2026.02.27 ジャズ 特集・お知らせ

ディスクユニオン ジャズスタッフ 2月度レコメンド・ディスク



ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




PATRICIA BRENNAN / Of The Near And Far / 新宿ジャズ館 四浦

https://diskunion.net/detail/1009101329


宇宙への関心からインスピレーションを得て、天文学のデータをもとに、「五度循環」を使用した調和的、旋律的な構造への変換やグラフィック・スコアの導入を試み、2つの異なる世界を結び付けた、注目の最新作。クラシック音楽やエレクトロニック音楽の影響による、ストリングスの参加や、自身の楽器を含めたエレクトロ・サウンドを下地に、ギタリストのマイルス・オカザキやピアニストのシルヴィー・クルボアジエの参加による即興演奏への拘りと、表面上の複雑な構造の背後にある彼女自身のメロディアスでリズミカルな楽曲群の対比が、聴くものを惹きつける。

Patricia Brennan(vib with electronics, marimba), Sylvie Courvoisier(p), Miles Okazaki(g), Kim Cass(b), John Hollenbeck(ds, per), Arktureye(electronics),Modney(vln), Pala Garcia(vln), Kyle Armbrust(viola), Michael Nicolas(cello)




CHRISTAL ZONE / Rai Rai / Kanashiyana(7"EP) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/detail/1009143854


和ジャズ・レアグルーヴの希少盤が世界限定500枚で初復刻!!
「TACHIBANA」の相澤徹(p)、森村恭一郎(ts,ss)、森村哲也(ds)に、「こけざる組曲」の小島和夫(琴)、「ツトム・ヤマシタ&ホライズン」の桜井英顕(琴)らが集結!!
アフリカ民族音楽とロックとジャズ/フリージャズをゴッタ煮にした素晴らしいグルーヴ。
琴の音色は日本人だから「箏/琴」に聞こえますが、アフリカの竪琴やハンマーダルシマーをイメージして取り入れたのかも知れません。
凄く頭に残ってクセになります、たまらんです。




PETER EVANS / Comprehensive / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/detail/1009124696


PETER EVANS(tp), JOE MORRIS(b), TYSHAWN SOREY(ds)によるフリージャズ・トランペット・トリオ。ごく個人的な感想ではありますが、ここ最近買ったフリージャズ新譜(新録)の中では、圧倒的に素晴らしいです。
まずこの3人が生み出す別次元の空気感に引き込まれます。あとは音楽が作り出す渦、荒波、凪の変化に意識を委ね、彼岸への旅を楽しむだけ。
今のPETER EVANSの充実ぶりは凄い!




Milly Scott / Trouble In Mind / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009145493


ビル・エヴァンスやアン・バートンの未発表音源も手掛けた Nederlands Jazz Archief(NJF)からリリースされた「オランダ初の黒人ジャズシンガー」と称されるミリー・スコットのリイシュー盤。初めて聞く名前のシンガーですが、2月号のレコード・コレクターズ、リイシュー・アルバム・ベストで高田敬三さん(個人的にもお世話になりました。ご冥福をお祈りいたします)が紹介されていて気になっていたもの。ポップス等も歌い、幅広い分野で活動していたスコットの貴重なジャズシングル盤(1962-66年録音)から選曲し編集したものだそう。オランダですから、ダイヤモンド・ファイヴやフランク・エルセンのコンボ、ダッチ・スイング・カレッジ・バンドなど、そうそうたるジャズメンがバックを付けているのにも興味を引かれます。例えば、トレーラー映像でもフィーチャーされている「Old Devil Moon」。スキャットを交えたソウルフルな熱唱、エルセンのコンボがバックを付けていて、短いながらもソロをリレーするバリトン、トロンボーンもツボを押さえたもの。同じくエルセンがバックの「The Great City」のモダンな感じもいいし、ビッグバンドを従え堂々と聴かせる「Come Rain Or Come Shine」など聴きどころは多数。まさにベールを脱ぐ名シンガー、オランダジャズの奥深さを感じました。




