのはちょっと待ってくださいね。本作はアーバンな雰囲気と混沌としつつも制御された東京や大阪といった日本の大都市の様と仏教的な静寂を現代ジャズで表現した、自身のオリジナルを9曲を収録した意欲作で、1970年代フュージョンの要素も取り入れ力強く躍動感のあるサウンドや変拍子を巧みに操る流麗なリズムセクション、叙情的なサックスの音色が深い内省的な世界観を描き出した、西洋ジャズと東洋の精神性が一体となった奥深い世界観が魅力の1枚なんですよ。ステファノ・アメリオの精緻なミキシングもその音響的な美しさを際立たせています。




Charles Lloyd / Sangam & Friends / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009255511


チャールス・ロイドが15年以上の歳月を経て完成させた2026年の最新作『Sangam & Friends』。2009年にムンバイで録音されながらも頓挫していた幻の音源が、追加レコーディングを経て遂に陽の目を浴びた奇跡の一枚です。店内に流した瞬間に流れた異国情緒を漂わせる聞き慣れない言語の正体は南インドの古典声楽。本作はロイドとドラムのエリック・ハーランドに加え、シタールやタブラ、バーンスリー、サーランギーといったインドの伝統楽器を操る著名な現地ミュージシャンたちとのセクステット編成で録音されています。M4「Tagore」は、ロイドの幽玄なフルートの音色に強烈なリズムが溶け込んでいく、本作のハイライトとも言える1曲。ジャズとインド音楽が深く共鳴し長い時間を経て熟成されたスピリチュアルな響きは、今いる空間を瞬時に神秘的な世界へと誘います。




Kosmos Trio / And The Sun / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009263151


2023年にリリースした『Brev til en ven』で北欧ジャズ好きの心を鷲掴みにした(そして大学生が近所の公園で撮ったみたいな謎ジャケットもインパクトありました)、デンマークのピアノ・トリオ、コスモス・トリオの最新作です。このトリオの魅力は音数を増やすのではなく、一音一音を丁寧に置いていくような演奏にあると思います。フレーデ・ホルガー・トーセン(で合っているのかな?)のピアノは特に印象的で、音を鳴らすというよりそっと響きを差し出しているよう。トリオ全体にも無駄な動きはなく沈黙さえ音楽の一部として機能しているように感じました。派手な展開や技巧を誇示する場面はほとんどありませんがその抑制こそがこの作品の強み。小さなフレーズや微妙なニュアンスがじわじわと心に残り聴き進めるほどに深みが増していきます。静かだが芯は強い、耳を傾けるほどその豊かな表情が見えてくる作品です。




JOHN TCHICAI, CADENTIA NOVA DANICA / Wigmore Hall 1968(LP) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/detail/1009221849


昨年発売された同レーベルのCADENTIA NOVA DANICAの発掘音源LPに比べて段違いの素晴らしさ。
CADENTIA NOVA DANICAの代表作「Afrodisiaca」「Cadentia Nova Danica」より以前に行われたロンドン・ライヴ音源。
CADENTIA NOVA DANICA結成の1966年のライヴ音源が、2016年に「August 1966 Jazzhus Montmartre」として発売されているが、それと比較するとグループの美学がより純化し音に結晶していることが分かる。
デンマーク帰国後のジョン・チカイ「らしさ」を愛するファンにおすすめ。




ZU / IGNEO (CD) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/detail/1009231743


ZUというバンドの2002年の第1作のリイシューらしいのですが、私は今回初めてこのバンドを知りました。なので、2002年以降の変遷を全く知らないのですが、ハードコア・フリージャズ・サックストリオとして非常に美味でした。
ジョン・ゾーンのペインキラーの正統なフォロワーと言っても過言ではないと思います。
以上、あえて2作目以降を一聴もせぬまま、このアルバムを聴いた直後の熱量だけでおすすめ致します。
LPも同時リイシューされました。




