2026.10.29 ジャズ 特集・お知らせ

ディスクユニオン ジャズスタッフ 10月度レコメンド・ディスク



ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!





OLA TUNJI(French Jazz) / Ola Tunji(LP) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/detail/1009184904


後期コルトレーンフォロワーバンド。私はジャンルとして「後期コルトレーン」があっても良いと思います、あの感じをそのままやるっていう。  
レギュラーメンバーOrnella Noulet (Sax, Per), Oscar Teruel (P), Anthony Jouravsky (B), Egon Wolfson (Ds, Per)の4人に、Roman Raynaud (G)が曲によって加わり、B面1曲目のみLucile Revel(VO, Per)が参加しています。
あくまで想像ですが、アリス・コルトレーンのハープの雰囲気を狙ってギターを入れたら結果的にデビット・フュージンスキーの雰囲気が出て、面白い味付けになっています。民族音楽的コンテンポラリーギターだから後期コルトレーンとの親和性は良いです。
曲は全てオリジナルの様ですが、後期コルトレーンのあの感じがムンムンに漂っています。
次作「TRUST」も近く入荷予定で楽しみです。
なお、フロントを務めるOrnella Noulet(SAX)の活動が興味深く、BANDCAMPやSPOTIFYで公開されているアルバム「SUMMER HOUR」はドラムとのデュオで熱いフリージャズを聴かせていたり、KOMAという双頭サックス+ビブラフォン+コントラバスという編成のバンドではチルいスピリチュアル・ジャズを展開していて目が離せません(アルバム「SPIRITS」)。単独デビュー作がサックスソロで抽象的フリーだった為、印象に残らなかったかもしれないのが惜しい気がします(「PROMISE OF FAITHFULNESS」)。





Diego Figueiredo / Horse Blues / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009278305


ブラジルのジャズ・ギタリスト、ディエゴ・フィゲイレドの2年ぶりの新作。前作ではオリジナル曲も含めたサンバ集で除湿効果抜群の爽やかな音を届けてくれましたが、本作ではエレキ・ギターも駆使しジャズにブルース、ブラジル音楽を融合させた全13曲のオリジナル曲を楽しむことができます。温かみのあるアコギとぐいーんと気持ちよく音が伸びるエレキが織り交ざったサウンドで最高にリフレッシュできます。個人的にツボなのがウイラ・カブラル(で発音が合っているのか不安)のハーモニカ。いい仕事してます、素敵。おすすめはオープニング・ナンバーにふさわしい明るいエネルギーに満ちたM1「Good Vibe」、リラックスしたグルーヴのM8「Just Relax」、旅情を誘うM9「From Memphis to New Orleans」。初秋に聴きたい気持ちのいいギター作品です。





Heinola & Nathan Francis / From Helsinki to Harlem / JazzTOKYO 中村、商品部 川村

https://diskunion.net/detail/1009293252


2023年にハーレムへ活動拠点を移したネイサン・フランシス(右の眼鏡をかけた方でべース担当)とアレクシ・ヘイノラ(ドラム)。本作は、彼らがフィンランドの音楽院で学ぶ以前から憧れ続けていたシーマス・ブレイク、ピーター・バーンスタイン、アーロン・ゴールドバーグという最強で最高のメンバーをフロントに招いて制作した初共演リーダー作です。大ベテランを招いたことだしさぞかし力も入っているだろうなあ、と思いきや自身の楽器が前へ前へという感じではないためかサポートに徹しています。哀愁漂うM1「From Helsinki to Harlem」やボッサ風のM2「Tai Chi」、ドラムソロが圧巻のアップテンポのM6「Lazy Bird」あたりがおすすめです。1960年代の王道ジャズの空気感をまとった極上のアコースティック・ジャズをお探しでしたら本作をぜひ。期待を裏切りませんよ。「俺ら夢を一つ叶えたな!」と言っているかのような微笑ましいジャケットもいい。(JazzTOKYO 中村)


フィンランドのシベリウス・アカデミーで出会ったドラマーのアレクシ・ヘイノラとベーシストのネイサン・フランシスによる初共演リーダー作。2人笑顔で肩を組んだジャケットに、ほっこりさせられながらも、タイトル下にある面子!に思わず二度見。アレクシ・ヘイノラは数年前にフィンランドのレーベル、JAZZAGGRESSIONから硬派なハードバップのリーダー作品をリリースしていて、とても好感の持てるドラマーだったのですが、満を持してNYに進出していたのですね。そしてその今作のゲストであるNYの超一流のミュージシャンとの共演にも臆することなくたっぷりなスイング感で、堂々たるプレイです。もちろんゲスト陣のソロもたっぷり堪能できます。'90年代後半~00年代のFRESH SOUND TALENTや、CRISS CROSSのサウンドのような少し懐かしい感じもして良作です。(商品部 川村)





Ekep Nkwelle / Caged Bird / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009293699


