2026.09.04 ラテン・ブラジル・ワールドミュージック アジアン・ミュージック

NUSANTARA BEAT インタビュー! スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドで来日【アジア・インタビュー連載企画Vol.2】

アジア各国のレコードショップやミュージシャンにインタビューを行う連載企画。

第二弾は8/23 (金) より富山県南砺市で行われる音楽フェスティバル、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド (SUKIYAKI MEETS THE WORLD) で初来日を果たす、ヌサンタラ・ビート (NUSANTARA BEAT) のインタビューです。



photo© Pasqual Amade



オランダのインドネシア人コミュニティで活動を開始し、昨年に刺激的なワールド系の作品をスイスから世に送り出し続ける Bongo Joe とインドネシアを拠点に先鋭的なリリースと再発で注目を高める Lamunai の共同名義による 7 インチ盤を連発して話題を集めたヌサンタラ・ビート。60~70 年代のサイケなインドネシア音楽に影響を受ける一方で、オランダらしく現代的なビート感覚を兼ね備え、初のアルバム・リリースが待たれる彼らが、富山のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドの招聘によって初の来日公演を実現させる。これまでにない角度からインドネシア音楽に新風を吹き込む彼らに、結成のいきさつや音楽的なバックボーン、そして間近に迫った日本でのライブについてメール・インタビューに答えてもらった (※今回の質問作成にあたり、80年代から現地に定期的に足を運び続けて新旧のインドネシア音楽に精通する大阪・心斎橋のレコード店=プランテーション店主の丸橋基さんにもご意見を伺いました。感謝します) 。

序文/インタビュー : 吉本秀純
編集 : diskunion
取材協力 : SUKIYAKI MEETS THE WORLD、丸橋基

――ヌサンタラ・ビートは、オランダ在住のインドネシア系移民1世から3世のメンバーで結成されたバンドで、2021年から活動を開始したとのことですが、そもそも、どのようにして集まり、どのような音楽を奏でようとして結成されたバンドなのですか?

私たちのグループの各メンバーは、自分たちのルーツを音楽的にどう活かすかを考えていました。ソニー (ドラム) とジョーディ (ギター) は、以前所属していた The Mysterons というバンドで知り合いでした。そこにソニーの弟のジーノ (打楽器) が参加し、ジョーディは住んでいる地域からルージー (ギター&キーボード) を、ルージーは事前にリサーチしてマイケル (ベース) を知っていました。ミーガン (ボーカル) も学生時代から知り合いだったので、このバンドが結成されました。私たちは、当初はクロンチョンをグルーヴィーに解釈したような音楽を作りたいと考えていたのですが、ルージーとマイケルがスンダ・ポップやそれ以外のインドネシアの古典的な名作を紹介してくれました。




――インドネシア系オランダ人のコミュニティについては、日本では情報が少ないので教えてほしいのですが、実はインドネシア音楽を日常的に聴いたり、あなた方のように演奏するミュージシャンも多く存在するのでしょうか?

うーん、インドネシア音楽を演奏する他のアーティストはあまり知りませんね。Jiwa Jiwa や Lamunai のようなインドネシア音楽をリリースしているインディ・レーベルはいくつかあって、かなりクールな作品ばかりです。また、私たちのギター&キーボード奏者は Precious Bloom というバンドでも時々演奏しているので、ぜひチェックしてみてください。でも、私たちのライブに来てくださるような方々は、かなり興味を持ってくれているようですね。ですから、少なくともインドネシアの音楽に興味がある人はいると考えています。日本でも同じ結果になることを願っています!

――インドネシア系オランダ人の音楽家といえば、80年代に人気を集めたタコ (Taco) などは日本でもよく知られていますが、ヌサンタラ・ビートの音楽にも直接的に繋がる存在としては、60年代から活躍してオランダでもインドネシアでも幅広い人気を集めた女性歌手であるアンネケ・グレンロ (Anneke Gronloh) の存在はとても重要だと思います。アンネケ・グレンロは、日本ではコアなインドネシア音楽ファンの間でしか知られていませんが、彼女の存在はやはり偉大でしたか?

わお、アンネケ・グレンロが日本でも知られているなんてすごいですね! もちろん彼女はレジェンドです。ただ、正直に言うと、アンネケは私たちが子供の頃に両親や祖父母が聴いていた世代の音楽です。とても尊敬していますが、私たちがやっていることとはかなり違いますし、私たちの音楽と直接的なつながりは見当たりません。




――ヌサンタラ・ビートの音楽には、インドネシアの新旧の多彩な音楽からの影響がとても濃密に聴き取れます。ダンドゥット、ガンバン・クロモン、ポップ・スンダ、クロンチョン、ガムランなどに、近年に再発が進んできた 70 年代のブッ飛んだ音楽性のサイケ・ロックなど、インドネシアには幅広い音楽スタイルが存在しますが、あなた方がとりわけ影響を強く受けたインドネシアの音楽家について具体的に教えてください。

