《連載コラム》 幸枝の『惑星円盤探査録』Vol.24

  • 日本のロック
  • 惑星円盤探査録

2022.01.13

  • LINE

  • メール



「惑星円盤探査録 Vol.24」

Asgeir
『AFTERGLOW』




マスクにも消毒にも検温にも慣れてきて、“withコロナ”なんて言葉にすることもないほどにこの日常がまさに日常、となってきた2021年はあなたにとってどんな年だったのだろうか。緊急事態宣言が何度も延長されたりしてまだ混沌止まぬままに東京オリンピックが開催されて国全体がわちゃわちゃしていたなぁとなんだかもう遠い昔の出来事のように思い返してみたりしている。
わたし個人の話としては住む場所を変えたり新しいことにトライしたり近年稀に見る体調のぶっ壊し方をしたり.....内容盛りだくさん話題の尽きない一年だった。
何もかもが手探りの毎日に、泣いて、思考を巡らして、行動して、発見して。不器用な生き方だよなぁと呆れつつ、まぁ割と頑張ったよなぁと自分で自分の肩を叩く。
そして2022年を迎え、私はとてもワクワクしている。待っていたのだ、2022年がくるのを。
2021年は夜が明けるのを待ち焦がれているような感覚がいつもあった。地平線の向こうはうっすらと赤みを帯びている。こちら側はまだ漆黒のベール。
もう少しすれば夜が明ける、きっと明けるんだ、と不安になる度にそのグラデーションを見つめ自分に言い聞かせていた。

決定的な何かがあるわけではない。けれど、2022年が来たという事実そのものに私は元気をもらっている。

そんな内なる高揚に浸りたいとき聴きたくなるALBUMがあって、それがAsgeirの「Afterglow」。
アイスランドの出身の彼だから生み出せるのであろう美しくひんやりとしたトラック。そこに載せてある詩がまたうつしくて素敵なのだ。ALBUMタイトルにもなっている「Afterglow」はその象徴的楽曲で、聴くたびに五感が洗練されていく気分になる。
海面を照らす太陽の煌めき、それはまるでマジックショーの様だ、と歌う彼は、きっとその景色を実際に目の当たりにしては自分の中に宿る希望を思い出しているのではなかろうか。そしてそれは今の私も同じで、定期的に家の近くの海岸に足を運んで広がる輝きに目を見張り、心にある哀しみや迷いを洗い流している。

人が生きようとする限り困難は尽きないけれど喜びもまた尽きることはない。
2022年もきっとたくさんの出来事があなたにもわたしにもあるだろうけれど、足元をしっかり確かめながら遠くの景色を眺めながら、一歩一歩、歩いて参りましょう。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。





≪前回までの"惑星円盤探査録"はこちら≫
一覧ページ




著者プロフィール

楓 幸枝
バンド活動を経て、現在はドラマー、作詞家、文筆業、MCなど活動の幅を広げている。
ミステリーハンターとしてフィンランドを取材するのが密かな夢。

Instagram
楓 幸枝(@yukie_kaede)