若手ジャズシンガーの中で一歩抜き出た輝きを放つエケップ・ンクウェレ。カメルーン人移民の両親のもと豊かなジャズ文化が息づくワシントンD.C.で育った彼女ですが、巨匠ケニー・バロンらとも共演を重ねるなど多くの経験を積み今ではNYのジャズシーンに欠かせない”王道スタンダードから現代ジャズまで軽やかに歌いこなす稀有な存在”として一目置かれているようです。そんな彼女の待望のデビューアルバムがこの『Caged Bird』です。ゴスペル、ジャズ、R&B、ブルースといったブラックミュージックの伝統にじっくりと向き合い、みずみずしい感性で楽曲に新しい息吹を吹き込んでいます。伝統的なゴスペル「His Eye Is on the Sparrow」からアビー・リンカーンの名曲であるタイトル曲へと繋がる鮮烈な幕開けでスタート、ジュリアス・ロドリゲス(ピアノ)やブライアン・リッチバーグ・Jr(パーカッション)らが支えるM4「Amazon Farewell」では力強いエネルギーの中に暗く切実なテーマが胸にずっしり響きます。M5「Good Morning, Heartache」で見せる年齢(27歳!!)を感じさせない哀愁の表現力や、ファラオ・サンダースを代表する名曲「The Creator Has a Master Plan」を美しいR&Bバラードへと昇華したセンスも怖いくらいに圧倒的です。ラストの「See See Rider」まで新鮮な驚きと自信とリアルな空気感に満ちあふれた堂々たる名盤の誕生です。





Jody Sternberg / Sea Of Love / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009250713


最近Youtubeで「ジャケ買いの基準は"笑顔"」というフレーズを耳にしました。その翌日こちらのアルバムが入荷し気付いたら購入していました。こわい(笑)。現在パリを拠点に活動する女性シンガー/サックス奏者、ジョディー・スタンバーグの2ndアルバム。ミニマルなアレンジで再構築したカヴァー曲を9曲収録しているのですが耳に残ったのがM4「Ano Hito」。「朝日のあたる家」を浅川マキさんやちあきなおみさんバージョンと全く異なる歌詞と独自のタイトルでリメイクしなおかつ日本語で披露している、どうしても素通りできない1曲。唐突な日本語に最初は不自然さしかなかったのですが、決して流暢とは言えない発音だからこそかえって生々しいというのか言葉の一つひとつに言葉以上の切なさがじんわりと宿っているようで、なんとも言えない不思議な魅力にすっかりハマってしまいました。曲間に流れる本人が演奏しているフルートもいいです。歌声というものは思っている以上に心に響く楽器なんだなあ、と改めて感じた1枚です。





Kris Davis / Lost ㏌ Geneva / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009266119


現代ジャズ界において最も影響力のある一人として名前が挙がるのが、クリス・デイヴィスだ。彼女は、テリ・リン・キャリントンとの作品『New Standards Vol. 1』でグラミー賞を受賞、2025年のダウンビート誌の批評家投票では「ピアニスト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。彼女のピアノやコンポジションは、とても知的に聴こえる。コンテンポラリーとフリー要素を併せ持ちながらどこか冷静で俯瞰している。同メンバーで2作目となるこのトリオ。リズム隊がピアノに寄り添うというよりも、トリオの会話のよう。さらに根底には伝統的な姿勢の正しさが流れる、時に馴染みやすく、かと思えば不可解で陶酔的でもあるのだ。また、彼女の音は、武満徹のピアノ作品に通じる静けさと瑞々しさをも思わせる。あらゆる感触が一体となり、パワーとは違う強さを秘めた彼女の音楽。彼女の言語によって淡々と提示する様のかっこよさときたら。





Aga Derlak / Neurodivergent / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009243702


当店ではひっそりと端っこに身を潜めていたピアノトリオ。久しぶりに目にしたポーランド・ジャズ。女性ピアニストのアガ・デルラクは、バークリー音大卒、ポーランドのフレデリック賞を3度受賞したという注目株だった。自身で「私の内なるカオスと神経多様性に完全に適応した作品」と形容し、変拍子や自由度の高い演奏による複雑かつ不安定なそれを均衡へとまとめ上げる。天才的というべきか、恐ろしいとも思うほど。フリージャズ的な混沌というより、完璧なまでに構築された三位一体のカオスである。同じく女性ピアニストのクリス・デイヴィスとも通じるものを感じつつ、アタック力と疾走感のあるピアノも、クラシックの土台があるためだろう、そのタッチはどこを切り取っても美しい。さらに、数曲ヴァイオリンをフィーチャー。なんだかこういうところにもポーランドを感じる。やっぱり独創的で我が道を行くポーランド・ジャズ。気品があって狂っていて美しい。彼女の作品はとりわけトランス的で、ぐぐっと感覚を開いてくれる。





Jakob Bro & Midori Takada  / From Such A Blue Sky / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009291176


ヤコブ・ブロと高田みどり。前作『あなたに出会うまでに』続く、デュオ2作目。M1「Lullaby For You / あなたへの子守歌」でいきなりやさしいギターに不意を突かれ、はたまた不穏な雲が通り過ぎる。冒頭からふたりの笑みが浮かぶ。作曲なのか即興なのか、季節のように移り変わる、生きているデュオだ。全6曲。一つひとつに物語がある。起承転結の起・承までが描かれ、あとは聴くものへ委ねる自由さがいい。M2「Unendable Dream / 終わりなき夢」は、ギターとピアノのミニマルなユニゾンと立体空間的に響く様々なパーカッション。気づけば、ひざの下まで生暖かいお湯のようなものに浸かっている。何かの回想シーンのようで、眺めていると風景が歪んだ。ピッチがゆるやかにずれていく。続くM3「Breatharian」は、高田のマリンバが風に揺れ、動物の遠吠えがぴゅーっとこだまする。少ない編成で豊かに風景を描き出す魔法がある。ユニゾンでの楽器の重なりによる化学反応も新しい発見。ふたりの音楽実験が絵本のようにこの世界にぽんと生み落とされた。





Ezra Collective / Here Because Of Hope / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009248441


