■【INTERVIEW】RAW DEAL,RAW MUSIC ――仙人掌、ロング・インタヴュー

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2013.11.27

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RAW DEAL,RAW MUSIC ――仙人掌、ロング・インタヴュー

●取材/文    二木信

仙人掌のインタヴューが実現した。しかも、これだけ長い単独インタヴューは初めてのことだろう。仙人掌は――今さら説明するまでもないが――MONJUのラッパーであり、東京のヒップホップ・シーンを代表するポッセ〈DOWN NORTH CAMP〉(以下、〈DNC〉)のメンバーだ。00年代中盤以降、仙人掌という名前を見ない時期はないほど大量の客演仕事をこなしてきた多作家でもある。00年代中盤以降の日本/東京のラップは、仙人掌抜きには語れないと言っても、過言ではないだろう。

仙人掌を特別なラッパーにしているのは、その独特のリズム感と格好付け方の潔さにある。人の意識を鋭く抉る生々しいリリックとパンチライン、耳に絡み付くしゃがれた声音、ビートの隙間に楔を打ち込むようなポリリズミックなフロウ。余計な装飾を一切排し、それらをクールにキメるだけで役者の違いを見せつけてきた。仙人掌は大それたことを歌わないが、俗悪な精神も高潔な精神もドロリと溶かし込んだそのグルーヴィーなラップが、仙人掌という楽器であり、生身の存在であるということ。彼は、音でそのことを徹底的に証明してきたように思う。

今年5月に仙人掌は、ヘッズたちが待ちに待ったファースト・ソロ・アルバム『Be In One's Element』を新興インディ・レーベル〈CREATIVE PLATFORM〉(以下、〈CPF〉)から発表した。この作品は、〈CPF〉の「RAW DEAL」というプロジェクトの会員のみが購入できる限定販売だったが、喜ぶべきことに、今月になって、そのリミックス盤『Be In One`s Element The Remix』と、オリジナル盤のアナログが一般流通でリリースされる。

オリジナル盤はGRADIS NICEと16FLIPが、リミックス盤はBUDAMUNKYとNASTY ILL BROTHER S.U.G.Iがそれぞれビートを提供している。両者はまったく異なる仕上がりで、前者が12インチのA面だとすれば、後者はB面といえる内容になっている。ソウルフルでブルージーな前者が仙人掌の勇猛なステイトメントだとすれば、チルアウトかつディープな後者は真夜中の暗闇で音と戯れる彼と彼の仲間たちの楽しげな宴といった趣だ。この、コインの裏表のようなブリリアントな2枚は、間違いなく2013年の日本のヒップホップの重要作だ。

特殊な流通形態や制作について、仲間や家族について、ラッパーとしてのキャリアについて、そしてアルバムや音楽について、とにかくおおいに語ってもらった。DJのGONZ(〈DNC〉のメンバー)も同席して行った仙人掌のロング・インタヴューをお送りしよう。




“Be In One's Element”っていう熟語の意味が“水を得た魚”というのを知って。自分が“水を得た魚”みたいにどんどん泳いで行けるかなと、そういう思いを込めて付けたんです


■仙人掌くんがこういう形で単独インタヴューを受けることはなかったですよね?

仙人掌:そうですね。初めてだと思います。

■今日はいろいろ話を聞かせてもらいたいんですけど、まず『Be In One's Element』というタイトルにはどんな気持ちが込められているのか、というあたりから聞かせてもらえますか。


仙人掌:最初に、自分の中のいろんな要素を表現したいというのがあって、“element”っていう言葉が出てきたんです。“element of style”とか、そういう感じの響きがいいなと思って選んだんですけど、いろいろ調べて行ったら、“Be In One's Element”っていう熟語の意味が“水を得た魚”というのを知って。〈CPF〉から話をもらった時に、僕が音楽を作る状況をバックアップしてくれるって言ってくれて。制作のためのお金を出してくれたりして、自分がやりたいようにやらしてもらえる状況を作ってくれるって。そうなれば、今までできなかったこともできるから、自分が“水を得た魚”みたいにどんどん泳いで行けるかなと、そういう思いを込めて付けたんです。まあ、“水を得た魚”っていうのは、正直後付けなんですけど、でも与えられた環境の中で何ができるかかな、とか、どんだけいい感じで泳げるかなって。

■『Amebreak』に今年3月にアップされたMONJUのインタヴュー( http://amebreak.ameba.jp/interview/2013/03/003787.html )を読みましたよ。最初に〈CPF〉から話が来た時に、「いやー、よく分からないっていうか。あなた(レーベルの人)のこともまだ信用できない」って言ったそうですね(笑)。

仙人掌:ははははは。

■仙人掌くんの音楽を聴いてきたリスナーやファンは、当然〈DOGEAR RECORDS〉からアルバムをリリースすると思ってたでしょうしね。

仙人掌:そうですよね。

■僕も驚きましたよ。もちろん〈DOGEAR RECORDS〉のバックアップもいろんな形であったでしょうけど、〈CPF〉からリリースするというのは大きな決断だったんじゃないですか?


