ディスクユニオン ジャズスタッフ 9月度レコメンド・ディスク

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2022.09.30

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




ANTONIO SANCHEZ / SHIFT (BAD HOMBRE VOL. II) / JazzTOKYO 羽根

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008499966


当代随一どころか、もはや史上最高のドラマーの声すらある。ジャズ・ファンであればパット・メセニーやピエラヌンツィのバンド、自身のマイグレーションでの大活躍は言わずもがなだろう。やはり彼の最大の転機となった作品は、2014年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の映画スコアだと思う。話題となったワンカット風撮影やマイケル・キートンの演技もさることながら、この全編ドラム・ソロによるサントラが凄かった。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と同じメキシコ出身ということも起用の一員となったであろうが、結果的に大正解。彼のねっとり嘗め回すようなドラムは映像、演技に一体感を没入感をもたらし、あのスコアが無いと映画の印象が一変しかねない決定的な仕上がりだった。一介の優れたドラマーに留まらず、総合的な音楽家・表現者として世界でも指折りの存在であることを証明し、2017年の『BAD HOMBRE』では更にドラムソロの表現を深め、トランプ政権に対する社会的メッセージまでも込めるという驚異的な、前人未到の境地に達したのだ。それから5年後、『BAD HOMBRE』の続編としてリリースされるのが本作『SHIFT』である。前作とは打って変わり多数の豪華ゲストを加え、音楽世界は更に彩りを深め、さながら万華鏡の如き傑作だ。私自身は普段こうしたジャズではない音楽(この言い方からして感性が古い)を好んで聴くことも紹介することもないのだが、アントニオ・サンチェスの新譜ともなれば話は別だ。感性の鋭い若者は放っておいても聴くのだし、私のようなゴリゴリのジャズ原理主義者が間違って買ってしまうのを期待して本盤を絶賛してみた。ジャズじゃない!などと怒られても良いので、まずは買って聴くべし。





JAKOB DINESEN / UNCONDITIONAL LOVE / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008517645


ジャズにおいて、ドラムという楽器がいかに重要かということを思い知らされる一枚だ。デンマークのヤコブ・ダイネセンが最新作に迎えたのは、マルサリス兄弟やケニー・カークランドら、"新伝承派"世代のリズムを担ったドラマー、ジェフ"テイン"ワッツ。本作の肝はまさしく彼。グルーヴとかテクニックがすごいとかいう話ではなく、スネアの一打、ライド、バスドラ、どれひとつとっても音の説得色がすごいのである。そこには巧みなダイナミクス・コントロールと、それを余すことなく聴かせるドラムの録音の良さも寄与している。テインが素晴らしいドラマーであることは今さら言うまでもないが、おかげさまでほかの楽器の演奏を聴くのにもう一周必要になるのである。





JASON MORAN / LOOKS OF A LOT / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1007659902


近年はアート界隈ともコラボレーションしているジェイソン・モラン。本作は彼の作品の中でもちょっと異色である。シカゴのケンウッド・アカデミー高校のブラスバンドに、ゲストの音楽監督として招かれ制作した作品で、編成を見ても明らかだが、これはジャズ・ビッグバンドではなくマーチング・ブラスバンドなのだ。ドラムラインによるリズムがとにかく強烈かつ強力で、ジャズ的な耳にはなかなかに新鮮。モランが追求したダンス・ミュージックとしてのジャズと前衛性が、ブラスバンドでもしっかり表現されている。近年はニューオリンズのジョン・バティステが活躍、2018年のコーチェラ・フェスで世界を圧倒したビヨンセの歴史的パフォーマンスも全編でマーチング・ブラスバンドが入っていて、俄かに話題に上がるマーチングバンド。本作の録音は2017年だが、これは先見の明というよりも、ビヨンセと同様ブラック・アメリカンの歴史に目を向けたものだろう。





MARCO PACASSONI / LIFE / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008522154


はっきり言おう。これはジョン・パティトゥッチとアントニオ・サンチェスの演奏を楽しむためのアルバムだ。いまさら経歴を持ち出すまでもない、最強、最高の2人であることは言わずもがなであるが、一時期はチック・コリア・トリオとして共に活動していたこともあり、本作での再タッグは多少なりともそれが意識されているのかもしれない。全編ストレートなアコースティック・トリオというわけではなく、曲によってパティトゥッチがエレクトリックも持つあたりはアコースティック派には惜しいところだが、フュージョンライクな構成であろうが2人の演奏は凄まじい聴きごたえ。ラスト2曲、それぞれ8分の即興セッションも、身震いするほどの妙技を存分に味わえる。反面、主役のヴァイブ/マリンバはほぼ後景化してしまっているのだが、まぁこれほどの2人を迎えたトリオともなればそれも致し方あるまい。それにしてもこの2人の歌いっぷりは尋常じゃない。