ハーイ、ミナサン、オハヨウゴザイマシタ! インタージャズポールの方から来たポール・ジャズモンドでーす。新連載 "Spicy Sound Of Jazz" 第2回はエズラ・コレクティヴ、カリブや西アフリカのスパイスが効いた刺激的ジャズグルーヴだよ。デビューから10年、UKジャズ界隈ではすっかり人気者よー。初期に打ち出していたスピリチュアルなジャズ色は影を潜め、レゲエ、ダブ、アフロ色が深まって、人気を競うココロコにもどことなく似てきたねー。3パートに分かれたこの新作、ガイアナの女優レティーシャ・ライトのナレーションに続いて陰りのあるレゲエで幕開け。6曲目がサイコーね。2024年のアルバム"踊り、誰も見ていない"に収録の"Palm Wine"タイプのゆるゆるギターが悶絶しそうにキモよいハイライフ。キモキモッ! 16曲目はフェイザーの効いたエレピが快楽眩惑スペイシ―。ジョー・アーモン・ジョーンズくんはソロもバッキングも格別のセンスと腕前。ロニー・リストン・スミスやハービー・ハンコック好きな人はお薦めよー。UKジャズ、サイコー! 聴かず嫌いはモッタイナイヨ。ゴキゲンヨロシク、マタ!





Sparklmami / In This Body / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009232741


スパークルマミだと? エスパー魔美とまちがえて買っちまったぜ! そんな藤子不二雄フリークの人、ラッキーなミステイクでした。ポチっと再生ボタンを押して飛び出すのはベースの効いたゴキゲンジャズグルーヴ。フローラ・プリム、ジョージ・デュークあたりのメロウなヴァイブレーションが好物ならきっと気に入るはず。サンダーキャットやキーファーにも通ずるまばゆい80年代脱構築的サウンドに頭クラクラ。心なしかハービー・ハンコックの"台風の目"を想わせるリフもばっちり。川を渡ればメキシコのテキサス出身だからかスペイン語を多用したテクスメクス感がまた魅力。軽やかなパンアメリカンバトゥカーダで気分はにわかにサウダージ。あれ? 今聴いてるのは何だっけ? ふと気づくと意識は思わぬ場所にテレポーテーションしている。彼女はやはりエスパー魔美だったのか? 夜のとばりが降りるころ、窓を開けるついでにスパークリングワインも開けて弾ける泡を眺めながら聴くとサイコー! エスパークリングマミ。ようやくまとまった。多幸感に包まれて上機嫌で1日を締める1枚。





山中千尋 / Happy-Go-Lucky / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009271412

https://diskunion.net/detail/1009271413


山中千尋は選曲が光る人である。ジャズ弾きとしての選曲はもちろん、ジャズ聴きとしての選曲も光る。ユニバーサルに移籍した翌2006年の山中さん選曲によるコンピレーション盤"Universal a Go Go"は巷に溢れるお約束名演集ともDJによるキラートラック集とも一線を画する切り口で、ジャズの地平を拡張して提示した。コートニー・パイン、エリス・レジーナ、さらにはカーディガンズの"カーニヴァル"までしれっと並べ、最初と最後はご自身の新録音小品という粋な構成。振り返ると後の快進撃の布石のひとつになった感すらある。この新作も卓抜した選曲に唸るしかない。ピアノ好きには堪らないであろうキース・ジャレットの"Memories Of Tomorrow"で始まる。"ケルン・コンサート"ラストに収録の旋律だが即興曲ではなく、先立つ1969年頃に非公式録音がいくつか残されている。個人的にはカーラ・ブレイの"Lawns"でキマりである。各々歌詞を付けたボーカル版も多い人気曲。カーラとも渋谷毅とも異なる山中さん独自の解釈で何気なくも心に残る。"Impulsive"もさすがの選曲。イリアーヌ・エリアスがキャリア初期に硬派ジャズ奏者であることを示したモーダルな佳曲である。ブラジルのアミルトン・ゴドイ作曲"Choro"もイリアーヌが初期に録音している。硬派な山中さんらしいイリアーヌ絡みの絶妙な選曲。御二方を聴き比べると興味深い。今回唯一のオリジナル"Beverly"は澤野工房からのデビュー盤トップのまさにデビュー曲、その再演である。途中ビル・エヴァンス絡みで続く曲構成や2曲続くエレクトリックピアノもニクい。イタリアンボッサの名曲"Estate"を枕に"Summertime"につなげるアレンジもニクい。何よりも広く深い音楽愛にあふれた心ニクい作品である。





マイルス・デイビス / ライヴ・イン・バルセロナ 1984 / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009307138


マイルスのアルバムで最好(サイコウ=最も好き)なのは"Decoy"という変わり者は世界中で自分だけではないかと本気で考えることがある。'80年代マイルスで人気なのは"You're Under Arrest"、"Tutu"、"The Man With The Horn"あたりで、"Decoy"は常にランク外の孤独な傑作である。そもそも'80年代マイルスは評価されていない気がするのだが、観客に大喝采で迎えられるこのデコイ真っ盛り1984年のライヴを聴くと、それも思い過ごしであることがわかる。コアなモダンジャズファンはともかく、フツーの音楽好きにアピールするマイルスは、ジャズ然とした’50~'60年代やブッ飛び過ぎの'70年代よりもトータルにデザインされた'80年代にちがいない。"Time After Time"がマイルスの入口になったファンも多いだろう。しかしマイルスは劇薬だ。ポップ曲でリスナーの心をつかむがハードコアなのだ。複雑怪奇なコードで彩られた"Decoy"のタイトル曲を収録したこの珍しいライヴ録音も、相変わらずスリルとテンションの連続で気を抜けない。ジャズと呼ぶなと言われてもジャズと呼ぶしかない。それがマイルスだ。これは頭髪が追いつけない速度で前進を続けた男の記録である。