Noé Séculay & Jorge Rossy / Sphere Between Other Obsessions / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009168937


ジャズ巨人のカバー集って難しいと日頃から思っている自分ですが、先日さらっと入荷したこのセロニアス・モンク曲集はいいですね。フランスの若いピアニストと、ご存じスペインのドラマー、ホルヘ・ロッシーがここではソウルフルなヴァイブを披露するデュオ作品。独特のアク、アブストラクトさ、気だるさやたそがれ感・・モンクの曲が持つそんな雰囲気を、モンクに近いようで近くない、絶妙な距離感で表現します。モンクといえばの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」や「ストレート・ノー・チェイサー」などの有名曲を取り上げていないのも、メロディの認知度に頼らない2人の意志と(勝手に)解釈。収録曲のうち3曲はピアノソロ、土臭さとノエの洗練されたピアニズムが同居する聴きごたえのある演奏です。あとヴィンテージ感のある録音、各楽器の響きにも注目したい。先入観なくどうぞ。




David Sauzay / Family Spirit feat. David Hazeltine / JazzTOKYO 神尾

https://diskunion.net/detail/1009168941


デヴィッド・ヘイゼルタインがゲスト参加する、フランス産のスマートな2管クインテット。リーダーはデイビッド・ソーゼー・・私この方、初めて聴きました。1972年生まれの寡作なベテランテナー。ゴリゴリとしない吹きがいいですね。そして相方のファビアン・マリーは、昔から注目していた端正なトーンのトランペッター、相性のよさを感じます。そこにヘイゼルタインが旨味を加える形でしょうか。で、(1)「We All Love Eddie Harris」からして、何というか流線型のハードバップ、ホーンアンサンブルがクールです。キャッチーな高速サンバ「Samba Del Camino」に、2ホーンのブルーな美しさが際立つ「The Spirit Of Alice」。そしてラストのミュートトランペットが小粋なポール・チェンバース曲「Ease It」などが印象的でした。曲と演奏、バランスの取れたハードバップ推薦盤です。




Julian Lage / Scenes From Above / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009143329


アメリカは広い。ヨーロッパに比べて空間的に断然広い。その空間的広がりを時間に転換する。遠くの景色は過去の音楽となる。それらは霞んで見えにくくなっているものの、すべて自分が立っている地点に繋がっている。そのようにして多種多様なルーツ・ミュージックを抽象化し、“アメリカの原風景”としか言いようのない音楽を創り上げる音楽こそ、「アメリカーナ」というジャンルであろう。ジュリアン・ラージのBlue Note第5作はジャズという抽象化フィルターによってこし出された、純度の高いアメリカーナだ。プロデュースは前作に引き続きフォーク系のSSWでシブいサウンドが十八番のジョー・ヘンリー。一方バンドメンバーはホルヘ・ローダー(b)を除き一新、過去にも共演経験のあるケニー・ウォールセン(ds/perc、彼はビル・フリゼールのバンドにも居た)に、メデスキ・マーティン&ウッドとして一世を風靡したジョン・メデスキ(p/org)、そしてパトリック・ウォーレン(key)がいくつかの曲で加わる。全体の色調は一貫しており、ギター+オルガンのカルテットないしクインテットという比較的オーソドックスなジャズとして聴けるが、グルーヴィーなM3はソウルジャズというよりファンクで、クールなM4はブルースロック風、まどろむようなM7はピースフルなカリプソとやはりアメリカーナ。中でもM5“Night Shade”は堂々たるゴスペルで、力強いビートのもとメデスキの素晴らしいオルガンがぐわーっと鳴り響き、そのただなかでジュリアンが、存在の幸福を天に訴えるがごとく高らかに、ピッキングを繰り広げる。本作のハイライトのひとつだろう。またアルバムのそこかしこからは過去の偉大なギタリストたちの姿が見え隠れする。(例えばM1“Opal”のふっくらとした雰囲気はパット・メセニーの名曲“Last Train Home”を思い出す。)ジュリアンが先達へ尊敬の念を抱きつつ創作に臨んでいる証であり、これまさしくアメリカーナの神髄だろう。その中には未来のギタリストの姿もまざっているはずだ。




