ディスクユニオン ジャズスタッフ 5月度レコメンド・ディスク

ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!
Stacey Kent / Time For Love / JazzTOKYO 中村
https://diskunion.net/detail/1009164631
歌詞を繊細かつ深みをもって体現できるアーティストの一人として高い評価を得ているステイシー・ケントが約3年ぶりとなる新作をついにリリースです。今作もジム・トムリンソンとアート・ヒラハラが参加していて、控えめでありながら洗練されたスタイルでビーチ・ボーイズやスティーヴィー・ワンダー、バート・バカラックらの楽曲を取り上げています。個人的おススメは63年にセルジュ・ゲンズブールがジュリエット・グレコのために書いた名曲M4「La Javanaise」。タバコと濃いブラックコーヒーの香りがする本家ジュリエット・グレコ以外にも現代的にアップデートされたマデリン・ペルー、少し可愛らしいトーンのジル・バーバーといった素敵なバージョンがあるのですが、ステイシーは虚無感が漂うシャンソンの名曲を軽やかにスウィングさせています。
Daphne Roubini & Black Gardenia / Whisky Scented Kisses / JazzTOKYO 中村
https://diskunion.net/detail/1009184492
バンクーバーを拠点にしているグループ、ブラック・ガーデニアを従えたシンガーのダフネ・ルービニがロマンチックなアルバムをリリースしました。柔らかく小さな声は抑制されているけれど表現力豊かでややハスキーで影を感じさせつつスウィートさもあるという独特の歌声で、深夜のムードや1940年~50年代のスタイルとサウンドをテーマにオリジナル曲を含めた9曲を収録しています。個人的おススメはM6「There's Always Tomorrow」とビリー・ホリデイへのトリビュートとして書かれたM8「This Year's Kisses」。温かみと情熱を持つダフネの歌声を控えめな伴奏がより際立たせています。
Rongetz Foundation / Velvet Bullet / JazzTOKYO 中村
https://diskunion.net/detail/1009210004
フランス人トランペッター、ステファン・ロンゲット(ロンジェ?)が2000年代後半からスタートさせたプロジェクト「ロンゲッツ・ファウンデーション」の2021年作。メンバーはサイモン・ムリエ(vib)、カルロス・ヒメネス(fl)、ティヴォン・ペニコット(ts)、アレクサンダー・クラフィー(bass)、ジョナサン・バーバー(ds)、そして小川慶太(perc)が2曲参加。強烈なリズムの上に力強いソロ・パートが乗っているのが印象的で、ひと昔前ならば「クラブ・ジャズ」と言われていたかもしれないスタイリッシュなサウンドがこれでもか!と展開されています。特に気になったのがサイモン・ムリエ。2020年にデビューして以来着実にキャリアを積み重ね、現在はジャズ・ヴィブラフォン界を背負って立つ気鋭のミュージシャンとして大活躍している彼の初々しくも時に柔らかく時に鋭い波を放つマレット捌きには驚かされました。そうそう、ニューヨリカンのカルロス・ヒメネスのフルートも忘れてはいけません。都会のヒリヒリした緊張感やむせかえるような熱帯夜を思わせるその音色の存在感たるや!とこのアルバムの魅力を文字にしてもどこまで伝わっているのか分かりませんので、まずは息を呑むようなオープニング・ナンバー「Sun Strike」を聴いてください。ちなみに個人的2026年買ってよかったアルバムベスト10にはランクインしましたよ。ふふふ。
Dick Sisto / Love Grows Deep / JazzTOKYO 中村
https://diskunion.net/detail/1009176622
ヴィブラフォン奏者ディック・シストとフレッド・ハーシュが2001年に録音したデュオ作品が未発表5曲を加えてCD化、と言われたら聴かないわけにはいかないでしょう。2023年リリース(1994年録音作をリミックス、リマスター)のカルテット作品『Falling In Love』で初めてディック・シストというミュージシャンを知ったのですが、ヴィブラフォンの音色があまりにも心地よくうっとりしたものです。が、いかんせん彼の情報がほとんどなくフィッツジェラルドがこよなく愛したケンタッキー州の高級ホテル「ザ・シールバッハ・ヒルトン」でミュージック・ディレクターをしていた、ということぐらいしか経歴が分かりませんでした。でも「音楽でおもてなしする」という姿勢がプレイ・スタイルに出ているのでしょう、今作もラウンジーな演奏が11曲収録されています。おススメはM3とM11です。
Shai Maestro / Guesthouse (日本語帯付) / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009143959