はい。私たちは間違いなく、インドネシアのさまざまな音楽から多大な影響を受けています。自分たちのオリジナル曲もカバー曲も演奏しています。たとえば、ルディ・ルサディ作曲の「Borondong Garing」 (※彼らがリリースした初の7インチ盤のB面に収録) は、Bimbo が取り上げたヴァージョンから影響を受けました。素晴らしいサウンド、非常に歯切れの良い録音。ヴァイブスたっぷりです。




――その一方で、グルーヴィーなリズム面やアレンジなどには現代的な要素が聴き取れます。インドネシア音楽以外で影響を受けている音楽家についても聞かせてください。

私たちの音楽の好みは実に多種多様で、バンドのメンバーはそれぞれ独特のスタイルを持っていて、それぞれが自分だけのインスピレーション源を持っていますが、私たちが受けた影響を大まかにまとめると、バッドバッドノットグッド、ハイエイタス・カイヨーテ、ポーティスヘッド、キング・ギザードから、ブラック・サバスに至るまで。もちろん、私たちは全員ビートルズもよく聴きます。


――現在のところ、7 インチのドーナツ盤のみで 2 枚のシングル「Djanger/Borondong Garing」「Kota Bandung/Layung」を昨年に発表し、今年に入って配信のみで「Mang Becak」を発表していますが、作品のリリース元がスイスの先鋭的なワールド系レーベルの Bongo Joe と、インドネシアから強烈な再発音源と尖った現地の今のミュージシャンを次々と発信し続けるレーベルである Lamunai による共同名義だったことも興味深かったです。どのようないきさつで、Lamunai と Bongo Joe の両方から作品をリリースするに至ったのかを教えてもらえませんか?

そうですね、私たちは両方のレーベルの存在を確かに知っていました。そしてインターネットを通じて連絡を取りました。とても感謝しています、どちらも素晴らしいレーベルですからね。両方のレーベルから同時に音楽をリリースできたのは、本当にクールなことでした。なぜなら、Lamunai はアジアでのルート (マーケット) を知っており、Bongo Joe はヨーロッパやその他の世界各地に私たちの音楽を広めているからです。




――どの曲も素晴らしいですが、とりわけ最新曲の「Mang Becak」が70年代スンダの重要バンドである One Dee Group のカバーだったことには驚かされました。また、これまでの 5曲を聴いていて 60~70 年代のポップ・スンダからの影響が強く感じられるところが特徴的かなと感じましたが、それぞれの曲について音楽的にこだわった点について聞かせてください。

(日本語で) ありがとうございます。そうですね、ポップ・スンダは深くのめり込む価値のある音楽です。ルージーとマイケルは流暢なスンダ語を話し、彼らの両親はこれらの曲を聴いて育ちました。私たちはインドネシアの 60~​​70 年代の音楽を尊重したいと思っており、当時のポップ・スンダは非常に重要な要素です(今でも!)。ですから、私たちにとって 60~70 年代のスンダ地方の音楽は学び、調査するべきものなのです。特にそのスケール (音階) は大きな、そして重要な側面です。インドネシア音楽のさまざまなスタイルで、ペロッグ・スケールが復活しています。(ぺロッグ・スケールは) ペンタトニック・スケールのバリエーションで、日本の平調子とも類似点があります。




――初のフルアルバムの完成が楽しみですが、おそらく近々に発表されるだろうアルバムはどのような内容になりそうですか? 今の時点で明らかにできる範囲で教えてください。

バンド結成後の最初の2年間は、インドネシアのさまざまなジャンルのサウンドやスタイルに慣れ、それを自分たちのものにすることに注力しました。最初のアルバムでは、これまで演奏してきた曲から影響を受けて、できるだけ多くのオリジナル曲を書くことに集中しました。スケールやリズムの面で "インドネシア" のサウンドを、私たち全員が聴いている他の "西洋" のスタイルに取り入れようとしています。結局のところ、バンドのメンバーはそれぞれ異なる音楽的関心を持っており、これらすべての異なる影響を自分たちの "ブンブ" (※Bumbu:インドネシア語でスパイスを独自調合して作る "調味料" のこと) に組み合わせようとしていると言えます。


――ヨーロッパにおいて、ここまで濃厚にインドネシアのポップ・ミュージックの要素を前面に打ち出したバンドは存在しなかったのではないかと思います。すでにヨーロッパの様々な野外音楽フェスなどにも出演されていると思いますが、観客の反応はどのような感じですか?

これまでの反応は素晴らしいです! 一般的にここヨーロッパの人々は、馴染みのない音を発見することにとてもオープンな心を持っていると思います。フェスティバルに関しては、私たちが演奏するフェスの種類によって異なります。これまで、私たちはヨーロッパ中のエレクトロニック、ジャズ、ポップ、ワールド・ミュージックのフェスで演奏する機会に恵まれてきました。オランダの歴史を考えると、当然ながら、私たちの国にはインドネシアのルーツを持つ人々が大勢います。特にこの時代、この世代では、人々はさまざまな文化的表現形式を通じて自分のルーツの一部を発見することに関心があるように感じます。私たちミュージシャンは音楽を通じてそのルーツを探求しており、ありがたいことにそれが世界中の人々の心に響いています。




――また、逆にヌサンタラ・ビートの音楽は 1950~70 年代のインドネシア音楽からの影響を現代的なアプローチで消化したインドネシアを拠点に活動するバンドとも異なるモノとなっているように思います。そのあたりの独特の立ち位置について、思うところがあれば聞かせてくれませんか?