Sullivan Fortner / Leave That in There / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009260222


サリヴァン・フォートナーは1986年生まれ。ジョン・バティステや挾間美帆と同い年。前作『Southern Nights』(2025/Artwork)はグラミー賞の最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞を受賞した。その『Southern Nights』はアコースティックなピアノ・トリオで、続く本作もトリオ…なのだが、その様相はだいぶちがう。ハモンド・オルガンにフェンダー・ローズ、モーグにヤマハにローランドなどのアナログシンセ、その他諸々の鍵盤楽器が各曲で縦横無尽に弾奏され、聴き手はめくるめくキーボードの饗宴に引き摺り込まれる。M1で儀式を盛りたてるマリンバ、M4でキラキラ光るシンセ、M12でクワイアに導かれ堂々と朗唱するオルガン…数多のアイディアの絶え間ない奔流は1970年前後のキース・ジャレットを思わせるが、カオスなエネルギーをまるごと作品化したようなキースと異なりサリヴァンは、各楽器に適切な曲を用意し、それをアルバム内へ的確に配置してみせる。その周到な構成によって聴き手の焦点はM2・6・9・10・11といった比較的アコースティックなトラックに定まるだろう。特にM9“Number 3”では闊達なベースと反重力的なドラムとサリヴァンのスマートなピアノが、クールかつ緊密に、実に説得力のあるインタープレイを繰り広げている。単独名義のリーダー作は本作で5作目とやや寡作なサリヴァンだが、近年リリースのペースは上がっている。おそらく、膨大な語法を蓄積し、脳内に無数の音符が飛びかうサリヴァンは、自身の音楽をアルバムへと結晶化させるまでに、少し長い年月を要したのだろう。その膨大さはすなわちジャズの歴史と伝統であって、それを思うと彼の故郷ニューオリンズに意識がいく。少年サリヴァンは郷土食ガンボの鍋からお玉でなにかを掬い取ろうとしたところ、そばにいた祖母からこう言われた──ああ!それはそのまま入れておきなさい! これがタイトルの由来だそうだ。具材が雑多に入っている。それこそガンボという料理に違いない。ごった煮の愉快な調和と豊富こそ、サリヴァンでありジャズなのだ。





Tyler Henderson / Long Game / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009279193


前作『Love Endures』で私たちを唸らせた若手ピアニスト、タイラー・ヘンダーソンによる待望の新作が登場。前作は端正でスインギー、アーマッド・ジャマルを思わせる音像でしたが、本作ではそれに加え、水上をしぶきをあげて滑走するような気持ちのいい推進力が聴き取れます。レギュラー・メンバーであるカレブ・トボックマン(b)とハンク・アレン=バーフィールド(ds)のテンションも上がっているような…。ああ、本作では9曲中7曲がタイラーのオリジナル曲なんですね。(前作では半分でした。)フレッシュで洗練されたポスト・バップな趣で、なるほど、より直截的に自分の音楽を聴かせようとする意欲的な姿勢が伝わってきます。M9で参加するジェイコブ・チャン(ts)は『Live at Frankie's Jazz Club』(2025/Cellar Live)でこのトリオと共演経験あり。私たちのハートをまっすぐ射止めてくれます。おそらく4人とも、2000年前後に生まれた新世代。こうやってジャズは受け継がれていくのでしょうね。最後まですらりと聴きとおせる。その奥には、決して絶やしてはならない炎が静かにゆらめいています。





岡田暁生&フィリップ・ストレンジ 『ジャズは自由にする』 / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009297046


音楽学者・岡田暁生とジャズ・ピアニストのフィリップ・ストレンジによる超刺激的ジャズ談義、第2弾!ストレンジ氏が選んだ10枚のアルバムについて、なにが「すごい」のかを存分に語り尽くす。まずは目次を見てほしい。第5章からクレア・フィッシャーにキースときて、ケニー・ホイーラーにメセニー、ジョー・ロヴァーノにピーター・アースキン。すごいのは知っているもののうっかり聴き逃して/聞き流しているような巨匠が並ぶ。レーベルもECMが3枚でBlue Noteはロヴァーノ1枚。ホホウとストレンジ氏の美意識に嘆息。しかしその語り口はスイングからフリーからクラシックまで多種多様な実例や喩えを交えつつ、間口は広く思考は深く、ジャズの神髄をわかりやすく伝える。対する岡田氏も初心者目線で尋ねたかと思えばマニアックな話題を切り出し、もちろん知的で学術的な論考をも展開。2人の放談はアメリカ文化論、音楽哲学にまで発展していく。「ECMはポスト・ベトナム戦争時代の音楽」(p196)「メセニーとヘイデンのデュオは真のフリー・ジャズ」(p233)「ロヴァーノはポストモダン」(p240)「ハーモニーはLoveみたい」(p265)等々、目からウロコがぽろぽろり。さらに2人に一貫するのが「自由とは」を問う姿勢。果たしてジャズの、アメリカの自由とは何なのか!?…名盤を分析で捉えた前書『すごいジャズには理由がある』も新装版で再登場!よろしければ2冊まとめてどうぞ。





