ディスクユニオン ジャズスタッフ 2月度レコメンド・ディスク

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2023.02.28

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




BRAD MEHLDAU / Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008592577


ブラッド・メルドーのソロで最初に聴いたのは、ライブ音源を集めた『10 Years Solo Live』だった。ビートルズの「Blackbird」や「And I Love Her」、レディオヘッドやニルヴァーナにマッシヴ・アタック、ジャズ・スタンダードを交えつつラストに「God Only Knows」と幅広い選曲だが、何せ一曲一曲が長くて重くて暗い上に4枚組である。そもそも『Mehliana』がマイ・ファースト・メルドーで、トリオなどを経ずにここへたどり着いてしまった僕は、メルドーってこんな鬱々としたタイプの人なのか、とある意味正しい印象をその後ずっと抱き続けることになる。
その印象が少し変わったのが2020年のソロ『Suite: April 2020』。メインのピアノ組曲ももちろんだが、「Don't Let It Bring You Down」「New York State Of Mind」のカバーはシンプルにメロディを奏でる美しい演奏で、時世も相まって感傷をさそった。意外性と同時に、思ってたよりソロもいいかも、なんてその当時思ったかもしれない。
新作はソロでのビートルズ曲集。ライブにもかかわらずシンプルで、鬱屈とした部分を感じさせない、これまでのソロ作の変遷を思わせる演奏。真摯にビートルズの楽曲の魅力を伝えるかのようだ。それでもしっかりメルドー味がするのだからすごい。実はビートルズをしっかり通らず、どの曲もあまりピンとこない自分に、そもそもこれを書く資格があるかといえばないのだが…。





PLUME(JAZZ) / Holding On / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008598990


フォントやジャケの雰囲気からして斬新なサウンドの現代ジャズなんじゃないかと先入観をもって見てしまうPlume。ところがこれがアコースティックのコンテンポラリー・ジャズなわけで、そこはストレートなジャズ・ファンからしたら嬉しい誤算なのかもしれない。 ドラムにNYのベテラン、グレゴリー・ハッチンソンを招いた2nd作。ハッチンソンのダイナミクスたっぷりのドラムがリズムに厚みを与えているのだが、前作を聴いていない僕は、ほとんどフラジオを使わず、スピリチュアルなフレーズに持っていかないのに盛り上がるPlumeのプレイに何より驚いた。彼のプレイはテクニカルに聴こえる部分もあまりなく、スムーズにフレーズを繋いでいくような印象を受けるのだが、聴きながら気付けば声が漏れてしまうほどに"歌って"いるのである。速いフレーズを入れるタイミングや長さ、ここぞというところで使うほんの一瞬のフラジオ、そういったソロの抑揚とでも言おうか、そこに優れたセンスが発揮されている。本当はピアノやベースがどんな人か、ハッチンソンの存在がどう作用しているか、なんてことを前作と聴き比べてみたかったのだが、Plumeのあまりの歌いっぷりに感心してしまったのだった。ジャケで避けているのであればもったいない。というか自分自身が割とそうだったかも、と反省しつつ。





林正樹 / Blur the border / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008595484


日々ジャズという音楽を聴いていると、どうしてもアツい演奏、スゴいソロ、斬新なアレンジや目新しいサウンド、といったことを求めがちになる。そういった演奏は確かに面白いし興奮するものだが、一方で、自分が心揺さぶられるのは演奏やアレンジそのものではない、ということも分かってはいて、分かりつつもそうした目立つ要素、派手な部分に耳を惹かれてしまうのである。本作に集った6人はいずれも日本の現代ジャズのトップ・プレイヤーであり、その気になればNYシーンに引けをとらないアツいコンテンポラリー・ジャズも演奏出来るに違いない。しかし本作はほとんどの時間を静謐なコンポジションと穏やかな演奏が占めている。この大河の流れのように大きくゆったりとしたアンサンブルに、日頃のリスニングで忘れてしまっている、音楽の大事な部分を思い出させられるような気になるのだ。





SVANEBORG KARDYB / Over Tage / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008551537