HENRY THREADGILL, VIJAY IYER & DAFNIS PRIETO / Fifteen / 新宿ジャズ館 四浦

https://diskunion.net/detail/1009260686


ヘンリー・スレッギル、ヴィジェイ・アイヤー、ダフニス・プリエトという現代ジャズ・シーンの最高峰が集結したアルバム「Fifteen」は、ジャンルの境界を優に超える洗練された音楽的到達点を示している。メンバーのキャリアは圧倒的であり、スレッギルは「In for a Penny, In for a Pound」(PI RECORDINGS)でピューリッツァー賞を受賞した巨匠である。また、ピアニストのアイヤーとドラマーのプリエトは共に、マッカーサー・フェロー(天才賞)を受賞し、卓越した知性と創造性を賞賛されている。この3人が織りなすサウンドは、緻密に構成された現代音楽的なポリフォニーと、生々しいインプロヴィゼーションが奇跡的なバランスで融合している。変拍子や非対称なインターバルが飛び交うスリリングな展開の中に、聴き手を引き込むオーガニックなグルーヴが息づく。  特筆すべきは、ジャンルを固定せず、常に先鋭的なアート・ミュージックを発信し続ける、メジャーかつオルタナティブな洗練を誇る名門「ノンサッチ(Nonesuch)」レーベルからのリリースという点で、このことは、現代音楽シーンの大きな象徴性があると言っていいだろう。かつてジャンルの周縁に追いやられがちだったフリー/アヴァンギャルドの系譜が、現代においては現代音楽やアート・ポップと地続きの「上質な芸術形式」として広く開かれていることを同レーベルは証明し続けている。本作のリリースは、即興と高度なコンポジションが融合した最先端のサウンドが、ポップスやクラシックのリスナーをも巻き込む普遍的な価値を持つ時代になったことを雄弁に物語っている。

Henry Threadgill(as,fl), Vijay Iyer(p), Dafnis Prieto(ds)




Nicole Zuraitis / Devil I knew / 横浜関内ジャズ館 小林

https://diskunion.net/detail/1009263523


女性作家の詩とニコール・ズレイティス自身の音楽が融合した非常にコンセプチュアルであり、文学的なアルバム。エミリー・ディキンソンの詩にこういうかたちで「再開」出来るのも喜ばしい。クリスチャン・マクブライドを筆頭に一流ミュージシャンの演奏も楽しめるが、「鏡」「殉教者」「呪い」「清算」「レクイエム」のテーマで紡がれる歌声は深淵で、聞く方にも緊張感が伴う。
"Better the devil you know than the devil you don't know."
ジャケットに惹かれてこのアルバムを手に取れば、devilはやさしい顔をして近付いてくるかもしれないし、来ないかもしれない。しっかり聞き込めるかも含めて、それはあなた次第です。




シンスケ・フジエダ・グループ / 福島(Fukushima)(3rd Press) / 吉祥寺ジャズ館 荒川
https://diskunion.net/detail/1009246143


この1年とても話題になった盤だが、3rdプレスリリースでまた浸透していくことになると思う。スピリチュアル・ジャズという形容は多くの人が語るところだと思うが、聴いているとタイトル曲「福島」や「Silent Night」など、モーダル・ワルツ/ジャズ・ダンサーのフィールを擁していることに気づく。ヒプノティックな繰り返しがダンス・ミュージックとして作用するのはジャズはもちろん、テクノにおいてもそうだが、「福島」の3拍子で跳ねる感じ、反復で作るグルーヴはコルトレーン「My Favorite Things」(ATLANTICのやつ)を想起させるし、そういえばジャケットも少し似ている。このグループが例えば近年のヒップホップを援用したビートや、5連符/7連符のドラムを採用していたらこの感じにはならなかっただろう。日本語のタイトルが持つ共有された過去のイメージや、70年代ジャズが持っていた機能性が合致したところ、ポケットにハマったものとして生み出された感じがある。バイオリンパートのロングトーンはとてもトランス感があり……ROVOにおける勝井祐二、ヴェルヴェッツにおけるジョン・ケイルのようにこちらを高揚させてくれる。シリアスな言葉、体にクる演奏、最高のコントラスト。いやあ、カッコいい。