現代ジャズシーンを牽引するピアニスト、シャイ・マエストロのnaïveレーベル第2弾。シャイが奏でるかわいらしいワルツで幕が上がる。小さな絵本を開き、マリオネットが躍るような物語のはじまりを予感させる。それも束の間、瞬く間に大海原へと変貌していく。シャイ節が炸裂する。馴染みのホルヘ・ローダーやオフリ・ネヘミアとのトリオに、キーボードのギャビ・レハヴィも加わり、壮大な叙事詩をめくるように景色が開けていく。今作は、ECMや昨年のソロ・ピアノ作品を経て、近年のリリースの中でもコンセプトが明確に現れているだろうと思う。タイトル「The Guesthouse」の通り、イマニュエル・ウィルキンス、マイケル・マヨらの強力なゲストを迎え、さらにキーボードやビートなどの電子音響を取り入れた緻密なプロダクションは、これまでのインスト/アコースティック中心の作風から、現代の最先端を見据えた新たな挑戦へと漕ぎ出していることが分かる。ソロ・ピアノで演奏されていたM3"Gloria"には歌詞が付き、MAROによるウィスパーなヴォーカルも素晴らしい。もちろん、M5のマイケル・マヨが歌うエレピとのバラードも。そこまで歌もののイメージはなかったシャイだが、今回初めて作詞をしたそうで、持ち味とも言える歌心のある美メロ職人的な魅力が、ゲストと共に圧倒的に咲き誇る。ただ、表現が広がる中でも、クラシカルな和声の追求とタッチの繊細さに、中東ならではのメロディラインが交わるスタイルは健在。そこを堅実に守りつつ、面白いのは鍵盤の音色。メインのグランドピアノだけでなく、歪んだ古いピアノや、フェルトピアノ、オープニングはトイピアノ風と、曲ごとにキャラクターが決まっている。前作のピアノソロは圧巻だったが、ここでもピアノを聴かせるスタイルは一貫しており、その素晴らしさは変わらないどころか、訪れるゲストに寄り添う度ため息が出るほどに美しい。一音一音に誠実に向き合い、苦悩しながら外側へと生み出す行為は、本当に祈りそのものだと思う。少なからず今の時代背景とともにある。その姿勢の正しさに感服するとともに、彼の表現の本質は、やはり"ピアノ"なのだということも、同時に色濃く浮かび上がってきた。
Tomeka Reid / Dance! Skip! Hop! / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009194423
近年、前衛ジャズ・シーンで活躍するミュージシャンがコンテンポラリー・シーンと接続しつつ、現代ジャズを更新していく動きがこれまで以上に注目されている。昨年から今年にかけてもメアリー・ハルヴォーソンやアダム・オファリル、パトリシア・ブレナンといったNYの前衛シーンのリリースが続き、その広がりはさらに勢いを増している。そんなNY勢とも関わりの深いシカゴ拠点のチェロ奏者、トミーカ・リードによる本作も、その重なり合う流れの重要な場所に位置するだろうと思う。「踊りたくなる衝動から作った」と本人も語るように、跳ねるようなリズムデザインで躍動し、エキゾチックな空気を立たせつつ、ドラムワークにはエルヴィン・ジョーンズを思わせる場面も。録音にも敢えて60年代を彷彿とさせる、もくもくとした香りがある。現代的なアンサンブルと、かつての手に汗握る温度とが不思議な調和を見せる。埃が舞い踊る地下室で、淡々と演奏を続けるようなストイックさも心に響く。
Miles Okazaki / Miniature America / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009212814
ギタリスト、マイルス・オカザキ。『ミニチュア・アメリカ』と題する本作は、難解であり抽象的で、本来言葉で説明すべき作品ではないかもしれないと思いつつも見逃せなかった。彼の持ち味は、調やテンポなどを曖昧にしながらも、それを"衝動的"ではなく極めて知的かつ精密に構築するところにあると思う。そして、こちらを惑わせる如く超絶技巧ともいえるギターの演奏の深いところに、私は一輪の薔薇のような美しさを見出している気がする。本作では、ジョン・イバラゴンにマット・ミッチェル、さらにパトリシア・ブレナン、アンナ・ウェバーら、ベテランから若手まで前衛ジャズシーンの強力な面々が集まり、時折メレディス・モンクを彷彿とさせる神秘的なヴォイスも加わる。大編成のように思えるが、曲ごとに編成を変えることでスペースを持たせ、静かにカオスを生みだす。ここにあるのは無秩序という快感ではなく、衝突し合いながらも共存する世界だ。『ミニチュア・アメリカ』は、全体性というよりもっと個人的な小さな違和感にフォーカスした作品に思える。
Johan Lindstrom / Humankind / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009131487
スウェーデンを拠点に活動するヨハン・リンドストロームによる、ジャズ、室内楽、映画音楽的な空気感が溶け合うサウンドトラックのような作品。彼のペダルスティール・ギターを中心に、ピアノ、ベース、ドラム、そして木管やトロンボーンを取り入れたアンサンブルは、曲ごとに主役が変わるのが面白い。聴いているうちに勝手にプロットが思い浮かんでしまった。主人公は、若い船乗りの男。サックスやトロンボーンの豊かなユニゾンは、雄大な海を夕日に向かって進む大きな船を描き出す。オープニングクレジットが流れ、ここからの物語は主人公の回想によるもの。M2では、小さな水の妖精のようなクリーチャーに出会う。ヴィブラフォンやチェレスタによる煌めきを伴ったシーン。その後、再び航海に出発するものの、突如船は動かなくなってしまう(M4)。誰かが妖精を迎えに来たのだ。恐ろしくも美しい、その母なる生き物のもとへと妖精は連れ戻されてしまう。男はその謎を調べるために、別の島へと漕ぎ出すのであった…載せきらないので、続きは聴いてのお楽しみ。アコースティックなSFファンタジー。ウッドベースの心地よいグルーヴと響きが全編に渡って物語を支え、トロンボーンやバスフルート、コントラバスクラリネットなど低音使いが肝。
守谷美由貴 / Duo Live At Aketa / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009189207