Theo Croker & Sullivan Fortner / Play / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009090744


トランペット+ピアノのデュオ作は粒ぞろい、と思っている。現代ジャズの最前線を走る二人とあれば、より期待が高まる。“個性派”シオ・クローカー。過去作ではプロダクションやサウンド面へ注意が向きがちだったが…そうか、こんなに優しい音色なのか。あたたかくてしゃがれた音。複雑なニュアンスを操りつつもナチュラルに感情が伝わってくる。彼の祖父がドク・チータムであることを改めて認識する。対するはブラッド・メルドーに「ジャズ・ピアノの演奏を静かに革新している」と評された、最も耳目を集める奏者のひとり、サリヴァン・フォートナー。トランペットに寄り添いながら、きらめき、ゆれ、うなり、はばたき、とりどりの音を組み合わせながら多彩な風景を描いていく。二人が生み出す音楽はコンテンポラリーに違いないものの柔らかく穏やかで心に直に響く。1曲目は“A Prayer for Peace(平和への祈り)”。シオとサリヴァンがどこを向いているのかがわかる。それを聴き、心が動き、想いは共有される。あなたの耳にも届くといいなと思う。




Simona Severini & Jacopo Ferrazza / Dream Scenario / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009156219


シモーナ・セヴェリーニのことを“欧州のノラ・ジョーンズ”と前に書いたが新作を聴いて言い過ぎでなかったとほっとする。この人もまた風景を一変させる魔法を司る。初夏の昼前、海を右手に昔からあるレンガ造りの坂道を赤茶けた自転車で下っていく。そういうどこか懐かしい風景を歌声が呼び覚まし、そこには太陽の穏やかな光が降り注いでいる。サウンドの核は声とベース。M5とM10はベースとスキャットの二重奏。息の合ったアンサンブルの愉しみ。エリントン・ナンバーM7&9も同じく歌とベースだけ。ウィスパー・ボイスは画面をしっとり夜に変えるがそこにもふわりとそよ風が吹く。ギターを弾き語るシモーナと、その隣でウッドベースをはじくヤコポ・フェラッツァ。二人のイタリア人の音楽はアメリカと一味違った空気でいっぱいだが、M3のジョニ・ミッチェルとも相性ぴったり。ご賞味あれ。




チック・コリア / ウェルカム・トゥ・マイ・リヴィング・ルーム~旭川 / JazzTOKYO 東舘

https://diskunion.net/detail/1009157246


1994年11月、多忙を極めるチックは日本ツアーの最中に1日だけ北海道旭川市に赴いた。前年に落成した「旭川市大雪クリスタルホール音楽堂」にてゲイリー・バートンと共に『Crystal Silence』再演コンサートに出演するためだ。クリスタルホールを訪れたチックはその音響に感銘を受け、主催者に「若い駆け出しの頃[…]家で一人弾いていたピアノが、実は自分の音楽にとってどれほど貴重で、大切であったかということに改めて気がついた」と語り、翌年には同ホールにてソロ・コンサートを行う。その後チックは同地へ5回も足を運んだが、この度2005年5月のライブ録音が発売された。一音一音がビビッドに立ち現れる。63歳のチックがピアノを遊び(play)尽くすさまが目に浮かぶようだ。ガコンガコンと弦を押さえた特殊奏法で始まるM15“Asahikawa”では鐘のように和音が打ち鳴らされ、高音がきらきらと輝く。主催者・村田和子に捧げるM5“Kazuko Buleria”(ブレリアはフラメンコの曲種のひとつ)ほかリズミカルな曲も満載。“Welcome to my living room”と題された本公演、その名の通りくつろいだ雰囲気に溢れている。M17には旭川の聴衆との温かい交感も刻まれており、“Asahikawa”をやや言いにくそうにするチックに頬が緩む。




