ディスクユニオン ジャズスタッフ 9月度レコメンド・ディスク

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2023.09.29

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




COUNT BASIE / In Concert / 吉祥寺ジャズ館 山脇
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008715093


1962年の絶頂期を捉えた、コペンハーゲンのLIVE音源が収録されている。
VERVE、ROULETTE等と親しみが深かったが、楽団特有の自由で活気と開放感に満ち溢れた軽快かつ重厚なサウンドは健在で、今回はSteepleCheseに色付けされたサウンドをフレッシュな感覚で堪能する事が出来る必聴の1枚である。





Live In Paris / HORACE SILVER / 吉祥寺ジャズ館 山脇
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008713467


60年代前後を代表する、おなじみの2管編成とは一変し、テナーにベニー・モウピン、トランペットにランディ・ブレッカー、ドラムにビリー・コブハムが参加しており、関心が高まる1枚である。陽気さとエキゾチックさが共存したシルバーのタッチにも注目したい。





Brandon Sanders / Compton's Finest / 吉祥寺ジャズ館 中村
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008710340


2000年代初頭に活動をスタートし実力派サイドメンとしてNYでキャリアを積んできたブランドン・サンダース。本作にも参加している旧友のヴィブラフォン奏者のウォーレン・ウルフに声をかけられ、52歳にして待望のデビューアルバムをリリースしました。メンバーはクリス・ルイス(ts)、キース・ブラウン(p)、エリック・ウィーラー(b)にジャズメイア・ホーン(vo)がゲスト参加、スタンダードナンバー6曲にオリジナル曲2曲が収録されています。デビューアルバムにありがちな「いっちょやったるで」という肩に力の入った派手な華やかさの代わりに、軽やかで成熟した大人の演奏をたっぷりとじっくりと聴かせてくれる良作です。選曲もアレンジも文句なし。特にアルバム名でもあり2曲目に収録されている「コンプトンズ・ファイネスト」は、様々な問題を抱えている自身の故郷の町をセレブレイトした力作です。





ブライアン・ブレイド / Kings Highway / JazzTOKYO 羽根
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008676361


Prime Videoで配信となったウェイン・ショーターの2023年ドキュメンタリー映画”ZERO GRAVITY"を観た。ウェイン・ショーターという特別な芸術家の人生が各一時間、三話で見事にまとめられており感心した。時折挟まる曼荼羅アートのようなアニメ・CGにクラクラしながらも、特にショーターの宇宙人的な異質感、楽理を超えた正体不明な魅力を伝える秀逸なドキュメンタリーだった。そしてショーターの人生に関わる様々な人物が次々と登場する中、同じくらいの異質感、なんじゃこりゃ感を醸し出すのが終盤に登場するブライアン・ブレイドである。映像で観る彼は立ち姿からして異質である。そしてドラムを叩き出したら…誰にどう教わったらこんなドラマーになるのか?かっちりと構成された楽曲にあくまで直感的に反応、大きなうねりの中から閃光のように迸るパッション、”ニューアーク・フラッシュ”ならぬ”ニューオリンズ・フラッシュ”楽器は違えど現代のジャズ・シーンで最もショーターのイズムを受け継ぎ、伝えていく存在であろう。本作は2018年録音のフェローシップ七作目となり、バンドの熟成極まった傑作。





DINNER PARTY (TERRACE MARTIN / ROBERT GLASPER / 9TH WONDER / KAMASI WASHINGTON) / DINNER PARTY + DINNER PARTY:DESSERT "CD" / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008710366


Love Supreme Jazz Festival、ディナー・パーティーが出演した今年は行けなかったのだが去年は行った。ヘッドライナーはグラスパー。トリオ+DJの編成で、ソロも歌もたっぷり聴かせるステージング。来日公演が復活しつつあった2022年の春。何年かぶりのライブ、秩父のロケーション、グラスパー、最高の演奏。色々な要素が重なって忘れ難いものになった。「Freeze Tag」も演ってくれて、涙があふれそうなほどジンときたのだった。
カマシのテナーに始まり、テラスのサウンドメイクと、グラスパーのピアノ、9th Wonderのビート、そしてPhoelixの歌声が甘くとろける1stアルバム。先ごろリリースされた2nd『Enigmatic Society』よりもメロウで、家族や友人と過ごすディナー・パーティーのリラックスした雰囲気そのもの。ラッパーやシンガーが入ったリミックスは"デザート"とは言うものの、メインディッシュのように濃厚だ。
日本に暮らしていると忘れてしまうが、2020年のリリース当時はBLM運動が盛り上がっている時期でもあった。ディナー・パーティーはそれに呼応する側面も色濃い。でもそれはまた今度でいい。カマシのサックスにほっこりして、グラスパーのピアノにジンときて、音に身をゆだねてチルアウトする。それでいいと思う。