ロモカメラ風味のジャケット写真だけでアケタの店好きは食指が動く。天才的天然デザインである。今後このアケタ看板作戦で来られたら誰の作品だろうと買いそうでヤバい。守谷美由貴のアルトと永武幹子のピアノ、本田珠也のドラムスそれぞれとのデュオ2本立て。Xには"公開夫婦喧嘩"などというつぶやきもあり、毒舌者もいるなと思ったら出所は本田珠也氏ご当人。どれどれ聴いてみようかと好奇心をそそるこれまた天才的天然コピーライターぶり。伝統と革新と収益性でがんじがらめのUS音楽業界ジャズと比べて、日本の、特にアケタの店周辺のジャズはずっと私的に聞こえる。まるで"私ジャズ"、そこが魅力である。守谷美由貴は因習にも前衛にもとらわれない自由変幻な音を放つ。強烈奇怪なアケタズチューンで始まり、即興曲に続く松風鉱一作曲"アミロード"はペッパー&ケイブルスを彷彿とさせる。心に沁みる守谷バラードを経て、山下洋輔スタンダード"キアズマ"は遺伝子交錯真剣勝負、ラスト板橋文夫定番バラードは愛の交換。夫婦喧嘩で終わりません! 同時発売のヤムヤムズも揃えたくなるこれまた天...続きはまた。
ネヴィス&シルヴァ / ラデイラス・ヂ・サンタ・テレーザ / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009181379
サウダージ/ズカタカズカタカ/スタッタンタタカ/ネヴェストシルヴァガ/サンバジャズ...サンバ歌人 三羽雀頭狂(サンバジャ ズキョウ)がアントニオ・ネヴェスとチアギーニョ・シルヴァ連名の本作に因んで詠んだ一首である。57577の体を成していないのになぜか和歌風に詠めると気づいた方はスルドい。五七調も七五調もじつは無意識に間を取って4/4拍子の8分音符のリズムで詠まれるのである。和歌なら"タタタタタ□□□/□タタタタタタタ/タタタタタ□□□/□タタタタタタタ/タタタタタタタ□"と詠むので文字の過不足がリズム内なら違和感が生じない。頭狂の頓狂な歌はともかく、本作は冒頭から60年前のサンバジャズ全盛期にタイムスリップする。音作りなど当時の発掘音源かと錯覚するほどだが、やがて現れるバイーア風ブロコアフロビートやファンキなラップで現在進行形ブラジリアンジャズなのだと我に返る。連休はネヴェスの前作、バーラ・デゼージョ関連など芋づる式に並べ聴きである。となると酒は芋焼酎代用カイピリーニャ...短絡的過ぎだ!
ガブリエル・カヴァッサ / ディアヴォラ / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009186219
ジョシュア・レッドマンのテナーが苦手という男がいた。パット・メセニーと共演して話題になった初期には素朴で粗削りだった音色がいつのまにか妙にねちっこくなっている。どこか煮え切らず後味が悪い。それでも近年の録音を聴いてみたのはガブリエル・カヴァッサが歌っているからだ。ゲスト参加したアドニス・ローズ・トリオの青白ペイントジャケットのアルバムでの静かな歌いぶりに惹かれて名を覚えた歌手だが、自主制作らしきセルフタイトル作"Gabrielle Cavassa"にさかのぼると少しビリー・ホリデイ風味を感じる。それがこのブルーノート作品になるとジュリー・ロンドンを帯びて聞こえたり、イタリア語で歌ったりもしてまた印象が変わる。歌唱力よりも表現力志向なのだろう。ジョシュアカラーに合わせている感もあるが、表情が幅広く豊かになりニュアンスも深まった。プロデュースは賭博師のような名と風貌ながら意外と慎重な策士であろうブルーノート社長ドン・ウォズとジョシュアの連名。大物ふたりが惚れ込んだ新人歌手の未来を占う試金石のような作品となった。これを機に先のセルフタイトルデビュー作が再発売されないだろうか。アルトのブラクストン・クックも参加したコンテンポラリーなサウンドで、こちらの方が好みのリスナーも多いかもしれない。男はジョシュアのアルバム"Words Fall Short"ラストでフィーチュアされるガブリエルの歌い方が誰かに似ていると思っていたが、ようやくわかった。デヴィッド・シルヴィアンである。'80年代ニューウェイヴの感覚が浸透定着し、孤独の影がこんなところにも現れたのだろうか。浸透したのが自分の内面世界だけなのか、'80年代体験世代の共有感覚世界なのか、それとも世代を超えた音楽文化世界なのか、男にはわからなかった。辛いサラミをのせたピッツァ・ディアヴォラをほおばり、ピスコなる南米流ブランデーをベースにしたガブリエラというカクテルを何杯も飲みまくり、自分が誰なのかもわからなかった。
ヤムヤムズ / Live!! / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009189211
前記の守谷さんの新譜紹介最後に自分で記したはずの、同時発売のヤムヤムズも揃えたくなる、という呪文めいたフレーズにそそのかされて、自らその通り2枚揃えてしまったワタシとは一体いかなる人物なのか。これでワタシのレビューが販促を目的とした提灯広告ではなく、愛と真実の真心発露であることが証明されたというわけだ。続きはまたいつかのつもりが早速である。それほど好感度が高いヤムヤムズ結成11年目にしてのファーストアルバム。守谷美由貴の表情豊かなアルト、永武幹子の思い切りのいいピアノ、柵木雄斗の歌うようなドラムスという変則トリオ編成。ベースがいないからかサウンドは風通しよく開放的。ブルーベックの変拍子をさらに変形した変変拍子で始まり、スピリチュアルニッポン、さわやかラテン、ふるさとバラードなど多彩なラインナップで退屈する暇のない楽しいひととき。病む病むズ?などと低次元な読み替えを思い浮かべた人、病んでいるのはアナタです!