平井庸一 / インタラプション / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009138969


未来酒に遭遇した。中華料理店で供された白ワインと称する麦わら色の液体。口に含むと紹興酒に似た風味でワインではない。気候変動によりブドウが絶滅した未来の果てに求められるワインの代替品、これはそのシミュレーションにちがいない。4000年の歴史を誇る中華文明は奥が深い。似たように、未来ジャズの予見とも受け取れるのがこの作品である。エントロピーの増大によりすべてがリセットされニュートラルになった未来の果てに、伝え聞くビバップにまつわる言葉、スピードと即興を手掛かりに再構築されるかも知れないジャズの一形態。そんな風に想像が膨らむ。ギタリスト平井庸一氏は研究熱心で、トリスターノ、オーネット、エルメートなど個性的な音楽に着想を得た興味深い作品を発表している。今回はメタルとアンビエントの豪華2本立て。メタル4曲で吠え唸る巨匠林栄一氏の野獣アルトだけでも聴く価値あり。音はギンギンだがYouTubeのライヴ映像を観ると演奏姿は冷静沈着。是ハ邪頭ダ!




Dave McMurray / I Love Life Even When I'm Hurting / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009108717


頭の中に住む進歩主義者がささやく。本当はビッチェズ・ブリューでジャズが始まった。大胆だが一理ある見解だ。ブルーノートなら1500番台ではなくデューク・ピアソン、マイゼル兄弟プロデュース時代がいい。新生ブルーノートではアダムス、ピューレンがサイコーだったがその後グッとくる音は減り、時は流れていつのまにかドン・ウォズというジャズ門外漢が社長になっている。大人気のグラスパーはクラブ系通過の耳にはさほど刺さらず、優秀過ぎて心を撃たない現代ブルーノート大行進に疲弊していたところに届いた渋いソウルフルテナーオヤジ、マクマレイの新作。サイコーだ。マクオヤジは'80年代にウォズ兄弟率いるWas (Not Was)なるニューウェイヴバンドに名を連ねていた。以来長い付き合いなのだろう。ドンもベースを弾いている。ケムのヴォーカルもいい。ブルーノートよりもドン・ウォズに俄然興味が集中する。ドンのカーニバルの幕開けだ!




ナラ・シネフロ / ザ・スマッシング・マシーン / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009121092


革命マイルス派関東支部委員の蛇図前進(ジャズマエススム)である。近年アンビエントジャズと称される音楽が静かに注目されており、公安ジャズ警察の監視対象となっている。それらには共通の形式があるわけではなく、Ambient、Jazz、それぞれの言葉が醸す空気感を併せもつサウンドをそう呼ぶようである。決して斬新で新奇な音ではない。そもそもウェザーリポートやアジムスなどマイルス・デイヴィスの"In A Silent Way"あたりに端を発する20世紀のエレクトリックジャズは多分にアンビエント成分を含有していた。ジョン・ケージやブライアン・イーノを通過した耳で音楽を音色や質感でとらえるとたちまちアンビエントミュージックが出現する。客席の話し声やグラスが食器に触れる音が聴きとれる名盤ビル・エヴァンス"Waltz For Debby"にはアンビエントジャズの萌芽がうかがえる。Warp Recordsからの前2作品でアンビエントジャズの急先鋒と目されるナラ・シネフロ。今回はレスラーの伝記映画のサントラ作品ということで、映画を観ればまた印象が変わるかも知れないが、独立した作品として聴いてみる。とにかくサウンドが心地いい。多幸感をもたらすポロンと丸みを帯びたハープの音色とテナーサックスのふくよかな響き。まさに人類が夢想する天上の調べだが、それだけではない。テナーとピアノのデュオといった趣の4曲目は、なるほどジャズと称してまちがいない。5曲目などはまるでエコープレックスという音響装置を多用した'70年代のジョン・クレマーやスタン・ゲッツのようだ。当時既にアンビエントジャズの布石は打たれていたわけだ。切り口を変えて多面的に楽しめる作品である。