現代ジャズの"台風の目"的なUKのEditionや、米シカゴのInternational Anthemとまではいかずとも、ハニャ・ラニやママル・ハンズ、ポルティコ・カルテットを擁するUKのGondwana Recordsもまた注目に値するレーベルだ。このデンマークから来たキーボードとドラムのデュオはこれがGondwanaへの移籍作。ウーリッツァーやアナログシンセのちょっとレトロスペクティブなキーボードと、様々なアプローチと音色で聴かせるドラムの、ポストロック的メランコリズムを湛えたアンサンブル。アンビエントっぽくもエレクトロっぽくもあるが、この音色の丸みと柔らかな感触は、アナログシンセの生演奏らしいところだろう。至近にセットを並べ向かい合う親密な演奏風景も、彼らの音楽性を表しているようでとてもいい。





ブレンダン・エダー / Cape Cod Cottage / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008582939


2021年のLPリリース時にも話題になった作品が待望のCD化。本作はソロがいいとかインプロ・セッションがあるとかいうこともなく、目新しいサウンドやアレンジということもない。言ってしまえばこれといって何も起こらないのだ。だからアルバムの魅力を具体的に語ろうとするとどうにも難しい。春の陽の光の暖かさとか柔らかさとか、ウキウキ気分で出かける感じとか、そういうただただ「いい雰囲気」だという一言に尽きる。そんなことしか言えないのだがとにかくいいアルバムなのだ。ボーナスのライブ音源も同じように穏やかだが、ライブならではのダイナミクスと温度感も楽しめるので、本編で物足りない方にはこちらが多少合うかもしれない。





BAPTISTE TROTIGNON / Body And Soul / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008607396


ソロピアノ作品をリリースする新興レーベルのタイトルで、ピアノにフォーカスしているだけあって音がいい。音というか、ホールとまではいかないが、しっかり空気感まで録音されているのがいい。よほどこだわりの録音、スタジオなのかと思いきや、元々パリ・パラディ通りのアパートで私的に開催してきたコンサートから生まれたレーベルで、つまりこの録音もアパートの一室でのものらしい。にしては音がよすぎだ。その親密な空間がこのアンビエンスを生んでいるのか、と納得いくようないかないような。さてローンチ4タイトルの中から本作はジャズスタンダード集のような一枚。聴き馴染みある曲だからこそ、奏者のアレンジ・センスやタッチが楽しめるというものである。





ELLA FITZGERALD / Live At Montreaux 1969 / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008577317


2005年にDVDリリースされていた、エラ・フィッツジェラルド(vo)による 1969年モントルー・ジャズ・フェスティバルでの初ライヴ音源という歴史的ステージが、今回初めてオーディオ形式で登場!  後に何度もこのイベントに足を運ぶエラが、トミー・フラナガン・トリオと共にジャズ・スタンダードと現代ヒット曲を網羅するセットリストです。ディオンヌ・ワーウィックやクリーム、ザ・ビートルズなどバラエティ豊かな展開で、この時52歳、向かうところ敵なしのエラが音楽史に残した名歌唱をぜひお楽しみください。





CAROL WELSMAN / Fourteen / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008601337


カナダはトロント生まれのベテラン、キャロル・ウェルスマン(vo, p)による 2022年作品。ギター、ウッドベースを率いたトリオ編成を基軸に、全12曲のうち半分にドラマーが参加しています。あたたかく優しい声でジャズ・スタンダード中心に歌い上げ、オリジナル(#9)も披露。「音楽は、私たちが日々感じている無数の感情を癒すのに不可欠なもの」と語るキャロルが丁寧に織り上げた一枚で、小気味のいいバッキングと歌声が絶妙にマッチした、とっつきやすいジャズ・ヴォーカル盤となっています。





MELLISA ERRICO / Out Of  The Dark - The Film Noir Project / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008620008


『マルタの鷹』『ローラ殺人事件』といった、1940-1950年代後半にハリウッドで盛んに作られた暗く不穏な映画ジャンル "フィルム・ノワール" をテーマに、マンハッタン出身のメリッサ・エリコ(vo)が綴る2022年作品。舞台、映画、そして歌とマルチに才能を発揮し「比類なきコンサート・パフォーマー」と名高いメリッサが新たな解釈で表現力豊かに、高い完成度の作品集として結実させています。ジャケの洒脱な雰囲気はそのままに、真摯に歌の一曲一曲と向き合う姿が眼前に浮かぶような心のこもった歌唱が味わえます。同時入荷のルグラン歌集『Legrand Affair - The Songs Of Michel Legrand (Deluxe Edition)』もぜひチェックを。