仙人掌:そうですね。なんつったらいいんだろ……「仙人掌のラップでこんだけの人が動くんですよ」っていうのを改めて提示してくれたのが〈CPF〉だったんです。だけど最初は、〈CPF〉の人からいろんな話を聞いても、自分が今まで想像していた範囲外の話過ぎて。「マジかよ?!」って思っちゃって、不安はありましたね。

■〈CPF〉からソロ・アルバムのリリースの話が来た時、疑問や不安を感じたのはどんなところだったんですか?

仙人掌:とにかく自分が作りたいと思って作って、それを自費でプレスして、流通は〈DOGEAR RECORDS〉でやってもらう。今までそういうやり方しかしてこなかったんで、そこから飛躍しているところがあって、不安だったというか……まあでも、不安って言ったらアレですけどね。

■でもその不安は想像できますよ。〈DOGEAR RECORDS〉や〈DNC〉は結束力も強いじゃないですか。だから、〈CPF〉のバックアップの下で作品を制作して発表するというのは、これまでと違う環境で音楽に向き合うことでもあると思いますし。

仙人掌:うん、いろいろ言われるのは覚悟の上だったんですけど、今って音楽産業のこの先みたいなことがすごく議論されているじゃないですか。実際にいろんな方法で音源作って独自で流通なり配信するっていう人も増えてて、ミックステープのシーンで活躍してるヤツならその方法だけでツアーとかやって稼ぐんだってヤツらもいるし、メジャーでやってたようなアーティストもそれと近い方法を最近選んでたりしますよね。もちろん日本とアメリカではまったく違う話だっていうのはおいといて。なので、タイミング的には面白いというかタイムリーなのかなとは思っていて。なにかしらで今後の自分や周りの活動のプラスや知恵になれば良いなとは思ってたし、刻一刻縮小されて行くなかでコレもひとつの手段とか方法かなっていう意味でやってみたんです。

■なるほど。


仙人掌:でも、真っ先に相談したのは、SORAくん(〈DNC〉のメンバー)だったんですよ。ちょっと下北まで呼び出して、「実はこんな話が来たんだよね」って。話が来たのが去年なんですけど、ちょうどそのタイミングで、来年(2013年)は〈DOGEAR RECORDS〉もリリースを連発していこうっていう話も出ていて、年明けのパーティ(〈REFUGEE MARKET in シモキタ〉http://www.ele-king.net/review/live/002715/ )も決まってたんです。「そういう流れの中で、お前がリリースするのはすげぇ面白いんじゃないの」みたいなことをSORAくんが言ってくれて。僕らの周りには、洋服を作ったり、デザインができたり、GONZみたいにDJやってるヤツらもたくさんいるから、〈CPF〉の「RAW DEAL PROJECT」でいろんな切り口でやって、〈DNC〉としても動いていくっていうのは面白いんじゃないかって。〈DOGEAR RECORDS〉を仕切ってるのはMr.PUGなんですけど、あいつは切れ者でビジネス的な部分でも考えることができるんですよ。そのMr.PUGが「お前はそのプロジェクトをやったほうがいろんな意味でいいかもしんない」って言ってくれて、Mr.PUGを最初に〈CPF〉の人に紹介して三人でいろいろ話したんです。そうしたら、「これはすげぇいいものをやれる!」って、Mr.PUGも〈CPF〉と意気投合したんですよね。


(RAW DEAL では、ISSUGI(写真)をはじめ、DOWN NORTH CAMPの面々も、特典音源やMIX、プレゼント企画などでPROJECTを大いに盛り上げた。写真はプレゼント抽選をする仙人掌とISUUGI)


■『Be In One's Element』の制作はいつぐらいから始めたんですか?

仙人掌:いちばん最初のエクスクルーシヴも含めると、去年の11月ぐらいでしたね。

■ということは、なかなか早いスピードで制作とプロジェクトを進めていった感じですね。

仙人掌:そうっすね。そういうスピード感の中で俺らのノリを見せられたから、結果的にどのミックスも、どのエクスクルーシヴも自分の中ですげぇ面白いものができたと思ってますね。

■特典の仙人掌くんのDJ名義のslowcurvのR&B中心のミックスも、GONZくんのレゲエ・セットもすごく良かったですよ。

仙人掌:僕らの周りにDJはたくさんいるんですけど、しっかりリリースしてないDJもいるし、いい意味でプロモーションになるかなって思ったんですよ。ミックスを気に入ったら、そのDJの現場に遊びに行ったりする人が増えるかなって。そういうトータル的な意味で、「RAW DEAL PROJECT」は面白いんじゃないかなっていう。

■実は僕は最初、仙人掌くんのソロ・アルバムが「RAW DEAL PROJECT」の会員だけが聴けるというリリース形態に懐疑的だったんですよ。クラウドファンディング的なプロジェクトだと思うんですけど、仙人掌くんの人気を考えれば、閉鎖的なんじゃないかという認識があって。でも、その自分の認識がちょっと間違ってるんじゃないかと感じたのが、〈BED〉でのリリース・パーティだったんですよね。リリパに集まっていた人たちは、このプロジェクトにお金を事前に出すぐらい仙人掌くんの熱狂的なファンなわけじゃないですか。その人たちが集まった時のライヴの熱気や濃密な雰囲気が凄まじかった。ああいう雰囲気はなかなかないと思って。

仙人掌:もちろん、僕のアルバムを買ってくれた人たちがたくさん来てくれたのもありましたけど、ほんとにいろんな人たちが来てくれたんですよね。ずっと〈BED〉でやってきた甲斐があったと思えるリリース・パーティだったんですよ。僕がひとりでリリース・パーティって銘打ってやれたのも、あの日が初めてだったんで。しかも40分、40分の二部構成で。ははははは。自分の中でも三日間ぐらいは余韻に浸ってましたね。すげぇ面白かったし、やり切れましたね。

■今日は仙人掌くんのラッパーとしてのキャリアやバックグラウンドについても聞かせてもらいたいんですけど、ラップを始めたのは高校生ぐらいですか?