Miroslav Vitous / Mountain Call / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/detail/1009196369
ミロスラフ・ヴィトウスのベース。空気が張り詰め、亀裂が入る。驚くほど繊細な音色のコントロールと鋭く暴力的な破壊への衝動は、彼の柱であろうジャズとロックそれぞれの表現にそのまま呼応する。本作は名作『Universal Syncopations』(ECM/2003)を制作したヴィトウスが2003~11年に行った複数のセッションからなる。ボブ・ミンツァーなど過去の共演者が登場し、ジャック・ディジョネットもまだそこにいる。ミステリアスなサウンド作りを手伝うのは故郷のチェコ・ナショナル交響楽団。さらにECM初登場となるエスペランサ・スポルディングの歌声(M13~17)も聴き逃せない。しかし本作のもうひとりの主役は、今年2月に亡くなったフランスのクラリネット奏者ミシェル・ポルタルだ。ヨーロッパ・フリーの闘士である彼はモーツァルトもプーランクも吹きこなす才人。当意即妙な反応で、洒脱に歌い軽やかに疾走する。アルバムはヴィトウスとポルタルのデュオで始まり、デュオで終わる。“山の呼び声”とのタイトル。その声は実に多彩なメンバーを呼びよせた。山とはヴィトウス自身のことなのかもしれない。
Barre Phillips & György Kurtág Jr. / Togetherness / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/detail/1009197473
一昨年90歳で亡くなったバール・フィリップスは、アーチー・シェップやジョン・サーマンらと共演し、ECMなどに多くのリーダー作を残したベーシスト。本作は2014年のデュオ・ライヴを収める。お相手はライヴ・エレクトロニクス(以下LE)のジェルジュ・クルターグ・ジュニア。ECM New Seriesにも多くの作品集がある現代音楽界の大御所ジェルジュ・クルターグの息子だ。2014年はそれぞれの傘寿と還暦の年で、これはそのお祝いコンサートとのこと。堂に入ったベースさばきで語りかけるフィリップス。それに応ずるLEの〝古色蒼然たる前衛〟とでもいうべきサウンドがたまらない。シュトックハウゼン《少年の歌》(1956)などの初期電子音楽の美学を継承するかのごとく、未知と神秘への憧れを表現主義的に鳴り響かせる。ベースが発する鋭利な音塊のまわりを蠢き煌く電子音響は、ときに遊星の運行を思い起こさせ、爆発と沈静を繰り返し無限に広がっていく。このライヴから6年後、ふたりは『Face à Face』(ECM/2022)を録音し、それはフィリップス最後のアルバムとなる。硬派な前衛音楽家たちの貴重な記録だ。
Peter Lehel / Coltrane String Ballads / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/detail/1008993752
数々の受賞歴を持ち、作編曲家としても高く評価されているドイツのサックス奏者ペーター・レーヘル。弦楽四重奏とサックスによるバラード集、一曲目は何度聴いたかわからないコルトレーン『バラード』の〈セイ・イット〉…なるほどタイトルどおりかと甘く見てはならない。コルトレーンの愛奏曲はM1~4のみでM5はダミアによる歌唱が有名な〈暗い日曜日〉。そしてシリアスな弦楽に導かれ、ソプラノサックスが舞い歌うM6“Ancient World”、それにはじまるアルバム後半はレーヘルによる〈悲しみの音楽 Musica dolorosa〉という組曲である。コルトレーンが追及したバラードの演奏表現に触発された作品とのことで、哀切な感情が克明に綴られていくさまが胸に迫る。表情ゆたかに音楽を牽引する弦楽四重奏、そこへサックスが、柔らかな厳しさを見せながらしなやかに絡み合っていく。美しくもほろ苦く、聴く者の孤独によりそう。コルトレーンが『バラード』『クレッセント』で目指したのも、そういう音楽ではなかったか。
Alexa Tarantino / Roar And The Whisper / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009169838
ブルーノートの女性だけのオールスターバンド、アルテミスやアルトゥーロ・オファリルのオーケストラ、ヴァンガード・ジャズ・オーケストラへの参加。そして現在はウイントン・マルサリスのジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラのメンバーとして注目を集めるアレクサ嬢。その経歴からして、非の打ちどころがないジャズエリートですよね。本作は彼女の5作目。JALCのハウスレーベル Blue Engine からのリリースです。同レーベルと言えば、昨年デビューした同じアルト奏者、サラ・ハナハンも大きな話題でした。アレクサは本作では、アルト、ソプラノにフルートを演奏していて、当然ながら・・とにかく上手い。正確さやニュアンスはもちろん、技術から生まれる音には余裕があって、彼女特有のしなやかさと共に聴き手を引き込みます。それはオープニング曲のテンポが微妙に変化しながらも落ちないスピード感。フルート曲「Portrait of a Shadow」の豊かな音量などに現れています。そしてショーター、ストレイホーン、ゲスト参加するセシル・マクロリン・サルヴァントの曲以外はすべて自作。3つの楽器を使い分けながらバラエティさと行き届いたアイディアのある楽曲と思う。私的にはジョニー・ホッジスへのリスペクトが聴きとれる「All Along」の艶やかさに聴き惚れました。あと、ピアノにフィジカルでの作品が少ない実力者、スティーヴン・ファイフケを迎えているのも注目。本作の価値を高めます。ジャズエリートのエポック作となる突き抜け感あり。少なくとも私的年間ベスト入りは確実です。
Franck Amsallem / Summer Knows / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009168961