MELLISA ERRICO / Legrand Affair - The Songs Of Michel Legrand (Deluxe Edition) / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008620006


ルグラン・ファン垂涎の逸品!  マンハッタン出身のメリッサ・エリコ(vo)による2011年のミシェル・ルグラン楽曲集に、貴重なボーナス12曲を追加しトリビュートとして発表したデラックス・エディション。ルグラン(1932-2019)が音楽を手掛けたブロードウェイ・ミュージカル『Amour』でエリコは主役を務め、2002年10月20日から17回の本公演と31回のプレビュー公演を経て閉幕までを完走しルグランと親交を深めました。2011年にルグランが彼女のために作曲、アラン & マリリン・バーグマン夫妻が作詞したナンバーを含む15曲をブリュッセル・フィルハーモニックと共に録音したDisc1に加え、ルグランの死後発見された当時のデモ音源、ルグランの未発表楽曲やルグランとバーグマン夫妻が最後に共同制作した楽曲の初録音、ラッセル・マローン(g)参加曲など、計12曲を収めたDisc2が付属しています。





フレッド・ハーシュ&エスペランサ・スポルディング / アライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008582593


天才音楽家2人の戯れ。近年はアカデミックな探究でも話題をさらう天衣無縫のEsperanza Spaldingがウッドベースを置いて歌に専念し、現代シーン屈指のピアノ詩人Fred Herschと奇跡のタッグを組んだデュオ作品。2018年10月19-21日の3日間、毎晩全く異なったパフォーマンスになったという三日三様(6ステージ)の記録からベストな8トラックを集めた、現代ジャズ・ヴォーカルの大注目作品です。親密なムードでリラックスしながらも究極の集中をみせる 2人の演奏は、まるで子どもたちが無邪気に遊んでいるかのよう。はちゃめちゃに難しいことを涼しい顔で、なんてことなくやってのけているんだろうな……と思わず遠い目になってしまいました。ヴォーカルファンはお聴き逃しなく。





ELSA JOHANNA MOHR / Passadinha - Jazz Thing Next Generation Vol. 96 / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008598840


ドイツ語圏の若き才能を紹介する、DOUBLE MOONレーベルの好評シリーズ≪Jazz thing Next Generation≫ Vol.96より、デュッセルドルフ出身でブラジル音楽に惚れ込んだ若手エルザ・ヨハンナ・モール(vo)が、デュオの相方であるブラジル出身のフラビオ・ヌネス(g)とともにボサノヴァの名曲からショーロ、自作ポルトガル語曲を軽やかに歌い上げてデビューする一枚が登場。全10曲中4曲(#2, 5, 9, 11) がオリジナルで、作詞作曲はモール、アレンジは共同で行ったとのこと。アンニュイかつリラクシングな雰囲気が広がる今季の注目作品です。






LUCIEL / From Outside / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008582906


ドイツ発のソウルファンクバンドが到着。ソウルファンクと一口に言っても、ジャズの要素はふんだんにある、今流行のポップスと言ってもいいかもしれません。ファンク黄金期のサウンド味を残しながら現代AORだとかポップのながれを上手ーくミックスさせている感じがハートウォーミングで個人的に好み。あでも聴き続けていると若干ブライアン・ウィルソンを思い出すかな。ジャンルを超えて活動するジャズヴォーカリスト、ルース・ヨンカーも参加しています。ジャケデザインが目が回るようなデザインなのでどんちゃかしてるのかと想像しがちなものの内容は好内容ジャズファンク作品です。





AVISHAI COHEN (BASS) / Sensitive Hours / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008600547