CHIEF ADJUAH(CHRISTIAN SCOTT) / Bark Out Thunder Roar Out Lightning / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008718769


アフリカからカリブを渡ってアメリカ大陸に辿り着いた人類の旅。クリスチャン・スコット、改めチーフ・アジュアーの新作は、その旅を逆に辿ったグレート・ジャーニーである。もはやトランペットすら持っていないのは、それが西洋音楽理論に基づいた楽器だから、ということなのだろう。本作の旅は、ジャズひいてはアメリカ音楽のルーツを探求する、音楽の歴史において大きな意味を持つものだ。その志を目の当たりにすると、これはジャズだ、ジャズじゃない、なんて線引きや議論はあまりに不毛に思えてくる。





KAISA'S MACHINE / Taking Shape / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245771922


グレゴリー・ポーターやエスペランサをサポートしているティヴォン・ペニコット(ts)、ハンコック・コンペで準優勝、SteepleChaseからリーダー作もリリースしているマックス・ライト(g)、ジェイムズ・フランシーズ、マーカス・ギルモアを招いたリーダー作をリリースしているサシャ・ベルリナー(vib)、ジョン・エリスやギラッド・ヘクセルマンをリーダー作に招いたイスラエル出身のエデン・ラディン(p)、カートやシーマス・ブレイクとの共演歴のほか、トニー・ベネットとレディー・ガガの『Love For Sale』にも参加しているというジョー・ペリ(ds)、と現代NYの強力な若手が集結した、フィンランド出身、NY在住のベーシストによるグループの最新作。メンツだけでも期待出来るが、内容も純粋にカッコいいコンテンポラリー・ジャズ。ご注目ください。





後藤雅洋 / ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門 / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008715950


本書で選盤された200枚は主に3つに分けられます。(1)新世代ジャズ/JAZZ THE NEW CHAPTER系、(2)2000年代以降録音作品、(3)発掘音源・復刻ものです。これらは2016年以降に後藤さんがUSEN放送で取り上げたアルバムから選ばれており、7年に渡る年月がこの1冊に凝縮されていると言っても過言ではないでしょう。頁をめくるにつけ、私自身いーぐるに足を運んで過ごして来た記憶が蘇るところがあります。例えば2018年の年末イベントで聴いたチック・コリアの『トリロジー2』、壁の額縁に入れて飾られていたペトルチアーニの『One Night in Karlsruhe』。本書はいーぐるが歩んできた日々の一断面を惜しげもなく投影した非常に贅沢な一冊なのです。
一つ入門者の方に断っておきたいと思ったのは「現代ジャズ」は現在のジャズを包括するわけではないということです。(a)ストレートアヘッドジャズ、(b)美メロ系ピアノトリオ、(c)王道ヴォーカル、(d)テクニカル系フュージョン、(e)フリー/アヴァンギャルド系の現行アーティストはこの括りから外れる傾向にあります。ごく一例を挙げれば、(a)エリック・アレキサンダー、スコット・ハミルトン、(b)ヘルゲ・リエン、ティングバル・トリオ、(c)ダイアナ・パントン、シリル・エイミ、(d)マイケル・ランドウ、(e)Pi Recordings、Intakt系の人物は本書にはほぼ登場しませんが、それは「現代ジャズ」が現在進行形のジャズの中の一握りにすぎないからです。ジャズの世界は多様で混沌としており、知れば知るほどにその豊かさに驚かれることでしょう。





ALAIN JEAN-MARIE / Castles in The Sand / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008705151