ヨハンナ・リネア・ヤコブソン / アローン・トゥギャザー / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245762288


1991年デンマーク生まれで現在はスウェーデンを拠点とするアルトサックス奏者/SSW、Johannna Linnea Jakobsson(vo, sax)。リネアという別名義ソロ・プロジェクトでも活動しつつデンマークとスウェーデンのジャズシーンでキャリアを築き、この度デビュー盤となる本作がリリースの運びとなりました。ジャズのアコースティックで即興的な要素と、シンプルでポップなコンポジションが融合したクロスオーバーな音世界に溶け込むような、ヨハンナの軽やかで切ない、繊細でどこか翳りのある歌声。優しく研ぎ澄まされたアルトサックスの音色と共に、美しい贈り物として抱きしめたい傑作です。





テレサ・ブライト / Blue Skies / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008507078


ハワイアンとジャズの幸福な融合!  ハワイ州カネオヘの SSW であり、日本で特に高い人気を誇る Teresa Bright(vo, ukulele) による極上ジャズ・スタンダード作品がボーナス・トラックを加えてついに CDで登場!  これまで日本国内のみでのリリースも多く、日本の数々の CMソングで歌唱を手掛けたことでも知られているテレサが 2020年に配信のみでリリース、その後 ALOHA GOT SOUL から LP もリリースされた『Blue Skies』。CDは出ないのか……!? とやきもきされた方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、ご安心ください!  ついについに満を持してリリースの運びとなりました。歌心あふれる最高の癒しヴォイスでジャズスタンダードの名歌をリラクシーに歌いあげる本作、美しいジャケ画もテレサの作品とのことです。 ヒーリング・アルバムとしても一級品の要注目作品、ぜひ聴いてみてください。





ベニー・ベナック・III / A LOT OF LIVIN' TO DO / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008517259


NYジャズシーンで人気のベニー・べナック・III(tp, vo) が豪華メンバーと吹き込んだ 2020年発表の 2nd作が、ボーナストラック 2曲追加で日本初 CD化!  ヴェロニカ・スウィフト (vo on #3)、アリタ・モーゼス (vo on #8) も参加した彩り豊かな一枚となっています。ヴェロニカとの『Social Call』は MVも Youtube配信されていますが、2人の卓越した歌唱力と子どものように音楽を楽しむ姿がハッピーな気持ちにさせてくれます。ぜひチェックしてみてください。ボーナスはベニーのオリジナル『Double or Nothing』と マイルスの『Milestones』を日本限定収録。





JOSHUA REDMAN, BRAD MEHLDAU, CHRISTIAN MCBRIDE, BRIAN BLADE / LongGone / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008525248


前作『Round Again』から約2年・・・。この多忙であるでしょう現代ジャズシーン最前線メンバーでのカルテットの新作が2年という短いタームでリリース。もう説明不要の素晴らしさです。前作のリリースが2020年。パンデミックのド真ん中でのリリースでそこからこの2年の中で我々は様々な外的影響があったのですが、それをジャズという言語で表現。たくさんの想いを詰め込めた模様。ポリリズム的な演奏、学者らしい威勢のよさ。それらの要素に忠実であり続けながらこのカルテットを続けている彼らは、ある意味慰めにも似た何かが確かに存在しているんでしょう。
バンドリーダーのジョシュア・レッドマンが語る記事には「正直、メンバーは最前線のひっぱりだこのミュージシャンで長い間一緒にできないと思っていた、でもみんなが一緒に是非とやりたがっていた。短い間だったとしても彼らと一緒にバンドをやれたことは本当にラッキーだった」と記されていて、本当にそうなんだろうなとも思うし、現シーンの最高峰にいるミュージシャンたちが90年代以降それぞれの活動を通して得てきた成長と成熟したサウンドで生まれる素晴らしいサウンドがここに届けられているのはありがたいこと。





秩父英里 / CROSSING REALITY / JazzTOKYO 関口
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245762410