アヴィシャイ・コーエンが歌う…!?本アルバムは2008年にイスラエルのみでリリースされたヴォーカルアルバムが15年の時を超えて輸入&国内盤とともにフィジカルリリース。それ以前ではオーソドックスなモダンジャズ、近年のアヴィシャイでは2021年の『Two Roses』からフルオーケストラでの編成のイメージが板についていて、Two Rosesの時で「長年構想を練りこんでいた」とインタビューで語っていたのでヴォーカルのイメージがあまりないアヴィシャイですが2008年にすでにフルオケと更にヴォーカル作品を出していたとは。イスラエル・トラッドの香りを現代ジャズにいい塩梅で練りこんでいて、異国ファンタジーがバチバチに感じられる素敵な作品です。しかもアヴィシャイ、めちゃめちゃ声がいいんですね。クレジットをよく見たらドラムはマーク・ジュリアナが。自身のルーツの原点に返って改めてリスペクトをささげている一枚。今後のイスラエル・ジャズシーンの見方が変わってくるかも。





ADAM BLACKSTONE / Legacy / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008607408


2月の音楽業界の話題トピックの1つとして上がるのは毎年恒例の『グラミー賞授賞式』ですよね。当店スタッフも毎年わくわくする話題でございます。ベーシスト及びマルチ奏者、音楽プロデューサーであるアダム・ブラックストーンも今回名が上がってまして、第65回(2023年)グラミー賞では本アルバムの「'Round Midnight (feat. Jazmine Sullivan)」がノミネートされていました!というかこのアルバム、参加アーティストがとんでもなくて(要チェックです!)、まさにブラックミュージックシーンの綺羅星しか集めていないようなアルバムです。どモダンな内容というよりか、ニューチャプタージャズの色が土台として濃く出ていて、最先端のブラックミュージックをここで改めて聴けるんじゃないかなと思います。





PETER BROTZMANN & KEIJI HAINO / Intellect given birth to here (eternity) is too young (4LP BOX) / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008554493


BANDCAMPで聴いて「これは買いだ!!」と瞬間的に思ったレコード。灰野敬二さんとペーター・ブロッツマンの完全なDUO作品は1996年のPSF作品以来となる。LP4枚組にアートプリント付のボックス仕様(ダウンロードコードは付いていない)は物欲をそそる。灰野さんの唯一無二な世界にブロッツマンの演奏は激しくブローしまくるだけでなく、お互いの間やギターやヴォイスに対しての反応がとてもスリリングだ。若干残念なのは再生はできるのだがどうしても盤ソリが見られることか。





LAURENT COULONDRE / Trip In Marseille / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008607397


フランスからParadis Improvise(即興の楽園)という新たなレーベルが立ち上がった。この十数年おなじみのピアニストから日本ではあまり知られていないピアニストまで、ピアノソロに焦点を当てた作品が登場。
1回目は4作品が発売されどれも素晴らしい。中でもローラン・クーロンドルの作品は特にセンスの良さが光る。フランスらしさも感じられる独特な空気感を漂わせるタッチは深みがあり、ミシェル・ペトルチアーニやチック・コリア、スタンダーズのどれも新たな解釈で見事なまでに自身の作品に仕立て上げる。





FRANCOIS TUSQUES / Free Jazz(LP) / JazzTOKYO 山本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1007463542


再入荷ですが、この再発の存在を知らなかったため紹介させていただきます。タイトルこそ"FREE JAZZ"というものの、今の感覚で聴くと耳馴染みの良さと緊張感が良い塩梅でミックスされており、2023年、多くの人の愛聴盤になり得るポテンシャル有りという印象です。そしてついつい廃盤の話になりますが、オリジナル盤は極めてレアで、美品となるとそうそう出て来ないですよね。肝心なブックレットも柔らかい紙質で、ビシッと残存していることも少ない印象。ジャケ違いで当時の日本盤も出ているようで、こちらも全く見ません。当店買取大歓迎です!





Luz do Sol /  雨あがり / 吉祥寺ジャズ館 立石
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008597882


平田王子(vo,g)、渋谷毅(p)によるLuz do Solの通算5作品目。ここに「At The Room 427」、「Earth Mother」などで知られるマルチリード奏者の松風鉱一が5曲参加しているのが嬉しい。平田さんのゆったりとした歌に渋谷さん、松風さんの郷愁漂う演奏が楽しめます。平田さんのオリジナルからジョビン、カターノ・ヴェローゾ等々のカバーが収録されており、全編を通して一つの作品が完成されているように聴こえます。これから温かくなっていく時季に最適な音楽です!





