ディスクユニオン ジャズスタッフ 4月度レコメンド・ディスク

ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!
矢崎恵理 / HOME / 横浜関内ジャズ館 小林
https://diskunion.net/detail/1009177936
ボーカリスト矢崎恵理の2ndアルバム。1、2曲目の軽快なナンバーから一転して「Here, There and Everywhere」「Smile」と落ち着いたスタンダードナンバーの流れで一気にアルバムの世界に引き込まれる。中盤の「I Need To Be In Love」をピークに、エンディングまでリラックスして懐かしい物語を読んでいる気分に浸れる。前作に入っていた「北酒場」のイメージを引きずって聞いてるせいもあるだろうが、矢崎恵理の歌声と島裕介を中心としたバックの演奏は、昭和の雰囲気が漂っていて、帰りたい「HOME」は具体的な"空間"ではなく、もう決して戻れない"時間"なのだということに気付かせてくれる。
April Varner / Ella / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009165274
NYを拠点とするシンガーの2作目、クリアで伸びやかな声のエラ曲集です。バックは現行ジャズシーンで注目を集める、エメット・コーエン、ユリシス・オーエンス Jr、ヤスシ・ナカムラらが固め、伝統に則りながらも自身のスタイルに寄せ切った歌がいい。このメンバーにかかるとエラの最初期のヒット曲「A-Tisket, A-Tasket」もスピードにのった爽やかな演奏に生まれ変わります。ピアノのエメットがアレンジ、そのソロも流れるようだし、ユリシスの強力な推進力も聴きもの。次曲はブライアン・リンチがアレンジのブラス入り、ゴーカでちょっとラテンな「I've Got You Under My Skin」・・と書き続けたいくらい、全曲に華があるのですが、私的にはピアノとデュオ、チャーミングな「Dream a Little Dream of Me」。ブルーで情感あふれる「Bewitched, Bothered and Bewildered」が推しです。エラ没後の1997年生まれのエイプリル、注目したいニューカマーがまたひとり増えました。
Franco D'Andrea / Live / JazzTOKYO 神尾
https://diskunion.net/detail/1009201495
1941年イタリア生まれのダンドレア、85歳になった今でも第一線で活動を続け、コンスタントに作品をリリースするピアニストです。本作はベース、ドラムを迎えたトリオでのライブ盤。エリントンにお得意のモンク、ホレス・シルヴァーに「至上の愛」「ノルウェーの森」。さらに1917年世界初のジャズ録音とされるODJB「Livery Stable Blues」に自作曲まで・・なんというかもう、一つの到着点とも思える選曲の2枚組です。1960年代から活動しフリーやジャズロック、DJとの電子音楽にも足を踏み入れ、一方ではフィル・ウッズ、リー・コニッツらとの共演作も残してきたピアニストの立ち返るようなストレートなトリオ作。マエストロ然とした(ジャケのポートレイト参照)姿も含め、滋味ある演奏には説得力を感じざるを得ないです。そして実際に各曲がダンドレアのテンポで進み、その土台を作るベースとドラムの懐の深さも十分。スローに仕上げられた「Take The "A" Train」の黄昏れるようなメロディの優しさ。入り組んだアレンジながら、それが必然に聴こえる「テンダリー」など、曲の分解加減もいいし、バックをいなすようなピアノの巨匠からにじみ出るジャズにじっくり浸れます。イタリアの文化支援団体によるレーベル Parco Della Musica の意義も感じる作品 (例えば価格です)。
Bill Frisell / In My Dreams / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/detail/1009173975
ふわふわと漂いながら自在にジャンルを越境し、さまざまな断片を思いのままにコラージュする。ポスト・モダンとでもいうべきビル・フリゼールのスタイルを簡潔に言い表すことはほとんど不可能といっていい。多くの人は彼の膨大なディスコグラフィーを見てこう思う。どこから聴けばいいのだろう? アンビエントな初期作もよいし、カントリー・ブルーグラスをぞんぶんにやった諸作もすばらしい。ジョン・レノン曲集『All We Are Saying』(2011/Savoy)や映画音楽を集めた『When You Wish Upon a Star』(2016/Okeh)なんかはとっつきやすいし、ネイキッド・シティでの演奏こそ至高だという人もいるだろう。