フランスとアメリカで活動する色彩豊かなピアニスト。2019年以来の新作だそう。ベテランファンの方は1990年の『Out A Day』でご存知かも知れません。今作はデヴィッド・ウォン(b)、クシュ・アバディ(ds)を迎えたトリオ作。落ち着きと奥行きのあるピアノで耳に止まる演奏だと思います。オープニング曲の上品さ、次曲のスローなアンニュイさも印象に残る。私的お気に入りは「Unforgettable」、スイングするミデアムアレンジで、何だかほっとする仕上がり・・にしても、タイトなバックが耳を惹きます。売場でかけていたら、お客さまが手に取って「おっ、ベースはデヴィッド・ウォンか~」となって、注目している人はしているのだなぁと確認。実は私も贔屓にするベーシストです。ハンク・ジョーンズのGJTの最後のメンバー。すこし前ですが、友人のピアニストの結婚式に来ていて、飛び入りでベースを弾き、アンコールまでしてくれたという個人的思い出あり・・という話でした。
Enrico Pieranunzi / Perspectives / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009189816
売場でかかっていた、ごりっとしたテナー。誰?と見たらエンリコの新作、正式にはPieranunzi(p), Michele Polga(ts), Thomas Fonnesbaek(b), Mauro Beggio(ds)、4人の共同名義作でした。テナーの名前をどこかで見たなと思ったら、少し前にマイナーヒットした『Big Pulse』の人(知らないですよね?)。そこでは50~60’sのカバー曲を中心にモダン王道のプレイをしていたけど、今回は自作曲を提供し、ブレッカー以降のマナーも踏まえてガツンと聴かせます。筆頭に名前が来るエンリコは、ここに来てますます活動的。前作はオーケストラとの共演、6月発売予定の新作はギターとのデュオ・・と相変わらず多彩な作品をリリースします。で、演奏の中心となるのは、やはりピアノとテナー。コクのあるワルツバラードの「Siren's Lounge」(少しだけ、ジミー・ロウルズというか、ビル・エヴァンスの「Peacocks」を連想)で始まって、タイトル曲「Perspectives」の後半の4人の熱さがハイライトか。抒情性とジャズ的スリルを保ちながらの構成力はどうでしょう?うむ、格を感じる快作です。
Oscar Peterson / At Baker's Keyboard Lounge / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009196364
デトロイトの客席わずか99というインティメイトなジャズクラブでの(未発表)ライヴ盤。1960年8月の収録で、エド・シグペンが参加して約一年という時期にあたります。録音時、ピーターソン35歳、ブラウン34歳、シグペン29歳という年齢・・で、ありながらのどっしりした演奏。ピーターソンと言えばの鍵盤の端から端までを使うダイナミックなピアノもいいけど、「ジャンゴ」や「イエスタディズ」のミデアム調で気品のある、流れるような指さばきに本当に息を飲みました。何でこんな演奏が未発表だったの?というと、ヴァーヴのテープ倉庫でのラベルの張り間違いが原因なのだそう。昨年ピーターソンの生誕100年の年に見つかるというのもファンを喜ばす巡り合わせか?普段は現代ジャズがかかることが多い当売場ですが、こうした歴史的作品も見逃せませんよね。
ジャズ喫茶「準備室」 / 直立猿ZINE vol.10 :「トリオ特集」 / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009221988
岐阜県多治見市でジャズ喫茶を模してジャズの普及活動を行う「ジャズ喫茶 準備室」が発行するZINE。入荷した最新号は「トリオ特集」ということで、各筆者がいろいろなトリオについて語ります。メルドー、キース、ビル・フリゼールに始まって、チャールス・ロイドの「トリオ・オブ・トリオス」、ジミー・ジュフリーのあれ、ロイ・ハーグローブのあれ、デ・ラ・ソウル、YMOなど、各人の率直な音楽観、「直立猿ZINE」というネーミングにとらわれない雑多感を楽しむ。音楽を生活の大切な一部にする人たちの日常の思考があたたかく綴られています。「リサイクルジャンキー」の高針のブックオフでの心理描写、「味噌汁はJAZZだ!」の強引さ(失礼!)もZINEならでは・・中心メンバー3人による「THREE ‘Y’ARROWS」は見開き2ページのクロスレビュー、グラスパーの「カヴァード」を分解、骨太で気づき多数でした。情報伝達については進んだ時代だからこその紙、手作り感が魅力。多くのジャズファンを巻き込んでいってほしい。550円という価格もお手頃。
JEFF PARKER / Happy Today / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 五十嵐
https://diskunion.net/detail/1009217552
新作について「喜びを宣言する作品」と語るパーカー氏。「Happy Today」と名付けたその心は、火災被害による避難生活,社会的不安を経験した2025年、再び皆と一緒に音楽を奏でる喜びを感じた夜生まれたそうです。ライブって最高。これはストリーミング時代に逆行するような「集中して聴く音楽」。セッションミュージシャンとして続けてきた幅広い活動経験に裏付けされた、伝統と技術、即興と作曲、親しみやすさと抽象的なものなど相反する関係を研究し、先のまだ見ぬ新しい扉を開いていくよう。向き合うことに恐れず楽しむ姿勢に心動かされます。何より尊い。ベテランの演奏技術こそもちろんですが、それよりももっと前にある、様々を認め受け入れ合おうとする心あってこそできているようにも、、、ミュージシャンとしてだけでなく人として、もっと言えば生き物として何か大切なこととその未来への願いのようなものを演奏を通して教えてくれた気がします。そしてまたふと、改めて素敵なタイトルだなあと。
GUNTER HAMPEL / HEARTPLANTS / 新宿ジャズ館 木村
https://diskunion.net/detail/1009208422
久々のCD再発。1990年日本ポリドール/ポリグラムの初CD化以来のCD再発でしょうか?