Branford Marsalis Quartet & Dianne Reeves / Dedicated to You / JazzTOKYO 東舘、新宿ジャズ館 四浦

https://diskunion.net/detail/1009275089


ブランフォード・マルサリスによる名盤を範とした新作のリリースは伝統への敬慕とその更新の方法であってネタ切れでも商業企画でもないことはその演奏を聴けば了解できる。『John Coltrane and Johnny Hartman』(1963)の全曲とコルトレーンの諸作を演ったトレーンづくしの本作は生誕100周年を迎えた聖者へのトリビュートに違いないが、ブランフォードはトレーンをなぞるだけでなくトレーン的世界のretelling(語り直し)を試みているのであり、カルテット+ヴォーカルというサウンドは同じだが語り手はブランフォードなのだからこれはブランフォードの音楽だ。M5“Lush Life”は原盤と同じく歌とピアノのデュオで始まるがピアノはマッコイでなくカルデラッツォだと思い知る。それにブランフォードのソロが続くのに意表を突かれ、最後に歌が再来し、そうした表現力は言語を絶している。ダイアン・リーヴスの歌唱表現はハートマンの時代が遠い昔であることを確かめさせるが、どちらもジャズであり、それ以前に優れた音楽なのであって、私たちが優れたジャズを渇望していたことを思い出させる。こうなれば最後まで聴くほかない。(JazzTOKYO 東舘)


本作の凄みは、音数を極限まで削ぎ落とした「静寂の構築力」にある。タイトに引き締まったバンドサウンドはどこまでもクールだが、そこで鳴り響くブランフォードのサックスは決して冷淡ではなく、熱を帯びてダイアンの声に深く寄り添う。さらに、サックスと対等に渡り合いながら絶妙なタッチと深いハーモニーでボーカルを瑞々しく引き立てるカルデラッツォのピアノの素晴らしさが、アルバムの気高さを決定づけている。あえて音を詰め込まないことで、すべてのフレーズの隙間に息づく余白や演奏者たちの呼吸の気配が、官能的なまでに生々しく浮き彫りになるのだ。何より特筆すべきは、予定調和な定型バップフレーズを垂れ流すような野暮とは無縁な点である。ここで繰り広げられるのは、一音一音に血肉を通わせた、圧倒的にメロディアスなインプロビゼーションの応酬だ。楽器と声の境界が溶け合い、自由自在にたゆたう即興がそのまま痛切なまでの歌心溢れる旋律となって胸を打ち、聴き手を極上の密室感へと連れ去るのである。ブランフォード・マルサリス(ts, ss)、ダイアン・リーヴス(vo on #1, 2, 4, 5, 7, 8)、ジョーイ・カルデラッツォ(p)、エリック・レヴィス(b)、ジャスティン・フォークナー(ds) (新宿ジャズ館 四浦)





村越葵 / The Room / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009282894


コンテンポラリー・ジャズというと難しそうだと反射的に感じるがそれは私たちの耳が現代へじゅうぶん開かれていないだけだ。バークリー音楽院で研鑽を積むアルト・村越葵が放つ3rdアルバムは、身軽でスマートで、可憐かつ純真な印象を与える。そこにあるのは確かな若さだが、舐めてかかるのを私は許さない。複雑なフレーズを連ね激しさを増せども音は乱れずクールさを保つ。彼女より8歳ほど上のイマニュエル・ウィルキンスにも通じるスタイルで、それは優等生でも深みに欠けるのでもなくいまのシーンのマナーのひとつであり、したがって20歳を迎えた村越はいまのジャズをまっすぐに生きるプレイヤーだ。研ぎ澄まされた6曲の自作曲もそれを証する。レコーディングは村越の一時帰国に合わせて行われ20~30代の若手日本人が集うが、M6でピアノを弾く、ともにバークリーに在籍する古里愛の、村越と手をとり凛然と高揚していくさまに息を呑む。こう書きつつコルトレーン作M4でのエモーショナルなプレイにも心惹かれる。本作からは決して若いだけでない若さが奔流となってあふれ出ていてそれはジャズという大河を成していく。





浜崎航&松本茜 / たまゆら / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009281071


仕事をしながら、何気なくいいな・・とかかっているCDを見ると本作でした。松本茜トリオ「Bigcatch」に、テナー、ソプラノ、フルートを吹き分ける浜崎さんを迎えた新作。一年位前の浜崎&松本デュオ『Listen to my blues』もそうだったけど、この2人の演奏は自分の耳にとまることが多い。作曲に演奏に、どこかキャッチーでブルージーなところがあって、それがその理由だと思う。で、今回のタイトルは「たまゆら」。新譜インフォには「~移ろいゆく儚さ、侘び、寂び。日本人の伝統の感性とJazzの邂逅~」と書いてある。それは私に言わせればブルースだ。だから本作のハイライトは、ソプラノがキリキリ、ピーヒャラとブルース臭を振りまく⑥「Kz Blues」。あともう一曲、⑧「Blues for O.P」、オスカー・ピーターソンへ捧げるブルースなのだ。ピアノの波打つスイング、吹き上げるブルーステナーに◎。何だか楽しく、聴くたびにいいなと思うのだ。





Houston Person / From The Heart / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009278306


大ベテラン・・というか、現役最高齢のテナーマンのひとりなのではないかと思う、ヒューストン・パーソン(92歳)。約4年ぶりの新作は、トランペットのエディ・アレンやスイング系ギターの名手ジェイムス・チリロを迎えたセクステット。あらためて振り返ると、1960年代にプレステッジからソウルジャズ路線でデビュー。その後、一連のミューズや近年の充実したハイノートの諸作など、意外と切れ目なく第一線で録音もしていて、サイドマン参加作も含めると100作以上の録音があるそうだ。で、本作はエリントン曲やブルースを中心にしたアメリカン・ソングブック。オープニングのウォーキングテンポの「Wish You Were Here」。このスモーキーでリラクシンな吹きには一発でまいるし。その他、例えば、止まっちゃいそうなスロー「These Foolish Things」のやるせなさをも飲み込んだ、ソウルテナーはどうだろう?時間を掛けることでしか獲得できないジャズの年輪みたいなものがあって、それが楽器を通じて主張してくる・・うむ、テナータイタン。一つの境地だと思うのだ。