でも、ここではあえて「どこから聴いてもいい」と答える。つまり本作からビル・フリゼールを聴き始めようがいっこうにかまわない。彼のやっていることは、誤解を恐れずにいえば、ずっと変わっていない。彼は音楽に〝あそび〟を生み続けてきた。彼は本作のインナーに[Space Create]という詩をよせていてそこでは“... Space”という言葉を列挙している。“Space=あそび”は空間に反響するギター・サウンドであり、広大な国土をもつアメリカであり、さまざまな音楽の共存をゆるすジャズという音楽そのものだ。SpaceをCreateするという広い意味における一貫性がビル・フリゼールのリーダー作には見いだせる。たぶん、ビル・フリゼールが好きな方はそのことに気づいていて、この最新作もある種の安心感をもって受け止めているものと思う。Blue Noteから出ている近作においてビル・フリゼールは、なじみの仲間と気兼ねなく“Space Create”を楽しんでいる。七十を越した彼のプレイングは融通無碍の境地におり、本作ではジェニー・シャインマン(vn)にエイヴィン・カン(va)、ハンク・ロバーツ(vc)の弦楽器隊が、軽快にのびやかに付きしたがう。ベースとドラムもトコトコときもちいい。初期作品の再演(M2)もストレイホーンのカヴァー(M4)も「ビル・フリゼールの音楽」として混ざりあう。彼のつくる〝あそび〟がもたらされた日常において私たちは、いままで見えていなかったものへも目を向けることだろう。公式サイトでビル・フリゼールはしあわせそうに語っている。「今回のいちばんのアイディアはこれなんだ。仲間をみんな集めて、一緒に音を出す。それだけなんだよね」と。
Dave Holland, Norma Winstone & London Vocal Project / Vital Spark / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/detail/1009154996
英国を拠点に活動したトランペット奏者ケニー・ホイーラーは2014年に逝去した。その晩年にリリースされた『Mirrors』(2013)というアルバムがある。コンボとコーラスのための作品集。そこで歌っている合唱団ロンドン・ボーカル・プロジェクトの音楽監督であるピート・チャーチルのもとへ生前のケニーは曲を送っていた。「心をそそる音楽の断片が──すべてケニーの独特な筆跡で書かれている──数年にわたって予告なしに届いた」とチャーチルは述べる。未発表曲の存在に興味をもったのはデイヴ・ホランド。彼のはたらきかけによって『Mirrors』に続く、今は亡きケニーの〝新作〟ともいうべき本作が生まれた。ホランドと、ケニーのバンドで演奏歴のあるジョン・パリチェッリ(g)を除く多くのメンバーは『Mirrors』にも参加しており、録音時81歳のノーマ・ウィンストン(vo)はなお瑞々しい歌声を聴かせる。だが本作の主役はケニーのスコアだ。ラージ・アンサンブルにおいてもスマートで透きとおった響きを失わないケニーが合唱作品へと行き着いたのは自然な流れ。この世のものとは思えない美しいハーモニーが奔流となってあふれだす。彼の第1作『Windmill Tilter』(1969)を聴き直したくなった。作曲家ケニー・ホイーラーは永遠に生き続ける。
Gregory Hutchinson / Kind of Now - The Pulse of Miles Davis / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/detail/1009186056
2026年はマイルス・デイヴィス生誕100年だいっ!のわりにさして盛り上がっていない気もするが、やっとアニヴァーサリー・イヤーらしいアルバムを発見!90~00年代のメインストリームで大活躍した名ドラマー、グレゴリー・ハッチンソンによるマイルストリビュート作だ。ロン・ブレイク(ts)にヤコブ・ブロ(gt)、ジェラルド・クレイトン(p)にジョー・サンダース(b)という名手たちを引き連れての快演。なによりトランペットはアンブローズ・アキンムシーレだいっ!選曲にも隙がなく『カインド・オブ・ブルー』前後のM1・2・8(同アルバムからは採用されてないのがミソ)から『ビッチェズ・ブリュー』まわりのM6・9までをカバーするが、聴きどころは60年代後期の諸作。セカンド・グレイト・クインテット期のM3・4では本気のアキンムシーレがカッチョええ。でもって『マイルス・イン・ザ・スカイ』からのM11に『ビッチェズ・ブリュー』直前の所謂〝ロスト・クインテット〟がやってたM7・12という渋さ。マイルスとしては珍しくまとめるのに苦労した時期の曲だが、そこに残された可能性はいまのジャズでこそ探求できるのだと彼らの演奏を聴いて気付かされた。マイルスは永遠のコンテンポラリーだ!全ジャズ・ミュージシャンよ、マイルスを演れ!