オーストラリア出身で現在はフランスを拠点に活動するシンガーのジョディ・スタンバーグとフランス領グァドループ出身の名ピアニストであるアラン・ジャン・マリーのデュオ・アルバムです。これが本格的なデビュー作にあたるとは思えない熟達した歌い回しに驚かされました。哀愁と寂寥感の通底する中に一語一語ニュアンスを込めながら丁寧に歌い上げ、抑制的なピアノ伴奏と抜群の相性を見せます。一聴して地味な印象を与えるかもしれませんが、これは優れたヴォーカル作品ですね。
彼女は元々バークリーでサックスを専攻した後にシンガーへ転身したそうです。自己名義のアルバムこそリリースしてきませんでしたが活動歴自体は長く、本作を契機にオーストラリア出身の優れたヴォーカリストたちの中に名を連ねていってほしいですね。





大友良英 / Otomo Yoshihide Solo Works 1 Guitar and Turntable / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008706437


大友がこの即興録音を残す契機となったのは遠藤ミチロウ、エンケン、坂本龍一らが亡くなったことです。優れたミュージシャンたちがこの世を後にしていくに際し、自分の原点となる即興作品を残そうと決意しました。そこには現在の自身の演奏に対する自信もあったと言います。実際、大友の近年作に私は目を瞠るばかりでした。例えば、クリス・ピッツィオコスとの『Live in Florence』、山崎比呂志との『ライブ・イン・ヨーロッパ2016』、マッツ・グスタフソンとの『タイミング』といった優れたデュオ即興作品を挙げます。そのどれもが当たり前のように店頭に並んでいることに狂喜しながら働いてきましたが、なお本作の内容は期待を上回るものでした。阿部薫やデレク・ベイリーに惹かれ、高柳昌行に師事した青年の到達地点が本作です。フリー、ノイズ、即興好きな方は決して見逃さないでください。





JONNY WICKHAM / Terra Boa / JazzTOKYO 古澤
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008705158


ロンドンを拠点とする、作曲家でベーシストのジョニー・ウィッカムの最新作。#1から「Mono no Aware」と来たので少し身構える内容かと思いきや、然にあらず。音のベースにあるのは大らかなブラジル音楽、サンバありボッサあり、時折女性ボーカルが様々な楽器とのユニゾンでしなやかなメロデイーで絡んで来る。心地良いサウンドと緻密なアンサンブルで最後まで楽しませてくれます。タイトル曲の「TERRA BOA」はポルトガル語で「美しい地球」の意、冒頭の#1で提示した日本の「侘び寂び」の考え方(「質素な趣があると感じる心と時間の経過によって表れる美しさ」)を、自身の思い入れが深いブラジルの自然へ向き合う姿勢と重ね合わせたかったのでしょうか。何か爽やかで親しみ深い余韻を感じるアルバムになっています。





JONATHAN SUAZO / Ricano / JazzTOKYO 古澤
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008700814


大リーグでの選手の活躍で、プエルトリコ/ドミニカの名は知るものの、歴史やルーツに関しては今だ遠い国。なのにそのリズムには腰が動き、メロデイには心が揺れる。そう、カリブ音楽にはそんな力が溢れている。本作はボストンで活動するサックス奏者、ジョナサン・スアゾの最新作、自身のルーツの伝統的なリズムに焦点を当てた作品。全編、パーカッシブなリズムとともに、本人のアルトのメロディアスなソロや艶のある女性ヴォーカルが聴ける。冒頭#1は、アフロ・カリビアンな雰囲気にアンサンブルとの調和も気持ち良いナンバー。一転、#7「ここからはじまる」はヴォーカル先行のバラッド、#8「我々はまだ戦い続ける」への楽曲の流れで、カリブの歴史を感じさせてくれる。バラエテイに富んだ10曲、カリブ海へ誘われてる様な感覚を覚える1枚。





MIRE3 / Island Song / JazzTOKYO 速水
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008705148


千客万来ノープロブレム。知人が訪ねてきた時のためにこの素敵なアルバムを手に入れました。早く他人に聴かせたくてしょうがないです。これはそんな気持ちにさせるピアノトリオ作品。聴いた人が僕のセンスを褒めてくれないかとも期待してしまいます。生活のあれこれをしながら聴いても邪魔にならず、友人とコーヒーを飲んでいるときに流しても良し。じっくりとひとり向き合えばうっとりします。リーダーでピアニストのヨーナ・トイヴァネンはフィンランド出身。そのせいか北欧特有の翳りをまとった美しい音楽が詰まってます。スカンジナビア半島の民族音楽的要素が盛り込まれているのが影響しているのかもしれません。北欧はミステリーやインテリアに負けないくらいジャズも存在感がありますね。





akiko / ジャズを詠む / JazzTOKYO 速水
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245772295