JOHN ZORN / New Masada Quartet, Vol. 2 / 新宿ジャズ館 久保田、営業部 三橋
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008596925


今から約30年前、映画『Thieves Quartet』のサントラ録音を契機に集まったゾーン、デイヴ・ダグラス、グレッグ・コーエン、ジョーイ・バロンの4人によってマサダが結成されました。クレズマー音楽をモチーフにしながらオーネット・コールマンとドン・チェリーの2管カルテットを彷彿とさせる編成で大いに人気を博し、DIWからデビューするや4年間に10タイトルをリリースするほどの勢いを見せます。その後も、95年に設立されたTZADIKからライブ盤がリリースされていったほか、マサダは、マサダ・ストリング・トリオ、エレクトリック・マサダ、「The Book of Angels」シリーズ等へと派生し、一大プロジェクトとなっていきました。
2019年、ゾーンはその大本となったマサダのメンバーを一新し、ニュー・マサダ・カルテットを始動させます。ゾーン自身の参加はもちろんのこと、現代最高のギタリスト(であると同時にTZADIKの常連でもある)ジュリアン・ラージの参加が耳目を集めました。その1stアルバムが2021年末にようやく登場し、このたび順調に2ndのリリースに至りました。単独でも大いに楽しめますが、DIW盤の演奏と聴き比べるなど、ゾーンの膨大な仕事に分け入っていく良い機会ともなることでしょう。
ちなみに、デジパックに記載されたケネス・ゴールドスミスの再帰的なライナーも良かったです。(新宿ジャズ館 久保田)


今年のTZADIKリリース作品の中でも屈指の1枚になりそうな予感。四の五の言わず聴くべし。以上。(営業部 三橋)





KOSMOS TRIO / Brev Til en ven / 吉祥寺ジャズ館 中村
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008570868


デンマークから、フリード・ホルガー・トーセン(p)、グスタフ・ハーゲルスケアー(ds)、ハラル・ハーゲルスケアー(b)が結成したピアノトリオのデビュー作品が届きました。まだ20代であろう3人のミュージシャンが、これほどまでに人生の喜びや悲しみを包みこんだような成熟した音楽を作れるものなんだろうか、と驚きました。(かろうじて若さを感じることができたのは、キノコのオブジェに座っているシュールなジャケットでしょうか。)ティグラン・ハマシアンやアヴィシャイ・コーエンあたりを感じさせる複雑なリズムと、ESTやトルド・グスタフセンを思わせる即興演奏、そしてメランコリックとリリシズムが合わさった美しくて壮大な北欧ピアノトリオ作品です。





DON CHERRY / Live at Théatre Récamier - Paris 1977 (LP) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008587309


ここ数年立て続けに未発表音源が発表されるドン・チェリーですが、今回の作品も秀作です。
個人的な感想としては2020年発売「Om Shanti Om」に似た雰囲気が好印象です。
ドン・チェリーとナナ・ヴァスコンセロスが発生させる磁場が音楽を決定づけている様に感じます。
電子音楽家ジャン・シュワルツ、フレンチフリー/モダンのリヴィングレジェンドのミシェル・ポルタル、ポルタルとの共演が多いジャン・フランソワ・ジェニークラーク、この3人との組み合わせの異質さに思わず目が向きますが、ドン・チェリーとナナ・ヴァスコンセロスが生み出すこの世にありそうで無いワールドミュージックの素晴らしさを味わう為のアルバムではないかと思います。





ジョン・F・スウェッド / 宇宙こそ帰る場所──新訳サン・ラー伝 / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008592510


SUN RAファンなら1家に1冊必携です。
旧訳版「サン・ラー伝」を入手し損ねていた僕らには非常に嬉しい刊行です。
旧訳版は廃版で、そもそも定価が高く(2011年発売税抜6,200円)、近年は中古市場で価格が高騰していました。
サン・ラの伝記としてはこれ1冊といっていい状況でもあり(湯浅学/てなもんやSUN RA伝は面白いですが正統派伝記ではないので)、新訳廉価版(といっても4,378円税込で書籍としてはしっかりした製本です)をSUN RAファンに広く買って読んで欲しいです。