Tuva Halse / Reconnection / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009172502
自然との精神的な繋がりを色濃く持つ北欧の文化に惹かれ、その精霊や妖精についての本を熱心に読んでいた時期があった。北欧ジャズが好きな理由もそこから来ているのだろう。ノルウェー出身のヴァイオリニスト、トゥヴァ・ハルセ率いるクインテットは、そんな“北欧ジャズの新世代”と称される。フォーク、クラシック音楽が流れ込んだメロディアスで優雅なヴァイオリンは予測不能に舞い踊り、時に幽玄な風景をも描き出す技術と情熱がある。トランペットとともにフロントに立ち、繰り広げられる会話劇やユニゾンはきらめきを纏った新しい響きだ。そして、トランペットには同国のニルス・ペッター・モルヴェルに通じる揺らめきがこもっている。本作を聴くと、豊かな北欧の自然とその見えない気配に誘われるような感覚になる。もしかすると精霊が音に姿を変え、こちらの反応をうかがっているかもしれない。
John Zorn / Sing Me Now Asleep / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009170034
静謐なジョン・ゾーン作品があるのを知っていますか?ジョン・ゾーンが作曲、アレンジを務め、ビル・フリゼール、ケニー・ウォルセン、キャロル・エマニュエルから成る“グノースティック・トリオ”が演奏。ギター、ヴァイブ、ハープといううっとりする編成で、フリージャズというより、メロディアスかつミニマルでアンビエンス、天に続く梯子を昇ってゆくような幻想性に満ちている。今作は、シェイクスピア作品からインスピレーションを受けており、ジャケットの“真夏の夜の夢”の甘く淡い夜の色が音として浮かび上がったよう。しかし、旋律と和声は突如行き場を失い、調和が崩れ出す。イクエ・モリによる電子音もとっても奇妙で生々しい。それにしてもジャケットの絵と音楽が合いすぎていて、絵からインスピレーションを受けたのだろうか、それとも音楽のあとに絵を当てはめたのだろうか。
Gregory Uhlmann / Extra Stars / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009177739
あの懐かしいつぶつぶアイスみたいで、かわいいジャケット。名門インターナショナル・アンセムからのリリースで、ジョシュ・ジョンソン、サム・ウィルクス周りで活躍するマルチインストゥルメンタリスト、プロデューサー/作曲家であるグレゴリー・ユールマンの新作とのこと。まず耳を惹くのは、ユールマンによるシンセだろう。無理矢理一言で説明するなら、エレクトロニック・アンビエント・ジャズだろうか。その質感には、なんと冒頭のつぶつぶアイス的な音の粒子の感触とノスタルジーが秘められている。彼はシンセの他にギターやピアノも操るが、生楽器への秀逸なエフェクト処理がこの作品のみそだと思う。サム・ゲンデルら現代LAシーンに流れる、音の手触りへの執拗ともいえるこだわり。そして、そこに重なるアラバスター・デプルームの儚いサックスには内臓の端までをぎゅっと掴まれるようだった。
Kravchenko Clees / Faces / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009200572
静かな湖面や、氷に差す光の反射の先に、束の間だけ現れる不思議な入り口を見つける。ウクライナ出身のヴォーカリストと、ルクセンブルクのヴィブラフォン奏者によるデュオは、斬新な編成で、鏡の国へ迷い込んだような魅惑の世界を描き出す。カテリーナの歌声には霧のような神秘性が漂い、時に詩を朗読し、または語るように歌ったり、実験的な楽器として現れたりする。彼女の引き出しの多さにはビョークを思わせるような自由な精神性を感じ、ビョークがハープやベルのような電子音を好んで取り入れたことと、このデュオの音楽性には重なりがあるようにもとれる。ヴァイブは、歌に沿うようについていき、また、時折ピアノやシンセ、ドラムが加わることで、曲の個性が変化するのも面白い。風が止み、鏡に映る数多の像のなかで、どれが本物かわからない白昼夢を見ているような景色が、風が吹く時、息を飲むほど美しい景色に変わる。サウンドアートとも呼ぶべき、小さな傑作。
Joel Lyssarides / Late On Earth / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/detail/1009192372
この春、ピアノトリオがまとまって入荷した。中でも、このトリオは透明感たっぷりに心を浄化してくれる春の雨のような作用がある。スウェーデン出身のピアニスト、ヨエル・リュサリデスは、Spotifyの総再生数1億回以上を記録する、現代北欧ジャズ界では注目の逸材だそう。ギリシャにもルーツがあるようで、クラシカルな要素と北欧特有の揺らめくような美しさに、ほんのり香り立つ土着性が心を揺さぶる。毒気のない正統派トリオのように振舞いながら、全て彼のオリジナルで、実は個性派でもあるなあと思う。すごく絶妙な場所を見つけて、皆の心を掴んでいるのだろう。さらに、その表現は自分の内側へと還っていくようで、タッチも素晴らしく、とっても澄んだ音色。霧雨のドラムと、俯瞰する包容力のあるベース。その静かな祈りはなんだか泣きたくなるくらいに美しい。新しい季節に、こんなピアノトリオを待ってた、と思った。
Tim Richards / Four Aces / JazzTOKYO 中村
https://diskunion.net/detail/1009147288