仙人掌:そうですね。16、17歳ぐらい、高2の頃ですね。

■同じ高校だったYAHIKO(DJ尾島とのユニット、白昼夢のラッパー。〈DNC〉のメンバー)がラップしてて、彼の影響もあったという話も聞いたことがあるんですけど。きっかけは何だったんですか?

仙人掌: YAHIKOももちろんなんですけど、YAHIKOを筆頭に同世代にけっこうラッパーがいるっていうことにまずヤラれて。自分も中学生ぐらいの時から熱心にヒップホップを聴いてたんで、ラップしてるヤツらがいるっていうのは大きかったですね。

■地元はどこですか?

仙人掌:江戸川区ですね。新小岩って江戸川と葛飾の境あたりです。

■仙人掌くんは1982年生まれですよね。90年代中盤から後半にかけて、中高生だったと思うんですけど、どんな音楽を聴いてました?

仙人掌:最初は海外のラップしか知らなかったんですけど、そこから日本人でもヤバい人がいることを知って、当時の日本のラップはほとんど聴いてたと思います。日本のラップでいちばん最初にヤラれたのは、マイクロフォン・ペイジャーっすね。ペイジャーでコアな日本語ラップを知ったというか、「うわ、ホンモノだ」みたいな。

■やっぱり“病む街”ですか?

仙人掌:“Don't Forget To My Men”ですね。あれを聴いて、「超カッケー!」ってなって、その後に“Two Night”っすね。あれは夜遊びの曲ですよね。あの曲の、“チャラいけどイケてる”ところにヤラれて。あのあたりが自分を形成してますね。

■マイクロフォン・ペイジャーのどこにインパクトを受けたんですか?

仙人掌:ヴィジュアルもお洒落だったし、いい感じにチャラくて、自分が考えてたBボーイそのままだったんですよ。でも、この話はちょっと載せなくてもいいかな……(笑)。

■ええー、大丈夫じゃないですか(笑)。ラッパー、仙人掌のひとつの原点がマイクロフォン・ペイジャーにあったというのは興味深いですよ。アメリカのヒップホップも熱心に聴いてたと思うんですけど、アメリカのラッパーで影響を受けたなと思うラッパーはいますか?

仙人掌:海外のラッパーは、もうほんとに言い出したらキリがないっすね。最初の頃は、いろんな曲をいちどにたくさん聴けるんで、ラジオとかミックステープを聴いてたのは覚えてますね。FUNKMASTER  FLEXとかDJ CAMILOとか、超ヒップホップだな~って。 

GONZ:今の話からつなげると、ヒデオくん(仙人掌)は日本よりアメリカのヒップホップの方が詳しいと思う。かなりマニアックだと思うんすよ。ヒップホップをいまだにディグってるし、俺が新しく知ったヒップホップを、こいつはすでにだいたい知ってるし、MONJUの3人はかなりヒップホップに詳しい。ヒデオくんが影響を受けたラッパーはNASとTAMUじゃなかった?

仙人掌:あああぁぁ(笑)。でも、ぶっちゃけ、NASの『Illmatic』をちゃんと聴いたのは19、20歳ぐらいなんすよね。

GONZ:リリックの和訳を読んで、知的な感じが良かったんでしょ。ヒデオくんは、日本人のラッパーからは影響を受けてないと思う。

仙人掌:いやいやいや(笑)。当時はリリース量も今より少なかったから、日本人のヒップホップはほとんど聴いてましたね。マジでリリックも歌えるぐらい聴いてた。ペイジャーからスタートしてるだけで、リアルタイムでニトロ(・マイクロフォン・アンダーグラウンド)も聴いてましたし。いちばんヘッズだった高校生の頃に渋谷に行くと、ニトロのメンバーが必ずいて、ただただ憧れてましたよ。

■仙人掌くんのラップのフロウを聴いても、DJ slowcurv名義のミックスを聴いても、仙人掌くんがハードな音楽好きだというのは伝わってきますよね。

GONZ:ただのネット中毒なんじゃないですか。

■ははははは。

仙人掌:いやいやいや、最近はちょっと追いつけてなくて、ちょっと諦めてる部分もあるんすけどね。



自分たちのノリやスタイルをわからせたいみたいな気持ちはすげぇあったと思いますね。これでかましてやろう、みたいな感じでやってましたね


■MONJUの作品として2006年に『103LAB.EP』、それから2008年に『Black de.ep』をリリースするじゃないですか。『103LAB.EP』は荒削りなところはありますけど、MONJUとして、仙人掌として、確固たるオリジナリティや独自のスタイルを持って登場したじゃないですか。日本やアメリカのヒップホップを大量に聴きながら、自分たちのスタイルをどんな風に追及していったんですか?