個人的には最近まで理由もなくスルーしていましたが、今回のリリースがきっかけで聴いて驚きました。
物憂気な詩情がありつつも、先進的な音楽を生み出そうとする熱さが強く伝わってきます。
メンバーはと見れば、VIB & FLのリーダーの脇を固めるのはアレキサンダー・フォン・シュペリンバッハ(P)とマンフレッド・ショーフ(TP)!!
後にフリージャズにどっぷり浸かることになる2人が若き日に見せた、ロマンティシズム溢れたひとときの輝きとして貴重な記録ではないでしょうか?
なお、このアルバムの3曲目では後の活動の萌芽とも思えるフリージャズ的な試みが行われています。
また、ベースのBuschi Niebergallの重厚で力強い演奏が非常に良く、4曲目のベースソロも良いですし、TPが抜けた曲目のVIBカルテットでの雄弁な(でもウルサくない)ベースの絡みがWalt Dickerson「To My Queen」の様な耽美を産み出す一因になっています。
CHRIS POTTER / Alive With Ghosts Today / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 田口
https://diskunion.net/detail/1009204066
クリス・ポッターを軸に、ビル・フリゼールの漂うようなギター、ネイト・スミスのグルーヴが絶妙なバランスで心地よいです。アンサンブルも作り込まれていますが、コンテンポラリーすぎずどこか懐かしさを感じるあたりに、この作品のコンセプチュアルな側面を感じます。
奴隷制度廃止運動家ジョン・ブラウンのハーパーズ・フェリー襲撃の物語から着想を得て作られた組曲とのこと。今もアメリカ社会に残る緊張感を表現しています。
「ブルースやフォーク、アーロン・コープランドを想起させる和声が使われている」という解説を見て、自分の耳に止まった理由がわかりました。アーロン・コープランドは個人的に思い入れのあるクラシックの作曲家で、アメリカの古謡を取り入れたり壮大な自然や大地を連想させるようなオーケストレーションが魅力的。「アメリカ音楽」を作り上げた作曲家でもあります。
コープランド的なアメリカーナとブルースとフォークの”Ghost”が共存している、過去から現在までのアメリカの記憶や祈りを一緒に音に封じ込めたような作品です。
渡辺貞夫 / BUT BEAUTIFUL / 横浜関内ジャズ館 小林
https://diskunion.net/detail/1009214707
表題曲である1曲目の「BUT BEAUTIFUL」の最初のワンフレーズを聴いただけで名アルバムに出会えたことに感謝したくなる。渡辺貞夫のライブに通うファンには耳馴染みのあるスタンダードナンバーが穏やかに優しく心地良い。このアルバムを何度も聴いて、また行ける限りライブに行こうと思う。例え、席ガチャに外れようとも。
MATTHEW STEVENS / MATTHEW STEVENS / 吉祥寺ジャズ館 山田
https://diskunion.net/detail/1009192703
ウォルター・スミスIIIなど名だたるバンドに参加し、名実ともに現代NYのジャズ・ギターに欠かせない存在となりつつあるマシュー・スティーヴンス。今作はセルフタイトル、なおかつ名門CANDIDからのリリースということで、さぞ気合の入った作品になのだろうと心して聴いたが、全体を通してどこかリラックス感がある仕上がりになっていて、いい意味で裏切られた。曲によりメンバーが大きく入れ替わり、タイトなコンテンポラリー曲(これがバキバキすぎないのがキモだったりします)が来たかと思えば、アコースティックでブルージーなトラックが入ったりなど、自身がやりたい曲に素直に向き合っている印象だ。しかしながら散らかっている感は少なく、アルバム全体を通しても楽しく聴ける仕上がりになっているのは、共同プロデュースのジョシュ・ジョンソン、エリック・ドゥーブの手腕もあるだろう。特にジェフ・パーカーとディラン・デイ(サム・ウィルクスのアルバムに参加し、来日もしていたあのギタリストです)が参加したトリプル・ギターのトラックは極上のリラックス感がありながら、新しいジャズが生まれるワクワク感と緊張感もほのかに感じられる出色の出来だ。今年の愛聴盤になるだろうから、せっかくならサブスクよりもじっくりクレジットを眺めながらのんびりと楽しみたいと思う。
MATT GOLD & DUSTIN LAURENZI / Devotional Fade / 吉祥寺ジャズ館 荒川
https://diskunion.net/detail/1009197419
昨年のRESAVOIRとの連名による『HORIZON』で陽光さながらのペダル・スティールを聴かせていたMATT GOLD。そしてJEREMY CUNNINGHAM『A BETTER GHOST』ではエモーショナルでスピリチュアルなサックスを吹いていたDUSTIN LAURENZI。その二人によるコラボレーションが本作。どちらもイメージからは離れた、非常に抑制されたインプロヴィゼーションを録音しまくったのがこの『Devotional Fade』、という経緯らしく、まるでECMのような始まりから、最小限のリズムを刻むシーケンス(LAURENZIのOP-1なんじゃないだろうか)に乗せた瞑想的なセッションだ。ジョン・ハッセル的な面もあり、近年のジェフ・パーカー、もしくはピノ・パラディーノとブレイク・ミルズのアルバムに連なるような音である。ヨーロッパ的な雰囲気があるのも、これがINTERNATIONAL ANTHEMからではなく、WE JAZZからのリリースのためなのか。アンビエント・ジャズというタームや、マイルス・デイヴィス『死刑台のエレベーター』を好んでいるような人にも推薦。