飾り気のない英国産ピアノトリオが入荷しました。叙情的なベースと表現豊かなドラムを従えて、転がるようなメロディーと活気あるリズミカルなグルーヴを融合させたオリジナル曲のM1、力強くメロディックなベースが耳に残るM2、陽気なカリプソのM11など、オリジナル曲5曲を含む計12曲が収録されています。特に印象的だったのがM4「WAVE」。思いのほかドラムがフィーチャーされていて、ブラジルとアフロキューバンのリズムを融合させた再解釈が非常に面白かったです。黄昏というか春のうららかな海、というイメージだった「WAVE」が東映映画のオープニングのような波になったというか(誉め言葉ですよ、もちろん)。オリジナル楽曲がスタンダードにすっと溶け込んだチャーミングなトリオ作品です。
Scott Hamilton / In The Still Of The Night / JazzTOKYO 中村
https://diskunion.net/detail/1009204062
テナー・サックスmeetsヴィブラフォン。カル・ジェイダー『Latin Kick』、レム・ウィンチェスター『Winchester Special』、ジョー・ヘンダーソンの『Mode for Joe』、ミルト・ジャクソン『That's The Way It Is』あたりの作品が頭に浮かびましたが、温かく深みのあるテナー・サックスの音色と煌びやかで金属的で余韻の効いたヴィブラフォンの音はとても相性がいいと思いませんか?本作でもその魅力が思う存分発揮されていて、モダン・テナーの巨匠スコハミとヴィブラフォン奏者に徹した澤野工房からリーダー作を何枚もリリースしているあのティチアン・ヨースト(お久しぶりじゃないですかヨーストさん!)がタッグを組みスタンダードやジャズメン・オリジナルを9曲収録しています。ハンク・ジョーンズのバラード「Angel Face」が特に絶品!あらためていい曲だなと感じた次第です。ちなみにLPもリリースされていますがCDの方が収録曲が2曲多いですよ、ふふふ。
菊地雅章 / 六大=地水火風空識(HYBRID SACD) / JazzTOKYO 立石
https://diskunion.net/news/article/1/136122
「菊地雅章(プーさん)の音はいつも胸にかたりかけてくるんだよね。」、と日本が誇るジャズ・アーチスト渡辺貞夫さんが語るように、いつどのプーさんの音楽にも特定の懐かしみや、一抹の不安を感じる瞬間があります。'70年代を駆け抜けた後、プーさんが残した「六大=地水火風空識」は環境音楽の枠を通り越し、現在に至るまでジャズ〜エレキシンセ・シーンに色濃い影響を与えました。今作はこれまでの音楽感とは全く異なる手法で、エレクトロニックを母体として制作されています。そして、'90年前後の映像の中で「コンピュータの仕事に凝っちゃって」と発言されているように、時代の畝りと共に自身の音楽の変革を求めていたプーさんの、新たなる表現方法の粋を集めた傑作です。廃盤となっていたこのシリーズがリイシューされると知った時、聴く人を選ばないこの音楽を多方面の音楽好きに手に取って欲しいと思いました。六大という、自然を形成する凡ゆる事象を冠した今作を、部屋の中で一人ゆったりと耳を傾ける…こんな贅沢はないですね。今年もプーさんの音が胸にかたりかけてきてくれます。
ルーシー渡辺 / ジャズは退屈? / JazzTOKYO 立石
https://diskunion.net/detail/1009222176
中上健次「路上のジャズ」や、山田詠美「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」など、音楽が表題として使われている好きな本がたくさんあります。本著はジャズをテーマにした短編小説ということで、店内ポップに惹かれ手に取ってみました。そして早々に読了し、音楽を題材にした読み物の面白さが詰まっている作品だと感じました。ハンバーグステーキ、透明人間、ゴマフアザラシ…様々な話題がジャズと結びつく瞬間を、生活の端々から少しずつ切り取って一つの短編集としてまとめられています。特に"ブルー・イン・グリーン"の中で、昼食をとりながら野球やジャズについて語らい、ソニー・ロリンズの『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』を聴くシーンを読んだ時、まさに休日読書に相応しい良い話だなと、また一つお気に入りが増えました。著者のあとがきにある通り、表題曲を聴きながら本著を読み進めてみてください。普段とは少し違った印象でジャズを楽しめます。(追伸:ジャズを聴いたことがない方へ、本著内に登場する作品のことでご質問等あれば、気兼ねなくスタッフへお尋ねくださいね。)
Immanuel Wilkins / Live at the Village Vanguard Vol.1 / JazzTOKYO 羽根
https://diskunion.net/detail/1009189170
イマニュエル・ウィルキンスの演奏やメディアでの言動に触れるたびに、この人は本当にジェントルだなぁと感じてきた。超絶高速フレーズを繰り出したり、フリー寄りのプレイでもファナティックな感触はほとんど無い。淡々と顔色を変えず、こちらの感情だけ揺さぶってくる。「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。」とでも言いだしそうなフィリップ・マーロウ的精神性は、同時代でも抜きん出た彼のジャズっぽさ(って何?)の源泉なのかも知れない。長尺ライヴたる本作の楽曲や演奏にしても、反人種差別、ブルース、スピリチュアルを通じてインプットされた怒りや悲しみを、優しさや癒しとしてアウトプットすることに徹するクールさが常に存在しており、その内部変換においてはジャズの歴史が積み重ねてきた奥義が、複雑怪奇に回路を形成しているのだろうが、我々素人には想像も及ばないし、出てきたサウンドには呆然と感動するのみだ。本当にホット・アンド・クールでやばい。そもそもがイマニュエル・ウィルキンスのある種の破天荒さは、その振り幅にこそ極意があるように感じてもおり、ジャズの歴史は拡散と集中を繰り返しながら、その時代ごとにシーンや名盤が生まれてきた訳で、今は集中のターンだと考えると、アンブローズ・アキンムシーレやジェイソン・モランの弟子筋に、2020年代になってイマニュエル・ウィルキンスのような化け物が出てきたのも腑に落ちる。