誰かに本を読むというのはとても優しい行為だと思います。少なくとも僕は子供の頃大好きでした。おそらく今ジャズボーカルを聴くのはその代替行為なのかもしれません。akikoさんの歌声は昔から大好きでしたが、キャリアを重ねて益々心に染み入るようになりました。先日このアルバムが流れているときにお客様とお話しする機会がありました。「歌声変わった?」とおっしゃってましたが同好の士というのは嬉しいものです。セレクトした曲はジャズビギナーから耳の肥えた長年のファンまで楽しめる内容になっています。伴奏の海野雅威さんはあの理不尽な事件にも屈することなく音楽活動を続けていらっしゃる。そんなお二人が届けてくれたこの作品は受け手にとても特別になる。今宵もこのCDをセットして彼女にジャズを詠んでもらいます。





竹内直&市川秀男 / SYMBIOSIS / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008700061


竹の音がする。日本で川嶋哲郎と双璧をなすテナーマン竹内直の新作は、ピアノの巨匠市川秀男との贅沢なデュオ・ライヴ盤。こじつけの掛け言葉ではなく、文字通り竹の音がするのだ。ぶるぶる震える倍音豊かな基音と減衰時のかすれ加減が尺八を想起させるいえばいいのか。ライヴを観た後、竹のリードを使ってるんですか?と真顔で訊いてみたかったがアホな酔っ払いと自覚してやめた。演奏技術は高いのに誰なのか判別困難な個性希薄な優等生奏者がもてはやされる世界的風潮の中、即座に誰とわかる唯一無二の音を持つ稀有な存在である。本作は選曲も幅広く海原のように奥が深い。リピート再生しながら飲む酒は淡麗辛口の普通酒、土佐鶴。併せて盛大に薬味をのせたカツオのたたきがあれば極楽だ。まだ間に合う。ライヴに行こう。お気に入りの音楽家が活躍し、自分が生きているうちに。





ジェイミー・ブランチ / Fly or Die Fly or Die Fly or Die ((world war)) / JazzTOKYO 菅原
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008699800


昨夏、多くの人々に惜しまれながら、若くしてこの世を去ったトランペット奏者/作曲家ジェイミー・ブランチ。一年の時を経て、その遺作がついに完成した。彼女のファースト・アルバム『Fly or Die』は、題から受ける印象そのまま、飛翔するか、さもなくば死といった危険かつ絶妙なバランス感覚の傑作であった。ファーストのみならず、彼女の作品にはそのほとんどすべてに「Die」という単語を含む題が用意され、同じように危険な疾走を試みている。そして本作を通して我々は、そうした彼女の狂気にも近い〈飛翔〉への渇望、その行き着く先を、ついに目撃することとなったのだ。それは無論、技術的にどうこうとか、〇〇の影響が〜とか、そういう表面的な議論だけでは片付けられない、音楽を超えた音楽である。——ジェイミー・ブランチは死んだ。しかし、それは果たして彼女が〈飛翔〉に失敗したことを意味するだろうか? 寧ろ彼女は〈飛翔〉したのではないか? いずれにせよ、現代のジャズファン、音楽ファンを自称するなら必ず聴いておくべき一枚である。





DARIO PICCIONI / Hortus Del Rio / JazzTOKYO 菅原
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008709392


伊ローマ生まれのジャズ・ベーシスト/作曲家ダリオ・ピッチョーニが、自身の3作目となるアルバムを地元のインディーレーベルであるFilibusta Recordsよりリリース。トランペット奏者アントネロ・ソレンティノをフィーチャーし、ジャズを主軸としつつも、ブラジル音楽/映画音楽等の要素も盛り込みながら独自の音世界を提示した良作。聴いていて衝撃を受けるようなガツンと来る斬新さ/真新しさというよりは、所謂良質なコンテンポラリー・ジャズといったところ。アートワークの奇抜さから若干身構えたくもなるが、中身は別に得体の知れない異物とかではないので安心されたし。





トヌー・ナイソー / For Now And Forever / JazzTOKYO 西川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008700270