Don Thompson(& Caity Gyorgy) / Lazy Afternoon / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009255865


2021年リリースのロングセラー『レイジー・アフタヌーン』から、ケイティ・ジョージの参加した4曲を抜粋した45回転の10インチ盤。ドン・トンプソン(p)、パット・ラバーベラ(ts)、ケイティ・ジョージ(vo) というトリオで、これが今や人気歌姫となった、ケイティの日本デビューにあたるもの。トンプソンはカナダ在住のピアニストにして、ヴァイブにベース、さらにはアレンジやエンジニアもこなすジャズ、音楽の申し子のような86歳。近年はダイアナ・パントンのアレンジとバックも務めていて、キュートな曲解釈が彼女の魅力を引き立てる。でも、ここでのトンプソン、ダイアナとの録音と比べて(当然だけど)アレンジの傾向が違う。ケイティの瑞々しくも憂いを含んだ声を4曲のバラードでじっくりと際立たせてみせる。よく聴くとヴォーカルとテナーのパートが被ることなく、音数が少ないアレンジが印象的だ。そのブルーな歌声を静かな夜に針を落として聴く「My Foolish Heart」や意外なヴァースから始まる「時さえ忘れて」など、絶品でした。限定300枚プレス。





石川紅奈 / GARDEN / JazzTOKYO 松本、神尾、赤尾

https://diskunion.net/detail/1009239608


鮮やかな色彩となめらかなベースプレイ、ピュアな歌声にはっと目が覚める。彼女の歌は、透き通っていてクッションのような柔らかさのなかに、タイム感や歌い回しにおいて独自のグルーヴが感じられる。それはベースで弾き語りをする彼女のスタイルが大きく関係していると思う。とても心地良いのだ。また、ジャズ・シーンをメイン・フィールドにしながらも、彼女のはじめのルーツは、スティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソン(「Off The Wall」のベース弾き語りカヴァーは素晴らしく、話題にもなった)といったソウル・ミュージックなのだと知り、合点がいった。さらに、今作は初のセルフ・プロデュースで、ライヴで共演を重ねてきた大林武司(p)、Taka Nawashiro(g)、Kan(per)らを中心とした編成に、生き生きとしたアレンジが映え、ジャズ、70sソウル、ブラジルのフィールがひとつになった実り豊かなサウンドを聴かせる。ミニー・リパートンとロイ・エアーズのカヴァーでは、ベースのリフの上で歌う(M1ではパーカッションも)彼女ならではのスタイルで始まり、中間部で颯爽とハープが登場。一気に世界が開け、思いがけないときめきに満ちる、このアルバムのハイライトだ。本作では、これまでのべースプレイと歌だけでなく、ソングライティングとアレンジの才能にも圧倒されることになる。彼女の庭には色とりどりの様々な植物が生きていて、力づよい生命力にあふれ、循環している。彼女がじっくり育ててきた庭が光りを浴びて花開いた傑作だと思う。(JazzTOKYO 松本)


ウッドベースを抱えながら歌う石川紅奈。2023年のデビュー作「Kurena」以来、ひさしぶりの本人名義のアルバム。彼女の根っこにある、70’sソウルにブラジリアン、Pops、そして清らかなスピリチュアル・・ナチュラルな指向に溢れた作品、たおやかなヴォイスの魅力が全開だ。バックを目を向けると、前作にも付き合っていた大林武司のポップでいてジャジーなピアノは各所で定評があるものだし、Taka Nawashiroの現代ジャズギターに根ざした、職人的卒のなさも彼女の音楽に欠かせないもの。そして要所で静かに響くチャールズ・オーヴァートンのハープは、本作の隠し味として魅力を発揮する・・。ミニー・リパートン、ロイ・エアーズ、チック・コリアのカバー3曲に、自身のオリジナル5曲で全8曲。英語詞をメインにしながら、ふと差し込まれる日本語歌詞の個性的な響きが心地よく耳を刺激する。小曽根真に見いだされ、国立音楽大学のジャズ専修を卒業。ソウルやPopsの感覚を前面にしながら、やはりもう一つ、滲むジャズの基盤があって、歌とベースを通し、ごく自然に作品に落とし込まれていると思う。あたらしい世代のあたらしい感覚による、普段着を装ったジャズ。聴いていて本当に心が潤う音楽でした。(JazzTOKYO 神尾)


いい曲揃い。それだけで紹介する甲斐がある。快もある。いいものをいいと推すのは気持ちいい。石川紅奈はハッとするオリジナル曲と気の利いたカバー曲で聴く者を彼女の音世界に誘き寄せ、こぢんまりして居心地のよさそうな庭に招き入れる。足を踏み入れるとわかるが、庭には柵も塀もなくどこまでも遠く広がる世界を見渡せる。独創的で開放的なのだ。この作品からはそんな自由を獲得したサウンドがあふれ出す。デビュー作ではチック・コリアがクリエイティヴな階段を上り始めた頃の名曲"500 Miles High"で一気に魅了されたが、今回もチック同時期の"Times Lie"を取り上げており、うれしい曲やってくれるなぁと共感を覚えずにはいられない。この2曲はフローラ・プリム、ジョー・ファレル、スタン・ゲッツ、アジムスなどの歴代バージョンと聴き比べると楽しい。ロイ・エアーズの"Searching"もうれしい選曲。20世紀末だったらきっとドラムンベースにリミックスされていたにちがいないテンポとグルーヴではないか。甲乙つけ難い楽曲が並ぶが、真打は最後にあった。オリジナルの"おやすみ"である。これ1曲だけでも満足できる極上のキラーチューンに仕上がっている。日本人女性特有のはんなりとした歌声と胎児期の記憶を呼び覚ますハープの音色の陶酔感といったらない。気に入りの酒を飲みながら小さめの音で流して酔いが醒めないうちに眠るといい夢を見られそうだ。歯を磨くのを忘れないように!(JazzTOKYO 赤尾)