山口ちなみ / The Köln Concert - Live At Kasumicho Ongakudo / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009168736
発売前から話題騒然で物議すら醸した昨年のデビューアルバム"The Köln Concert"は当店でベストセラーとなったが、どうしたことか当店配布の新譜紹介フリーペーパー"JazzTOKYO Selections(※)"では誰もレビューしなかった。放っておいても売れるからという楽観の他に、そこには気安くは触れづらい雰囲気というか得体の知れない何かがあった。ヘタに賛否して背後から石が飛んで来ても困る。賛否自体しづらい。おそらく個々のリスナーの脳内も肯定的意見と否定的意見が拮抗するアンビバレント状態となったのではないか。白黒はっきりさせないと気が済まない二極思考者には発狂ものだ。そんな前代未聞の問題作"ケルン・コンサート"の続編がライヴ録音の本作。発売直後の注目作でも案の定誰も紹介しようとしないのだが、4月前半の"JazzTOKYO Selections"は不思議なことにトップの注目作スペースが白いまま発行日を迎えてしまい、話題性抜群でネタも豊富な本作に急遽ご登場願うこととなった。山口さんが救いの女神に見えてくる。まずジャンルだ。山口さんご自身も自覚されているように、これはクラシックに準ずる作品である。最初にキース・ジャレットが即興的に作曲した長大な曲の録音があり、それを採譜した楽譜をクラシックピアニストが忠実に弾いたわけだからジャズではないし、ジャズかどうかの議論も無用だ。そもそもキースの音楽はジャズの本流からは距離を置いた位置にあり、ECMはジャズ専門レーベルではない。ECMファンにはオーディオファンも多く、それを意識して録音された前作、そして本作はオーディオを軸に楽しむ人も多いようである。音楽というのは切り口を変えれば別の楽しみ方もできるのだから、採譜した即興演奏の再現なんて、と端から渋い顔で接するのはもったいないし器が狭い。面白がって聴こう。ケルン好きなら本家キース版、山口ちなみ版、同ライヴ版と3タイトル、オーディオ好きならCDアナログ各フォーマット、太っ腹に全部揃えて聴き比べる。そんな贅沢な楽しみ方もできる。因みに山口ちなみ版を聴くと演奏も録音もすばらしいのに何かが足りない。そう感じた方は耳がいい。ここにはキースのあの唸り声がないのだ。が唸りは無用。これはキースの真似ではなく山口ちなみ独自の解釈によるピアノ曲"ジャレット: ケルン・コンサート組曲"だからだ。面白いことに格調無縁な観客の拍手と歓声はジャズ丸出しである。一瞬、錯覚する。今聴いていたのはジャズだったっけ?
(※)当店からのスタッフ・レコメンドディスクはフリーペーパー"JazzTOKYO Selections"掲載のレビューが基になっています。昨年は現代ジャズ周辺のディスクレビューを集めて、その名も"JazzTOKYO Selections ZINE"と題するZineにもなりました。
金澤英明 / Showdown / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009188915
コテコテなブルースで始まる。金澤健太、井上銘、秋山一将によるフーチークーチー新旧ギターバトル。マディ・ウォーターズに続いてB.B.キングのスリルな曲。これフサノスケだよね!? 通りすがりに耳にして即お買い上げのお客さまあり。ここから4曲続けてギターと歌で参加の近藤房之介。おどるポンポコリンの時代を生き抜いた当店スタッフが、インチキおじさんの声がする、と寄ってくる。若い衆には何のことやら意味不明だろう。詳しくはまた。ブルースアルバムかと思わせて6曲目はガラリと変わる。アブストラクトでフリーキーに吹き始めたアルトがエディット・ピアフの愛を讃えるメロディーを唸るように絞り出す。スタンダードな旋律を吹く林栄一は格別無類である。高橋祐成のピアノがシャンソンをアヴァンギャルドに塗り替える。ラストのアイルランド民謡は音量を相当上げないと聞こえない。ピアニッシモ表現が流行りなのだろうか。最近同様の録音にちらほら出くわす。時代遅れでもジャズは無骨で太くバカでかい音がいい。ベテランベーシスト金澤英明渾身の1枚。
アントニオ・ロウレイロ / Aldeia Coração / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009156667
予感に満ちたキャッチーなサウンドプロダクションのオブラートに包まれて複合的変拍子や奇抜なコード進行も違和感なくするりと耳に入ってくる。寄ってきたリスナーを突き放してしまうきらいのある高尚難解芸術志向のジャズ音楽家は悔い改め、これを見習わなければいけない。アントニオ・ロウレイロには歌い方にイヴァン・リンスの、ピアノとエレクトロニクスに坂本龍一の影を感じてきたが、歌詞対訳にはカエターノ・ヴェローゾに通ずる何かがありそうだ。訳し方によるものかも知れない。意味のわからない非ネイティブ語音楽はまず、わからないままにサウンドとして聴く。後で意味を知ると印象が変わったり変わらなかったりで、そのギャップがまた面白いということになる。リズムのずらし方や未来的な浮遊感でふと思い出したのはジャヴァン。ラストの美しいピアノ曲が終わったら最初からリピートするか、MPBレトロスペクティブを始めるか。ビールを開けて考えるとしよう。