現代日本の若手ラージアンサンブルコンポーザーを代表する人物としてパッと思いつくのがピアニスト&作曲家・挾間美帆が挙げられるのだが、今回でデビューアルバムを飾る秩父英里はポスト挾間美帆といってもいい存在でしょう。ノネット編成をはじめ弦楽器やマリンバを取り入れたアンサンブル、小編成のバンドなど自己プロジェクトによる表現を行うほか、ビッグバンド等のジャズアンサンブル、とにかく曲を恐れ知らずに“書きまくる”彼女の曲は一つの楽曲の中に様々な表情とシーンを見せてくれます。NYからのゲストミュージシャンと日本のアンサンブルが得意なミュージシャンで鳴るエネルギーをどうか感じ取っていただきたい。





V.A. / クワイエット・コーナー ウィンドフォール・ライト / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245762143

“クワイエット・コーナー”。毎回人気のこのシリーズ。それもそのはず内容はハズレなしの好内容。ジャズボーカル~ブラジルMPB~アルゼンチンフォルクローレの系譜から選りすぐりのナンバーが収録されているんです。個人的にはジャズよりもワールドカラーが強いシリーズなんじゃないかなとは思っているんですが....。2022年夏作もやっぱりアタリでした!サンサンと降り注ぐ太陽、爽やかなそよ風感じる、且つインティメントな楽曲が盛りだくさん。前回はぬくもりある、キラキラした可愛らしいサウンドものが多かった気がしますが。ノスタルジックな夏の風景が思い出される華々しい雰囲気。海のさざ波音を聴きながらこのアルバムを聴きたい(笑)今年の夏はどんな夏でしたか。





JOY ELLIS / PEACEFUL PLACE / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008501682


ロンドンを拠点にヴォーカリスト/ピアニストとして活躍するジョイ・エリス。今作はヴォーカルをとらず、全編でピアノを披露したピアノトリオ作品。前作も、華やかでどこか不思議な透明感を持った作品だったけれど、今回はその純度がぐっと増していて、清らかで上品な静かな空気を纏い、北欧ジャズのにおいも感じられる気がする。ヴォーカリストとして活躍する彼女ならではの歌心ある演奏やそれにそっと寄り添うバッキング、そして美しくつかみどころのないフレーズが散りばめられていて、まさにジャケットに写る、鏡のように透き通った水面を持つ湖のある“どこか”へ連れて行ってくれる。空気は澄んでいて少しひんやりしているけれど、地面からはじんわりと温かさが伝わってくるような、夏の忙しさや疲れを癒してくれる、セーブポイントのような作品。





チャールズ・ステップニー / STEP ON STEP / JazzTOKYO 荒川、渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 金子

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008516114


EW&F、ラムゼイ・ルイス、もしくはCADETのテリー・キャリアーなどなど、多くの名盤をプロデュースしてきたチャールズ・ステップニー。折しも自宅の地下で4トラのテープ・レコーダーに多くの曲を録音していたというが、それらをまとめたのが本作。いうなればYNQを25年先取りしたメロウ・ジャズ・ファンクである。リズムボックスにあわせてエレピを乗せていくのはシュギー・オーティスのようでもあるし、6曲目なんかはほとんどブラコンである。そして、地下室で一人これらのマテリアル作っていた姿は、いまDAWで音楽を作っている多くのプロデューサーとも姿が重なるだろう。まったくもって現在でも有効な、素晴らしいローファイ・ソウルを彼の新作としてぜひ楽しんでほしい。(JazzTOKYO 荒川)


まさに「原型」という言葉がぴたりと当てはまる数々の曲たち。チャールズ・ステップニーと聞いてピンとくる人もこない人もこの自宅の地下室で録音されたとされる楽曲から感じる言葉は「発掘」ではないだろうか。決して完成されているわけではない隙間の多い楽曲の中に輝く原石。世界を揺るがせる貴重音源のリリースだ。(渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 金子)





DANIEL AGED / You Are Protected By Silent Love / JazzTOKYO 荒川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008527669


インディR&Bを追いかけているリスナーの間ではInc. No Worldの活動で認知されているだろう、ダニエル・エイジドの2nd。ダニエルもベースで参加したサム×2コンビのアルバムにも連なる、ローファイ化したニューエイジ・アルバムだ。ハイ落ちしたECMとでもいえばいいのか…。ほぼ一人で作り上げたというインフォに違わず、音は終始プライベートなムードである。リズムトラックは最小限に抑えられ、感傷的なペダル・スティール、シンセがふわふわと…。この内容から、和製アンビエントの嚆矢にもなった鈴木良雄『MORNING PICTURE』を想起させるところもあるだろう。夜、部屋にひとりで所在なく過ごしているときにはこれを聴きましょう。