弊社が「澤野工房」のLP化シリーズを発表し売手として少し意表を突かれた感じだったが沢山あるカタログの中から何が発売されるのか楽しみだ。第二弾はエストニア出身トヌ・ナイソーの1枚がセレクトされているが自身の1981年ロシア・メロディア時代の作品をオマージュ、ジャズ・スタンダーズも演奏した作品だ。現代ピアノ・トリオの息吹を吹き込んだような新たな解釈やメロディーセンスが良く、久々に聴き返してみて新たに感激できたアルバムだ。





STAN SULZMANN / On Loan With Gratitude / JazzTOKYO 西川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008721632


1970年代中期のUKジャズはモダン、フリー、ジャズ・ロック、フュージョン等様々なスタイルが影響しあい、一時代を築いた時期だった。その後レゲエ、ヒップホップ・DJカルチャーの影響を経てここ10年くらいは新世代UKジャズとして勃興。イギリスにもアメリカとはまた違った流れがあり楽しみが感じられる。この2枚組CDのDISC 1の(1)~(3)が1977年にBBCケンジントン・ハウスで録音されたグラハム・コリアーのレーベル、Mosaic Records/GCM772としてLPで発売されたものだ。Disc1の(4)~(6)とDisc2は1974年、1975年にロンドンのスタジオで録音された未発表音源。スタン・サルツマンのワンホーン・カルテットでジョン・テイラーの「覚醒」のメンバーとロン・マシューソンのベースが参加。モーダルな演奏からキーボード、シンセも多用したジャズ・ロックなどUKジャズならではの音が詰まった注目の復刻です。





MATTHEW HALSALL / An Ever Changing View / 吉祥寺ジャズ館 田口
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245773424


マシュー・ハルソールはイギリス・マンチェスターを拠点に活動するトランペット奏者、作曲家、DJ、プロデューサー。Gogo penguinを輩出したレーベルGondwana Recordsの創設者でもあります。アリス・コルトレーンやファラオ・サンダースを踏襲したスピリチュアルジャズのエッセンスと、エレクトロニカな音響の効果が見事にブレンドされた作品。ハープやカリンバを使用した独自のオーガニックなサウンドが素晴らしいです。ジャズファンには勿論、ロックやソウルが好きな方にもおすすめです!心地よいサウンドでかなりチルアウトできます。リラックスしたい時に是非。





JOHN RAYMOND / Shadowlands / 新宿ジャズ館 四浦
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008700779


ボニヴェア(Bon Iver)はジャスティン・ヴァーノンによるソロ・プロジェクトとしてはじまった、アメリカのインディ・フォークのバンドだ。このバンドの中心メンバーの一人としてドラムを叩くのみならず、サポート・ボーカリストとしても活躍するのが、ショーン・キャリー(S. Carey)である。彼自身、リーダー作をリリースしており、2022年に発表した「Break Me Open」に参加したのがジョン・レイモンドであった。そんな二人の関係が本作を発表するきっかけとなったことは容易に想像できるだろう。ジョン・レイモンドが今までリリースしてきた作品群やショーン・キャリーの作品群の内容が上手にブレンドされた本作は、楽曲群のバランスもそれを反映したものとなっている。インスト曲とボーカル曲の対比や、楽曲におけるインプロの比率(アーロン・パークスがプレイするピアノが肝となっている。)など、どれをとってもジョンとショーンの関係が濃密に影響し合っている、新たなアメリカン・ミュージックの方向性を持った注目の作品となっている。





ジョシュア・レッドマン / ホエア・アー・ウィー(SHM-CD) / 新宿ジャズ館 四浦

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245773438


ジョシュア・レッドマン。これからも続く彼の音楽歴の中で、代表作に数えられるであろう大作を完成させた。「アメリカに対する賛美と批評」というコンセプトのもと、フィラデルフィアであればカートが、シカゴであればジョエルが、ニューオリンズであればニコラスがといった具合に、それぞれの出身のミュージシャンをゲストに迎えたりと、「広大なアメリカ」、「それぞれの都市の個性」、が一国を築あげるように、様々のミュージシャンの個性が「ジャズ」をキーワードに一つの新たな音楽を創造している。ガブリエル・カヴァッサのヴォーカルをフィーチャリングした、バンドサウンドは現在進行形のジャズのまさに集大成だ。





KEIJI HAINO/JIM O'ROURKE/OREN AMBARCHI / EACH SIDE HAS A DEPTH OF 5 SECONDS A POLKA DOT PATTERN IN HORIZONTAL ARRAY A FLICKERING THAT MOVES VERTICALLY / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008289523