挾間美帆 / Frames / 新宿ジャズ館 逆瀬川
https://diskunion.net/detail/1009195866
1977-79年にデンマーク・ラジオ・ビッグバンド(DRBB)の音楽監督を務め、バンドに大きな影響を与えたサド・ジョーンズの生誕100年を記念した『Live Life This Day』に続く、DRBBの歴代の主席指揮者・音楽監督からインスピレーションを得て作曲した、名門の歴史に向き合う作品。ビッグバンドらしいスウィングとダイナミクスが楽しめる楽曲もあれば、パレ・ミッケルボルグ(1975-77年に在籍)へのオマージュとして、彼が手がけたマイルスの『Aura』の手法で書かれた「Aura II」は即興の雰囲気と不思議な浮遊感を感じさせる意欲作。またカリンバのイントロで始まる「LuLu」は、優しく雄大な音色、中盤から後半にかけてのサックスソロのドラマチックな歌いっぷりが、マリア・シュナイダーを思い起こさせる出色の出来。アレンジャーとかコンダクターというのは、個々の演奏をいかに盛り上げ"空気"を演出するか、という仕事なのかもしれない。そしてDRBBの歴史を知ると、挾間美帆という俊英が主席指揮者に任命されたのも、何か必然的なことだったのかもしれない、などと思うのです。
ライアン・ポーター / Force For Good / 新宿ジャズ館 逆瀬川
https://diskunion.net/detail/1007903391
追悼 ライアン・ポーター
トロンボーン奏者、ライアン・ポーターが亡くなった。46歳。4月下旬に交通事故に見舞われ治療を受けていたものの、合併症により亡くなったとのことらしい。
カマシ・ワシントン曰く「地球上でもっともソウルフルなトロンボニスト」ライアン・ポーターは、カマシの音楽に欠かせない存在だった。カマシのテナーとライアンのトロンボーンのホーンセクションは、彼らWest Coast Get Downの音楽の核のひとつだったし、ライヴではカマシがアドリブで吹くリフにいち早く合わせる、まさに阿吽の呼吸といった場面を見ることもできた。ライアンはNYで学んでいた時期もあったり、2000年代から数々のビッグネームのレコーディングやライヴに参加していたりと、彼らの仲間の中では少々異なるキャリアを歩んできた。その豊富な経験がカマシの音楽においても活きていたのだろう。またライアンは優れた作曲家でもあり、ライヴ盤含め5枚のリーダー作をリリース。彼のオリジナル曲はカマシのアルバムにも収録されている(『Heaven And Earth』収録「The Psalmnist」、『Fearless Movement』収録「Together」)。何れ劣らぬ「怪物」だらけのWest Coast Get Downにおいて、演奏のとんでもない上手さもさることながら、アンサンブルを下支えするような存在感を持っていた人物だったように思う。ライヴで「カマシ・ワシントン!」と叫ぶのも彼の役目で、カマシのソロに熱狂する観客に、ライアンもまた嬉しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
現代のジャズ・ジャイアントを追悼し、記憶にとどめたい。ご冥福をお祈りします。
MATT SLOCUM / Revolving Alliance / 新宿ジャズ館 四浦
https://diskunion.net/detail/1009224382
現代ジャズ界で極めて高い評価を得るドラマー兼作曲家、マット・スローカムの最新作は、緻密なストーリー性とスリリングな即興が同居する至高のギター・トリオ作品だ。ギターは注目のエマニュエル・マイケル。彼のサウンドはジョン・アバークロンビーらの「ECM的空間系」をベースにしつつも、更に現代のインディー・ロックやエレクトロニカ、自身のルーツであるアフリカン・ダイアスポラ(コンゴのスクス音楽などのリズム)の感覚がブレンドされた、高解像度で複雑な残響(シマーリバーブやピッチシフトディレイなど)をレイヤーにして「ヴィンテージな浮遊感」を「現代的な音響美」へとアップデートさせた新しさにあふれている。エマニュエルの待望のトリオ編成でのレコーディング作品であることが、本作の価値をさらに上げている。世代を超えた精鋭たちの有機的な化学反応。現代最高峰のベーシスト、ラリー・グレナディアによる羅針盤のような盤石のベースラインの上で、エマニュエルのギターが、浮遊感に満ちた美しい和音を紡ぎ出す。スローカムは彼らの個性を生かす叙情的な楽曲を提示し、繊細かつダイナミックなドラミングで対話を先導する。3人が織りなす「その瞬間だけの対話」に深く没入できる傑作となっている。
MATT SLOCUM(ds), LARRY GRENADIER(b), EMMANUEL MICHAEL(g)