纐纈雅代 & Nava Dunkelman / Veins Of Rain / JazzTOKYO 赤尾

https://diskunion.net/detail/1009169833


纐纈雅代は吹きっぷりがいい。1曲目のド頭からぶわっと思い切りよくアルトが飛び出し、一瞬で勝負はキマる。少々怪しさを帯びたフツーじゃない音色もいい。濃密で個性的である。チャーリー・パーカーに衝撃を受けてアルトを手にしたというが、パーカーを学ぶことでコンサバティブにまとまってしまう奏者が多い中で、彼女はその磁場から解脱し過激なフリーフォームで飛翔した。本作は雨にまつわる即興的バリエーション。自然界と交感する祈りと祝祭の空気感は霊的アンビエント。東京生まれの打楽器奏者ナヴァ・ダンケルマンとのデュオだが、ここに巨匠ティム・バーンが加わった録音が昨年発売の"Poiesis"である。2作とも2023年の同日にNYで収録された。少々時間が経ってからのリリースだが、ステージネームを纐纈之雅代に改める前の貴重な記録である。ご本人のつぶやきによると日本に届いたCDは限定48枚。稀少でもある。纐纈之雅代は進化している。最近はギターでの弾き語りを始めたようだ。先の読めないミステリアスなところも魅力である。




Natural Information Society / Perseverance Flow / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009107258


サイレンのような音が何かを呼び集めている。シカゴを拠点とするアンサンブルで、ナチュラル・インフォメーション・ソサエティという名前もなんだか怪しい。繰り返しのようでいて実は景色が少しずつ変化しているという所謂ミニマルな作品なのだが、後ろ髪を引かれてしまう。ハーモ二ウムによるリフはメロディでもあるし、もはやそれがリズムの軸にもなっているというだまし絵のような構造で、時たま小節が差し込まれたり、エスニックな打楽器によるリズムパターンが複雑化したりする。注意深く聴いてもいいし、その渦に身を委ねることもできる。段々とこの儀式に呼び覚まされた人が集まってくる。曼荼羅のようにぐるぐる同じ場所を回り続け、その膨らみを果てしなく広げようとする宗教団体のようでもある。今自分がどこを歩いているのか、生きているのか死んでいるのか、堺がなくなるトランスを巻き起こす呪術だ。この円の中心にあるものとは。




Craig Taborn / Dream Archives / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009155346


クレイグ・テイボーンとトミーカ・リード、チェス・スミスによるトリオのデビュー作品。トミーカ・リードは今一番会って聴いてみたいアーティストだ。(直近で2回も来日しているのだけれど…。)彼女を知ったのはメアリー・ハルヴォーソンが参加していたアルバム『3+3』(2024年)。ジャズシーンで活躍する若手のチェリストがいるんだという嬉しさと、そのシーンがコンテンポラリーのみならず前衛的であるということにも興味を持った。今作はECMより、張り詰めた静けさと一体となった彼女の一面が見られてとても嬉しい。チェス・スミスはヴィブラフォンにも持ち替え、水の波紋が広がるようなオープニング。クレイグ・テイボーンのピアノは透明感もありながらシャキッとした輪郭も併せ持つ。静けさに誘われ夢に落ちると狂気的な踊りが繰り広げられていた。ピチカートで躍動するM3はとっても魅力的。チェロという楽器、そして彼女の多彩な音響を確認してほしい。




Victoria Alexanyan / Vishap / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009174035