小野リサ / Sue Ann~アントニオ・カルロス・ジョビンへのオマージュ / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009186561
ボサノヴァ歌人 菩砂野波命(ボサノ バメイ)は小野リサ久々の新作を前に考えあぐねていた。この作品を題材に一首捻り出さねばならない。前作は新型コロナ発生2019年の昭和歌謡集、ブラジリアンなアルバムは2014年以来、ボサノヴァらしい作品となると2007年のジョビン楽曲集以来ではなかろうか。再び愛と敬意のこもったジョビン作品集だが、今回は林正樹のピアノとリサの歌とギターのデュオというシンプルな編成で、渡辺貞夫の絶妙なアルトが3曲に参加。おなじみの定番曲から渋い隠れ名曲まで全12曲。数多のバージョンに触れてすっかり聴き飽きたはずのジョビンスタンダードがなぜか新鮮かつ味わい深く感じられる魔訶不思議な珠玉の出来映え。2本目のビールを取りにいくと買ってきたばかりの6缶パックが消えている。妻が女子会とやらに持ち去ったのか? どういうことだ? こんな世界はまちがっている。その瞬間、霊感が降りてきた。リサダナベ ハヤシトシツキ ダバダバダ ジョビンシノバル ルトゥットゥルトゥル
サンダーキャット / Distracted / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/detail/1009182512
アニオタ音楽家として文字通り雷名を轟かせるサンダーキャット久々の新作を聴きながら、アニソンエアベーシスト豈女萌恵(アニメ モエ)は考えあぐねていた。今日のリハでは初ステージに向けてアイデアを持ち寄る約束だが妙案が浮かばない。サンダーキャットは凄い。アメリカのアニメThunderCatsから芸名を拝借したに留まらず、風貌、服装、体表を彩るアニメキャラタトゥー群が無尽蔵のアニメ愛を体現する筋の通ったオタクの化身。感服するしかない。今回もフライング・ロータスと組んでアニメソングの如くキャッチー成分が凝縮された短めな楽曲が多数並ぶ。耳を惹く2曲目のテーム・インパラ他、幅広いゲストを迎えたコラボレーションもパワーアップ。彼ら一派はアニメ作家渡辺信一郎の熱烈なファンで、PVの監督を依頼した後、いくつかの渡辺作品に音楽で参加している。この際私も素直にアニメ周辺からアイデアを拝借。バンド名はスペースキューティ、メンバーの芸名は雷猫、飛行蓮、梭子(カマス)... バンドのことは夫には内緒で女子会と嘘をついた。折よく置いてあるビールの6缶パックでも手土産に出かけよう。
ELLAS KAPELL / Ember(LP) / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 田口
https://diskunion.net/detail/1009177726
ストックホルムのカルテット「エラス・カペル(ELLAS KAPELL)」の4作目。スタンダードを現代的な感覚で再構築したヴォーカルジャズ作品。北欧らしいさっぱりとした質感もありながらグルーヴも保っていて、ネオソウル以降のリスナーにもフィットしそうな一枚です。エレクトロニカ的なエフェクトを織り交ぜつつ余白も活かしたバランス感覚も魅力。夜の時間や、気持ちを緩めたいときにピッタリではないでしょうか。じわじわ効く一枚だと思います。
BOOKER STARDRUM / Close-up On The Outside(LP) / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 田口
https://diskunion.net/detail/1009158187
シカゴの現行ジャズ/実験音楽系レーベルINTERNATIONAL ANTHEMの作品「SML」に参加したドラマーBOOKER STARDRUMの最新ソロ・アルバム。ANNA BUTTERSS 、JEREMIAH CHIUらが参加しており、まさにレーベル周辺の空気感です。ドラマーならではのテクスチャーで聞くタイプのミニマルなエクスペリメンタル・ジャズ。とにかくセンスが良くてかっこいいです。シンセが使われていますが、鳴らし方が器楽的で有機的な音にまとまっています。ダンスミュージック、アンビエントでもあり、ジャンルに縛られず聴ける一枚です。
CECIL TAYLOR / Fragments: The Complete1969 Salle Pleyel Concerts(2CD) / 新宿ジャズ館 木村
https://diskunion.net/detail/1009201957
Cecil Taylor, Sam Rivers(ts,ss,fl), Jimmy Lyons(as), Andrew Cyrille(ds)による1969年のライブ録音。
このアルバムの受聴体験は、刻一刻と姿を変える大海原を眺め続けるかのごとく。いささか激烈な荒波が多い様ではあるが。タイトルの「Fragments」とはよく言ったもので、「断片」的な反復音を重ね、呼応させ、展開させる事で壮大な音絵巻を描き出している。
確かにCecil Taylorの音楽はミニマル・ミュージックと捉え直すと途端に聴きやすくなる。Free Jazzとかアヴァンギャルドとか近現代クラシックのバルトークやシュトックハウゼンを消化して云々という解説より、「ミニマル」の一言で何だか腑に落ちてしまった。
一瞬一瞬の音の炸裂に興奮しつつ、音の大激流に脳が揉みくちゃにされるがままに身を委ねる快感!! なんて素敵なひととき!!