Eric Harland / Vipassana II / 新宿ジャズ館 逆瀬川
https://diskunion.net/detail/1009229409


"Vipassana"とは仏教に由来する瞑想法らしい。Wikipediaによれば「今という瞬間に完全に注意を集中する」という、ジャズ・ミュージシャンのような瞑想法のようだ。そういえば以前エリック・ハーランドのリーダー公演を見に行ったとき、演奏前にちょっとした瞑想のような時間を設けていたことを思い出す。
本作は"II"とタイトルにあるように、2014年の『Vipassana』の続編、ということになるが、自身のバンド"Voyager"名義ではなくメンツはほとんど入れ替わっており、サウンドの方向性も大きく変わっている。特にBIGYUKIが参加したエレクトロニックなトラックが今回のひとつの軸。シンセのウワモノに対してハーランドのドラムが際立つところもドラム好きには嬉しいところ。もうひとつの軸としてベン・ウェンデル、ギラッド・ヘクセルマンがソロを回す、よりジャズ志向の楽曲もあるが、ここでもベンがサックスにリヴァーブをかけていたりと、やはり前作とは少し異なる感触がある。単純に"Voyager"のメンバーが忙しすぎて集まれなかっただけかもしれないが、違うメンツを集めて同じことをやるわけではなく、今集まれるメンツでしか出来ないことをやる、というのは確かに"Vipassana"に通じるところなのか。前作のコンテンポラリー・ジャズ風味が好きな人には戸惑う変節かもしれないが、これはこれでやっぱりカッコいい。というかなんならこのメンツでのライヴを見たい、くらいまである。だってなかなか見ない組み合わせですから。




Amiri Baraka / New Music - New Poetry(LP) / 商品部 川田 

https://diskunion.net/detail/1009254229


ニュージャージー州ニューアーク出身の詩人、作家、音楽評論家、思想家、活動家、アミリ・バラカが1982年にリリースしたアルバム「ニュー・ミュージック-ニュー・ポエトリー」(India Navigation/IN-1048/LP)がCDとLPで再発。

以前からIndia Navigationレーベルのレコードは集めていたのでオリジナル盤は所有しておりますが、今回の再発盤はオリジナル盤LPの裏ジャケットに小さくプリントされていたクールなステージ写真を表ジャケットに使用したすぐれもの。アミリ・バラカの火を噴くようなポエム・リーディングと同じく火を噴くような凶暴なデヴィッド・マレーのサックスが終始絡み合うような壮絶なフリー・ジャズアルバムで、アルバム1枚を聞き終わった時の疲労感は格別です。ポエムとデヴィッド・マレーのライナーノーツをプリントしたジン・スタイルのインサート付!




LOUNGE LIZARDS / Live 79-81(LP) / 商品部 川田 
https://diskunion.net/detail/1009270396


ニール・クーパーが1981年にニューヨークで立ち上げたカセット・テープ・オンリーのレーベル、ROIR (Reachout International Records)はニコ(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)、リチャード・ヘル、ニューヨーク・ドールズ、ジョニー・サンダース、スーサイド、ジェームズ・チャンス&ザ・コントーションズ他、ロックをメインとした興味深い音源を数多くリリースしていた。ゆえに80年代には直輸入品で仕入れていた思い出のあるレーベルだ。そのレーベルから1985年にリリースされたのがラウンジ・リザーズのライヴ音源集。既にCDやLPで再発済みですが、久々のアナログ盤LPで再発された本作の新装ジャケットは個人的には一番気に入っています。内容は1979~81年に行ったクールなパンク・ジャズが堪能できる素晴らしいライヴです。




Patty Waters / College Tour / 商品部 川田 
https://diskunion.net/detail/1005204303


1963年にバーナード・ストールマンによって設立されたESPディスクを集め始めてから早、40年以上が経過した。フリー・ジャズ、アヴァンギャルド、フォーク・ロック、等々の個性的なアーティストの貴重な音源を数多くリリースしている。近年は海外での人気度が高くなっており、価格が高騰していることは周知の事実。ESPの魅力とは内容のみならず、そのジャケット・アートワークが鈍い光を放っているかのようで、一度見たら脳裏に焼き付いて離れないタイトルも多い。ゆえにLPやCDで所有し、強力なジャケットのオーラを浴びながら深く聞き入りたいものです。