アルメニア出身フランス在住のシンガー・ソングライター、ヴィクトリア・アレクサニャン。アルメニアと聞いて思い浮かべるのは、やはりティグラン・ハマシアンだろう。彼の作品に流れる空気が好きならきっと彼女にも惹かれるはず。旋律には祖国の色がくっきり滲み出していて、ピアノトリオにウードが入る編成。ジャズと民族色がうつくしく交じり合う。アルメニアはその地理的要因から、強大国の侵略と支配を受け続けた苦難の歴史を持つ。彼女の音楽はうつくしくも、どこか不穏な悪夢を見ているかのような影を纏い、その歌声には怒りとも似た訴えをも感じる。ただ、そこには圧倒的な荘厳さが佇み、祈りへと昇華する真摯な姿勢は古くからの土地の意思を呼び起こすよう。声を上げ続けること、表現者としての在り方をまじまじと考えさせられる。




Kris Davis / Solastalgia Suite / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/detail/1009172636


カナダ出身の革新的な女性ピアニストがいる。クリス・デイヴィスは、コンテンポラリー・ジャズを基調としながらも型にはまらない独創的な作品を生み出す。ジュリアン・ラージらを迎えたライヴ盤『Diatom Ribbons Live At The Village Vanguard』(2023)では、曲中にメシアンやシュトックハウゼンの語りがサンプリングされていたりもする。その翌年、ロバート・ハースト、ジョナサン・ブレイクとのトリオも衝撃的だった。内容が前衛寄りなのもあり、当店では注目度が薄い気がするのがさみしいが、やっぱりかなりおもろいアーティストだなと思う。今作はポーランドの弦楽四重奏団 と共演し、現代音楽の響きと実験性がより際立つ。静と動の対比が凄まじく、今回は弦楽器を主役に書いたようだが、時折滴るピアノの高音の美しさは彼女の魅力の一つでもあると思う。個性を際立たせるメアリー・ハルヴォーソンやアンナ・ウェバーとも重なる類まれな存在感。




David Friedman / Glow / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009147083


ありそうでなかった初の試み、ヴィブラフォン同士のデュオ。泣く子も黙るヴィブラフォンマスター、デイヴィッド・フリードマンと昨年STEEPLECHASEからデビュー・アルバムをリリースしたトニー・ミチェリの2人が発表したのは巨匠デイヴ・サミュエルズ・トリビュート作。明るく澄んだ響きが特徴でビブラート効果によって温かみや揺らぎを加えることもできるヴィブラフォンですが、さすがに2台でしかも他の楽器の音はなし、となるとどうなんでしょうと思ったのですが、片方がメロディーを奏でるならもう片方は低音でしっかり支え、音の配置転換が巧みに行われていました。メロディ、ハーモニー、リズムが一体となってシームレスに交錯しながらオリジナル曲を含めた10曲を収録。ベタですがM6『When You Wish Upon a Star』思っていた以上に良かったです。




Eddie Allen / Rhythm People / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009146899


ブルックリンを拠点にしているトランペット奏者エディ・アレンのセクステット編成の新作です。70年代のファンキーなジャズを感じさせるオリジナル曲をメインに12曲収録、躍動感のあるジャケ写そのままに駆け抜けています。作品全体を通した印象は、ストレートアヘッド・ジャズにR&Bやラテン音楽といった都会的な要素とリズムを取り入れていて、思わずフィンガースナップや身体が揺れる感じが楽し気、朝の通勤時間に聴くとやる気がチャージされそうです。注目曲は「Mario's Interlude」「7 Days」「Eve's Deception」あたりでしょうか。これからますます寒くなりますがもうすぐ立春です。春を先取りするような軽快なジャズを聴きながらきりっとした真冬の空気を味わうも楽しいものです。トロンボーン奏者のスティーブ・ターレが8曲参加している点にも注目です。




Melissa Aldana / Filin' / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009171935