大友良英  / Out To Lunch (2LP) / JazzTOKYO 山本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008530899


大友良英がONJO名義で2005年に『Out To Lunch』を全曲リメイクした作品が初アナログ化。森山大道によるスナップ写真、大編成での演奏、唸る低音などアナログで映える要素が盛りだくさん。『Out To Lunch』という大金字塔を日本人ミュージシャンが2005年にどう再構築したのか、色々考えながら現在の耳で腰を据えて聴く。もし当時小学6年の自分がこれを聴いていたら好きになっていたか。なっていないだろうな。このタイミングで出会えて良かったです。こうなると本田珠也、菊地成孔たちが2021年に『Ascention』を演奏した『Re:Ascension』もいつかレコードで聴きたい。その頃にはまた別の感性を持って音楽を聴けるか。案外先は明るい!





ファラオ・サンダース / アフリカ・デラックス・エディション(2CD) / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008509530


先日ファラオ・サンダースが亡くなった。1960年~70年代激動の時代を体験された往年のジャズリスナーやスピリチュアル・ジャズの盛り上がりでジャズを聴くようになった若いリスナーまで魅了したアーティストの一人だ。猛烈な吹きっぷりに熱く心を打たれた方も多いだろう。普段追悼で音楽を聴くことはほとんど無いのだが、何か聴いてみようと思い引っかかったのがこの作品。1987年に発売された「アフリカ」にデラックス・エディションとして未発表音源を3曲追加収録したものだ。名曲(1)からファラオ節が炸裂!!ジョン・ヒックス・トリオも全般素晴らしいサポートで盛り上げてくれるオススメの一枚だ。





山本剛 / BLUES FOR K / 新宿ジャズ館 久保田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245762192


山本剛トリオがTBMの録音を手掛けたエンジニア・神成芳彦氏と再タッグを組んだ最新アルバムです。録音は神成氏のプライベートスタジオ雷庵で行われました。タイトルでもある「BLUES FOR K」の「K」は神成氏の意。小気味よい大隅・香川のリズムと情感豊かな山本のタッチが交差する様が実に愛らしい。国内外で愛され続ける山本剛の魅力を知るに充分な1枚です。選ぶならM5「But Not for Me」。山本のソロは緩急が効き、大隅のドラムが臨場感たっぷりによく鳴っています。喝采を浴びせたくなる本作のハイライトです。
CDのパッケージも的確に思います。緑黄黒白の4色に絞りながらカバーアートに青赤(茶)を差しているのが粋で、雷庵のある那須やトリオの生命力を連想させます。透明トレイの向こう側にカバーアートが拡がっているのも洒脱で良いですね。





TAMARA STEFANOVICH / SDLW / 新宿ジャズ館 久保田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008510510


現行アバンギャルド・ジャズ・トリオDell-Lillinger-Westergaardがセルビア出身のクラシック・ピアニストTamara Stefanovichと共演した1枚。クラシック・レーベルのBastille Musiqueからリリースされ、録音もベルリンのテルデックス・スタジオで行われました。
テルデックス・スタジオのホールは19世紀後半に作られたダンスホールを改装したもので、面積455m²、高さ8mを誇り、豊かな残響と空間性を備えています。メンバーは口を揃えてこのレコーディングに対する手応えを語りました。エグゼクティブ・プロデューサーでもあるリリンガーはいいます。「このアルバムは最先端の録音技術を駆使して、このユニークなカルテットを表現することを意図したものでもあります。私たちの音楽スタイルの複雑さと密度を、その多面的な相互作用の巨大なエネルギーとダイナミズムを示すような形で捉えることが目標でした。……レコーディングは本当に素晴らしいものでした。テルデックス・スタジオの空間性は素晴らしく、私たちの音楽の可塑性、サイズ、パンチ力を完璧に伝えてくれます。」
録音・内容ともに優れたアバンギャルド・ジャズ作品です。その音に驚嘆し、目を見張りました。

※参考動画
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=5UMYaUyck1o&feature=emb_title





MOLLY MILLER / ST. GEORGE / 吉祥寺ジャズ館 中村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008516388