JULIAN ARGUELLES / Echo Fields / 新宿ジャズ館 四浦
https://diskunion.net/detail/1009192604
今年60歳を迎えたイギリスのサキソフォン奏者の最新作は、現代ジャズ界の俊英リズム・セクションを迎えての渾身のサックス・トリオ作品。80年代後期より、イギリス・ジャズを牽引する作曲家、ピアニスト、指導者のジャンゴ・ベイツと共に活動し、ジョン・テイラー(p)、スティーブ・スワロー(b)、ジム・ブラック(ds)といった名手を招いての録音作品や、「Basho Records」、「Whirlwind Recordings」、「Edition Records」といったイギリスの名門レーベルへ吹き込んだ数々の名作を、世に届けてきた彼が、正に満を持して、リラックスの中に見える自信と共に、ベースにラリー・グレナディア、ドラムスにホルヘ・ロッシーを従えて、自身のオリジナル曲をアートへと昇華する。そこには彼のバックボーンにある、マイク・ギブスやカーラ・ブレイのサウンドも聴こえてくる。トリオという最少人数で表現される音々が、ここまで途轍もなく豊なのは、ラリー、ホルヘの力量によるのものであることは間違いない。「歌心」ある即興演奏は、「歌心」あるテーマ(曲)に宿る。それが、昨今のサックス・トリオに物足りなさを感じていた方々へ、本作がお勧めされる理由である。
Julian Argüelles(ts), Larry Grenadier(b), Jorge Rossy(ds)
JOE HENDERSON / Consonance: Live at the Jazz Showcase (2CD) / 吉祥寺ジャズ館 山田
https://diskunion.net/detail/1009201958
内容は間違いないであろうと確信はあったものの、とにかく音が心配だった。サブスクで配信があったため。移動中にいち早く聴いてみた。夜10時、新宿の繁華街から少し離れたビル街を、一曲目「Mr.PC」が疾走する。いや、これは疾走どころではない。もう止まらない、どこに向かっているかさえわからないくらいの速度で猛烈にジョーヘンのソロが走り抜ける。ジャズは都会的な音楽で、ビル街の夜景に多少なりともマッチするものだと思っていたが、笑止千万。この刹那的な音楽こそがジャズであり、ビルなんか根こそぎ破壊してしまうのではないかという勢いこそがジャズの醍醐味なのであった。
ちなみに、ジョアン・ブラッキーンらバックのピアノトリオの演奏も素晴らしいが、こればっかりは仕方ない。気の毒だが終始押されまくり状態、ジョーヘンの独壇場であったことは予め申し添えておきたい。彼らは素晴らしい。あくまでジョーヘンがちょっと異常なのである。
RSD限定のレコードはまだ在庫があり、どうしても欲しいが、価格も高いので一旦はCDで楽しもうと思う。
RESAVOIR / Themes for Dreams(LP) / 吉祥寺ジャズ館 荒川
https://diskunion.net/detail/1009192951
去年のMATT GOLDとのコラボレーション『Horizon』も最高だったが、早々に新作が届いた。JEREMIAH CHIUほか、今回もいくつかの曲でゲストを迎えつつ、シンセ、ペダルスティールが織りなすまどろむようなアンビエントになっている。アタックを抑えたシンセの質感は近年のMEN I TRUSTのようなインディロックや、ビリー・アイリッシュの近作などにも近く、イージーリスニング(ポール・モーリアとかではなく)と呼ばれるポップ・ミュージックをインストゥルメンタル化したらこんな感じなのかもしれない。バッハの無伴奏チェロを引用した「Life Goes On」までひたすら夢心地だ。シカゴ・シーンのファンはもちろん、かつてレイ・ハラカミや高木正勝のCDコーナーを眺めていた人に推薦する。
YUSSEF DAYES EXPERIENCE / LIVE FROM MALIBU (LP) / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 五十嵐
https://diskunion.net/detail/1008808337
未だ止まることを知らないかの如く世界中へ名を轟かせ続ける現行UKジャズ天才ドラマー,ユセフデイズ。直近のBLUE NOTE公演も記憶に新しいが、際するドキュメンタリーにて「進化し続けたいと思うこと。学び続けたいと思うこと。」と、とてもじゃないが当たり前というか、至極シンプルなことだからこそ大切に語る彼だからこそ携えたとてつもないスピードのおかげで過去タイトルが再発されてもまたそれが新鮮に感じられてしまう。
スタジオを飛び出した野外ライブパフォーマンス映像もぜひご覧いただきたい。
カリフォルニアの美しい海岸線、サックスが反射した沈みゆく太陽の残光、舞い降りた闇が包む炎。私も外へ飛び出し、大好きな音楽に魂を乗せて豊かな自然や街々を時間を忘れて駆けていきたい。さらにさらに広大などこかへエネルギーを連れて行ってくれるスピリチュアル体験,人生観を与えてくれる存在。これからもずっと推しですね。
集団疎開 / Live At Alone(LP) / 商品部 川田