ブラジルでボサノヴァが生まれた頃にキューバで誕生した音楽がフィーリンです。多くの人に愛されてきた民衆音楽にジャズの要素が加わったメロウで洗練されたフィーリンは、キューバ国内はもちろんあっという間に近隣諸国に広まったそうです。そのフィーリンを新解釈でよりジャズに近づけたのがチリ出身のサックス奏者、メリッサ・アルダナ。とんでもないテクニックを持ちながらこれみよがしにアピールすることなく、力みがないというか余裕を感じさせるその演奏スタイルに魅了されているファンも多いと思いますが(もちろん私もその1人です)、まさかキューバ出身のピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバを招いたカルテットでフィーリンをやるとは驚きと同時にラテン好きの血が騒ぐってものです。サックス奏者として生きる以上いつかはコルトレーンの名盤『Ballads』のようなバラード作品を作りたいと思っていたそうです。スペイン語圏で生まれ育った彼女にとってフィーリンは私が思っている以上に身近で魅力的な素材だったのかもしれませんね。ゲスト参加しているセシル・マクローリン・サルヴァントのヴォーカルも華を添えています。メリッサ・アルダナの新しい一面とフィーリンという音楽の魅力を再発見できる美しい作品をぜひお楽しみください。この後レコードのリリースもありますのでこちらもお楽しみに♪




Mandy & Andy  / Lies! Lies! Lies! / JazzTOKYO 中村

https://diskunion.net/detail/1009170031


2018年にリリースしたデビュー作品がジャズ批評2026年1月号(No,249) 特集「北欧ジャズ」の表紙を飾っているアマンダ・ギンズバーグ最新作。この2人のデュオ作品としては2作目となります。全曲彼らのオリジナルで、掛け合いがあったり一緒に歌ったりアマンダ・ギンズバーグの後ろでアンディ・ファイトのギターがしっとりと流れていたりと、ジャケット写真そのまんまのインティメイトな空気がアルバム全体を包んでいます。ですがハートウォーミングな雰囲気とは裏腹に「戦争を始めよう」と皮肉とパンチが効いた楽曲もあったりしてドキッとします(笑)。表には出さないけれど誰もが抱えているダークな部分にフォーカスした歌詞がやたらと沁みるユニークな作品です。




BRENDAN EDER / Cape Cod Cottage(LP/BONE COLOR)/ 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 田口
https://diskunion.net/detail/1009127994


Aphex Twinの室内楽アンサンブルカバーでも話題になったブレンダン・イーダーのコンセプトアルバムが再発。『引退した歯科医が1970年頃に無名ながらも作曲していた作品』という架空の設定のもと作られたコンセプトアルバムという、面白い作品です。ロックや映画のサントラなどの経歴をもつ作曲家ならでは、アイデアが溢れていながらも、素晴らしいアンサンブルのアレンジに仕上がっています。ラウンジミュージックのようでとても心地良いアルバム。個人的に歯医者のBGMはとても気になってしまうので、きっとこの歯医者さんは落ち着くBGMが流れていたんだろうなと思います。寂しさにそっと寄り添う、これからの季節の変わり目にピッタリの作品です。




ジェイコブ・コリアー / ザ・ライト・フォー・デイズ(SHM-CD) / 新宿ジャズ館 逆瀬川
https://diskunion.net/detail/1009112967


マキシマルなアレンジの"Djesse"シリーズから一転、アコースティック主体のシンプルな作風になったジェイコブ・コリアーの新作。これまでの凝りに凝ったゴージャスなアレンジからのこれ。あまりに天才すぎて雲の上の存在、いや宇宙人くらいに感じてきたジェイコブが、ようやく同じ地平に下りてきた…と思いきや、こうやってシンプルにストレートにやられると、ソングライターとして、シンガーとして、彼がいかに優れた存在であるかを真正面から突き付けられるようで、やっぱりとんでもないヤツだと再認識させられる。そうやってリスナーを惹きつけるのも天才たる所以か。カバーも多くて楽しいし、ラストの盛り上がりにも息をのむ。あとラストのエンディングにはちょっとコールドプレイみたいなUKっぽさを感じました。