仙人掌:なんすかね。MONJUのメンバーと会う時にすげぇ音楽を聴きまくって、「これがヤバイよな?」「こういうのがイケてるよな?」みたいな確認のし合いと、「俺はこう思う」っていう話をひたすらやってましたね。そうやって、メンバーの波長を合わせてできたのが、『103LAB.EP』と『Black de.ep』だったと思うんですよね。

■他のグループやラッパーができない音やラップを作りたいっていう意識は強かったんじゃないですか。

仙人掌:それはありましたね。自分らなりにこれがイケてるっしょっていうノリを出したかったっていうのはありましたね。『103LAB.EP』が出る前にちょうどSEEDA & DJ ISSOの『CONCRETE GREEN』シリーズが始まったり、MSCとかが出てきたり、新しい世代が盛り上がってきた時代だったと思うんです。それでも、「俺らは絶対これだ!」みたいな感じだったかもしれないっすね。自分たちのノリやスタイルをわからせたいみたいな気持ちはすげぇあったと思いますね。これでかましてやろう、みたいな感じでやってましたね。

■『103LAB.EP』と同じ年に出た『CONCRETE GREEN.2』にはすでに参加してますよね。SEEDAさんに誘われたと思うんですけど、どういう経緯だったんですか?

仙人掌: BESさんから、『CONCRETE GREEN』が出るっていう話は聞いてたんです。ちょうどSCARSが始まる頃で、これはとんでもないことが始まるぞって感じでしたね。SEEDAくんにも会ったことがあったんですけど、でも『CONCRETE GREEN』が始まった時はデモを募集してたから、自分で応募してやりたいぐらいに思ってたんですよ。同じ頃、SWANKY SWIPEのアルバム(『Bunks Marmalade』の“Fake” に参加。『CONCRETE GREEN.2』にも収録)に参加させてもらっていて、その流れもあって、SEEDAくんが「やってくんない?」みたいな感じで誘ってくれたんです。

■SEEDAさんとの最初の出会いは覚えてます?

仙人掌:BESさんのお家にお邪魔した時に、その場にいたことがあったんです。BESさんが僕のことを「こいつもラップやってて、すごいイケてる」ってSEEDAくんに紹介してくれて。最初はお互い敬語なんだけど、やっぱり緊張感があって。で、そんな中でトラックがかかって、そしたら、SEEDAくんが「ラップ、聴きたいっすね」みたいな感じになって、普通にフリースタイルが始まったんです。昔、SEEDAくんが参加してたMANEUVAっていうグループがあったんすけど、そこには〈DNC〉のTAMUくんや、EGUOくんっていうラッパーがいたんです。EGUOくんは、SEEDAくんが彼のことについて1曲作るぐらいSEEDAくんに影響を与えてる人で、ぶっちぎりでヤバいラッパーだったらしいんですよ。で、実は僕はEGUOくんのことを知っていて、フリースタイルで「俺はEGUOくんと一緒に働いてる」みたいなラップをしたら、SEEDAくんが「マジかよ!?」ってなって、そういう出会いから一緒にバトルにも出たりするようになったんです。

■そうなんですね。そのエピソードはかなり興味深いですね。いつ頃ですか?

仙人掌:たぶん2004年とかですね。

■そう考えると、MONJUとして独自のスタイルを磨きながら、SEEDAさんやいろんなラッパーと出会いながら、自分のオリジナリティを形成していった感じなのかなと。というのも、この機会に仙人掌くんの客演、フィーチャリングの曲もできる限り聴き直したんですよ。こんなに客演でラップしているラッパーは他にいないんじゃないかぐらいの量をやってるじゃないですか(笑)。BESさんやSEEDAさんはもちろん、5LACKやPUNPEEやNORIKIYO、B.I.G. JOE、JUSWANNA、RAU DEF、CHIYORI……と挙げればキリがないんですけど、仙人掌くんが印象に残っている客演の曲ってありますか?

仙人掌:ほんとに自分でもすげぇ数やってるなって思うんすけど、もちろんどの曲も自分的には特別ですね。スペシャルな感じですね。うーん、いちばん思い出に残ってるのは、これはすげぇ良いものができたんじゃないかなっていうのは、ISSUGIとやった“New Day”ですね。もし、この質問を訊かれたら言おうと思ってた感じっすね。はははっ。この曲を作った時、いろんなタイミングで、パーソナルなことがあったりしたのもあるし、やっぱりあのビートが最強にカッケーと思うし。だからあの曲は思い入れがありますね。まあ、身内との曲なんですけど(笑)。

◆ISSUGI from MONJU「NEWDAY feat.仙人掌」

GONZ:客演の数があり過ぎるんで、俺もまったく聴いてないやつもあるんすけど、MIC AKIRAとの曲(“Good Sleep”)が気になるすね。いまだに聴けてない。
 
仙人掌:マジで? 俺もあの曲、気に入ってますね。

GONZ:あとやっぱ、NORIKIYOとやったやつだね。

仙人掌:“BAD&GOOD”だ。自分は本当に、与えられた空白をいかにいちばん良い感じの埋め方ができるかっていう、それだけなんですよ。ワン・ヴァースでバズを起こせるラッパーって今なかなかいないと思うし。出てきた瞬間空気変わったって思わせたいですよね。 

■GONZくんが仙人掌くんのキャラクターが素直に表現されてるなって思う曲はあります?