この作品を聴くまで存じ上げなかったアメリカのギタリスト、モリー・ミラーの自主制作盤です。サーフロック、トラディショナルジャズ、カントリー、60年代ラウンジミュージックなどの要素を取り入れた、爽快で魅力的なオリジナル曲が収録されたトリオ作品で、アメリカ南部のからっと乾いた感じとか哀愁だとかほどよい緩さだとかが、季節が変わり空が高くなってきた最近の空気感とマッチしていて非常に気持ち良いです。ディック・デイルとビル・フリゼールを足して2で割ったようなサウンドの、良質アメリカン・ギター作品です。





稲垣次郎とソウルメディア - Woodstock Generation / 吉祥寺ジャズ館 立石

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008537106


69年猪俣猛と共にウッドストックへ赴き、従来のジャズと決別して新しいスタイルを模索した結果、<稲垣次郎とソウルメディア>は多くのジャズロック、ファンク、ソウル作品を残していくことになります。「Woodstock Generation」はソウルメディア2枚目にして弩級の作品。「Opening」からそそられるドラムで始まり、徐々に各楽器が強烈に飽和していきます。そして、2曲目のジョニミッチェル作「Woodstock」の重苦しい展開へと流れる構成は何度聴いてもたまりません!Sly And The Family Stone、The Who、Ten Years After等がウッドストックで演奏した曲のカバーはもちろん、特にB2「The Ground For Peace」、B3稲垣次郎オリジナル「Head Rock」は大名盤『Head Rock』(3作目)へ力強く、そして着実に脚を踏み出しているような演奏に感じれます。荒々しい<稲垣次郎とソウルメディア>の初期衝動を感じれるウッドストックトリビュート作品となっています。





LAUFEY / Everything I Know About Love(LP) / 横浜関内ジャズ館 山田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008511617

アイスランド、中国にルーツを持ち、現在はボストンを拠点に活動するSSW、Laufey(レイヴェイと発音するようです)の1stフル・アルバムです。ミニ・アルバムが局地的に話題になっていましたが、満を持してのフル・レングスとなります。歌はつややかなアルト・ヴォイス、楽器はギターにピアノ、チェロまで演奏し、現在バークリー音大在学中と、あまりにハイスペックな彼女。それに加えて古いスタンダードを深く研究しているのが手に取るようにわかる、この作曲力にはまさに脱帽です。現代的なポップさ加えながら、オールドな形式の自作曲を彼女ならではのセンスで披露します。これから確実に話題になること間違いなしです。気になる方はお早めに。






JULIAN LAGE / View With A Room  / 横浜関内ジャズ館 山田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008517008


ギター好きの皆様は必聴となるであろう、ジュリアン・レイジ新作です。なんと9曲中7曲でビル・フリゼールが参加した、(ほぼ)ツイン・ギターの作品。前作からいい意味で変わらないジュリアンのグループに、絶妙な塩梅でブルージーなフィーリングを盛り込むフリゼール。かなり前の作品ですがマーク・ジョンソンの『ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング』という作品でもフリゼールがツイン・ギターで客演していましたが(ちなみにもう一人はパット・メセニー)、それとはまた違ったアプローチのツイン・ギターになっており、フリゼールの引き出しの多さと懐の深さを再認識しました。そんな中、硬くならず堂々と自身の演奏を貫くジュリアンのプレイも必聴。長い付き合いになりそうな一枚です。





チャーリー・ヘイデン&ハンプトン・ホウズ / アズ・ロング・アズ・ゼアズ・ミュージック(UHQCD) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245759922

この1976年録音作品のCD化は1993年仏Verve盤以来振りで、かつ日本初ではないだろうか?非常に価値あるCDリイシューです。
まだ前衛的ベーシストの印象が強かった頃のヘイデンと、自らのキャリア後期で抒情性の高いホウズの演奏の相性がバッチリです。
個人的なヘイデンのデュオアルバム2強は、As Long As There's MusicとGitaneなので、次はGitaneのCDリイシューを期待しています。





TERRI LYNE CARRINGTON / NEW STANDARDS VOL.1 / 新宿ジャズ館 有馬
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008537629