灰野敬二を音響系フリー・インプロヴァイザーとして見た時、その美学と信念に貫かれた唯一無二の音に圧倒されてしまう。
今作を言葉で説明するなら、ドローンとかミニマルとかノイズとかアンビエントとか色々言葉を並べたてることは出来るが、今の灰野敬二の音と溶け込めるJIM O'ROURKEとOREN AMBARCHIによる貴重なコラボレーションと言える。
彼らの共作はこれで11作だが、決して「安定」とか「気心の知れた」共演ではなく、スリリングでありつつ相性良く溶け込めている様が素晴らしい。





PAN AFRIKAN PEOPLES ARKESTRA / Live at IUCC 6/24/79 (2CD) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008668625


Horace Tapscott率いるP.A.P.AのLive at IUCCシリーズ第三弾。
旧盤「Live at IUCC」は1979年2〜6月のライブ録音から選んで1枚にまとめてるが今作は1979年6月24日のライブ音源2CD。旧盤収録曲の"Many Nights Ago"、"Noissesprahs"も収録されていて勿論良いが、32:49に及ぶ力演"Village Dance"も各メンバーの実力が遺憾無く発揮された熱い演奏で素晴らしい。
ただ、1曲目"Jitterbug Waltz"はアンサンブルが幾分雑だったり、ベースのライン録りされた音が強調されすぎてダサさが否めないので後回しにて聴くことをおすすめします。





BAIKIDA CARROLL / Orange Fish Tears / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008702239


Black Artists GroupのBaikida CarrollとOliver LakeとNana Vasconcelosが集まり、フレンチアヴァンギャルドのパイオニアJef GilsonのPALMレーベルから発表した作品と聞いただけで、ただ事で済まないだろう事は火を見るより明らか過ぎる訳です。
実際聴くと、特にNana Vasconcelos磁場が強力なんでしょうね、魔術的にと言うかDon Cherryが言うところのOrganic Musicの様にと言うか、多彩な色彩を持って音楽が広がりをみせて行きます。素晴らしい化学反応!





BlankFor.ms - Jason Moran - Marcus Gilmore / Refract / 新宿ジャズ館 有馬
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008700780


カセットテープを切り貼りしてループ&劣化させ、さらにエフェクトを掛けることでインスタントカメラのようなテクスチャーを獲得し、シンセも用いて世界観を語るという特異なスタイルのBlankFor.ms。
そんな技法由来のテクスチャーと密接な「アンビエント」というジャンルと、現代ジャズのトップ・インプロヴァイザー、Jason Moran とMarcus Gilmoreの出会い。つまりクラスターの異なる本職同士という出発点の違いがミソです。
基本的にはループやシンセに対して2人が影響を受けて呼応するスタンスですが、ノッキングすることもなく、異文脈に対して技法が自然な形で受容していきます。
個人的には9曲目『Eighth Pose』での、短いリフを据えて広がりを見せる曲構造や、3人のソリッドな立ち回り、エフェクトの循環などは一つの達成のように感じます。
同時にまだ色々できそうなので、ツボな組み合わせなだけに第二弾が出ないかなぁと思います。





YUSSEF DAYES / BLACK CLASSICAL MUSIC (LP VINYL) / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 小谷
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008669923


隆盛をみせるUKジャズ・ムーブメントの重要アーティストのデビューアルバム。参加プレイヤーの豪華さたるや、ジャズにとどまるだけでなく、EUの新旧ブラックミュージックをモダンに解釈し、それでいてポップ。2023年おすすめの名盤トップに入ること間違いありません。





GREG FOAT / Feathers / 商品部 池田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008725184


今やイギリスを代表するキーボード奏者のグレッグ・フォートが、フィンランドの大御所サックス奏者イーロ・コイヴィストイネンとのコラボ作。前回の《JAZZAGGRESSION》からのリリースにも参加したアレクシ・ハイノラも参加、コイヴィストイネンとは意外なコラボとも思いつつ、せっかくフィンランドを拠点にするレーベルからのリリースですから感謝の一言です。今回も期待を裏切らないフォート節で浮遊感のあるメロウ・ジャズを届けてくれます。残暑が厳しいと噂ですので、これをお供にもう少しの間は”チル”してみては。