GONZ:すげぇ早いかもしれないけど、CHI3CHEEのアルバム(『PIPE LINE』。2006年リリース)に入ってる仙人掌のソロ曲(“mic test”)ですね。ヒキチさん(CHI3CHEE)は俺の先輩だったし、「レコーディングから手伝ってくれ」って言われて手伝ってましたし、思い出のアルバムですね。時代が早かったし、俺らのこと歌ってるのかなって思うようなヴァースもあったし。

仙人掌:常に仲間のことは思ってるから。

GONZ:まあ、それがないとできない部分があるよね。

仙人掌:うん。

GONZ:ひとりじゃやってないかもしれないしね。ひとりじゃ絶対やりたくないから。

■ひとりじゃ音楽をやってないかもしれないということですか?

GONZ:そうっすね。ひとりじゃないほうが楽しいっすね。

■仙人掌くんにとっても、〈DNC〉にとっても、池袋のBEDはやっぱり大きいんですね。

GONZ:俺もあそこで働かなかったら、〈DNC〉と知り合ってないし、入ってなかったと思います。単純にノリが合って、仲良くなった流れでやってるんですけど。俺はちょうどMONJUが結成されるぐらいの時からつるんでるけど、MONJUはみんな同い年っていうのが重要だったんじゃないかなって思うっすね。

仙人掌:たしかにそれはすげぇある。それは間違いない。同じ世代で、同じ音楽に食らってきてるんすよね。リアルタイムのヒップホップを、同じタイミングで、別の環境で聴いてたりするのは大きいですね。日本語ラップの盛り上がりもそれぞれリアルに感じてきたから。そういうのは自分たちの音楽に反映されてますね。あと5LACKが身の回りに現れて確実に状況が変化していきましたね。これは僕だけじゃなくて、〈DNC〉全員誰も否定できないと思うんですけど、アイツの影響も相当大きいですね。




16FLIPとの曲は揺らぎながらの感じが出てると思うんです。でも、バシバシくるようなハードなトラックでやりたかったというのもあったんです。「うわっ」っていう人はいるだろうなっていうぐらいの気持ちで攻めたかったっていうのはありますね

■そろそろ『Be In One's Element』の話もしたいと思うんですけど、リリックの観点から訊きたかったことがまずあって。1曲目の“Be In One`s Element”の「世界を包むこの色はsadness/このアンブレラで避けてく/黒い雨、皮肉なほど映えるこの表現」というリリックから幕を開けて、“Dawn Da Dirty”のようなドープな曲を経て、10曲目の“Answer(Remix)”の「この雨すら優しさに変える/俺のいまの答え」というリリックで視界が開かれて、クライマックスの数曲でドラマを締めくくる。と、個人的にはそんな聴き方もしたんですね。雨をひとつのメタファーにして、ドラマを作ってるのかなと思ったんですけど、仙人掌くんはそこを意識しました?

仙人掌:うーん、どうなんすかね。自分ではちょっとわからないんですけど……気づいたらリミックス盤に水の音がたくさん入ったりしてましたね。別にそれは狙ったわけではないんです。ただ、雨が降ってても、必ず晴れるっていう考えは潜在的なところではあったかもしれないっすね。

■葛藤をすごく繊細に綴ってると感じたんですよ。

仙人掌:それはやっぱりありますよ。話はずれるかもしれないですけど、自分がラップを始めたのも、“憂い”みたいなものを表現したかったから、というのはあったっすね。

■なるほど。『Be In One`s Element』は光と闇が交錯する作品だなって思うんですよ。


GONZ:いや、けっこうふざけてるっしょ。

仙人掌:ふざけてるっていうのはけっこうありますね。

■でも、ふざけの中に光と闇があると思いますけどね。

仙人掌:そう言ってくれたらありがたいっすね。でも、そういうふうにしか表現できないのかもしんないっすね。

■『Be In One`s Element』は、曲順やアルバムとしての展開やドラマをかなり意識して作ったんじゃないですか?

仙人掌:そこはけっこう考えてましたね。アルバムをトータルでひとつの作品として作りたかったんです。だから、どの曲がシングルっぽいとかそういうのはなくて、その代わりに特典のエクスクルーシヴの曲を一曲で完結してるものとして作った感じですね。

■実際それはすごい伝わって来ました。“Dawn Da Dirty”は内容がいちばんドープというか、あれは心が元気じゃないと聴けない曲ですね。

仙人掌:ははははは。

■あの曲は実体験に基づいて作った曲なんですよね?

仙人掌:そうですね。普通に実体験ですね。何かに依存するのはやっぱり危ないなっていう。何かに依存して、それに必死になっちゃってる姿って周りの人間の目には滑稽に映ると思うんですよ。仕事とかだったら別だと思うんすけど、女でもそうだし、携帯でもそうだし、ドラッグでもそうだし、なんでもそうっすよね。自分もそういうところがあるし、他人を見てても、「こいつ、なんかちょっと依存してるな」って思ったりする時もあるし。

■だから、あの曲の中でテーマにしてることをメタファーに依存についてラップしてるということなんですね。


仙人掌:そうっすね。

■その曲だけじゃないですけど、仙人掌くんのリリックを聴いてると、人や状況を相当観察してるんだなって思うんですよ。描写がリアルで、刺さってくるんですよね。人のことをかなり観察してませんか?