https://diskunion.net/detail/1009207783
著名なサックス/クラリネット奏者の梅津和時が在籍していたフリージャズ・カルテット、集団疎開が1977年に500枚プレスの自主制作盤LPでリリースした唯一のアルバム「その前夜 - Live At 八王子 Alone」(Des Chonboo Records/DCB-01/LP)が初のLPレコードで待望の再発!!既に初CD化は実現していますが、やはり、オリジナル・ジャケット仕様のアナログ盤LPレコードでの再発は感無量です。
1976年12月24日、八王子のジャズ喫茶、アローンでのライブ音源を収録したアルバムですが、高校時代に友人と行ったことを思い出します。アローンの閉店日には私はあいにく立ち会えませんでしたが、たまたまその日に行っていた友人の話では、いつものようにコーヒーを飲みながらお店でかかるジャズのレコードを聞いていたら、突然、お店のドアが施錠され、店員の方が出てきて「今日で閉店させていただきますので、最後にライヴを行います」と言って、エプロンを外してジャズの生演奏を始めたそうです。友人の話では「非常に演奏が上手かったよ」とのこと。後に思い出した際には驚いたものです。恐らくメンバーは梅津和時、原田依幸、森順治、菊池隆だったのだと思います。フリー・ジャズのファンなら持っていたいホットな一枚です。
高木信哉 / 「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット / 商品部 川田
https://diskunion.net/detail/1009217118
キース・ジャレットが1975年にドイツのケルン劇場で行ったコンサートの舞台裏を、当時18歳だった女性プロモーターを主人公に描いた音楽青春映画「1975年のケルン・コンサート」が日本でも劇場公開されて話題となっている。同「ケルン・コンサート」は2025年に50周年記念盤として印刷サイン入り肖像アートプリントを封入したワンプレス・オンリーとなる特別仕様の2枚組LP等が発売されて好評だったのがまだ記憶に新しい。そのような中でタイムリーに出版されたのが、キース・ジャレットの苦難の半生から伝説の夜の真実までを綴る冊子、「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット。
ケルン・コンサートが生まれた背景やキースを深く知るためのディスク・ガイド、伝説のケルン・コンサートを再構築されたピアニスト、山口ちなみさんのスペシャル・インタビュー、さらに巻末付録:キース・ジャレット来日公演記録までが収録された興味深い濃い内容で、購入した日に読み切ってしまったすぐれ本です。
MARK TURNER /Patternmaster / 商品部 川村
https://diskunion.net/detail/1009189166
現代ジャズ・サックスの最高峰のマーク・ターナーのカルテットの4年ぶり新作。
マーク・ターナーを評する時、『最高峰』『現代最高』と書かれていても、誰も否定はしないかとは思いますが、これでもまだまだジャズファン界の評価は低いように感じます。個人的には、チャーリー・パーカー→ジョン・コルトレーン→マイケル・ブレッカーに続く、モダンジャズのサックスのスタイルの歴史の変遷に革命とトレンドを起こした一人だと思います。クラシックのプレイヤーのような芯のある音色で、リニアに流れるフレーズ、また、かつての雑誌のインタビューで、「貴方はなぜソプラノやアルトサックスを演奏しないのか?」という質問に「テナーでソプラノとアルトの音域も表現できる」と言った楽器の音域の更なる拡大により、表現の幅を広げたことなどは、同世代であるジョシュア・レッドマンさえも影響を大きく受けたように感じます。気づけばそのマーク・ターナーもめでたく還暦。20年以上追っかけて聴いている私も歳をとるわけですが、今作でもテクニックや発想が全く衰えることのない、我が道を貫く驚愕なプレイを聴かせてくれます。今日、素晴らしいサックスプレイヤーはたくさん出てきてはおりますが、正直まだ革命的なスタイルを打ち出した人は出てきていないと感じますので、マーク・ターナーはジャズ・サックスの最高峰であり、最前線のスタイルは揺るがないなと改めて感じさせる作品でした。
REJOICER FEAT. SAM WILKES & TAMIR BARZILAY / California Space Craft / 商品部 池田
https://diskunion.net/detail/1009212519
ミュージカル『ウィキッド』が好きだから緑とピンクのカラーリングにはなんでも惹かれるわけではありませんが、まずジャケが良い。リジョイサーの浮遊感のあるシンセと、サウンドの異世界感、カリフォルニアのムードがこのパキッとした鮮やかな色に合っていて最近はヘビロテしています。今はサム・ウィルクスが参加しているぞ!!!というだけで宣伝効果がありそうですが、トランペット奏者アヴィシャイ・コーエンとピアニストのニタイ・ハーシュコヴィッツもそれぞれ1曲ゲスト参加していますので…!
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