鈴木學 / LOST AND FOUND WELL WELL HALO: YOU'LL SURELY FIND IT HERE / 横浜関内ジャズ館 久保田
https://diskunion.net/detail/1009236349
自作エレクトロニクス×ヴォイスのデュオによるフリー・インプロヴィゼイションです。鈴木學は今井和雄の名盤『BLOOD』のエレクトロニクス奏者というとピンと来るかもしれません。共演者のヒグチケイコは90年代から活動するヴォイス・パフォーマーで、近年だと2022年にBLACK EDITIONSからCD/LPでリリースされた『Vertical Language』がパティ・ウォーターズを連想させる作品でフリー好きなら記憶されているでしょう。ベテラン二人による思い切りの良い即興演奏を堪能できます。一目ぼれ(一耳ぼれ?)でオーダーしました。ディスクユニオンでは横浜関内ジャズ館のみの入荷です。
SAM STEPHENSON / Jazz Loft Project: Photographs and Tapes of W. Eugene Smith from 821 Sixth Avenue, 1957–1965(BOOK) / 商品部 川田
https://diskunion.net/detail/1009213864
写真家W・ユージン・スミスがニューヨークのロフトでジャズ・ミュージシャンたちと過ごした日々を捉えた、高く評価されている写真集が復刊した。
2026年3月17日~6月7日まで東京都写真美術館で「展覧会:W. ユージン・スミスとニューヨークロフトの時代」が開催されているので見に行ってきた。ジャズのファンにはセロニアス・モンクが1965年にコロンビア・レコーズからリリースしたアルバム「MONK」(Columbia/CL 2291/LP)のジャケットに使用された煙草を吸っているモンクの顔のモノクロ写真が有名だ。しかし、私がその昔、ユージン・スミスを好きになったのはフォーク・デュオ、Pozo Secoが1968年にコロンビアからリリースしたアルバム「Shades Of Time」(Columbia/CS 9656/LP)のジャケットに使用されたユージン・スミスが自分の子供を撮った後ろ姿のモノクロ写真に感銘を受けたのがきっかけだった。今回の展覧会では上記モンクとPozo Secoの写真が見れた上に60年代のボブ・ディランまで展示されていたのは驚喜だった。
ジャズ・ファン、音楽ファンにとってのユージン・スミスはやはり、ロフト時代の写真に惹かれると思いますので、興味のある方は是非、この機会にチェックしてみてください。
RICHARD MORTION JACK / Labyrinth: British Jazz On Record 1960-75(BOOK) / 商品部 川田
https://diskunion.net/detail/1008801142
アブストラクト・ジャズ、アヴァンギャルド・ジャズ、フリー・ジャズ、インド・ジャズ、ジャズ・ロック等、1960~1975年にリリースされた英国産の多様なジャズの重要作(LP)を300枚以上、フル・カラーで掲載した375ページ、ハード・バック仕様のグレイトな豪華本「ラビリンス:ブリティッシュ・ジャズ・オン・レコード 1960-75」。
50年以上もレコードを掘ってきて、数多くのレコードを見てきたけれど、この本のページをめくりながら、まだまだ見たことの無いレコードは少なくないのだと実感した次第。そのような激レアなオリジナル盤LPがジャケットの表と裏、ラベルの表と裏をフルカラーの大きな写真で見ることができるのは大変ありがたいものです。2024年に初版が出版された際にはすぐに完売。今回、ご紹介したのは2026年の重版です。興味のある方は無くならないうちに早めにゲットすることをお薦めいたします。
DON CHERRY / BLUE LAKE / 商品部 西川
https://diskunion.net/detail/1009182795
1974年に東宝から国内企画として発売され、GETBACK、他社からも再発はありましたがRSD限定盤として久々の再発。帯付国内盤などなかなか手に入らないのでこれは嬉しい。RSD UKのタイトルですので毎回US以上に入荷が確実ではなく気を揉むのですが、5月中旬になんとか入荷してきました。この作品もフリージャズと一括りにはできない境界のない音楽、土着的、呪術、儀式的な雰囲気もあり、またゆったりとした時間感覚もある内容でドン・チェリーの世界感が楽しめます。
CHIMINYO / NRG 5(LP) / 商品部 池田
https://diskunion.net/detail/1009212339
ジャズ界ではサウス、サウスとよく耳にするロンドン音楽シーンでは珍しく(?)北ロンドンを拠点に活動するドラマー/パーカッション奏者チミニョ。彼がUKジャズ・シーンを盛り上げようと行っている完全即興で行うライヴ・シリーズNRGの第5弾が、会場の熱気がそのままパックされたような編集なしのワンテイク音源でリリース。今回は日本でも人気のギタリスト、オスカー・ジェロームも参加していますので、気になっている人には手を出しやすい1枚です。
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