LEON PARKER / FOUNDATIONS / JazzTOKYO羽根
https://diskunion.net/detail/1009278880


アート・オブ・ザ・トリオ前史というか、ムード・スウィング前史のメルドーの軌跡を振り返る最重要音源だ。レオン・パーカー、ウゴナ・オケーゴと聞けば、普通思い起こすのはジャッキー・テラソン・トリオであり、92年から93年のごく短期間存在したブラッド・メルドー入りのトリオについては、バイオグラフィーでも注釈程度の扱いで、ヴィレッジ・ゲイトでの断片的なライブ映像(これはこれで92年時点で比類ないピアニズムや独特のファッション・センスまで出来上がっていることに驚き!)でしか触れることが出来なかった幻のトリオである。それが30年以上の時を経てSUNNYSIDEからリリースと聞かされ、興奮するなという方が無理であろう。しかも入荷するまで試聴音源も無いものだから、スタジオ録音とはいえ音質極悪、もっと実験的で粗削りなものだったらどうしようと心配もしていた。その実、これがかなり練れたトリオ演奏で、音質もマイク一本でのほぼ一発録りには文句が無いどころか、逆に迫真性が増して大変満足。何よりスタンダードでのアドリブの飛躍的な展開力、オリジナルでの目眩くメルドー・フレーズや張り詰めた凄みのある間の取り方など、随所にメルドーの只者ではない感が垣間見える素晴らしい内容だ。メルドーがニュースクール在籍時より、既に周囲から別格の天才と認識されていたのも納得で、この92年から93年頃のメルドーの急成長は、91年のクリストファー・ホリデイのアルバムでの初録音と比較すると、一体全体何が彼に乗り移ったのかと驚きを禁じ得ない。当時のジミー・コブ学級のヤバさも…。レオン・パーカー自身はセルフ・ライナーで、このトリオは最高だったが、自分はキワモノ扱い(独特のミニマルなドラム・セット使いや表面的なテクニック面で)な存在であるし、メルドーがワーナーからメジャー・デビューするのを必然と受け止めていた心境を語っていて、何だか読んでいてしんみりしてしまった。録音当時ニューヨーク中のレーベルに音源を送ったけれど、どこからも返答が無かったというエピソードも哀しい。それでもこのトリオの解消はいずれレオン・パーカー自身のジャッキー・テラソン・トリオでの栄光に繋がる訳で、もちろんアート・オブ・ザ・トリオの誕生にも不可避の通過点ということで、現代ジャズ史の儚くも美しい奇跡の記録なのである。







Mirna Bogdanovic / GLIMMERENCE / 横浜関内ジャズ館 小林
https://diskunion.net/detail/1009300860


ベルリン在住のシンガーソングライター・Mirna Bogdanovićの3作目のアルバム。ポップでエレクトリックなサウンドでありながら、ドイツ構成主義に由来する直線美的な絵画を観賞しているような気になり、なおかつ高音を聞かせる曲はテクノなサウンドと相俟って、マックス・エルンストのシュルレアリスム絵画が眼前に置かれたかのようだ、というのはステレオタイプが過ぎるのだろうか。全体的にやや難解なアルバムだが、秋の夜長に思索に耽りながら聞くには良いかもしれない。決してベースボールのポストシーズンゲームを消音にしたテレビで観ながら聞くには適さない。例えA-1が「Wild Card」だったとしても。





SEAN MASON / STATE OF THE ART / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 田口
https://diskunion.net/detail/1009276267


とにかくスウィンギーでピースフル。今の時代にこういうアルバムを出してくれるのは本当にありがたいです。シンプルなピアノ・トリオ編成ながらベースラインやタイム感、ハネ感がとにかくかっこよく、まさに踊れるジャズ。ブラック・ダンス文化の継承者であるムーヴメント・アーティスト二人と共にスタジオに入り、彼らのダンスと触発し合いながらレコーディングしたとのこと。ミュージックビデオも素晴らしく、ジャズの楽しみ方を教えてくれているかのよう。改めてリズムそのものの楽しさを見せつけられました。是非チェックしてみてください。





Mark Guiliana / BEAT MUSIC 2.0 / 新宿ジャズ館 逆瀬川
https://diskunion.net/detail/1009281309


ドラムを楽しむアルバムである。ビート・ミュージックはマーク・ジュリアナのルーツのひとつであるエレクトロニック・ミュージックを志向するプロジェクト。つまり本来はサンプリングであったり、打ち込みでビートを構築する音楽である。マーク・ジュリアナのドラムも当初は「打ち込みのビートを人力で再現する」というところに主題があったように思っていた。本作はどうだろう。シンセやエレベのようなサウンド面は置いておいて、マークのドラムはかなり"生"っぽい。マークの音楽性は、本来打ち込みで構築される音楽に肉体性、即興性を持たせる、というフェイズに移行してきているように感じられる。今に始まったわけではなく、前作『Beat Music! Beat Music! Beat Music!』のあたりからその傾向は感じ取れていたのだが。それにしても「ビート・ミュージック」を標榜するバンド、アルバムで、ここまで生っぽいドラム、というのもなかなかのギャップである。