インドネシアを拠点とするバンドと私たちのアプローチがどう違うのか、正確に指摘するのは難しいと思います。彼らがどのようにアプローチしているのかを知らずに、このことについて話すのは難しいですね。おそらく私たちは外部の視点を持っているので、実際にその文化の中にいる場合とは違った方法でインドネシア音楽を解釈します。伝統に囲まれていると、伝統を破るのが難しいのかもしれません。私たちは意図的に伝統を "破る" つもりはありませんが、インドネシアの影響を自分たちにとって心地よい方法で活用しようとしています。


――そして、8月末には日本のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドの招聘により、富山と東京において初となる日本での公演が決定しています。どのようなステージにしたいと考えているのか、また日本の音楽ファンに伝えたいことがあれば自由に聞かせてください。

私たちは、明るいものから暗いもの、神秘的なものから気楽なものまで、さまざまな雰囲気と音の旅に観客をお連れしたいと思っています。何よりも、喜びを広め、人々がまだ知らない音を紹介したいと思っています。もちろん、日本にまた来たいので、皆さんには口コミで今回のことを広めていただき、できるだけ早く再招聘してもらえるようになればと。





――バンド名の "ヌサンタラ" には、インドネシアという国の特徴である "群島" という意味がありますし、有名なタバコの銘柄である "ガラム・ヌサンタラ" を連想させるところもあります。また新首都の名称でもありますが、バンド名にこの単語を冠した特別な理由はありますか?

この名前を選んだ理由は、とても美しくエキゾチックな特徴があるということに加え、おっしゃったように、群島はインドネシアのさまざまな島々の集まりを意味するからです。私たちは、インドネシア音楽のスタイルだけでなく、個人として演奏するさまざまなスタイルの音楽のユニークな組み合わせをさまざまな要素の組み合わせとして音楽にアプローチし、他にはないものを作りたいと思っています。

※参考 : 移転先はジャングル!? 新首都「ヌサンタラ」ってどんなとこ? (外部リンク : NHK国際ニュースナビ)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2024/01/18/32850.html


――最後に。バンドの今後の動きに関してや抱負、また、上記の質問に関わらずに伝えておきたいことがあればお願いします。

私たちは皆、日本と日本文化の大ファンなので、日本に行って皆さんに私たちの音楽をお届けできることをとても楽しみにしています!


(了)




SUKIYAKI MEETS THE WORLD 2024

チケット販売情報ほか詳細はオフィシャルサイトから
https://sukiyakifes.jp/festivalinfo

(一部抜粋)

8/24 (土) 17:00開場/17:30開演
出演:
NUSANTARA BEAT, SUZUMENO TEARS & YOSHIO KUGE, SUKIYAKI STEEL ORCHESTRA

8/25 (日) 13:30開場/14:00開演
出演 :
ANA FRANGO ELETRICO, CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN, MAYUNKIKI & SURGE

会場 : 円形劇場ヘリオス (富山県・南砺)

※それ以外にも 8/23 (金) より各会場で多数のイベントやライブを開催! 詳しくは上記オフィシャルサイトより。



SUKIYAKI TOKYO 2024

チケット販売情報
https://www-shibuya.jp/schedule/017992.php

8/27 (火) 18:30開場/19:30開演
出演 : 
ANA FRANGO ELETRICO, NUSANTARA BEAT

会場 : WWW (東京都・渋谷)


▼これまでのインタビュー記事はこちら


■【Vol.1】韓国のレコードショップDOPE RECORDSのオーナーKEVINさんに聞く韓国の音楽カルチャー

https://diskunion.net/news/detail/1391


■【Vol.2】NUSANTARA BEAT インタビュー! スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドで来日

https://diskunion.net/news/detail/1618

 

■【Vol.3】Moguさんってどんな人?〜阿佐ヶ谷mogumogu店主の音楽遍歴と、90年代以降の中国ロック音楽のこと

https://diskunion.net/news/detail/1390


■【Vol.4】上海ジャズ・シーンを代表するヴォーカリスト、ヴォイジョン・シー来日直前インタビュー

https://diskunion.net/news/detail/1353

 

■【Vol.5】台湾の注目SSW イーノ・チェン (鄭宜農) に聞く最新作『圓缺 Moon Phases』の制作背景とこだわり

https://diskunion.net/news/detail/1372


■【Vol.6】韓国のシンガー・ソングライター、ウ・ジウォン(Woo Jee Won, 우지원)インタビュー

https://diskunion.net/news/detail/1361


■【Vol.7】韓国の注目プロデューサー JINex に聞く最新作『ETERNAL』制作秘話と創作の源泉【アジア・インタビュー連載企画Vol.7】

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