《連載コラム》 幸枝の『惑星円盤探査録』Vol.21

  • 日本のロック
  • 惑星円盤探査録

2021.10.14

  • LINE

  • メール



「惑星円盤探査録 Vol.21」

小川美潮
『デンキ』




あ、と思う瞬間がある。
ピンときちゃった、なんて漫画やアニメでよく聞く台詞だけど、そうゆうことってままある。
思考が直感をものすごい速さで追い越し脳みそのゴールテープを切ってしまうのだ。
「こっちの道行っちゃいけない気がする」みたいな危険感知や「これはすごいの出来ちゃうんじゃないか….」的なクリエイティブ感知、そして多分誰もが経験が多いのは「あ、この人なんかいいな/いやだな」のような相性感知であろう。
私は論理的思考などといった建築的脳みそを働かせるのが苦手なタイプで基本直感だより。そしてこの直感がなんだかんだで一番信用できるのだ。

その直感はフワンと感じる時もあればビビビ!と感じる時もあるし音も無く発生してまるで生まれた時から分かっていたことのように感じる時もある。
色んな場面で活躍してくれるこの直感を一番フル活用したのは”この人とバンドを組むか組まないか”の決断の時であった。

私は21歳頃から25歳までの4年間ほど、女の子三人組のバンドを組んでいた。
バンドとして世の中に認知されることはなかったけれど私にとってこのふたりとの出会いは完全に運命だった。
ビビビっときたのだたまらなく。
最初に出会ったのはギタボのM代で、スタジオに貼ってあった「メンバー募集」の貼り紙がキッカケだった。
普通ああいうのは横書きで紙一枚にちょうど良く収めるのが定石なのに対し彼女の書いたそれはスクランブル交差点の通行人状態。思いついたことを思いついた角度でどんどん書き加えていったのであろうその募集用紙はもはやアートの領域で、ピカソの絵かよ!とつっこみたくなる内容だった。
この時点でかなり良い予感はしていたのだが、実際に会ったら一瞬で発生した、ビビビ直感。
かわいい顔だし服装もオシャレなのにまとってる空気が明らかにヘンテコで、「だからあの貼り紙になるんだ」と大いに納得し、喋る前から「この子と組もう」と心に決めていた。
バンドでは基本彼女が作詞作曲を担当していたのだが出会った当時はまだ「やったことがない、できる気がしない」と言っていたので「作ってみてほしい」と懇願した。
のちにスタジオで「作ったよ」と曲を聞かせてもらい驚いた、「私の直感すご」と。
クオリティという側面から考えるとまだまだ難儀なものだったとは思うが単純にめちゃくちゃ良い曲だった。胸をうたれてしまったのだ。
絶対彼女とバンドをやるんだ、とベーシストを見つけるまでの半年間、ひたすら彼女のデモを聴きながら練習に励んでいた。
そして出会ったのだ、もうひとりのビビビに。
ベースの彼女M美は人づてに紹介された子で、当時ベースを始めたばかりだった上になんならそもそもバンドを組む気など無かったらしい。
しかし彼女の心境などつゆ知らなかった私、”取り敢えず話くらいは”と来てくれた待ち合わせ場所で彼女に会った瞬間にまたしても。
笑顔で挨拶を交わした瞬間に「あ、この子なら大丈夫」と腹を決めてしまっていたのだ。なので「私ほんとにベース始めたばっかりで全然弾けないんですよ」と何回念押しされても我が心山の如し、思いは揺るがずバンド結成という運びになった。

解散してからは一緒に音楽を奏でることなど勿論なかったし3人で集まることも無かった。
それがひょんなことから今年3人で再会を果たしたのだ。
会うまではちょっと緊張したけど会ってみればなんてことない。”二日前も会ってたしね”的テンションと居心地の良さに一瞬で包まれた。
ま、でもそりゃそうだよな、数年間苦楽を共にして、活動時期は家族より恋人より長く一緒に時間を過ごしたんだもの。
終わっても無くならないものってあるんだな。

さて、なぜこんな話をしたのか。それは恥ずかしいほどシンプルで、小川美潮さんの歌い方とM代の歌い方がそっくりなのだ。
最近この曲を聴き直したときに気付き、思わず彼女に「歌い方似てるー」とLINEしてしまったほど。
そして「デンキ」の歌詞とふたりへの私の思いがリンクしていてうれしかったから。

「それはまるで稲妻のよう」で「不思議じゃない不思議な物語」だった。
「月日はやがて形さえ消すけれど」、「想いは変わらずきらめいて」いた。「時間と空間を越えてめぐり逢うその為に」。






≪前回までの"惑星円盤探査録"はこちら≫
一覧ページ




著者プロフィール

楓 幸枝
バンド活動を経て、現在はドラマー、作詞家、文筆業、MCなど活動の幅を広げている。
ミステリーハンターとしてフィンランドを取材するのが密かな夢。

Instagram
楓 幸枝(@yukie_kaede)