仙人掌:そういうのはすげぇありますね。見てないふりをしてるだけで、見てますね。あはははは。

■しかも、自分の映し鏡として見てる部分もあるように感じるんですよね。


仙人掌:それもありますね、けっこう。

■昔の曲ですけど、MONJUの“whats up Mr.manhole”(『Black de.ep』収録)の、「真っ黒い高級車が脇を通る/俺は99%ママチャリを漕ぐ/朝は甘いコーヒーを飲む/そのあとは苦い現実をフロウ/満員電車、世の中はDOPE」っていうリリックとライミングだけでいろんな想像力を刺激させられるじゃないですか。

仙人掌:日常がいちばん面白いというのはありますよね。昼間の世界は、自分が普段遊んでる夜とはぜんぜん違いますし。

■例えば“whats up Mr.manhole”は2008年の曲で、その頃と比べると、仙人掌くんのライフスタイルや考え方も変化をしていっているんだろうなというのを『Be In One`s Element』を聴いて感じたりしたんです。

仙人掌:それは日々変わりますよね。

 ■“Answer(Remix)”で、「『明日なんてクソくらえだぜ』とかいうことから考えを変える」というリリックもあったりしますし、家族ができたりとか、そういう現実的な生活の変化もありますよね。そういう中で、音楽性が変化するというのもありますか?

仙人掌:もちろん、こういう時代ですし、生きていくために割り切ってやらなきゃいけないこともありますけど、音楽に対しての変化はないっすね。リリックは徐々に変わっていくとは思いますけど、それは当たり前だと思うんです。最初の頃にMONJUで作ってた曲とかは、「明日なんてクソくらえだぜ」じゃないですけど、そういう感じもあったと思うんです。わりと早くに子供が生まれたっていうのもあったし、それだけじゃダメなんだっていうのは、リリックに入ってきてるとは思いますね。

■お子さんはいくつでしたっけ?

仙人掌:小1と5歳ですね。

■けっこう大きいですね。

仙人掌:はい。

■『Be In One`s Element』のジャケにも娘さんの写真が使われてるし、『Be In One`s Element The Remix』の中ジャケではより大々的にフィーチャーされて写ってますよね。

仙人掌:ははははは。でも、外人というか、向こうのCDとかで自分のガキの写真を載せたりするのはけっこう普通だと思うんですよ。日本人はそれをなんでやんないんだろうっていうのがあって。タブーとされてる部分もあんのかなって思ったりもして。作品って、言ったら、記念でもあるじゃないですか。自分や子供が大きくなった時に、「こういうのもあったね」みたいな、それぐらいの気持ちっすね。

■昔のソウルやジャズのレコードのジャケットに家族写真が使われてたり、ヒップホップでもそういうジャケってありますよね。また2人が大喜びしていい笑顔で写ってるんですよね(笑)

仙人掌:「ウケるー」みたいな感じで超笑ってるんすよね。

■たしかによく考えると、自分の娘と一緒に写ってる写真をジャケに使うのは日本ではなかなかないですね。けっこうショッキングかもしれない。

仙人掌:あはははは。ショッキングさも想定しつつ、割り切ってるっていうか、潔くやりたかったっていうか。そんな感じっすね。

■そういうジャケの作品の中に“Dawn Da Dirty”みたいなドープな曲も入ってるというのがいいですよね。
 
仙人掌:あの曲を入れちゃったのはアレだったかなあ。

■でも、それがいいんじゃないですか。家族と写ってる写真を使ってるから、家族愛だけ歌ってるアルバムだったら、ウザくないですか(笑)。

仙人掌:あはははは。それはウザいっすね。

■こういうジャケで、“Dawn Da Dirty”みたいなドープな曲も “Answer(Remix)”みたいなポジティヴな曲も、“Shit,Damm,Motherfucker”みたいなルードな曲もあるというのがリアルでいいなって思いました。

仙人掌:そうっすね、それっすね。まあ、なんかヘタに格好付けてるというか、お洒落にするというか、そういうのよりも当たり前かなって思いましたね。

■“Watch Your Step”に、「チビたちの分まで日銭を稼ぐ/コンビニ弁当買って食べてる/今度の週末までカツカツで」「あくせく働くタトゥー隠して/気安く言うなよ、最高なんて」っていうリリックがあるじゃないですか。あの曲をベロベロに酔っぱらってる時に聴いて、俺、泣いちゃいましたもん。あまりにも生々しくて。

仙人掌:このアルバムに関しては、生々しさはけっこう意識しましたね。「RAW DEAL PROJECT」を始めた時に、俺の音楽を聴いているリスナーにいろんな層や人がいることを、〈CPF〉の人から話を聞いて知ったんですよ。中にはMONJUや〈DNC〉を知らない人もいるっていうのを知って。MONJUや〈DNC〉周辺の音楽の魅力の大部分を占めてるのは、オブラートに包む表現だったりもすると思うんすよ。それでも、俺の名前を知ってくれているって。それで、俺のラップには、いろんな聴き方があるんだっていうのを改めてわかったんです。だから、そういう人たちに、ドン引かれるぐらいじゃないですけど、とにかく自分を出して行きたいなっていうのはいちばん最初に思いましたね。俺がアルバムを作ると言った時に集まってくれた600、700人の人たちが、俺にどんなイメージ持ってるのかはわからなかったけど、でも、「俺はこんなヤツだから」っていうのを出そうって。

■最初に600、700人ぐらいの人たちが「RAW DEAL PROJECT」に投資したわけですよね。それだけの数の人が仙人掌くんの作品を楽しみに待ってるという状況で制作するわけじゃないですか。プレッシャーもかなりあったんじゃないですか?