BILL LAURANCE / Lumen / 新宿ジャズ館 逆瀬川
https://diskunion.net/detail/1009073738


近年、ACTからソロ作やマイケル・リーグとのデュオ作をリリースしているビル・ローレンスの活動には目を見張るものがある。現代ジャズファンには「スナーキー・パピーのピアニスト」としてお馴染みではあるが、今の活躍を見ていると、もはやそんな枕詞は必要ないかもしれない。ACTのような独特の空気感を持つ老舗レーベルと契約したことで、より広くジャズのリスナーに聴かれる可能性が増えたということが、現代ジャズファンとしてはシンプルに嬉しいし、ビルがそういった場で自身の価値観や世界観を育てているのを追いかけるのもまた楽しいのだ。
ビルはイギリス出身で、クラシックの教育を受けてきた人物でもある。そこが他のジャズ・ピアニストと一線を画する点であり、その影響が本作からは大いに聴き取れるだろう。どこかキース・ジャレットのソロだったり、坂本龍一だったりを彷彿とさせる、ジャズ的即興とクラシカルな手触りの共存。コンサートグランドの柔らかな音色で奏でられる、メランコリックでメロディアスなソロピアノ。あまりに詩的すぎる「深夜3時の教会で録音」というエピソードも、僕のような夜更かし常習者には魅力的。




山本剛 / 峰純子 / ライヴ・アット・ベイシー 1976 / 横浜関内ジャズ館 久保田
https://diskunion.net/detail/1009146080


山本剛トリオと峰純子の未発表音源の事前情報に目を奪われ、何十枚と初回発注したCDも残りわずか。山本剛トリオのスインギンな演奏で幕を開けるや、きっと買って良かったと思っていただける1枚だとおもいます。決して録音は良いとはいえないですが、50年前の岩手ベイシーでの貴重なライブ音源が今だけお手頃価格です。初回分が売り切れてから問い合わせをいただくのは目に見えているので、ぜひ今のうちに横浜関内ジャズ館へお越しください。山本剛のCDがこんなに置いてある店はないと常々自負しております。




Miles Davis / Acenseur Pour L'Echafaud (+1 BONUS TRACK) (LP/180G/CRYSTAL CLEAR VINYL) / 商品部 川田

https://diskunion.net/detail/1009136203


マイルス・デイヴィスが音楽を担当したルイ・マル監督による1958年公開の映画『死刑台のエレベーター』のサントラ盤が180グラム重量盤、カラー・レコード仕様のアナログ盤LPで再発。映画『死刑台のエレベーター』は45年以上前の学生時代に、当時、歌舞伎町にあった映画喫茶で見たことを今でもよく覚えている。ノエル・カレフのサスペンス小説を映画化した、フランスのルイ・マル監督のデビュー作であり、今でも好きなフランスを代表する女優のジャンヌ・モローがフロランス・カララ役で出演していたことも忘れられない。しかし、映画以上に衝撃だったのはマイルスのクールなトランペットが鳴り響くシネ・ジャズを代表する映画音楽であった。ラッシュフィルムを見ながら即興演奏してレコーディングしたサントラは暗い映画に緊張感や迫力をさらに加えており、今でも映画の題名を見ただけ、聞いただけでもマイルスのトランペットが脳裏に響き渡る名作、名演だ。ゆえにジャケット違いの各国盤を購入したことも懐かしい思い入れの強い1枚。




PAT METHENY / Side-Eye III+ / 商品部 池田

https://diskunion.net/detail/1009170255


パット・メセニーが気鋭の若手アーティストを迎えるSIDE-EYEプロジェクト、すっかり忘れられてしまったかと思っていましたが5年ぶりに待望の第2弾がリリースされました!メインとなっているのはギター・トリオですが、個人的にブランディー・ヤンガーの参加が嬉しい1枚。

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¥5,500 (税込)
PHIL LORD & CHRISTOPHER MILLER  / フィル・ロード&クリストファー・ミラー / PROJECT HAIL MARY 4K UHD
PROJECT HAIL MARY 4K UHD

2026年08月11日 / BLU-RAY(ブルーレイ) / IMPORT

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