DAVE LIEBMAN (DAVID LIEBMAN) / Lost In Time, Live At Smalls / 新宿ジャズ館 四浦
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245766921


昨年の1月にYouTubeでニューヨークのジャズ・クラブ、スモールズのライブ・ストリーミングを見た。ジャズの進化は、さまざまの枝葉に分かれ、今に至っている。その中の一つがまさにそこにあった。ジャズという語彙を用いた、実に自由なインプロヴィゼーションによる音楽の対話が繰り広げられていた。その模様を録音したのが本作となる。考えうるベストなミュージシャンが集められたとはいえ、このようなセッションをいとも簡単に生み出していると思うと、各ミュージシャンのテクニック、集中力は本当に恐ろしい。

Dave Liebman - soprano saxophone, Peter Evans - trumpet, Leo Genovese - piano, John Hebert - bass, Tyshawn Sorey - drums





JOHN HOLLENBECK / LETTER TO GEORGE /  新宿ジャズ館 有馬
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008609555


コンテンポラリージャズ界において孤高の前衛精神を20年以上貫き通すドラマーJohn Hollenbeckのニューバンド『GEORGE』のデビュー作。
グラミー賞にもノミネートされたLarge Ensembleでの共演もあった即興サキソフォニストAnna Webberに加え、数年前に話題になったヴォーカルプロジェクト『Isis Giraldo Poetry Project』の別名義である『Chiquita Magic』の参加と、ニューオリンズを拠点にトラディショナルサウンドを実験的に再構築するAurora Nealand(sax,vo etc)の3人を迎えての予想不可能なカルテット。
前衛ヴォーカリストtheo bleckmannとの長年に渡る実験によって蓄積した「声」のノウハウを用いながら、聴き易さを問わず、様々な志向が交錯する空間が見事にオーガナイズされています。
個々がもつ表現者としての幅を考えると、今後いつものパターンでプロジェクトも拡張されるのではと感じます。続編が聴きたいです。





JOSE JAMES / On & On / 新宿ジャズ館 田中
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008608998


タイトル曲On & On収録のBaduizmにはじまりNew Amerykah Part Two: Return Of The Ankhに至る1997年から2010年に発表されたアルバムからErykah Baduの代表楽曲をJose Jamesがカバー。
オーセンティックなNeo Soulからビート感の強い楽曲までバラエティに富んだセレクトで楽曲毎の個性を活かし、歌い上げるJoseのヴォーカル。
Ebban DorseyとDiana Dzhabbarの若手サックスプレイヤーを起用し、フレッシュさと共にJharis YokleyとBen Williams、BIGYUKIによるリズムやフレイジングが全体をうまくまとめ、現代ジャズアルバムとしての雰囲気をしっかりと漂わせる好作。





BRENDAN EDER / Therapy / 営業部 三橋

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008614649


名作「Cape Cod Cottage」が国内盤CDでも発売され注文度高まる音楽家ブレンダン・エダーの最新作。1stアルバムでのAphex Twinカバーを拡張したような内容で、アンビエントワークスあたりを聴き続けてきた方にも楽しめるアコースティック・アンサンブル作品です。木管の柔らかな響きと教会での広がりのあるリバーブの相性といったらまさに至福の音浴体験。FESTIVAL de FRUEあたりでの来日を希望!!

彼の日本初?となる貴重なインタビューも必読です。
https://www.oto-tsu.jp/interview/archives/10170





Some Kind Of Wisdom / FRUIT DISTRO COLLECTIVE / 営業部 池田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008594037

自分たちの幼少期からの音楽体験を生まれたばかりの息子にも…という思いから制作がスタート。ベースはジャジー・ヒップホップな感じですが、とにかくジャズ、ヒップホップ、アフロビート、ソウル~ファンクと要素盛りだくさん、ごった煮の音楽英才教育アルバムです。幼少期からこのアルバムを聴いて育ちたい人生でした…全体的に暗いムードの楽曲がないので、個人的には暖かくなってくる(と信じたい)これからの季節のお供にしたいアルバム。