仙人掌:それは最初に〈CPF〉にも言ったし、「大丈夫かなぁ」みたいなことはSORAくんとかにも言ったりしましたね。でも、「大丈夫だよ」って感じで背中を押してくれて。

GONZ:地方で、3、4人がお金を出し合って買ってるってヤツらもいたらしいっすからね。

■“裏切れない”っていう気持ちと“裏切りたい”っていう気持ちの両方があったんじゃないですか?

仙人掌:そうっすね。ほんとその通りでしたね。だから、トラックに関しても、今までMONJUとかでやってたよう揺れのあるビートよりも、今までやったことのないようなビートでやりたいっていうのがあったんです。

■オリジナル盤は、12曲中7曲がGRADIS NICEで、他の曲が16FLIPのトラックでしたね。GRADIS NICEのメロウで、ソウルフルなトラックが仙人掌くんのドラマチックなラップを盛り立てていて、すごく良かったです。

仙人掌:もちろん揺らぎは常にありますし、16FLIPとの曲は揺らぎながらの感じが出てると思うんです。でも、バシバシくるようなハードなトラックでやりたかったというのもあったんです。「うわっ」っていう人はいるだろうなっていうぐらいの気持ちで攻めたかったっていうのはありますね。だから、リリックの表現に関しても、そういう気持ちで攻めてると思うんです。

■GRADIS NICEにトラックを任せようと考えたのも仙人掌くんだったんですか?

仙人掌:そうっすね。K-MOON(GRADIS NICE)は日本にいる頃にたくさんのトラックを僕に残してくれていたんです(K-MOONは現在アメリカ在住)。それを使って作るって言ってて、いろんなタイミングでぜんぜん作れなくて。K-MOONとはがっつり作りたいなとは思ってたんで、「もらってたトラックを使いたい」って言ったら、向こうから「これを使ってくれへん?」って新しいトラックをくれて。新しいんですけど、メインで使ってる機材が壊れちゃってて、違う機材で作ったトラックっぽかったんです。でも逆に、この時期しかできないトラックだと思うんで、それを使ったら面白いかなって。

■たしかに『Be In One`s Element』で仙人掌くんは、新しいスタイルというか、これまでと違う試みをしてますよね。


仙人掌:自分の音楽を今まで聴いてなかっただろうなっていう人たちが『Be In One`s Element』を聴いてくれてるのが熱いっすね。それはいろんなものが作用してるんだと思うんです。リリックの生々しさみたいなのもあるだろうし、GRADIS NICEのトラックもあるだろうし、いろんな聴き方があると思うんすよ。だから逆に、MONJUとかをすげぇ聴いてたような人たちで、「うわっ」みたいな感じで思った人もいるだろうし、なんかそういうのもいいかなって。正直言うと、〈DNC〉をいろんなメディアだったり、いろんな方たちが取り上げてくれたりするのはものすごくありがたいことだと思う反面、ファッション的っていうか、お洒落イメージみたいなので飛び付いてきてるのをぶっ壊したかったんです。猛烈に。だからイントロもスキットも一切オリジナルに関してはぶっちぎってやろうって思って。「これでどうだ」っていう。ジャケも全部ですね。

■だからこそ、リミックス盤を出す意味もあるのかなと思ったんです。『Be In One`s Element The Remix』が、MONJUとかを熱心に聴いていたリスナーやまた別のリスナー層に訴えるディープなサウンドだなって感じました。リミックス盤を作ろうと思ったのはどうしてですか?

仙人掌: 元々〈CPF〉とサインする上でリミックス盤の発売までを一連の流れにしたいって言う話を頂いていたんで、オリジナル盤の制作に入る前からある程度リミックス盤ではこうしてああして、というようなフロウを頭の中に描きながら並行して進めていったんです。で、エクスクルーシヴ第一弾の“Gipsy Pilot”、第二弾の“Burgundy”って曲もBUDAくん(BUDAMUNKY)のビートで一緒に作らせてもらってるんですけど、それもリミックスまでの壮大な前フリとしてみんなに楽しんでもらいたくて。要するにプロジェクトの頭からケツまでが大きな一括りでつながるように。

■しかも、リミックス盤ではラップを録音し直してる曲もけっこうありますよね。それもあって、本当にまったく別のアルバムになってるんですよね。

仙人掌: 録音し直しているのは、“Be In One's Element”、“Watch Your Step”、“漂流仙人掌”、“NEEDMED”、“Finale”の5曲ですね。今まで自分がジャンル問わず好きで聴いてきた、いわゆる“リミックス・アルバム”って単純にアカペラとか差し替えただけ、ってのがあまりなくって。なんで自分の中では特別変わったことをしたって感覚はなかったですね。

■BUDAMUNKYとNASTY ILL BROTHER S.U.G.Iにすべてのリミックスを任せよう思ったのはなぜですか?