AMIRI BARAKA / BLACK AND BEAUTIFUL SOUL AND MADNESS / 商品部 川田
https://diskunion.net/detail/1009227817


米国の詩人、作家、アミリ・バラカ(リロイ・ジョーンズ)が1968年に自主制作盤LPでリリースした激レア盤「ブラック・アンド・ビューティフル・ソウル・アンド・マッドネス」(Jihad Productions/JIHAD 1001/LP)が遂に、初となるアナログ盤LPで再発。このレコードには個人的な思い入れがある。今ではオリジナル盤LPを所有していますが、2000年代初頭、米国ワシントンD.C.へ出張に行った際に訪問したディーラーの自宅にて現物を見せて頂いて教えていただいたのが個人的な出会いである。教えていただいた方はSonboy Recordsを運営しており、同レーベルから2009年に初CD化された。CD化の件も伺っていたので直輸入でのスムーズな仕入れも実現できた。ドゥーワップやソウル風の歌唱、後のラスト・ポエッツ風のラップ、ソウル・ジャズのグルーヴ感、フリー・ジャズの即興性等が織り込まれた名作。ギル・スコット・ヘロン、ラスト・ポエッツ、ソウル・ジャズ、スピリチュアル・ジャズ等のファンにお薦めしたい歴史的重要作。

前のページへ戻る

チェックしたアイテム RECENTLY VIEWED

チェックしたアイテムはありません

WAYNE SHORTER / ウェイン・ショーター / NIGHT DREAMER
NIGHT DREAMER

2023年12月01日 / LP(レコード) / IMPORT

売切

レコード レコード

¥4,950 (税込)
HORACE PARLAN / ホレス・パーラン / UP& DOWN (Blue Note TONE POET LP SERIES)
UP& DOWN (Blue Note TONE POET LP SERIES)

2025年02月07日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫あり

レコード レコード

¥7,590 (税込)
GRANT GREEN / グラント・グリーン / BORN TO BE BLUE (LP/180g/Tone Poets vinyl)
BORN TO BE BLUE (LP/180g/Tone Poets vinyl)

2019年10月19日 / LP(レコード) / IMPORT

廃盤

レコード レコード

¥7,150 (税込)
LEE MORGAN / リー・モーガン / CITY LIGHTS (Blue Note TONE POET LP SERIES)
CITY LIGHTS (Blue Note TONE POET LP SERIES)

2026年02月06日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫取寄せ

レコード レコード

¥7,590 (税込)
商品一覧・検索は
こちらから

ニュース&特集 NEWS & FEATURES

ボサノヴァ名盤をレコードで特集!

2026.10.29

ラテン・ブラジル・ワールド

ボサノヴァ名盤をレコードで特集!
もっと見る

イチオシ商品 STAFF RECOMMEND

ELECTRIC ASTURIAS / エレクトリック・アストゥーリアス / PENTAQUARK / ペンタクォーク
PENTAQUARK / ペンタクォーク

2026年10月28日 / CD / JPN

新品在庫なし

CD CD

¥3,630 (税込)
エミルの愛した月夜に第III幻想曲を / BLOOD SNOW / ブラッド・スノー
BLOOD SNOW / ブラッド・スノー

2026年10月25日 / CD / JPN

新品在庫あり

CD CD

¥2,530 (税込)
CAMERON WINTER / キャメロン・ウィンター / LIVE AT CARNEGIE HALL (BLACK VINYL)
LIVE AT CARNEGIE HALL (BLACK VINYL)

2026年10月21日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫あり

レコード レコード

¥6,380 (税込)
MAHO堂 / おジャ魔女カーニバル!!(7")
おジャ魔女カーニバル!!(7")

2026年10月28日 / 7"(レコード) / JPN

新品在庫あり

レコード レコード

¥2,970 (税込)
RESAVOIR / レザヴォア / ABOVE THE CLOUDS (CLOUD-COLORED VINYL)
ABOVE THE CLOUDS (CLOUD-COLORED VINYL)

2026年10月28日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫あり

レコード レコード

¥4,950 (税込)
もっと見る

読み込み中...

アーティスト

タイトル

レーベル

マニアック検索

詳細検索

読み込み中...

チェックしたアイテム RECENTLY VIEWED

チェックしたアイテムはありません

WAYNE SHORTER / ウェイン・ショーター / NIGHT DREAMER
NIGHT DREAMER

2023年12月01日 / LP(レコード) / IMPORT

売切

レコード レコード

¥4,950 (税込)
HORACE PARLAN / ホレス・パーラン / UP& DOWN (Blue Note TONE POET LP SERIES)
UP& DOWN (Blue Note TONE POET LP SERIES)

2025年02月07日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫あり

レコード レコード

¥7,590 (税込)
GRANT GREEN / グラント・グリーン / BORN TO BE BLUE (LP/180g/Tone Poets vinyl)
BORN TO BE BLUE (LP/180g/Tone Poets vinyl)

2019年10月19日 / LP(レコード) / IMPORT

廃盤

レコード レコード

¥7,150 (税込)
LEE MORGAN / リー・モーガン / CITY LIGHTS (Blue Note TONE POET LP SERIES)
CITY LIGHTS (Blue Note TONE POET LP SERIES)

2026年02月06日 / LP(レコード) / IMPORT

新品在庫取寄せ

レコード レコード

¥7,590 (税込)