本作はビリー・ホリデイに影響を受けた女性ジャズ・シンガー、パティ・ウォータースが1966年にESPからリリースしたセカンド・アルバム「カレッジ・ツアー」で、アメリカの5大学を廻ったツアーのライヴ音源集。一度はまったら抜け出せないようなアシッド・フォーク・ジャズが聞ける名作。




ラリー・ゴールディングス, ピーター・バーンスタイン, ビル・スチュワート / ロンバス/ 商品部 川村
https://diskunion.net/detail/1009259573


ラリー・ゴールディングス、ピーター・バーンスタイン、ビル・スチュワートの現代最高峰の名手たちが織りなすジャズ・オルガン・トリオ。オルガンという楽器は、一人で音楽を完結できるので、アンサンブルには向かない楽器なのでは?と考えておりました。オルガンはメロディー、 ハーモニー、ベースを担うことができ、さらにはそれを管楽器のように音を持続させることができる完璧に近い楽器です。その反面、ピアノより情感を出すのが難しく、トランペットやサックスに比べるとメロディーのリードが弱い部分があるという器用貧乏な部分があるのですが、一番の難は、発するサウンドのレンジが広いので、アンサンブル、特にギターを加えたトリオになると、お互いの音が干渉しぶつかり、雑音になりかねないところです(そのぶつかり合いをあえて強調し強みにしたのはライフタイムかなと)。その考えを変えさせてくれたのがこの3人。それぞれの楽器が引き立ち、洗練されたサウンド、バランス感覚とセンスは、3人の達人と言える技量と経験がなせる業だなと、改めて感心しっぱなしな作品。




ダニエル・ビジャレアル / Lados B(LP/COLOUR VINYL) / 商品部 池田

https://diskunion.net/detail/1009260393


Dos Santosのメンバーとしても知られるパナマ出身ドラマー/パーカッショニスト、ダニエル・ビジャレアルの2023年作品『Lados B』カラー盤が入荷しました!前年にリリースしていた『Panama77』と同じセッションから、即興演奏を中心に収録したまさに"B面"、本来であればセットで聴いてほしいところですが、個人的には本作のほうが好みです。3名の熱量はありつつもどこか肩の力が抜けたナチュラルなサウンドは、"即興"と聞いて少し身構えてしまう人にも一旦聴いてほしいです。黒盤は入荷したら即売れてしまう(でお馴染みな)ので、こちらもお早めに!!!

前のページへ戻る

チェックしたアイテム RECENTLY VIEWED

チェックしたアイテムはありません

商品一覧・検索は
こちらから

ニュース&特集 NEWS & FEATURES

もっと見る

イチオシ商品 STAFF RECOMMEND

(ANIMATION MUSIC) / (アニメーション音楽) / New PANTY & STOCKING with GARTERBELT The Vinyl
New PANTY & STOCKING with GARTERBELT The Vinyl

2026年09月30日 / LP(レコード) / JPN

新品在庫あり

レコード レコード

¥7,150 (税込)
Sweet William / Division(LP)
Division(LP)

2026年09月30日 / LP(レコード) / JPN

新品在庫あり

レコード レコード

¥5,800 (税込)
FLIS / HE LOVES YOU / HE LOVES YOU(DJ KOCO Boogie Mix) (7")
HE LOVES YOU / HE LOVES YOU(DJ KOCO Boogie Mix) (7")

2026年09月30日 / 7"(レコード) / JPN

新品在庫あり

レコード レコード

¥2,420 (税込)
TOTALITAR / TOTALITAR (LP)
TOTALITAR (LP)

2026年09月26日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫あり

レコード レコード

¥5,500 (税込)
PHIL LORD & CHRISTOPHER MILLER  / フィル・ロード&クリストファー・ミラー / PROJECT HAIL MARY 4K UHD
PROJECT HAIL MARY 4K UHD

2026年08月11日 / BLU-RAY(ブルーレイ) / IMPORT

新品在庫あり

映像 映像

¥8,030 (税込)
もっと見る

読み込み中...

アーティスト

タイトル

レーベル

マニアック検索

詳細検索

読み込み中...

チェックしたアイテム RECENTLY VIEWED

チェックしたアイテムはありません