 仙人掌:リミックスまでの流れを考えると、オリジナルはGRADIS NICEと16FLIP、その裏はBUDAMUNKYでっていう、スタイルもサウンドもバックグラウンドも違う三人を結ぶトライアングルが作れたらヤバイなっていうのは真っ先に思い浮かんでたんです。まずなによりも身近で最強に格好良いと思っているビートメイカーですし。かつ、限定の作品と一般流通される作品とで、聴いてくれる人の層とか音色のコントラストみたいなのを考えてもこの面子で作ったら面白いんじゃないかなって思って。そこに加えて、ゴー君(NASTY ILL BROTHER S.U.G.I)は海外のビート・シーンとかでもかなり支持されてきているアーティストで、ビート集やカセットテープで作品をリリースしてたり、活動もすごく面白いんですよ。一周してめっちゃ新しいなっていうか。僕も彼がやっているCOCK ROACHEEE'Zってグループをライヴとかで見ていて格好良いな~って前から思ってたんですけど、「RAW DEAL PROJECT」でいろいろBUDAくんとセッションしたりしてる中で会うことができて。会って話してみたら10代の当時とか熱心にMONJUを聴いてくれていて、ずっとやりたかったって言ってくれて。だったらその流れでBUDAくんと2人でリミックスやってもらうのもすごく良いなと思ってお願いしました。やっぱりこういう人が俺は好きだなって。すごくBボーイなんですよ。芯があるし、冷めた考えとかしないし。今回ラップもしてもらったんですけど、本っ当に心底ヤラれてしまって。“憂い”っつーか……僕の胸に迫るものが彼の音楽や言葉には詰まっていて。本当にゴー君が参加してくれたことでよりディープなモノになりましたね。やってもらってすごく感謝してます。

■僕は、『Be In One`s Element The Remix』は真夜中に合う音楽だなって感じたんですよ。このリミックス盤は、今の時代にダブとかアンビエントを熱心に聴いてる音楽好きも酔わせる深みがあるなって。仙人掌くんから見て、BUDAMUNKYとNASTY ILL BROTHER S.U.G.Iの魅力はなんだと思いますか?

 仙人掌:二人が作る音とかの魅力を僕がいちいち語るのはおこがましいんですけど(笑)……ただひとつ言えるとしたらBUDA君もゴー君も、もっと言うとGRADIS NICEも16FLIPも僕が尊敬してる人たち全員そうなんですけど、彼らの魅力はその人自体が強いメディアになり得る部分かなとは思っていて。やっぱり追求してるし、それぞれがそれぞれのヒップホップなり音楽を深く探り続けてるからこそ発信できる物事だったり、ひとつひとつの行動に意味も強みも説得力も含まれていきますよね。格好いいなって人を辿っていくと、新たに発見したり再発見できる音楽や価値観がものすごくたくさんあると思うんです。DJの話にもつながりますけど、ざっくりそこが他との大きな差というか、それが僕の思うみんなの最大の魅力なんですよね。

■なるほど。なかなかインタヴューを受けない仙人掌くんがここまで語ってくれたということ自体、本当に貴重だと思います。今日はありがとうございました! 最後にラッパーとしてこれからの展望や夢があれば、語ってもらえますか。

仙人掌:僕がラップ始めた頃に抱いてた小さな夢をひとつひとつ今叶えていってる最中ですね。『Be In One`s Element』は、〈CPF〉が制作する環境から販売形式はもちろん、内容に関してもコンセプトを描いた中で作らせてもらって、僕の中でも挑戦した上で最後まで仕上げられたっていうものすごく貴重な価値のある作品になりました。ひとまず次は、改めて〈DOGEAR RECORDS〉からオリジナル・アルバムを作るつもりで動いています。『Be In One`s Element』にフィールしてくれた人もそうでない人も、全員黙らせるようなものにしたいっす。あと最後にここであえて言おうか迷ったんですけど、「RAW DEAL PROJECT」がスタートする少し前くらいから実はリリックを全部携帯で書いていて……ビートに乗せる感覚とか書けるスピードとか、これが全然違くって。〈CPF〉の人にもその話をしたら、「直感的に文字にできるのと、ペンで書くっていう二次的なものとの差」って言われたんですけど。ひと区切りして今はもう紙とペンに戻したんですけど、それがすごく面白くて。次からの作品は基本に戻って紙とペンだけで作ったらどんな風にできるかなって、自分でも楽しみにしているので、みんなにも楽しみにしていてほしいです。



◆二木信 @shinfutatsugi
茨城県生まれ。ライター。たまにDJと酔いどれラップ。ヒップホップやその他もろもろについて執筆活動を展開。共編著に『音の力 ストリート占拠編』(インパクト出版会)『素人の乱』(河出書房新社)などがある。2010年初頭、00年代の音楽を振り返る共著本『ゼロ年代の音楽――壊れた10年』を河出書房新社から刊行予定。
http://www.ele-king.net/writters/futatsugi/

◆DJ GONZ(DOWN NORTH CAMP) @GONZALEStokyo
http://gonzales-dnc.tumblr.com/

Be In One's Element
The Remix CD(Limited)
Be In One's Element
2LP(Limited)
Be In One's Element
CD(Limited)

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