以前からジェンダー問題に高い関心を持っていたTERRI LYNE CARRINGTONが、女性アーティストによる作曲を集め、NEW STANDARDSと題してシリーズで発表していくようです。
同じジャズミュージシャンとはいえ、演奏スタイルもコミュニティもバラバラな作曲者と演奏者をここまで交渉した彼女の影響力とモチベーションを感じます。
個人的に刺さった「ニュースタンダード」はCARLA BLEYの誇る名曲『LAWNS』。
KRIS DAVISの呟くような打鍵とMATTHEW STEVENSの心象的なギターの両翼が、さざ波のように空間をワイドに広げ、LINDAとCARRINGTONのリズムがその中央を厳かに推進する。
そこに溶け込むような揺らぎでSAMARAが訴え、RAVIがその波に寄り添う。
この儚くも美しいシンプルなアレンジは、この曲に対して存在しなかったアプローチでした。
KRIS DAVISやMATTHEW STEVENSのような、いまやゴリゴリのコンテンポリストの妙技と言えるタイム感に枠取られた見事な一曲です。





MAKAYA MCCRAVEN / In These Times(LP) / 新宿ジャズ館 田中
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008513563


話題となったBlue Noteからリリースされた前作を経て、彼の持ち味であるビートメイクのみでなく、より重厚で深みのある楽曲が並ぶ一枚がリリース。
Jeff Parker、Junius Paul、 Brandee Younger、 Joel Ross、 Marquis Hillら現代Jazzシーンを牽引するアーティストが参加。
彼らのアンサンブルから生み出させる音楽は、70s Modal、Loft Jazzシーンにも似たメンタリティーを感じる事が出来る佳作!





SAMARA JOY / LINGER AWHILE / 新宿ジャズ館 四浦

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008536187

2019年の「サラ・ヴォーン・インターナショナル・ジャズ・ヴォーカル・コンペティション」で優勝、ニューヨークはブロンクスのゴスペル一家の血筋をひいた深みのあるヴェルヴェットのような声とそのスキルは名プロデューサー、マット・ピアソンを動かし、パスカーレ・グラッソ(g)ら、彼女のスタンダーズのヴォーカリーズといったオーセンティックなスタイルを、完璧にサポートするメンバーを集め、制作したWhirlwind Recordingsでのデビュー・アルバム「Samara Joy」は衝撃を与えた。時を待たずしてメジャー・レーベルでのデビューとなった彼女。前作を踏襲してパスカーレ・グラッソ(g)を中心に、ベン・パターソン(p)、デイヴィッド・ウォン(b)、ケニー・ワシントン(ds)ら名手を再び、マット・ピアソンが纏め上げ、名門ヴァーヴより発表されたのが「Linger Awhile」である。「カスタードのようにリッチな歌声」(NYタイムズ)、「静謐で悠然な音楽」(NPR)など各誌、絶賛の嵐である。





HANS REICHEL / Bonobo Beach / 営業部 三橋
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008527971

自作の改造ギターやダクソフォンを発明した即興演奏家ハンス・ライヒェルが81年に発表した名作がCORBETT VS DEMPSEYの手により初CD化。ガラス細工のような繊細で透き通った音色やパーカッシブなアプローチなど到底ギターで奏でているとは思えない驚きと心地良さがあり、「即興演奏って小難しいんでしょ?」という方にこそどっぷり浸っていただきたい作品。個人の猪突猛進した妄想や想像が物事の捉え方を変えてしまうこともあるなと考えさせられます。





DOMi & JD BECK / Not Tight  / 営業部 池田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008517005


名門ブルーノートとアンダーソン・パーク×ユニバーサルの新レーベルと契約したバークリー音楽大学出身のキーボード奏者ドミと10歳でドラマーとしてのキャリアをスタートさせたというJDベックのデュオ。Z世代らしくSNSへの動画投稿でそのキュートなルックスと卓越した演奏のギャップが注目された2人で”ジャズ界でもそんなこと起こるんだ…”なんて思ってしまったのが正直なところでしたが(小声)、それを裏切らないスキルを持ってるのでそういう経緯や話題性のある部分だけで斜めから見ず、こちらとしてはハービー・ハンコックとの「MOON」、カート・ローゼンウィンケルとの「WHOA」だけでも聴いてみてから判断してほしい1枚。


下記はTwitterに載せてるオスカー・ピーターソンのソロをコピーするドミの動画。

笑顔のリプしてるカート・ローゼンウィンケルも含め要チェック!

https://twitter.com/DOMi_keys/status/1180951132006502405?s=20&t=jRoa29_qjbWQ0-strpUqfg